チラシをやめる前に、誰に届けていたかを考える

「チラシはもう効かない」。工務店の経営者から、この言葉を聞く機会がずいぶん増えました。新聞をとる家庭が減り、折込チラシの反響が落ちている。それならば、チラシの予算をWeb広告やSNSに回した方がいい。その判断自体は、多くの場合、理にかなっていると思います。

ただ私は、チラシをやめるかどうかを決める前に、一度立ち止まって考えてほしいことがあります。それは、自社のチラシがこれまで「誰に」届いていたのか、ということです。チラシという手段が古くなったのではなく、届けたい相手と届け方がずれてしまっていただけなのかもしれない。私はそう考えています。

新聞を読まない世代に、新聞で届けようとしていた

あるWeb制作会社のコラムでは、工務店の集客方法をオンラインとオフラインに分けて紹介する中で、折込チラシの到達率が大きく下がっていること、若い世代では新聞を購読しない家庭が増えていることが指摘されていました。一方で、住宅の購入を検討している人の約9割がインターネットで情報を集めているという調査にも触れています。

この話を聞いて、私が思い浮かべたのは、ある工務店の社長の言葉です。「うちのチラシは、ずっと同じ地域に、同じ部数を撒いてきた。でも、気づいたら反響があるのは、子育てを終えた世代のリフォームの相談ばかりになっていた」。

新築を検討する30代の子育て世帯は、新聞を読んでいない。一方で、新聞を読んでいる世代は、新築よりもリフォームや住み替えに関心がある。チラシが「効かなくなった」のではなく、チラシが届いている相手が変わっていた。その変化に、会社の側が気づいていなかったのだと思います。

コミュニティビルダー協会の活動で、各地の工務店の集客の話を聞いていると、こうしたずれは決して珍しくありません。手段そのものを評価する前に、その手段が今、誰に届いているのかを確かめる。それだけで、判断はずいぶん変わってくるのではないでしょうか。

Web広告も同じです。クリックの数や問い合わせの件数だけを見ていると、どんな人が来ているのかが見えなくなります。年代、家族構成、相談の中身。手段ごとに、届いている相手の顔を思い浮かべられるかどうかが、集客の判断の土台になるのだと思います。

届く相手を選べば、紙はまだ力を持っている

だからといって、チラシを続けるべきだと言いたいわけではありません。新築の集客を考えるなら、Webへの投資を増やすのは自然な流れだと思います。

ただ、紙の印刷物が持つ力を、すべて手放してしまうのはもったいないと私は感じています。例えば、新聞を読む世代に向けて、外壁の塗り替えや水回りの交換、バリアフリーの工事を案内するチラシであれば、今でも十分に届く可能性があります。新築とリフォームで、届けるべき相手と手段を分けて考えればいいのです。

また、新聞の折込ではなく、建築中の現場の近所に、手渡しやポスティングで届ける方法もあります。「近くで工事をさせていただいています。ご迷惑をおかけします」という挨拶状に、会社の紹介を一枚添える。近隣の方にとっては、毎日目にしている現場の会社です。見知らぬ会社のチラシとは、受け取り方がまったく違うはずです。

同じコラムでは、紹介制度の例として、紹介してくれたお客様への謝礼や工事費の割引といった仕組みも紹介されていました。紙のチラシで一斉に呼びかけるよりも、すでに付き合いのある人を通じて、相手を選んで届ける。集客の手段は、こうした「誰に届けるか」の工夫によって、まだいくらでも広げられるのだと思います。

あなたのチラシは、今、誰の手元に届いていますか

あなたの会社のチラシは、今、誰の手元に届いているでしょうか。そして、そのチラシを見て問い合わせをくれた方は、どんな年代で、どんな相談をされているでしょうか。

もし分からないのであれば、まずはそこから確かめてみてほしいと思います。問い合わせを受けたときに「何を見てご連絡くださいましたか」と一言尋ね、その答えを記録しておく。数か月分を並べれば、どの手段が、どの世代の、どんな相談につながっているのかが見えてきます。

そのうえで、やめるものはやめ、続けるものは届け方を変える。チラシを丸ごと切り捨てるのでも、惰性で続けるのでもなく、自社のお客様に合わせて組み立て直す。それが、限られた広告費を生かす一番の近道だと思います。問い合わせの記録は、どんな集計表よりも正直に、自社のお客様の姿を教えてくれます。

小さな会社ほど、手段の見直しは身軽にできます。届け先を変えたチラシを一度試してみて、反応を確かめてから次を考える。その試行錯誤も、地域の工務店ならではの強みです。

集客の手段には、流行り廃りがあります。けれど、「誰に、何を届けたいのか」という問いは、どの時代にも変わりません。その問いに立ち返ることができれば、古いと言われる手段にも、まだ新しい使い道が見つかるはずです。チラシの束を前に迷っている経営者の方に、そんな視点を持っていただけたらと思っています。

この記事を書いた人

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浄法寺 亘

福島県 喜多方市出身。県立会津高校、市立高崎経済大学卒。工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。現在動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」。住宅情報サイト「ハウジングバザール」の運営にも携わっている。

1996年
東日本ハウス株式会社に入社

2009年
ジーレックスジャパン株式会社設立に加わる
住環境サイト『ハウジングバザール』運営担当

2016年
一般社団法人コミュニティビルダー協会理事就任
国産材利用とSDGsを応援 内閣府BEYOND2020認定団体 外務省SDGsマーク使用許可団体

講演履歴
住宅FC様研修・環境情報センター
工務店支援EXPO(於:東京ビックサイト)
鹿児島県庁「緑の工務店研修会」
ほか多数

著書:
頼みたくなる住宅営業になれる本
SDGsに取り組もう 建築業界編