追客メールを手抜きだと思っていませんか
営業の現場では、今でも「メールは手抜き、本気なら電話か訪問」という空気が根強く残っているように感じます。特に、長く住宅営業をしてきた方ほど、その感覚を持っているのではないでしょうか。
私自身も、かつてはそう考えていた一人です。けれど今は、はっきりと考えが変わりました。追客メールは手抜きではなく、お客様の時間を尊重するための、とても誠実な手段だと思っています。問題はメールという手段ではなく、そこに「その人に向けた言葉」が入っているかどうかなのだと思います。

電話をかけるほど、お客様が遠ざかっていった頃
前職の住宅メーカーで、茨城県南部の住宅展示場に勤務していた頃の話です。来場されたお客様には、その日のうちにお礼の電話をかけ、数日後にもう一度電話をする。それが当たり前の決まりでした。
ところが、熱心に電話をかけたお客様ほど、二度目、三度目には電話に出てくれなくなる。共働きのご夫婦であれば、昼間の電話はそもそも迷惑だったはずです。それでも当時の私は、「出てもらえないのは、自分の熱意が足りないからだ」と思い込んで、さらに電話の回数を増やしていました。今思えば、お客様にとっては逃げ出したくなる営業だったと思います。
当時の展示場では、月末になると「何件電話をかけたか」が営業会議で読み上げられていました。かけた件数が多い営業ほど頑張っている、という評価です。私も、その数字を伸ばすことに必死でした。けれど、件数を競えば競うほど、一本一本の電話の中身は薄くなっていきます。「その後いかがですか」とだけ聞く電話を、何十本もかけていたように思います。
ある時、なかなか連絡がつかなかったご夫婦から、短い手紙で返事をいただいたことがありました。「お電話をいただいても出られず申し訳ありません。資料はゆっくり読ませていただいています」。その一文を読んで、私は初めて、相手のペースを奪っていたのは自分の方だったと気づきました。
それ以来、私は連絡の手段をお客様に選んでもらうようにしました。初回の来場時に「ご連絡は電話とお手紙、どちらがよろしいですか」と一言聞くだけです。それだけで、その後のやりとりがずいぶん穏やかになったのを覚えています。
安さではなく、相手の時間を奪わないことに価値がある
ある工務店向け業務支援会社のコラムでは、追客メールの配信コストはどんなに高くても1通1円以下で、DMの配送コストは1通60円以上かかると紹介されていました。数字だけを見ると、メールは「安いから使う手段」に見えるかもしれません。
ただ、私がメールに価値を感じるのは、安さよりも、相手が好きな時間に読めるという点です。夜、子どもを寝かしつけた後、ダイニングでゆっくりスマートフォンを開いたときに、自分たちの土地探しの悩みにきちんと触れたメールが届いていたら。それは電話一本よりも、ずっと深く届くのではないでしょうか。
もちろん、メールにも落とし穴があります。同じコラムでは、時間を空けずに送ること、期限や質問を盛り込むことなどが成功のポイントとして挙げられていました。私が付け加えるなら、テンプレートの文章を誰にでも同じように送ることだけは避けてほしいということです。一斉配信の「ご来場ありがとうございました」は、お客様の側からはすぐに見抜かれてしまいます。
それに、すべてをメールで済ませればいいとも思いません。コラムでも、契約後は電子メールではなく手紙で送るのがよいと書かれていました。私も同感です。手段は、関係の深さによって使い分けるものなのだと思います。

そのメールの一行目に、相手の名前以外の何があるか
あなたの会社から送られている追客メールを、一度読み返してみてください。冒頭の宛名を別の方の名前に差し替えても、そのまま通用してしまう文章になっていないでしょうか。
もし通用してしまうなら、それはお客様に向けたメールではなく、会社の都合で送っているメールなのかもしれません。打ち合わせで聞いた「駐車場は2台分ほしい」「実家の近くで探している」といった一言を、メールの最初の一行に入れる。それだけで、お客様は「この人は自分たちの話をちゃんと覚えてくれている」と感じてくれるはずです。
もう一つ大切なのは、返信しやすい問いかけで終えることだと思います。「何かあればご連絡ください」では、お客様はなかなか返事を書けません。「土地の候補は、今どのあたりで探していらっしゃいますか」のように、一言で答えられる質問を最後に添える。そうすると、メールが一方通行の案内ではなく、会話の続きに変わっていきます。
営業担当者が忙しいのは分かります。全員に手書きの手紙を出すのは現実的ではありません。だからこそ、メールという手段を軽く見ず、一通一通に小さな手間をかける。その積み重ねが、電話をかけ続けるよりも確かな信頼につながっていくのだと思います。
電話に出てもらえなかったあの頃の自分に、今なら伝えられることがあります。熱意は回数ではなく、相手のことをどれだけ覚えているかで伝わるのだと。追客メールを送る営業担当者の一人ひとりに、そんな気持ちで画面に向かってもらえたらと願っています。

