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業務を効率化!工務店が活用すべきアウトソーシングの範囲

公開日: : 工務店 経営

工務店経営者の皆様、日々の業務に追われ、「もっと効率的に事業を回したい」「人手不足を解消したい」と頭を悩ませていませんか? 変化の激しい現代において、限られたリソースで最大限の成果を出すためには、経営効率の向上が不可欠です。しかし、専門性の高い工務店の業務を一手に引き受けることは容易ではありません。

そこで注目すべきなのが、戦略的なアウトソーシングの活用です。単なる仕事の外注ではなく、貴社のコア業務に集中し、より付加価値の高い仕事を生み出すための有効な手段となります。漠然と「アウトソーシングがいいらしい」と考えていても、「具体的にどの業務を任せられるのか」「どんな効果があるのか」「失敗しないためにはどうすれば良いのか」といった疑問を抱えている方も多いでしょう。

この記事では、工務店経営者の皆様が「どの業務を」「どのように」アウトソーシングすれば、最も効果的に経営効率を改善し、持続的な成長を実現できるのか、その具体的な範囲と実践的な手順を徹底解説します。貴社の業務最適化に向けた明確なロードマップを描き、時間と工数を捻出することで、顧客満足度と収益力の向上に繋がる具体的な行動指針を発見できるはずです。読み進めるにつれて、貴社の未来の姿がより鮮明に見えてくるでしょう。

アウトソーシングの「実践的」導入戦略:基礎から応用まで

工務店が持続的に成長し、激化する競争を勝ち抜くためには、限られた人的・時間的リソースを最大限に活用し、経営効率を高めることが喫緊の課題です。その解決策の一つとして、アウトソーシングが近年ますます注目されています。まずは、なぜ今、工務店がアウトソーシングを真剣に検討すべきなのか、その本質的な理由と、導入に向けた具体的な第一歩を解説します。

工務店がアウトソーシングを検討すべき本質的な理由

工務店を取り巻く環境は、常に変化しています。人手不足の深刻化、働き方改革への対応、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進、そして顧客ニーズの多様化など、対応すべき領域は多岐にわたります。これら全ての業務を自社内で完結させようとすると、特定の業務にリソースが偏ったり、社員が本来の専門業務に集中できなくなったりする課題が生じがちです。

アウトソーシングを導入することは、単に人手を補うだけでなく、以下のような本質的なメリットをもたらし、結果として経営効率の向上に直結します。

  • 人手不足の解消と採用コストの削減: 経験豊富な人材の確保が困難な工務店において、外部の専門スキルを活用することで、採用活動にかかる時間とコストを削減しつつ、必要な時に必要なリソースを確保できます。
  • 専門性の補完と業務品質の向上: 経理、法務、IT、Webマーケティングなど、自社に専門性の高い人材が不足している分野でも、外部のプロフェッショナルに委託することで、業務品質を向上できます。これにより、顧客からの信頼獲得にも繋がります。
  • コア業務への集中と生産性向上: 日常的な雑務やノンコア業務を外部に委託することで、社員は設計、施工管理、顧客対応といった本来のコア業務に集中できます。これにより、社員一人あたりの生産性が向上し、事業全体の経営効率が高まります。
  • 固定費の変動費化とコスト削減: 人件費などの固定費を、必要な時だけ発生する変動費に切り替えることで、経営の柔軟性が増し、無駄なコストを削減できます。専門業者に委託することで、結果的に自社で人材を雇用するよりもコストを抑えられるケースも少なくありません。
  • 経営リスクの分散と事業継続性の確保: 特定の業務が属人化している場合、その担当者が不在になると業務が滞るリスクがあります。アウトソーシングにより、外部に業務を分散することで、そのようなリスクを軽減し、事業継続性を高めることができます。

アウトソーシングの種類と工務店向け業務の例

アウトソーシングには、その対象業務によって様々な種類があります。工務店が検討すべき主なアウトソーシングの種類と、具体的な業務例を見ていきましょう。

  • ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO): 経理、人事、総務、コールセンターなど、特定の業務プロセス全体を外部に委託する形態です。工務店では、日常的なバックオフィス業務がこれに該当します。
  • ITアウトソーシング: システム開発、ネットワーク管理、Webサイト運用・保守、CADシステムの管理など、情報技術に関する業務を外部に委託します。
  • 人材アウトソーシング: 専門性の高い設計士、積算士、現場管理者などを、一時的またはプロジェクト単位で派遣してもらう形態です。

工務店において、特にアウトソーシングが検討されやすい業務としては、以下のようなものが挙げられます。

  • バックオフィス業務: 経理(仕訳、請求書作成、入出金管理)、労務(給与計算、社会保険手続き)、総務(備品管理、文書作成)など。
  • 設計・積算業務: 図面作成(CADオペレーション)、パース作成、積算業務、プレゼン資料作成など。
  • マーケティング・広報業務: Webサイト制作・更新、SNS運用、ブログ記事作成、広告運用、ブランディング支援など。
  • 現場管理サポート業務: 書類作成、写真撮影・整理、近隣対応の一部、定例会議の議事録作成など、現場監督の補助業務。
  • IT関連業務: 社内ネットワーク管理、PCトラブル対応、セキュリティ対策、業務システム導入・運用サポートなど。

