エアコンを施主任せにしている家は、まだ完成していない

家電量販店の店頭で、「エアコン2027年問題」という言葉を見かけるようになりました。省エネ基準が引き上げられ、基準に届かないエアコンは2027年4月以降、製造や販売ができなくなる。それに合わせて、安価なモデルが店頭から姿を消していくのではないか、という話です。

この話題は家電の話として扱われがちですが、私は工務店にこそ関係の深い話だと考えています。正直に言えば、エアコンを「引き渡しの後に、お客様が量販店で買うもの」として扱っている家は、まだ完成していないのではないかとさえ思っています。

吹き抜けのリビングが、夏に暑いと言われた日

前職の住宅メーカーで営業をしていた頃、引き渡しから半年ほど経ったお客様から、「夏になったらリビングがまったく冷えない」と電話をいただいたことがあります。開放的な吹き抜けのあるリビングで、ご家族がとても気に入ってくださった間取りでした。

お伺いしてみると、取り付けられていたのは、量販店で購入された小さな部屋向けのエアコン一台でした。吹き抜けの大きな空間を、6畳用の能力で冷やそうとしていたのです。お客様に落ち度があったわけではありません。どの能力のエアコンが必要なのか、私たちが一度もきちんと説明していなかったのです。

当時の私は、エアコンは家電であって、住宅の範囲ではないと考えていました。けれど、どれだけ間取りを工夫しても、その空間に合った冷暖房がなければ、お客様の暮らしは快適になりません。その日以来、私は間取りの打ち合わせの中で、エアコンの位置と能力の話をするようになりました。

実際に話をしてみると、多くのお客様はエアコンのことを「入居の直前に考えればいい」と思っていらっしゃいました。けれど、エアコンの位置は、コンセントや配管の穴、室外機を置く場所と切り離せません。間取りが決まった後では、選べる場所が限られてしまいます。だからこそ、設計の段階で一緒に考える必要があるのです。

安いエアコンがなくなることは、悪い話ばかりではない

あるエアコン交換の専門業者は、自社が2025年に販売した売れ筋の格安からスタンダードの機種のうち、約8割が新しい省エネ基準に届いていなかったと紹介していました。6畳用の工事費込みで比べると、基準未達の機種が12万円台、基準達成の機種が20万円台と、2倍近い価格差があるそうです。

この数字だけを見ると、お客様の負担が増える話に聞こえます。実際、新築の予算を組むとき、エアコンにかかる費用が想定より膨らむことは避けられないでしょう。

ただ、同じ業者の試算では、年間の電気代は基準達成の機種の方が安く、10年で約2万7,000円の差になるそうです。初期費用の差を電気代だけで取り戻すのは難しいとしても、性能の高い機種を、その家の断熱性能に合った能力で選べば、つけっぱなしでも快適に過ごせる家に近づいていきます。

私は、この変化を「安いエアコンがなくなって困る」という話としてではなく、「エアコンを住宅の性能の一部として考え直すきっかけ」として受け止めたいと思っています。断熱等級を上げ、窓の性能を上げてきた工務店であれば、少ない台数、小さめの能力で家全体を快適にする提案ができるはずです。それは、量販店にはできない提案です。

逆に言えば、断熱性能の低い家では、どんなに高性能なエアコンを入れても、その力を十分に発揮できません。エアコンの性能と家の性能は、セットで考えて初めて意味を持つものだと思います。

あなたの見積書に、エアコンの一行はありますか

あなたの会社の見積書や提案書には、エアコンの位置、台数、能力について書かれた一行があるでしょうか。「施主支給」「別途」とだけ書いて、お客様に任せきりにしていないでしょうか。

本体の工事に含めるかどうかは、会社ごとの考え方でいいと思います。ただ、少なくとも「この家なら、この部屋にこのくらいの能力のエアコンを一台置けば足ります」という目安は、設計した側が示してあげるべきではないでしょうか。家の断熱性能を一番よく知っているのは、お客様でも量販店の店員でもなく、その家を建てた工務店なのですから。

もう一つ、長い目で見たことも伝えておきたいところです。エアコンの修理用部品は、メーカーが一定期間保有するとされていますが、10年を超えると修理が難しくなることもあります。引き渡しのときに、10年後の交換時期の目安と、そのときにまた相談してほしいという一言を添えておく。それが、OB客との関係を続けるきっかけにもなるはずです。エアコンの交換は、OB客の暮らしに自然な形でもう一度関われる、数少ない機会の一つでもあります。

2027年までの残りの時間は、それほど長くありません。この機会に、エアコンを「家の外側の話」から「家の性能の話」へと引き寄せてみてはいかがでしょうか。冷えないリビングで困っていたあのご家族の顔を、私は今でも時々思い出します。

この記事を書いた人

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浄法寺 亘

福島県 喜多方市出身。県立会津高校、市立高崎経済大学卒。工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。現在動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」。住宅情報サイト「ハウジングバザール」の運営にも携わっている。

1996年
東日本ハウス株式会社に入社

2009年
ジーレックスジャパン株式会社設立に加わる
住環境サイト『ハウジングバザール』運営担当

2016年
一般社団法人コミュニティビルダー協会理事就任
国産材利用とSDGsを応援 内閣府BEYOND2020認定団体 外務省SDGsマーク使用許可団体

講演履歴
住宅FC様研修・環境情報センター
工務店支援EXPO(於:東京ビックサイト)
鹿児島県庁「緑の工務店研修会」
ほか多数

著書:
頼みたくなる住宅営業になれる本
SDGsに取り組もう 建築業界編