リフォームは新築の片手間で終わらせてはいけない
最近、住宅リフォーム市場に関する数字を追っていて、はっきりと思うことがあります。地域の工務店にとってリフォームは、もう「新築が減った時の穴埋め」ではなく、経営の柱そのものに据えるべき領域になっているのではないか。正直に言うと、私はここ数年、この考えをかなり強めています。人手も予算も限られる会社ほど、リフォームを「本業の隙間でやる副業」のまま放置してしまいがちですが、それでは数年後に取り返しのつかない差になってしまうと感じています。先日、講演先で会った、ある工務店の社長は「新築の合間にリフォームを見ている状態なので、いつも後手に回ってしまう」とぽつりとこぼしていました。この一言に、業界全体が抱える課題が凝縮されているように思います。

「片手間」だった時代を思い出す
私が東日本ハウスに入社した1996年当時、茨城県南部の牛久市・竜ヶ崎市エリアの住宅展示場に立っていました。あの頃、展示場に来るお客様の目的は九割方「新築」で、リフォームの相談が来ても専任の担当はおらず、新築営業が片手間で引き受けるのが当たり前でした。見積書のフォーマットすら新築用を流用していたくらいです。ご近所で古い実家を相続した、というような相談が来ても、こちらの頭は新築の商談のことでいっぱいで、正直なところ丁寧に向き合えていなかったと思います。
今振り返ると、あの片手間の対応の中に、すでに市場の変化の芽があったのだと思います。2000年前後に建てられた質の良い住宅が中古市場に出回り始め、「新築にこだわらない」「予算的に手頃で、リフォームすれば十分快適に住める」というお客様が少しずつ増えていました。工務店のミカタが公開している集客手法の解説記事でも、こうした層の広がりと、国土交通省の住宅市場動向調査で裏づけられる傾向として、新築一辺倒ではない住まい選びの流れが紹介されています。
当時の私たちは、その芽を経営の中心には据えていませんでした。新築の受注がある限り、リフォームは「ついで」で回っていたからです。展示場の裏で、リフォームの見積もりが後回しになって施主を待たせてしまう場面を、何度も見てきました。この経験があるからこそ、今の工務店経営者には、片手間の対応で終わらせてほしくないと強く思うのです。

数字を一枚岩で見てはいけない
ただし、ここで単純に「リフォームは儲かるから人を増やそう」と考えるのは早計だとも思っています。
矢野経済研究所などの調査によれば、2024年の住宅リフォーム工事そのものの市場規模は前年比でわずかに縮小しています。一方で、家具や家電といった周辺消費まで含めた広い意味でのリフォーム関連市場は8年連続で拡大を続け、8兆円台に達しているといいます。
つまり伸びているのは「工事」そのものの単価ではなく、「暮らし全体への投資」の裾野なのだと私は理解しています。工事の受注件数や単価だけを見てリフォーム参入を決めると、期待したほど利益が積み上がらないという事態も十分あり得る。数字は追い風のように見えて、実は追い風が吹いている場所が微妙にずれている。ここを取り違えないことが、参入判断の分かれ目になると考えています。
新築の受注が落ち込んだ穴を、そのままリフォームの工事件数で埋めようとする発想では、遠からず息切れするはずです。むしろ、水回りの交換一つを取っても、そこに新しい暮らし方の提案や、施主が長く愛着を持てる素材選びを添えられるかどうかで、単価も満足度もまったく違ってくる。件数を追うのではなく、一件一件の中身をどう厚くするかに知恵を絞るべき局面に来ていると、私は感じています。
あなたの会社の新築の提案力は、リフォームの現場で活きていますか
新築を主戦場にしてきた工務店には、間取りの提案力、素材選びの目利き、施主の暮らし方に寄り添う伴走型の接客という、積み上げてきた強みがあるはずです。私はコミュニティビルダー協会の活動を通じて、国産材や地域資源を活かした家づくりを応援していますが、この考え方はリフォームの現場でこそ活きると感じています。既存の住宅に、新築で培った素材の目利きや暮らしの提案を持ち込めば、単なる「直す工事」が「暮らしを新しくする工事」に変わるからです。
あなたの会社では、新築チームが培った提案力を、リフォームの現場にきちんと橋渡しできているでしょうか。専任の窓口はあるでしょうか。見積もりや相談の優先順位が、いつも新築の後回しになってはいないでしょうか。それとも、まだあの頃の私たちのように、片手間の延長で対応してはいないでしょうか。
かつて松下幸之助が「商売とは、感動を与えることである」といった趣旨の言葉を残していますが、リフォームほど、その感動の余地が大きい仕事はないと思っています。何十年も前に建てた家に、今の暮らしの知恵を持ち込んで生まれ変わらせる。これは新築とは違う種類の、けれど確かにその会社の実力が問われる仕事です。
リフォームは、新築が細った時の避難先ではありません。地域に建ててきた家々への責任を、もう一度形にする仕事だと思っています。数字に踊らされず、けれど数字から目を逸らさず、その仕事に本腰を入れる工務店が一社でも増えてほしいと願っています。
