施工事例ページを、写真の倉庫にしていませんか
工務店のホームページを見ていると、施工事例のページだけがやけに充実している会社が少なくありません。外観、リビング、キッチン、洗面と、きれいな写真が何十件も並んでいる。手間をかけているのは伝わってきます。
それでも私は、施工事例ページの多くが「写真の倉庫」で止まってしまっていると感じています。写真は増えているのに、問い合わせにはつながっていない。その原因は、写真の質や件数ではなく、写真の横に「その家族が何に迷い、何を決めたのか」が書かれていないことにあると思っています。

写真だけでは、比較されて終わってしまう
コミュニティビルダー協会の活動で、地域の工務店さんのホームページを一緒に見直す機会がよくあります。そのとき、私は施工事例を一件ずつ開いて「この写真から、御社でなければならない理由が読み取れますか」と尋ねるようにしています。すると、たいていの社長が少し考え込みます。
無垢の床、吹き抜け、大きな窓。どれも素敵ですが、正直に言えば、今は多くの会社が同じような写真を載せています。カメラの性能も上がり、プロに撮影を頼む工務店も増えました。写真の美しさだけで差をつけるのは、年々難しくなっているように感じます。写真だけを並べていると、見ている側にとっては、他社の施工事例と横並びで比べる材料にしかなりません。比べられた先に残るのは、結局は価格や知名度の勝負です。
しかも写真は、見る人の好みに強く左右されます。木の質感が好きな人もいれば、白を基調にしたシンプルな家が好きな人もいる。好みに合わなかった瞬間に、その事例はそっと閉じられてしまいます。写真だけに頼ったページは、合う人と合わない人を振り分ける役割しか果たせていないのかもしれません。
ある住宅専門のWeb支援会社のコラムでは、施工事例やコラムは月1〜2回以上の更新が理想だとされ、ホームページ改善で最も効果が出やすいのは、ファーストビューの見直しと導線の改善だと書かれていました。私もその通りだと思います。ただ、更新の頻度を上げる前に、一件一件の中身を見直す方が先ではないか、というのが私の考えです。
性能の数字も、暮らしの言葉に置き換えてこそ伝わる
一方で、「写真より性能の数字を載せるべきだ」という意見もあります。同じコラムでも、高気密高断熱を強みにするならUA値を数値で示すべきだと書かれていました。これには私も賛成です。曖昧な「あたたかい家」より、数字の方がずっと誠実です。
ただ、数字だけを並べても、多くのお客様にはまだ遠い話です。UA値の横に「冬の朝、暖房をつける前でも室温が◯度あった」と、住んでいる方の声を一行添える。それだけで、数字が暮らしの実感に変わります。
施工事例は、本来、写真と数字とお客様の言葉の三つがそろって初めて、その会社らしさが伝わるものだと私は思っています。写真の枚数を増やすよりも、一件の事例に「なぜこの間取りにしたのか」「最初は何に迷っていたのか」「住んでみてどうか」を書き込む。その方が、検討中の方にとってはずっと参考になるはずです。

その一件に、施主の迷いは書かれているか
あなたの会社の施工事例ページを、今日一度開いてみてください。そこに、施主の「迷い」は書かれているでしょうか。
家づくりを検討している方が本当に知りたいのは、完成した家の美しさだけではないと思います。自分と同じように予算に悩み、土地に悩み、間取りに悩んだ家族が、その会社とどう話し合って答えを出したのか。そのプロセスこそが、「この会社なら相談できそうだ」という気持ちを生むのではないでしょうか。
施主の許可をいただくのは手間ですし、インタビューの時間も必要です。それでも、引き渡しのときに「この家ができるまでの話を、次に家を建てる方のために聞かせてください」とお願いすれば、断られることはそれほど多くないように感じます。むしろ、自分たちの家づくりを振り返る機会として喜ばれることもあります。
協会の勉強会でこの話をすると、「書く人がいない」という声もよく返ってきます。けれど、立派な文章である必要はありません。打ち合わせで施主が口にした一言をメモしておき、それを事例の冒頭に置くだけでも十分です。「収納は少なくていいから、家族が集まれる場所がほしい」。そんな一行があるだけで、写真の見え方はまったく変わります。
施工事例は、会社の実績を見せる場所であると同時に、これから家を建てる人が「自分たちの未来」を重ねる場所でもあります。写真が何十件並んでいても、そこに物語がなければ、見る人は通り過ぎてしまいます。
件数は少なくても構いません。一件ずつ、その家族の言葉が残っている施工事例ページ。それが、地域の工務店にとって一番の営業ツールになるのではないかと、私は考えています。
倉庫に写真を積み上げるのではなく、物語を一冊ずつ棚に並べていく。そんな気持ちで、次の施工事例を書いてみてはいかがでしょうか。

