木材利用促進月間を、誰にも知られずに終わらせない

10月も、もうすぐ終わろうとしています。この10月が「木材利用促進月間」であり、10月8日が「木材利用促進の日」であることを、どれだけの工務店の方がご存じだったでしょうか。正直に言えば、私の周りでも、知っている方はそれほど多くありませんでした。

国は今、木材の利用を広げるための取り組みを、かなりの熱量で進めています。けれど、その熱量が、家を建てる現場やお客様にまで届いているかというと、心もとないのが実情だと思います。私は、国の旗振りを待つのではなく、地域の工務店こそが、その声を暮らしの言葉に置き換えて届ける役割を担えるのではないかと考えています。

白書には、木を使おうという声があふれている

2026年6月に公表された令和7年度の森林・林業白書を読むと、木材の利用をめぐる国の取り組みが、いくつも並んでいます。2025年10月には「森の国・木の街」づくり宣言が始まり、同じ年の11月には、林業や木材産業での適正な取引を進めるためのガイドラインが策定されました。2026年4月には、農林水産省の木材利用推進計画も改定されています。CLTの普及に向けた第4次ロードマップも、2026年度以降を対象に動き出しました。

これだけの取り組みが重なっているのは、日本の森が、今まさに「使いどき」を迎えているからだと私は受け止めています。戦後に植えられた人工林の多くが、伐って使うのに適した時期を迎えています。伐って、使って、また植える。その循環が回らなければ、森は手入れされないまま荒れていってしまいます。

コミュニティビルダー協会では、国産材の利用とSDGsを応援する活動を続けてきました。その中で私が何度も感じてきたのは、森の課題と暮らしの距離の遠さです。山の現場で働く方々の思いと、家を建てるお客様の関心とが、なかなか結びつかない。そのあいだをつなぐ人が、まだ足りていないのだと思います。

山で働く方々からは、「自分たちが育てた木が、どんな家に使われているのか分からない」という声を聞くことがあります。一方で、家を建てるお客様の多くは、自分の家の柱がどこの山から来たのかを知りません。両方の思いを知っている工務店が、その橋渡しをしてくれたら。私はいつもそう感じています。

国の言葉のままでは、お客様には届かない

ただ、こうした国の取り組みを、そのままお客様に伝えても、なかなか響かないだろうとも思っています。「森の国・木の街づくり宣言」や「木材利用推進計画」と聞いて、自分の家づくりと結びつけて考えられる方は、ほとんどいないはずです。

お客様が関心を持つのは、もっと身近なことです。木の家は、冬に足元が冷たくないか。子どもが走り回っても大丈夫か。何十年住んでも、きれいなままでいられるか。そうした暮らしの問いに答える中で、「この柱は、ここから車で一時間ほどの山で育った木なんです」と一言添える。その方が、国の宣言を百回繰り返すよりも、ずっと森とお客様の距離を縮めてくれるのではないでしょうか。

国が旗を振ることには、もちろん意味があります。予算がつき、制度が整い、木を使う環境は少しずつ良くなっていきます。けれど、最後にお客様の前に立ち、木を選んでもらうのは、地域の工務店です。国の言葉を、暮らしの言葉に翻訳する。それこそが、工務店にしかできない役割だと私は思っています。

それに、木材の利用が進むことは、工務店自身の経営にとっても無関係ではありません。地域の山の木が使われ、地域の製材所が元気でいてくれることは、安定した材料の調達にもつながります。森を守ることは、回り回って、自分たちの家づくりを守ることでもあるのです。

来年の10月に向けて、何を準備しますか

今年の木材利用促進月間は、もうすぐ終わります。けれど、来年の10月はまたやってきます。あなたの会社では、その一か月を、どんなふうに使ってみたいでしょうか。

大がかりな催しを開く必要はないと思います。例えば、10月の完成見学会に合わせて、使っている木の産地を写真付きで紹介する。OB客に向けて、木の家の手入れの方法を伝える小さな冊子を送る。地域の製材所の方を招いて、木の話を聞く会を開く。どれも、無理なく始められることばかりです。

子ども向けに、木の端材を使った工作の場を設けるのもよいと思います。木に触れた記憶は、子どもたちが大人になって家を建てるとき、きっとどこかで思い出されるはずです。

そして、できれば一年を通じて、その姿勢を続けてほしいと思います。月間は、あくまできっかけにすぎません。木を使うことの意味を、日々の打ち合わせの中で、自分たちの言葉で語り続ける。その積み重ねが、地域の森とお客様の暮らしを、少しずつ近づけていくのだと思います。

国の白書に並んだたくさんの言葉が、いつか、地域の工務店とお客様との何気ない会話の中に溶け込んでいく。そんな日が来ることを願いながら、私もこの活動を続けていきたいと思っています。

この記事を書いた人

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浄法寺 亘

福島県 喜多方市出身。県立会津高校、市立高崎経済大学卒。工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。現在動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」。住宅情報サイト「ハウジングバザール」の運営にも携わっている。

1996年
東日本ハウス株式会社に入社

2009年
ジーレックスジャパン株式会社設立に加わる
住環境サイト『ハウジングバザール』運営担当

2016年
一般社団法人コミュニティビルダー協会理事就任
国産材利用とSDGsを応援 内閣府BEYOND2020認定団体 外務省SDGsマーク使用許可団体

講演履歴
住宅FC様研修・環境情報センター
工務店支援EXPO(於:東京ビックサイト)
鹿児島県庁「緑の工務店研修会」
ほか多数

著書:
頼みたくなる住宅営業になれる本
SDGsに取り組もう 建築業界編