義務化の対象外の会社こそ、準備しておくべき理由
2025年4月から、東京都内で年間の供給延床面積が2万平方メートル以上の事業者を対象に、新築住宅への太陽光パネル設置が義務化されました。平均的な戸建て住宅に換算すると、年間300戸以上を供給する事業者が対象で、地域の中小工務店の多くは、この基準には直接当てはまりません。多くの工務店は「うちは対象外だから関係ない」と受け止めているのではないでしょうか。私はこのニュースを見て、義務化の対象外だからこそ、今のうちに準備しておくべきだと考えています。対象外であることは、免除されたことではなく、猶予をもらっているだけなのです。

制度の外にいることに、私は前職で安心しきっていました
こう思うのは、私自身の前職での経験があるからです。東日本ハウス時代、業界内で新しい基準や規制の話が出るたびに、「大手向けの話だから、うちにはまだ関係ない」という空気が社内にありました。実際、多くの制度は最初、大手ハウスメーカーを対象に始まり、その後、範囲が広がっていきます。当時の私たちは、その「広がるまでの時間」を、準備期間としてではなく、単なる猶予として消費してしまっていたように思います。制度が実際に自分たちにも及ぶ段階になって、初めて慌てて対応する。そんな場面を、私は何度も見てきました。
今回の太陽光パネル義務化も、対象は当面、大手事業者に限られています。しかし、大手が供給する新築住宅の標準仕様に太陽光発電が組み込まれていけば、お客様側の「新築には太陽光がついているものだ」という認識は、次第に広がっていくはずです。義務化の対象かどうかにかかわらず、お客様の期待値そのものが変わっていく。制度の外にいることに安心してしまうと、気づいたときには、お客様の期待に追いついていない会社になってしまいかねません。
前職時代、ある基準への対応が業界内で話題になり始めた頃、私たちの会社は半年以上、様子見の姿勢を崩しませんでした。結局、対応を始めたのは、他社が先にその基準を接客トークに使い始め、お客様から「あの会社はもう対応しているのに」と比較されるようになってからでした。後追いでの対応は、常に一歩遅れた印象を与えます。制度が自社に及ぶかどうかではなく、お客様の会話の中にその言葉が登場し始めた瞬間こそが、本当の対応開始のタイミングなのだと、今なら分かります。
とはいえ、慌てて導入すればいいわけでもありません
一方で、対象外の会社が慌てて太陽光パネルの標準搭載に踏み切ればいいというわけでもありません。4kWの設置費用は補助金を活用しても数十万円の自己負担が発生し、回収には数年かかります。地域の気候や屋根の形状によっては、投資に見合う発電量が得られない場合もあります。制度に背中を押されるまま導入を急げば、かえってお客様に無理な負担を強いることになりかねません。
大切なのは、太陽光パネルという設備そのものを急いで導入することではなく、お客様への説明力を今のうちに整えておくことだと思います。私はコミュニティビルダー協会の活動を通じて、太陽光パネルを標準搭載にはしていないものの、設置した場合のシミュレーションを誰でもすぐに提示できるよう準備している工務店の話を聞いたことがあります。導入するかどうかはお客様が決めることですが、その判断材料をいつでも渡せる状態にしておく。この準備があるかないかで、お客様が受ける印象はまったく変わってきます。制度の対象になってから慌てて勉強を始めるのではなく、対象外の今のうちに、説明できる体制を整えておく。それが、猶予期間の正しい使い方なのだと思います。

あなたの会社は、太陽光の質問にすぐ答えられますか
あなたの会社では、お客様から「太陽光パネルはつけられますか、費用はどれくらいですか」と聞かれたとき、営業担当がその場ですぐに答えられるでしょうか。もし答えに詰まってしまう場面があるとしたら、一度、設置費用や補助金、回収年数の目安をまとめた資料を、営業担当全員が持てるようにしておくことをお勧めします。
義務化の対象になってから準備するのではなく、対象外の今のうちに、いつでも説明できる状態を作っておくことが、これからの数年の差になっていくはずです。月に一度、営業担当同士で「最近お客様から聞かれた、答えに詰まった質問」を共有する時間を作るだけでも、備えるべき優先順位が自然と見えてくるはずです。
猶予期間を、準備期間に変えたい
制度の対象外であることに安心してしまうと、変化に気づいたときにはすでに遅れをとっていることがあります。太陽光パネルの義務化は、今はまだ一部の大手事業者だけの話かもしれません。しかし、その先にあるお客様の意識の変化は、規模の大小にかかわらず、すべての工務店に及んでいくはずです。
かつて「うちにはまだ関係ない」と思い込んでいた自分を思い出すと、猶予期間をただの猶予として使ってしまうことの怖さを、今はよく分かります。制度の外にいる今だからこそ、静かに準備を進めておきたいと思っています。
対象になってから動く会社と、対象外のうちから備えておく会社。その差は今はまだ見えなくても、数年後には、お客様との会話の端々にはっきりと表れてくるはずです。
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