努力義務だから関係ない、で済ませていいのか
2025年4月に、改正クリーンウッド法が施行されてから一年半が過ぎました。違法に伐採された木材を流通させないための法律で、今回の改正では、木材を最初に扱う事業者に合法性の確認が義務づけられています。
工務店の方とこの話をすると、たいてい返ってくるのは「うちは努力義務だから、あまり関係ない」という答えです。確かに、法律の上ではその通りなのだと思います。けれど私は、この法律を「関係ない」で済ませてしまう工務店と、自社の言葉で語れる工務店とでは、これから先、お客様からの信頼に静かな差がついていくと考えています。

義務を負うのは川上、でも木を使うのは私たち
林野庁の資料によれば、クリーンウッド法は2016年に成立し、2017年5月に施行されました。その後、2023年に改正法が成立し、2025年4月に施行されています。改正後は、丸太を出荷する事業者や木材を輸入する事業者といった、いわゆる川上・水際の事業者が「第1種木材関連事業者」として、樹種、伐採された地域、合法性を証明する書類の三点を集め、整理することが義務になりました。記録は作成から5年間保存しなければなりません。
一方、木材を使って家を建てる側の工務店には、合法に伐採された木材を使うよう努める、という努力義務が課されています。罰則があるわけではありません。だから「関係ない」という感覚になるのも、無理はないと思います。
ただ、少し立ち止まって考えてみてほしいのです。義務を負っているのは川上の事業者でも、その木を最終的にお客様の家の柱や梁として使うのは、私たち工務店です。お客様が「この木はどこから来たのですか」と尋ねたとき、答えるのは製材所でも輸入商社でもありません。目の前にいる、工務店の担当者です。
最近は、環境への関心が高いお客様も増えてきました。特に若い世代の方は、食べ物や服を選ぶときと同じように、家に使われる素材の背景にも目を向け始めています。「よく分かりません」と答えるか、「この地域の山の木です」と答えられるか。その一言の差は、思っている以上に大きいのではないでしょうか。
コミュニティビルダー協会では、国産材の利用を応援する活動を続けてきました。その中で何度も感じてきたのは、木の出どころを語れる工務店は、それだけでお客様の見る目が変わるということです。法律が求めているのは最低限のラインにすぎません。その上に、どれだけの説明を積み上げられるかが、工務店の姿勢として表れるのだと思います。
すべての木を追いかけるのは、正直に言って難しい
とはいえ、家一棟に使われる木材のすべてについて、伐採地まで遡って説明するのは、現実的には簡単ではありません。構造材は地域材でそろえていても、合板や下地材、内装材、家具や建具まで含めれば、輸入材が混ざることもあります。それをすべて把握しようとすれば、事務の負担は相当なものになるでしょう。
だから私は、「全部を完璧に」とは言いません。まずは、家の骨組みになる構造材だけでも、どこの山の木で、どの製材所を通ってきたのかを説明できるようにする。それができれば、お客様にとっては十分に誠実な説明になるはずです。
その上で、取引先に一度だけ聞いてみてほしいと思います。「御社が扱っている木材の合法性は、どのように確認されていますか」と。改正法では、川上の事業者は、求めに応じて合法性の確認に役立つ情報を提供することになっています。こちらから尋ねることは、決して失礼なことではありません。むしろ、取引先との関係を一歩深めるきっかけにもなるのではないでしょうか。
実際に尋ねてみると、取引先の方も、自分たちの取り組みを聞いてもらえることを喜んでくれる場合が多いように思います。川上の事業者にとって、合法性の確認は手間のかかる作業です。その手間に関心を持ってくれる工務店は、きっと心強い存在に映るはずです。

あなたの会社で、木の出どころを答えられるのは誰ですか
お客様に「この家の木はどこから来たのですか」と聞かれたとき、あなたの会社では誰が答えられるでしょうか。社長だけが知っている、という会社も少なくないと思います。
もしそうなら、その知識を、営業担当者や現場監督にも共有してみてほしいのです。仕入れ先の製材所の名前、使っている木の産地、その木を選んでいる理由。この三つを、誰に聞かれても同じように答えられる。それだけで、打ち合わせの場での説得力はずいぶん変わります。
工務店の中には、自社でクリーンウッド法の登録を受けて、合法木材を扱う姿勢を対外的に示しているところもあります。登録まで進むかどうかは会社ごとの判断ですが、少なくとも「努力義務だから関係ない」と言い切るのではなく、「うちはこう確認しています」と言える状態をつくっておきたいところです。
家は、何十年もその地域に建ち続けます。その家の骨組みになっている木が、どこかの森を壊して切り出されたものだったとしたら、それはとても悲しいことです。法律の義務の有無にかかわらず、自分たちが使う木に責任を持つ。そんな工務店が、一社でも増えてほしいと願っています。

