金利が上がった日に、営業マンが持つべき言葉
日本銀行が2026年6月、政策金利を1.00%まで引き上げました。約31年ぶりの水準だそうです。変動金利もメガバンク平均で年1.248%まで上がり、フラット35は年3.46%まで上昇、変動金利との差は2.23%と過去最大級になっていると報じられています。
正直に言うと、私はこの「金利が上がった」というニュースそのものより、そのニュースが出た瞬間に、契約直前のお客様がどんな顔をしているかの方がずっと気になります。数字の上下より、そこで営業担当者が何を語れるかで、会社の実力差がはっきり出ると思っているからです。金利は誰にも止められませんが、金利のニュースをどう受け止めてもらうかは、会社側の準備次第で大きく変わるはずです。

金利のニュースは、いつもお客様より先に営業に届く
私は前職の東日本ハウス時代、茨城県南部の牛久市・竜ヶ崎市エリアの住宅展示場で営業をしていました。あの頃も、ゼロ金利解除やちょっとした利上げ観測のたびに、来場者の空気が変わったのを覚えています。
契約直前まで話が進んでいたご夫婦が、ある日突然「金利が上がるって聞いたんですけど、うちは大丈夫でしょうか」と、不安そうに聞いてきたことがありました。正直、その時点では私自身、詳しい試算を持っていたわけではありません。それでも「一緒に資金計画を見直しましょう」とその場で電卓を叩いたことで、お客様の表情が少し和らいだのを今でも覚えています。
あの頃を思い返すと、金利や景気のニュースが流れるたびに、展示場全体の空気がぴりっと張り詰める瞬間が何度もありました。営業マンの中には「今は時期が悪いから仕方ない」と諦め口調になる者もいれば、逆に「だからこそ今のうちに」とお客様の不安を煽るような話し方をする者もいました。どちらも、私はあまり好きではありませんでした。お客様が本当に知りたいのは、金利が上がるか下がるかの予想ではなく、「自分たちの暮らしは大丈夫か」という一点だったと思うからです。
金利そのものをコントロールすることは、工務店にも営業マンにもできません。しかし、金利が上がったというニュースが出た瞬間に「うちは大丈夫だろうか」と不安になったお客様に、どんな言葉をかけられるかは、会社が日頃どれだけ資金計画の勉強をしてきたかで決まります。私はこれを、金利そのものより重要な差だと確信しています。
変動か固定かを断定する必要はない、と思う
とはいえ、私は「これからは固定金利を勧めるべきだ」といった単純な結論に飛びつくべきではないとも思っています。
金融メディアのモゲチェックの分析によれば、変動金利が固定金利より不利になるには、日銀があと9回以上の追加利上げをする必要があるとされています。つまり、今の金利差のままであれば、変動金利を選ぶことが依然として合理的なケースも多いということです。一方で、賃金上昇や円安・原油高を背景に、日銀が0.25%刻みの利上げを続け、2027年頃には1.5〜2.0%程度まで政策金利が上がる可能性も指摘されています。

正解が一つに決まらないからこそ、工務店の営業担当者が「変動が得か固定が得か」を自信満々に断言してしまうのは、私はむしろ危ういと感じます。それよりも、お客様ごとの収入の伸びしろやライフプランに合わせて、複数のシナリオを一緒にシミュレーションできる体制を持っているかどうかが問われているのだと思います。
コミュニティビルダー協会の活動でも、加盟工務店の若手社員向けに資金計画の勉強会を企画することがあります。国産材の使い方や省エネ性能の話に比べると地味なテーマですが、実際に参加者からの反応が一番大きいのはこの資金計画の回だったりします。お客様の不安に直接応えられる知識だからこそ、現場の実感として響くのだと思います。
あなたの会社では、その日の言葉を準備していますか
金利上昇のニュースが流れた翌日、営業会議でその話題が出る会社は、まだ多くないのではないでしょうか。
私は工務店支援EXPOなどの講演で、地域工務店の経営者の方々とお話しする機会をいただいていますが、金利や資材価格といった外部環境の変化を、自社の資金計画の相談力を鍛える機会として捉えている会社は、驚くほど少ないという印象を持っています。多くは「景気の話だから仕方ない」と受け流してしまっている。
あなたの会社では、金利のニュースが流れた日に、営業担当者がお客様にかける言葉を、あらかじめ準備できているでしょうか。フラット35の最新の数字を、営業全員がすぐに答えられるでしょうか。資材価格の高騰と違って、金利は毎月の返済額という形で、お客様の生活に直接跳ね返ってくる数字です。だからこそ、他のどんな商品知識より優先して身につけておくべきだと、私は思っています。
数字より先に、安心を届けられる会社でありたい
金利は、これからも上がったり下がったりを繰り返すのだと思います。31年ぶりの水準というニュースの見出しに一喜一憂するよりも、その数字の裏で不安を感じているお客様一人ひとりに、どれだけ丁寧に向き合えるか。
私自身、牛久や竜ヶ崎の展示場で電卓を叩いていたあの頃から、この仕事の本質はあまり変わっていないと感じています。金利という数字を扱う仕事である前に、人の不安に向き合う仕事でありたい。そう思わせてくれるニュースでした。

