補助金が終わった翌月にも、同じ提案ができるか

住宅省エネ2026キャンペーンも、いよいよ終盤に差しかかってきました。窓の断熱改修を支える先進的窓リノベ2026事業は予算1,125億円、新築や幅広いリフォームを対象とするみらいエコ住宅2026事業は予算2,500億円。申請は2026年12月31日までとされていますが、予算に達し次第、早めに締め切られることもあります。

この時期になると、「補助金が使えるのは今年中です」という言葉が、営業の現場で飛び交うようになります。お客様に損をさせたくないという気持ちから出る言葉だと思いますし、私もそれ自体を否定するつもりはありません。ただ私は、補助金が終わった翌月にも同じ提案ができるかどうかで、その会社の提案の本気度が分かると考えています。

補助金の話から始まる提案は、補助金とともに終わってしまう

コミュニティビルダー協会の活動で、リフォームの相談に関わる中で、こんな話を聞いたことがあります。ある方は、補助金が出るからと勧められて内窓をつけたものの、なぜそれが自分の家に必要だったのかは、よく分からないままだったそうです。「お得だと言われたので」。その方の説明は、それだけでした。

補助金は、お客様の背中を押す力を持っています。けれど、補助金を入り口にした提案は、補助金という理由がなくなった瞬間に、その説得力を失ってしまいます。「今なら補助金が使えます」は、裏を返せば「補助金がなければ、勧める理由が弱い」と言っているようにも聞こえかねません。

本来、窓の断熱改修を勧める理由は、補助金ではないはずです。冬の朝、窓際が冷え込んで暖房の効きが悪い。結露でカーテンや窓枠にカビが生えてしまう。夏は西日で部屋が暑くなる。そうした暮らしの困りごとを解決するために、窓を見直す。補助金は、その決断を少し後押しするためのものにすぎません。

補助金を目当てに工事を決めたお客様は、工事の後、その効果を実感しにくいこともあります。何のための工事だったのかが分からなければ、窓が暖かくなっても、それを当たり前のことと受け止めてしまうからです。

それでも、補助金の期限を伝えることは大切だ

とはいえ、補助金の期限をお客様に伝えないのも、それはそれで不誠実だと思います。あるリフォーム会社の解説では、断熱性能の高い大きめの内窓を設置した場合に、8万6,000円の補助を受けられる申請例が紹介されていました。また、補助金は交付決定から1〜2か月ほどでお客様に還元されると説明されていました。これだけの金額が、知らなかったために受け取れないとしたら、お客様にとっては大きな損失です。

大切なのは、順番なのだと思います。まずは、お客様の家と暮らしの困りごとを丁寧に聞く。その上で、その困りごとを解決する方法として窓の改修を提案する。そして最後に、「今なら、この費用の一部を補助金でまかなえます」と伝える。お客様にとっても、自分の家の困りごとから話が始まれば、「売り込まれている」という感覚を持たずに済みます。この順番を守るだけで、補助金は「売るための道具」から、「お客様の決断を支える情報」に変わります。

この順番で話をしていれば、補助金が終わった後も、提案の中身はほとんど変わりません。変わるのは、最後の一言だけです。「補助金はもう終わってしまいましたが、それでもこの窓を見直す価値は十分にあると思います」。そう言い切れるかどうかが、提案の誠実さを測る一つの物差しになるのではないでしょうか。

年が明けたとき、あなたの会社は何を勧めますか

一度、想像してみてください。年が明けて、補助金の受付がすべて終わった後、あなたの会社の営業担当者は、お客様に何を勧めるでしょうか。

もし、補助金がなくなった途端に提案の言葉に詰まってしまうなら、それは今のうちに見直しておきたいところです。断熱改修が、どれだけ光熱費を下げ、どれだけ暮らしを快適にし、どれだけ家の寿命を延ばすのか。その価値を、補助金の話を抜きにしても語れるように、社内で言葉をそろえておく。営業担当者によって言うことが違えば、お客様は戸惑ってしまいます。そうすれば、来年以降に新しい補助制度ができたときにも、慌てずにお客様と向き合えるはずです。

もう一つ、この年末にやっておいてほしいことがあります。今年、補助金を使って窓や給湯器を交換したお客様に、使い心地を聞いてみることです。「冬の朝が楽になった」「光熱費が下がった」。そんな声が集まれば、それは来年、補助金がなくても提案できる何よりの材料になります。数字で示す光熱費の比較より、実際に暮らしている方の一言の方が、ずっと説得力を持つことも多いものです。

補助金は、いつか必ず終わります。けれど、お客様の暮らしの困りごとは、補助金があってもなくても、そこにあり続けます。その困りごとに、変わらない姿勢で向き合い続けること。それが、地域の工務店がお客様から長く頼りにされる理由になるのだと、私は思っています。

この記事を書いた人

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浄法寺 亘

福島県 喜多方市出身。県立会津高校、市立高崎経済大学卒。工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。現在動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」。住宅情報サイト「ハウジングバザール」の運営にも携わっている。

1996年
東日本ハウス株式会社に入社

2009年
ジーレックスジャパン株式会社設立に加わる
住環境サイト『ハウジングバザール』運営担当

2016年
一般社団法人コミュニティビルダー協会理事就任
国産材利用とSDGsを応援 内閣府BEYOND2020認定団体 外務省SDGsマーク使用許可団体

講演履歴
住宅FC様研修・環境情報センター
工務店支援EXPO(於:東京ビックサイト)
鹿児島県庁「緑の工務店研修会」
ほか多数

著書:
頼みたくなる住宅営業になれる本
SDGsに取り組もう 建築業界編