資料請求後の三日間で、契約の半分は決まっている

先日、ある工務店マーケティングのデータを見て、気になる数字がありました。来場予約一件を獲得するための広告費が、会社によって17,826円から39,687円まで差があり、契約一件あたりでは113,000円台から317,500円台まで開いているというものです(参考記事は末尾に記載)。この差を生んでいるのは、広告の出し方の巧拙ではないと私は思っています。資料請求が届いた後、最初の数日間に何をしているかの差だと考えています。

「送って終わり」になっていないか

コミュニティビルダー協会の活動を通じて、私は全国の工務店の集客施策を見せていただく機会が多くあります。広告やSNS運用には相当な予算と手間をかけているのに、資料請求が入った後の対応になると、驚くほど手薄になっている会社が少なくありません。資料を発送して、あとは来場予約が入るのを待つだけ、という状態です。

参考にした記事では、資料請求後のフォローがなければ反響は「放置」になると明確に指摘されていました。LINE公式アカウントで検討度合いにタグをつけて分類し、資料請求から三日後に動画を送り、見学会の前日にはリマインダーを送る。そうした設計をしている会社ほど、来場率に明確な差が出ているというのです。

私はこの「三日後」という具体的な指定に、実務の重みを感じます。資料請求をした瞬間が、顧客の検討熱量が最も高いタイミングです。そこから熱は急速に冷めていきます。三日という期間は、その熱が完全に冷め切る前の、最後に手を打てるタイミングなのだろうと思います。業界を外から支援する立場で多くの会社を見てきた実感として、この三日間を「待つだけの期間」にしている会社と、「仕掛ける期間」にしている会社の差は、広告費の差よりもよほど大きいと感じています。

同じ資料では、集客の流れを「認知拡大」「信頼構築」「来場誘導」という三つの段階に分けて説明していました。広告やSNSで知ってもらう段階、施工事例や動画で選ばれる理由を伝える段階、そして見学会への申込へつなげる段階です。多くの会社は最初の段階にばかり予算を投じ、最後の段階は営業の個人的な熱意に委ねてしまっています。資料請求という行動は、すでに「信頼構築」の入り口に立っている証拠です。その入り口で手を止めてしまうのは、広告予算の使い方として、非常にもったいないことだと私は思います。

仕組みが育てているのは、顧客ではなく処理件数かもしれない

ただ、ここで一つ、立ち止まって考えたいことがあります。

ステップ配信やタグによる顧客管理は、効率化という点では非常に優れた仕組みです。しかし、それだけに頼ってしまうと、資料請求をした側からすれば「システムに追いかけられている」という感覚を持たれてしまう危険もあると思います。

別の記事では、営業の現場で「追客は重労働だ」「どうせ定型文では返信が来ない」と諦めが広がっている実情が指摘されていました。これは裏を返せば、定型文を決められた日に送ることそのものが目的化してしまい、受け取った相手がどう感じるかまでは誰も見ていない、という状態に陥りやすいということでもあります。仕組みが整えば整うほど、かえって「件数をこなす」ことが目的にすり替わってしまう。これは私が業界の外から支援する立場で、いくつもの現場を見てきて感じる危うさです。

ナーチャリングという言葉は、本来「育てる」という意味です。育てるという行為には、手順だけでなく、相手の変化を見ながら手をかける姿勢が欠かせません。資料請求後の三日間に送るべきものは、動画一本という「正解」ではなく、その会社の誰かが、その家族の資料請求の背景に何を想像したか、という一言ではないかと私は思っています。システムは人の想像力を補助する道具であって、代わりに想像してくれるものではありません。

あなたの会社の「三日間」は、誰が担っていますか

あなたの会社では、資料請求が入った瞬間、誰が、何を見て、何を送っていますか。

もし「システムが自動で送ってくれるので大丈夫です」という答えしか出てこないとしたら、それは効率化ではなく、放置を仕組み化しているだけかもしれません。逆に、資料請求から三日間のどこかで、担当者が一言でも自分の言葉を添えている会社であれば、その会社の反響は、きっと広告費以上の価値を生んでいるはずです。

一度、直近の資料請求者のリストを見返してみてほしいと思います。発送した日から来場予約が入るまでの間に、会社から届いたメッセージは何件あったでしょうか。そのすべてが定型文だったとしたら、改善の余地は大いにあります。

逆に、来場予約に至らなかった方々のリストにも目を向けてみてください。資料請求という最初の一歩を踏み出してくれたにもかかわらず、その後何の接点も持てなかった方が、どれくらいいるでしょうか。その数は、広告費を無駄にした数とほぼ同じだと私は考えています。

仕組みと、一人ひとりへの想像力は両立できる

広告費をどれだけかけても、資料請求後の数日間が空白のままでは、その広告費は半分も生きてこないと私は思っています。来場予約単価や契約単価の差は、広告の良し悪しではなく、資料請求の先にある、目に見えない数日間にどれだけ気を配れているかの差なのではないでしょうか。

仕組みを整えることと、一人ひとりに向き合うことは、本来対立するものではないはずです。その両立を諦めない会社が、これからも選ばれていくのだろうと思っています。

この記事を書いた人

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浄法寺 亘

福島県 喜多方市出身。県立会津高校、市立高崎経済大学卒。工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。現在動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」。住宅情報サイト「ハウジングバザール」の運営にも携わっている。

1996年
東日本ハウス株式会社に入社

2009年
ジーレックスジャパン株式会社設立に加わる
住環境サイト『ハウジングバザール』運営担当

2016年
一般社団法人コミュニティビルダー協会理事就任
国産材利用とSDGsを応援 内閣府BEYOND2020認定団体 外務省SDGsマーク使用許可団体

講演履歴
住宅FC様研修・環境情報センター
工務店支援EXPO(於:東京ビックサイト)
鹿児島県庁「緑の工務店研修会」
ほか多数

著書:
頼みたくなる住宅営業になれる本
SDGsに取り組もう 建築業界編