その木材の「パスポート」を、お客様に見せられますか

森林認証制度について調べていて、日本国内で発足したSGEC認証が、2016年に国際的なPEFC認証と相互承認され、認証森林面積が国内で約220万ヘクタールにまで広がっていることを知りました。世界規模で見れば、PEFC認証だけでも約2億9,722万ヘクタールが認証を受けているといい、その広がりの大きさに驚かされます。世界的にはFSC認証やPEFC認証が広く知られていますが、どの制度も、適切に管理された森林から木材が伐り出されていることを、伐採から加工、流通に至るまでの各段階で証明する仕組みです。私はこの制度を知って、国産材を使うと一言で言っても、その木材がどこから来て、どう管理された森で育ったのかまで語れるかどうかで、お客様への説得力はまったく違ってくるのではないかと感じています。「国産材だから安心」という言葉だけで終わらせず、その先まで語れる会社でありたいと思うのです。

「どこの木か」を、深く聞かれたことがありませんでした

こう思うのは、私自身の実感からです。コミュニティビルダー協会の活動で国産材利用を勧める講演をしていても、木材の産地や樹種について語ることはあっても、その森がどう管理されているかという「育ち方の証明」にまで踏み込んで話す機会は、正直、あまりありませんでした。お客様の側からも、「どこの木ですか」とは聞かれても、「その森はどう管理されているんですか」とまで聞かれることは、これまでほとんどなかったように思います。

しかし、食品の世界ではすでに、産地や生産者の顔が見える形での販売が当たり前になってきています。住宅の木材についても、同じように「育ち方の証明」を求める時代が、いずれ来るのではないかと思います。森林認証は、まさにその証明そのものです。認証森林面積が着実に広がっているという事実は、供給側の準備が整いつつあることを意味しています。あとは、私たち住宅業界の側が、その価値をお客様にどう伝えるかという、伝え方の準備が追いついていないだけなのかもしれません。

以前、講演の後に「その木はどこの山から来たんですか」と質問を受けたことがあります。私は産地の県名までは答えられましたが、その森がどんな管理をされているかまでは、正直、詳しく説明できませんでした。あのとき感じた小さな悔しさが、今回この制度をあらためて調べ直すきっかけになっています。

とはいえ、認証マークを見せるだけでは伝わりません

一方で、森林認証のロゴマークを資料に載せるだけで、お客様に価値が伝わるとも思いません。マークの意味を知らないお客様にとって、それは単なる小さなアイコンの一つにしか見えないはずです。大切なのは、マークそのものではなく、その背景にあるストーリーを、自分の言葉で語れるかどうかだと思います。認証を取得していること自体を誇るより、なぜその森を選んだのかという、自社の判断の理由を語れることの方が、お客様の信頼にはつながるのではないでしょうか。

私はコミュニティビルダー協会の活動を通じて、契約前の打ち合わせで、認証を受けた森の写真と、そこで働く林業関係者の姿を、お客様に見せている工務店の話を聞いたことがあります。「この写真の森から、あなたの家の柱になる木が来ています」という一言は、認証マークの説明よりも、はるかにお客様の記憶に残るといいます。証明書としての認証と、物語としての森。この両方を持って初めて、国産材という選択肢に厚みが生まれるのだと思います。写真を見せられたお客様の中には、実際にその森を訪ねてみたいと言い出す方もいるそうです。

あなたの会社は、木材の「育ち方」を語れますか

あなたの会社では、使用している木材が、どの地域の、どんな森から来ているのかを、営業担当全員がすぐに答えられるでしょうか。もし答えに詰まる場面があるとしたら、一度、仕入れ先の森について、写真や資料を集めてみることをお勧めします。

森林認証を取得した木材を扱っているなら、その事実だけで終わらせず、認証がどんな意味を持つのかを、一枚の資料にまとめておくと良いと思います。資料は難しい専門用語を並べるより、写真を中心にした、目で見て伝わるものにする方が、お客様には響きやすいはずです。

木材にも、来歴を語る時代が来ています

森林認証という制度は、まだ多くのお客様にとって、なじみの薄いものかもしれません。しかし、食のトレーサビリティが当たり前になったように、住宅の木材にも、いずれ「来歴」を語ることが求められる時代が来るのではないかと、私は思っています。今のうちから準備しておく会社と、求められてから慌てて調べる会社とでは、語りの深みに大きな差が出るはずです。

「どこの木ですか」という質問に、産地だけでなく、その森がどう守られているかまで答えられる会社でありたい。国産材を扱う一人として、そう強く感じています。

あの日、答えに詰まった私を見て、質問してくれたお客様は少し残念そうな顔をしていました。次に同じ質問をされたときには、胸を張って森の物語まで語れるように、これからも学び続けたいと思っています。

この記事を書いた人

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浄法寺 亘

福島県 喜多方市出身。県立会津高校、市立高崎経済大学卒。工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。現在動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」。住宅情報サイト「ハウジングバザール」の運営にも携わっている。

1996年
東日本ハウス株式会社に入社

2009年
ジーレックスジャパン株式会社設立に加わる
住環境サイト『ハウジングバザール』運営担当

2016年
一般社団法人コミュニティビルダー協会理事就任
国産材利用とSDGsを応援 内閣府BEYOND2020認定団体 外務省SDGsマーク使用許可団体

講演履歴
住宅FC様研修・環境情報センター
工務店支援EXPO(於:東京ビックサイト)
鹿児島県庁「緑の工務店研修会」
ほか多数

著書:
頼みたくなる住宅営業になれる本
SDGsに取り組もう 建築業界編