「時期が悪かった」と言った瞬間に、次の一手が止まってしまう

工務店支援のコラムで、集客不振を「時期が悪かった」という外部要因のせいにした瞬間、マーケティング戦略の検証が止まってしまう、という指摘を読みました。金利や人口動態、他社の動きといった外部要因そのものは確かに存在するけれど、それを言い訳にしてPDCAを止めてしまうのは避けるべきだ、という内容です。私はこの指摘に、強くうなずきました。「時期が悪い」という言葉は、原因を説明しているようでいて、実は思考をそこで止めてしまう魔法の言葉なのだと、私は考えています。

「今期は仕方ない」と言い続けた、あの数か月

こう思うのは、私自身にも身に覚えがあるからです。前職の東日本ハウス時代、茨城県南部の牛久市や竜ヶ崎市のエリアで営業をしていた頃、ある時期、来場も契約もめっきり落ち込んだ数か月がありました。当時の私たちの合言葉は「今期は仕方ない」でした。金利のニュース、近隣に新しくできた競合の展示場、季節的な要因。理由はいくらでも見つかりました。会議の場でも、誰かがそうした外部要因を口にすると、それ以上の議論は続きませんでした。原因が外にあるのなら、こちら側でできることは何もない、という空気が自然とできあがっていたのです。

ところが同じ時期、別のエリアを担当していた同僚は、まったく違う動き方をしていました。彼は「今期は仕方ない」とは一度も言わず、代わりに「先月と比べて、初回接客での反応が変わった部分はどこか」を一つずつ洗い出していました。パンフレットの説明順を入れ替えてみる、資金計画の話をする順番を早めてみる。派手な施策ではなく、地味な微調整の連続でした。数か月後、彼のエリアだけが契約数を戻していたとき、私は初めて、外部環境が同じでも、検証を続けたかどうかで結果が変わるのだという当たり前の事実に気づかされました。

当時の私は、その差の正体をしばらく理解できませんでした。同じ会社、同じ研修を受け、同じ商品を扱っているのに、なぜ彼のエリアだけ数字が戻るのか。後になって気づいたのは、彼が毎週の振り返りで使っていた言葉が、私たちとまったく違っていたということです。私たちが「今週も来場が少なかった、時期が悪いから仕方ない」と締めくくっていたのに対し、彼は「今週は接客のこの部分を変えてみた、来週はここを試す」と締めくくっていました。同じ会議の同じ時間を使いながら、片方は原因を外に置き、もう片方は次の一手を内に探していたのです。

それでも、外部要因を無視していいとは思いません

一方で、外部要因を一切無視して「すべては自社の努力次第」と言い切るつもりもありません。人口減少や金利上昇といった構造的な変化は、個々の工務店の努力だけでは覆せない現実です。それを「言い訳」と切り捨ててしまうと、今度は現場が疲弊してしまいます。大切なのは、外部要因の存在を認めた上で、それでも自社が変えられる部分はどこかを探し続ける姿勢だと思うのです。

私はコミュニティビルダー協会の活動を通じて、決して恵まれた市場環境ではない地域でも、小さな工夫を積み重ねて集客を維持している工務店をいくつも見てきました。共通しているのは、外部要因を語る時間よりも、先月と今月で何を変えたかを語る時間の方が長い、という点です。派手な逆転劇ではなく、地味な積み重ねの結果として、数字が少しずつ戻っていく。そうした現場に出会うたびに、あのとき「今期は仕方ない」で思考を止めていた自分を思い出します。

あなたの会社は、先月と今月で何を変えましたか

あなたの会社では、集客が振るわない理由を「時期のせい」で片付けてしまっていないでしょうか。もしそうだとしたら、一度、月次の会議の議題を少しだけ変えてみることをお勧めします。「今月の来場・契約数」を報告する前に、「先月から何を一つ変えたか」を全員が一言ずつ発表する時間を、5分だけ設けてみるのです。

変えたことが小さくても構いません。「初回接客のトークの順番を変えた」「見学会の案内メールの送信タイミングを変えた」、その程度で十分です。大切なのは、変化を言葉にする習慣そのものです。この習慣がある会社とない会社では、半年後、同じ市場環境の中でも、確実に差がついてくると私は思っています。

もし発表することが特に何もない月があったら、それ自体を問題として扱ってみてください。「今月は何も変えなかった」という事実に気づけること自体が、実は一番の収穫です。変化がなかった月が続いているとしたら、それは市場のせいというより、検証のサイクルそのものが止まっているサインかもしれません。

言い訳にする前に、変えられることを一つ探す

「時期が悪かった」という言葉自体が悪いわけではありません。問題は、その言葉を口にした後、思考が止まってしまうかどうかです。市場環境は誰にとっても平等に厳しくなっていきます。だからこそ、外部要因を語り終えた後にもう一言、「では、何を変えるか」まで続けられる会社でありたいと、私は思っています。

かつて「今期は仕方ない」と言い続けていた自分に、もし今声をかけられるなら、こう言いたいです。仕方なくても、変えられることは必ず一つある、と。

この記事を書いた人

プロフィール画像

浄法寺 亘

福島県 喜多方市出身。県立会津高校、市立高崎経済大学卒。工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。現在動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」。住宅情報サイト「ハウジングバザール」の運営にも携わっている。

1996年
東日本ハウス株式会社に入社

2009年
ジーレックスジャパン株式会社設立に加わる
住環境サイト『ハウジングバザール』運営担当

2016年
一般社団法人コミュニティビルダー協会理事就任
国産材利用とSDGsを応援 内閣府BEYOND2020認定団体 外務省SDGsマーク使用許可団体

講演履歴
住宅FC様研修・環境情報センター
工務店支援EXPO(於:東京ビックサイト)
鹿児島県庁「緑の工務店研修会」
ほか多数

著書:
頼みたくなる住宅営業になれる本
SDGsに取り組もう 建築業界編