「うちでは中古もアリですよ」と言える会社でありたい

新築を希望する人の割合が、2003年の75.1%から2023年には43.2%まで下がっている一方、中古住宅を希望する人の割合は2.7%から23.7%まで増えているという統計を見ました。中古戸建の成約件数は21か月連続で前年を上回っているのに対し、新築住宅の着工は30か月以上マイナスが続いているそうです。多くの工務店にとって、これは単なる逆風のニュースに聞こえるかもしれません。ただ私は、この統計を見て、新築しか提案できない工務店から、新築と中古の両方を公平に提案できる工務店への転換こそが、これからの生き残り方の一つになると確信しています。

「中古は他社の仕事」だと思い込んでいました

こう思うのは、私自身の前職での経験があるからです。東日本ハウス時代、茨城県南部の展示場で働いていた頃、私にとって「家を建てる」という選択肢は、常に新築一択でした。お客様が「実は中古のリノベーションも考えている」と口にしようものなら、内心では「うちの見込み客ではないのかもしれない」と、少し身構えてしまっていたことを覚えています。新築を売ることが自分の仕事であり、中古やリフォームは、いわば別の業界の仕事だと、無意識に線を引いていたのだと思います。

しかし今回の統計が示しているのは、お客様の側では、その線引きがすでに薄れているという現実です。新築価格が一、二割上昇し、金利上昇による返済負担も増える中で、リフォームやリノベーションで新築同等の性能を実現できるという理解が広がっています。住宅よりも家族との時間や趣味にお金をかけたいという価値観の変化もあるといいます。お客様は、新築か中古かという手段そのものより、自分たちの暮らしに何が合っているかを、もっと柔軟に考えるようになっているのです。私が現役だった頃の「新築が正解」という前提そのものが、今は成り立たなくなりつつあるのだと感じます。

あるとき、中古のリノベーションを検討していると打ち明けてくれたお客様に、私は当時、他社のリフォーム会社の連絡先を紹介することもせず、話を早々に切り上げてしまったことがあります。今思えば、あれはお客様を見送ったのではなく、自分から可能性を手放した瞬間だったのだと思います。その方がその後どんな選択をしたのか、私は知りません。ただ、もう少し親身に話を聞いていれば、いずれ新築の相談で戻ってきてくれたかもしれないと、今でも時々考えます。

とはいえ、新築の価値がなくなったわけではありません

一方で、新築という選択肢の価値そのものが失われたとも思いません。断熱性能や耐震性能を最初から自由に設計できること、将来のメンテナンスコストを見通しやすいことなど、新築にしかない安心感は今も健在です。中古住宅の人気が高まっているからといって、工務店が新築の提案をやめる必要はまったくありません。

大切なのは、お客様が新築を望んでいるのか、中古やリノベーションを望んでいるのかを、こちらの都合で決めつけないことだと思います。私はコミュニティビルダー協会の活動を通じて、あえて自社でリフォーム相談の窓口を持ち、中古物件の見学に営業担当が同行する体制を作っている工務店の話を聞いたことがあります。その会社では、最終的に新築を選ばなかったお客様からも、後に知人を紹介してもらえるケースが増えたそうです。売れるかどうかではなく、お客様の選択に寄り添えるかどうかが、結果的に会社の評判につながっていく。新築と中古を対立させるのではなく、お客様の暮らしの選択肢として、両方を同じ目線で扱えるかどうかが問われているのだと思います。

あなたの会社は、中古を検討するお客様にどう向き合っていますか

あなたの会社では、来場されたお客様が「実は中古も考えている」と口にしたとき、営業担当はどんな反応をしているでしょうか。もし少しでも身構えてしまう空気があるなら、一度、社内で「中古を検討しているお客様への対応方針」を、あらためて言葉にしてみることをお勧めします。

自社でリフォームまで手掛けられなくても、信頼できる提携先を紹介できる体制を整えておくだけで、お客様との関係が途切れずに続くことがあります。紹介した後も、その方が実際にどんな選択をしたのかを、時々気にかけてみることも大切だと思います。関係を切らずにいれば、数年後に新築の相談で戻ってきてくれることも、決して珍しくありません。

選択肢を狭めない会社が、選ばれ続ける

新築住宅の着工が減っているという数字だけを見れば、工務店にとって厳しい時代に見えるかもしれません。しかし、お客様の暮らしの選択肢そのものが多様化しているのだと捉え直せば、そこには新しい向き合い方があるはずです。

かつて中古を「他社の仕事」だと線引きしていた自分を思い出すと、あの頃の視野の狭さを、今は少し恥ずかしく感じます。お客様の選択を狭めるのではなく、広げる会社でありたい。今はそう思っています。

新築か中古かを決めるのは、会社ではなく、あくまでお客様自身です。その決断に、こちらの都合で線を引かずにいられるかどうか。それが、これからの工務店に問われている姿勢なのだと思います。

この記事を書いた人

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浄法寺 亘

福島県 喜多方市出身。県立会津高校、市立高崎経済大学卒。工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。現在動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」。住宅情報サイト「ハウジングバザール」の運営にも携わっている。

1996年
東日本ハウス株式会社に入社

2009年
ジーレックスジャパン株式会社設立に加わる
住環境サイト『ハウジングバザール』運営担当

2016年
一般社団法人コミュニティビルダー協会理事就任
国産材利用とSDGsを応援 内閣府BEYOND2020認定団体 外務省SDGsマーク使用許可団体

講演履歴
住宅FC様研修・環境情報センター
工務店支援EXPO(於:東京ビックサイト)
鹿児島県庁「緑の工務店研修会」
ほか多数

著書:
頼みたくなる住宅営業になれる本
SDGsに取り組もう 建築業界編