キャッチコピーを考える前に、社長の口癖を書き出してみる
チラシやホームページをつくり直すとき、多くの工務店が最初に頭を悩ませるのがキャッチコピーです。「家族の笑顔をつくる家」「自然素材にこだわった住まい」。何度も書き直し、ようやく決まった一文が、気づけば他社のチラシにもよく似た言葉で載っている。そんな経験をした方も多いのではないでしょうか。
私は、キャッチコピーがうまくいかない原因は、言葉選びのセンスではないと考えています。問題は、コピーを「考えよう」としていることそのものにあるのではないか。その会社らしい言葉は、机の上でひねり出すものではなく、社長や社員がふだん口にしている言葉の中に、すでに埋まっていると思うのです。

考え抜いた言葉ほど、誰にでも当てはまってしまう
あるWeb制作会社のコラムでは、人は1日に3,000件以上の広告メッセージに触れているという話を紹介したうえで、キャッチコピーは20文字以内が理想、長くても40文字以内が目安だと書かれていました。短く、印象に残る言葉が求められているのは確かだと思います。
ただ、短く印象的な言葉を目指すほど、表現は抽象的になっていきます。「家族」「笑顔」「暮らし」「こだわり」。どれも温かい言葉ですが、どの工務店が使っても成り立ってしまう言葉でもあります。考え抜いた末に、誰にでも当てはまる言葉にたどり着いてしまう。キャッチコピーづくりには、そんな落とし穴があるように感じています。
コミュニティビルダー協会の活動で、工務店の社長と長く話をする機会があります。そのとき、私が一番印象に残るのは、チラシに書かれた言葉ではなく、社長が雑談の中で何度も口にする言葉です。「うちは、建てた後に呼ばれる会社でいたいんです」「夏に一度、床下をのぞいてもらえばわかります」。そうした言葉には、その社長が何十年もかけて積み上げてきた考え方が、自然ににじみ出ています。
ある社長は、打ち合わせのたびに「この家に、何年住むつもりですか」とお客様に尋ねるのだそうです。その問いかけ一つに、その会社が大切にしていることがはっきりと表れています。私は、こうした言葉こそが、その会社にしか書けないキャッチコピーの原石だと思っています。磨けば光る言葉は、意外なほど身近なところにあります。
口癖には、会社の考え方がそのまま出ている
もちろん、口癖をそのままチラシの見出しにすればいい、という単純な話ではありません。口癖は、話し言葉です。文字にすると伝わりにくいこともありますし、前後の文脈がなければ意味が通じないこともあります。
それでも、出発点を「口癖」に置くことには大きな意味があると思います。まず、嘘がありません。社長が毎日のように口にしている言葉であれば、それは会社の実態と一致しています。チラシで約束したことと、実際の打ち合わせでの言葉がずれることもありません。お客様が初めて会社を訪れたとき、チラシで読んだ言葉を社長の口から直接聞く。その一致が、信頼の第一歩になるのではないでしょうか。
同じコラムでは、キャッチコピーをひとつ変えただけで問い合わせが大きく増えた事例にも触れられていました。言葉の力は、決して小さくありません。だからこそ、その言葉は、会社の外から借りてくるのではなく、会社の内側から掘り出してきたものであってほしいと思います。
また、口癖から生まれた言葉は、社員にも浸透しやすいという利点があります。外部の制作会社がつくった洗練されたコピーは、社員にとってはどこかよそよそしいものです。けれど、社長がいつも言っている言葉であれば、営業担当者も現場監督も、自分の言葉として語ることができます。

一週間、自分の言葉をメモしてみてほしい
あなたの会社でも、一度試してみてほしいことがあります。社長自身、あるいは社員同士で、一週間だけ、お客様との会話の中で何度も口にした言葉をメモしてみるのです。
最初は、何も特別なことは言っていないと感じるかもしれません。けれど、一週間分を並べてみると、繰り返し出てくる言葉や言い回しがあることに気づくはずです。それが、あなたの会社が無意識のうちに大切にしている価値観です。
その中から、お客様の心に残りそうな一言を選び、少しだけ整えてみる。それだけで、他社のチラシと見比べても埋もれない、その会社らしいキャッチコピーが生まれることがあります。外部の制作会社に依頼する場合も、このメモを渡すだけで、提案される言葉の質はずいぶん変わってくると思います。言葉の素材を渡すことで、制作会社も、その会社の空気をつかみやすくなるからです。
キャッチコピーは、会社の顔です。だからこそ、借り物の言葉ではなく、社長や社員の声がそのまま聞こえてくるような言葉であってほしい。きれいな言葉を探す前に、自分たちがふだん何を語っているのかに耳を澄ませてみる。そこから始まる言葉づくりが、地域で長く選ばれる会社の土台になっていくのだと、私は思っています。

