確認申請の待ち時間を、不安の時間にしない
2025年4月の建築基準法の改正で、いわゆる「4号特例」が縮小されてから、一年半が過ぎました。木造二階建ての住宅の多くが「新2号建築物」に区分され、確認申請の際に構造や省エネに関する図書の提出が求められるようになっています。審査期間も、従来の7日以内から35日以内へと延びました。
現場からは、「契約から着工までの期間が長くなった」という声を耳にします。設計や申請の手間が増えたのですから、ある程度は避けられないことだと思います。けれど私は、この待ち時間を「仕方のない空白」として扱ってしまうことの方が、ずっと大きな問題だと考えています。お客様にとって、何も起きない待ち時間は、そのまま不安の時間になってしまうからです。

着工を待つ間に、気持ちが離れていったお客様
前職の住宅メーカーで営業をしていた頃、契約から着工までに、思いのほか時間がかかってしまったお客様がいました。土地の手続きの関係で、数か月の空白ができてしまったのです。
その間、私は「着工の日が決まったらご連絡します」とお伝えしただけで、ほとんど連絡をしていませんでした。忙しさを理由に、何も進んでいない時期に連絡する必要はないと思い込んでいたのです。報告することがないのに電話をするのは、かえって相手の時間を奪うだけだ。当時の私は、本気でそう考えていました。
ある日、そのお客様から電話がありました。「本当に家は建つんでしょうか。周りから、あの会社で大丈夫かと言われていて」。声には、はっきりと不安がにじんでいました。何も悪いことは起きていなかったのに、連絡がないこと自体が、お客様の中で疑いに変わっていたのです。
幸い、そのお客様とはその後きちんと話ができ、無事に家を建てることができました。けれど、あのとき電話をくださらなかったら、契約そのものが揺らいでいたかもしれません。待ち時間の長さよりも、その間に何も伝えなかったことが問題だったのだと、今でも思い返します。
お客様にとって、家づくりは人生で一度か二度の大きな買い物です。契約書に判子を押した後、まとまったお金を預けたまま、何も目に見える動きがない。その状態がどれほど心細いものか、営業の側はつい忘れてしまいがちです。
待ち時間が延びたことは、悪い面ばかりではない
今回の法改正で、確認申請にかかる時間が延びたこと自体は、工務店にとって負担です。ただ、私はそれを悪い話だとばかりは思っていません。
構造や省エネの図書をきちんと整えることは、言い換えれば、その家の安全性と性能を、書類の上でも裏付けられるようになったということです。これまで「うちは大丈夫です」と口で説明していたことを、根拠のある形でお客様に示せるようになった。そう考えれば、法改正はむしろ、誠実な工務店にとって追い風にもなり得るはずです。
ある行政書士法人の解説では、着工のずれによって適用される基準が変わる可能性があり、スケジュール管理に注意が必要だと指摘されていました。これは裏を返せば、工務店がスケジュールを丁寧に管理し、その状況をお客様に共有できれば、それ自体が信頼の材料になるということでもあります。
待ち時間は、空白ではなく、準備の時間として使うこともできます。着工までの間に、内装の色や照明、家具の配置といった細かな打ち合わせを進めておく。地鎮祭の準備や、近隣へのあいさつの段取りを一緒に考える。そうした時間を重ねることで、お客様にとっての家づくりは、むしろ楽しみの時間に変わっていくのではないでしょうか。
審査の状況を、お客様と一緒に確認できる形にしておくのも一つの方法です。提出した書類の一覧と、それぞれの進み具合を簡単な表にして共有する。専門的な中身まで理解してもらう必要はありません。「今ここまで進んでいる」と目で見て分かるだけで、お客様の不安はずいぶん和らぐはずです。

