動画は、上手より素の方が伝わると思う

工務店の集客施策を見ていて、最近ずっと気になっていることがあります。動画を「広告」として作り込む会社は増えたのに、動画を「証言」として使う会社は、まだ驚くほど少ないということです。ドローンで空撮した外観、BGM付きのイメージ映像。技術は確かに進歩しました。しかし、それを見た検討者の心が動いているかというと、正直、疑わしいと思っています。私は、工務店の動画活用において本当に効くのは、施主本人が自分の言葉で語る、多少不格好な証言動画の方だと確信しています。

牛久の展示場で、口頭でしか伝えられなかったもの

こう思うのには理由があります。前職のハウスメーカー時代、私は茨城県南部と千葉県の北部の住宅展示場を担当していました。来場されたお客様から必ず聞かれる質問がありました。「実際に建てた人は、どう言っているんですか」という一言です。

当時の私にできたのは、口頭で「先に建てられた方は、冬でも家全体が暖かいと喜んでいらっしゃいました」と伝えることだけでした。どれだけ具体的なエピソードを添えても、営業マンの口から語られた時点で、その言葉は半分、割り引いて聞かれてしまいます。当然です。売る側の人間が語る「お客様の声」ほど、疑ってかかられて当然のものはありません。

あの頃、施主ご本人の表情や声のトーンをそのまま見学者に届ける手段があれば、どれほど説得力が違っただろうかと、今でも思うことがあります。動画という技術は、まさにあの頃の営業マンが抱えていた「伝えきれないもどかしさ」を解消するために存在するのだと、私は捉えています。ある集客に関するコラムでも、OB顧客への訪問を動画やライブ配信として記録し、検討者に見せる取り組みが、信頼度の向上につながると紹介されていました。技術的なハードルが下がった今だからこそ、あの頃できなかったことが、当たり前にできる時代になっているのだと思います。

それでも、作り込みすぎた動画は逆効果になり得る

ただし、動画さえ作れば安心だとは、私は言い切りません。ここには反対側の危うさもあります。

証言動画のはずが、台本を読んでいるような口調になっていたり、カット編集で不自然につなぎ合わされていたりすると、見る側はかえって違和感を覚えます。「これは演出されたものだ」と一度感じさせてしまえば、口頭の紹介よりも信用を落とすことすらあると、私は思っています。作り込みが甘いより、作り込みすぎる方が危ない。これは、写真や文章の情報発信にはあまり当てはまらない、動画特有の落とし穴だと感じています。

コミュニティビルダー協会の活動で全国の工務店を訪ねると、施主インタビュー動画を撮影している会社にいくつも出会います。その中で、最も印象に残るのは、決して編集技術が高い動画ではありません。施主が言葉に詰まったり、笑いながら言い直したりする瞬間を、あえてそのまま残している動画です。不完全さこそが、証言としての信頼を生んでいるのだと、現場を見るたびに実感します。

以前、ある地方の工務店の社長から「うちも動画を作ったが、反応が薄かった」という相談を受けたことがあります。見せてもらった動画は、ナレーションが入り、BGMが流れ、施主の声はほんの数秒だけ差し込まれているような構成でした。情報量としては申し分ないのですが、そこに映っていたのは「会社が伝えたいこと」であって、「施主が伝えたいこと」ではなかったように、私には見えました。動画の長さや画質よりも、誰の言葉として語られているかの方が、よほど重要なのだと思います。

あなたの会社の動画は、誰の言葉で語られていますか

ここで、経営者の皆さんに一つ問いかけたいことがあります。自社の動画に登場して語っているのは、営業担当者でしょうか、それとも施主ご本人でしょうか。

もし前者が中心になっているなら、それは技術的には動画でも、性質としては従来のチラシや広告と何も変わりません。語り手が変わらなければ、媒体だけを新しくしても、検討者の受け取り方は大きくは変わらないはずです。逆に、施主ご本人が、多少つっかえながらでも自分の言葉で語っている動画が一本でもあるなら、それはどんな洗練された広告映像よりも強い資産になっていると思います。

完璧な映像より、一本の生の声を

動画制作の外注先を探す前に、まず自社のOB顧客に「少しだけ、家での暮らしぶりをカメラの前で話してもらえませんか」とお願いしてみることから始められないでしょうか。編集は最小限で構いません。むしろ、整えすぎないことの方が、今は難しく、そして価値のあることなのだと思います。

かつて展示場で、口頭でしか伝えられなかったお客様の声を、今なら本人の表情ごと届けられる。この技術を、広告としてではなく、証言として使う会社が一社でも増えてくれればと、願っています。

この記事を書いた人

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浄法寺 亘

福島県 喜多方市出身。県立会津高校、市立高崎経済大学卒。工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。現在動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」。住宅情報サイト「ハウジングバザール」の運営にも携わっている。

1996年
東日本ハウス株式会社に入社

2009年
ジーレックスジャパン株式会社設立に加わる
住環境サイト『ハウジングバザール』運営担当

2016年
一般社団法人コミュニティビルダー協会理事就任
国産材利用とSDGsを応援 内閣府BEYOND2020認定団体 外務省SDGsマーク使用許可団体

講演履歴
住宅FC様研修・環境情報センター
工務店支援EXPO(於:東京ビックサイト)
鹿児島県庁「緑の工務店研修会」
ほか多数

著書:
頼みたくなる住宅営業になれる本
SDGsに取り組もう 建築業界編