倒産のニュースを、お客様はどう読んでいるか
2026年10月、東京商工リサーチが2026年度上半期(4〜9月)の企業倒産をまとめました。件数は前年同期比3.9%増の5,373件で、13年ぶりの高水準だそうです。建設業は1,035件にのぼりました。
こうした数字を見ると、経営者の多くは「うちは大丈夫か」と自社の資金繰りを考えると思います。それはもちろん大切なことです。ただ私は、もう一つ考えてほしいことがあります。このニュースを、これから家を建てようとしているお客様がどう読んでいるか、です。私は、倒産の報道が増える時期こそ、工務店が自社の「つぶれない理由」を自分の言葉で説明できるかどうかが問われていると思っています。

「この会社は最後まで建ててくれるのか」という不安
コミュニティビルダー協会の活動で、施主側の相談に乗る機会もあります。最近、何度か聞いたのが「契約した工務店が途中でつぶれたらどうなるのか」という不安でした。数年前に比べて、その声は明らかに増えているように感じます。
ある若いご夫婦は、気に入った工務店があるのに、契約の直前で迷っていると話してくれました。プランにも担当者にも不満はない。ただ、ネットで地元の工務店が倒産したという記事を読んでしまい、「もし同じことが起きたら」と考えると判子が押せなくなった、というのです。そのご夫婦が求めていたのは、値引きでも追加の提案でもなく、「大丈夫です」と言える根拠でした。
無理もないと思います。今回の集計では、倒産企業の9割が従業員10人未満の小規模な会社でした。人手不足関連の倒産は240件と過去最多、物価高による倒産も436件にのぼっています。地域の工務店の多くは、まさにこの規模にあたります。お客様の側から見れば、「小さな会社ほど危ないのではないか」と感じるのは自然なことです。
そして注文住宅は、契約金や中間金という形で、完成前にまとまったお金を預ける買い物です。家が完成する前に会社が倒れてしまえば、お客様は支払ったお金も、住む予定だった家も失いかねません。不安を口にしないお客様の中にも、同じ心配を抱えている方は少なくないはずです。
規模が小さいことは、それだけで弱点ではない
ただ、私は「小さい会社は危ない」という見方に、そのままうなずくつもりはありません。地域で何十年も続いてきた工務店には、身の丈に合った受注をし、無理な拡大をしてこなかったからこそ続いてきた会社がたくさんあります。
問題は、規模ではなく、そのことをお客様に伝えられていないことだと思います。完成保証制度に加入しているか。支払いのタイミングを工事の進み具合と合わせているか。創業から何年、どれだけの家を建て、どれだけのOB客と今も付き合いがあるか。これらは、お客様の不安に直接こたえられる材料です。
例えば完成保証制度は、万が一工事の途中で会社が倒れても、別の会社が工事を引き継いだり、前払い金の損失を一定の範囲で補ったりする仕組みです。加入している会社にとっては当たり前のことでも、お客様の多くはその存在自体を知りません。知らない仕組みは、ないのと同じです。
ところが、こうした話を契約前に自分から切り出す工務店は、まだ多くないように感じます。「お金の話をすると、かえって不安にさせる」と考える気持ちも分かります。けれど、不安はすでにお客様の中にあるのです。黙っていても消えることはありません。こちらから先に、誠実に説明してくれる会社の方が、むしろ信頼されるのではないでしょうか。
説明の場面も、契約の直前ではなく、もっと早い段階がよいと思います。初回の打ち合わせで会社の紹介をするときに、保証の仕組みや支払い条件の考え方まで一緒に話しておく。そうすれば、お客様は安心してプランの話に集中できます。

あなたの会社は、「つぶれない理由」を語れますか
一度、営業担当者に聞いてみてください。「お客様に、うちの会社が倒産しない理由を説明してください」と。すぐに答えられる人は、どれくらいいるでしょうか。
もし答えに詰まるなら、それは営業担当者の問題ではなく、会社として伝えるべきことを言葉にしてこなかった結果なのだと思います。財務の数字をすべて見せる必要はありません。ただ、自社が加入している保証の仕組み、支払い条件の考え方、そして地域で続けてきた年数とOB客との関係くらいは、誰が説明しても同じ内容になるよう整えておきたいところです。
もう一つ付け加えるなら、引き渡しの後のことです。お客様が本当に心配しているのは、家が完成するかどうかだけではありません。十年後、二十年後に雨漏りや不具合が起きたとき、相談できる相手が残っているかどうか。地域の工務店が何十年も同じ場所で続いていることは、それ自体が最大の保証なのだと、私はお客様に伝えてほしいと思っています。
倒産のニュースは、これからもしばらく続くかもしれません。そのたびに、お客様の心の中には小さな不安が積み重なっていきます。その不安に、先回りして静かにこたえられる会社でありたい。地域の工務店が選ばれ続けるための、とても地味ですが確かな一歩だと私は考えています。