アウトソーシング導入の第一歩:自社の現状業務棚卸し

アウトソーシングを成功させるためには、闇雲に外部に業務を委託するのではなく、自社の現状を正確に把握し、戦略的に計画を立てることが不可欠です。導入の第一歩として、以下のステップで業務の棚卸しを行いましょう。

1. 業務の洗い出しと可視化

まずは、自社で行っている全ての業務を洗い出し、リストアップすることから始めます。社員それぞれの担当業務だけでなく、経営者自身が行っている細かな業務も含め、漏れなく書き出しましょう。業務フローを図にすることで、誰が、いつ、どこで、何を、どのように行っているのかが明確になります。

2. 各業務の重要度・頻度・専門性・属人化度を評価

洗い出した業務それぞれに対し、以下の視点で評価を行います。

  • 重要度: その業務が事業の根幹にどれだけ関わるか(高・中・低)
  • 頻度: どのくらいの頻度で発生するか(毎日、週に数回、月に一度、不定期など)
  • 専門性: その業務を遂行するのに、どの程度の専門知識やスキルが必要か(高・中・低)
  • 属人化度: 特定の社員しか行えない業務か、誰でも行える業務か(高・中・低)
  • 時間消費度: その業務にどれくらいの時間を費やしているか(具体的な時間)

3. 「非コア業務」の特定と切り出し基準

上記評価に基づき、「非コア業務」、つまりアウトソーシングに適した業務を特定します。一般的に、以下の基準に該当する業務から優先的に検討しましょう。

  • 専門性が高く、かつ定常的に発生するが、自社にノウハウや人材がない業務: 例として、複雑な経理業務やWebマーケティングなど。外部の専門家に任せることで、高い品質と効率が期待できます。
  • 日々発生するものの、利益に直結しにくい雑務: 例として、備品管理、簡単な書類作成、電話対応の一部など。これらの業務に社員の時間が奪われることで、本来行うべきコア業務がおろそかになる可能性があります。
  • 繁閑の波が大きく、一時的に業務量が急増する業務: 例として、繁忙期の積算業務や設計補助など。固定人員を抱えるリスクを回避し、必要な時に必要なリソースを確保できます。
  • 属人化しており、後任育成に時間がかかる業務: 業務マニュアル化を進め、外部委託を検討することで、属人化リスクを軽減できます。

Q&A:アウトソーシングはどこから手をつければいい?

まずは、月間または年間でかなりの時間を費やしているものの、直接的な売上や顧客満足度向上に繋がりにくい「ルーティン業務」から検討しましょう。特に、専門的な知識は必要だが、自社にその人材がいない業務(例:Webサイト管理や特定の経理業務)は、アウトソーシングの効果を実感しやすいです。また、“もしこの業務がなくなれば、社員がもっと重要な仕事に集中できるのに” と感じる業務から着手すると良いでしょう。

経営効率×アウトソーシング:成果を最大化する具体的な取り組み

前章でアウトソーシングの導入の考え方と業務の棚卸しについて解説しました。この章では、工務店が具体的にどのような業務をアウトソーシングすべきか、その具体的な範囲と、経営効率を最大化するための実践的な取り組み、そしてパートナー選定のポイントについて深掘りしていきます。

工務店が積極的にアウトソーシングすべき業務の具体例と効果

1. 経理・労務業務

  • 対象業務例: 日々の仕訳、請求書発行、入出金管理、給与計算、社会保険手続き、年末調整、月次・年次決算業務など。
  • アウトソーシングの効果:
    • 専門性向上と法改正対応: 税理士事務所や社会労務士事務所に委託することで、高度な専門知識を活用できます。複雑な法改正にも迅速に対応でき、コンプライアンスリスクを軽減します。
    • コア業務への集中: 経営者や経理担当者が煩雑な事務作業から解放され、営業戦略の立案や現場管理など、本来注力すべきコア業務に時間を充てることができ、経営効率が飛躍的に向上します。
    • コスト削減: 経理・労務担当者を正社員として雇用する場合の人件費(給与、福利厚生費など)と比較して、アウトソーシングの方がコストを抑えられる可能性があります。
    • 透明性の確保: 専門家によるチェックが入ることで、経理処理の正確性が増し、会計の透明性が確保されます。

2. 設計・積算業務

  • 対象業務例: CADによる基本設計図・実施設計図の作成、パース・CG作成、構造計算の補助、積算(材料費・工賃の算出)、プレゼン資料作成など。
  • アウトソーシングの効果:
    • 繁忙期の対応力強化: 住宅着工の波や大型案件の受注により設計・積算業務が一時的に急増する場合でも、外部リソースを活用することで、納期遅延を防ぎ、機会損失を避けられます。
    • 専門家活用による品質向上: 特殊な設計(例:省エネ住宅、高耐久住宅)や高度なCGパースが必要な場合、専門スキルを持つ外部の設計事務所やフリーランスに依頼することで、自社内で対応するよりも高品質な成果物を提供できます。
    • コスト削減: 高度なCADソフトウェアや積算ソフトの導入コスト、専門人材の育成コストをかけずに、必要な時だけ専門サービスを利用できます。
    • 多様なデザイン提案: 外部の設計士との連携により、自社にはない新たなデザインやアイデアを取り入れ、顧客への提案力を強化できます。

3. Webサイト運用・マーケティング業務

  • 対象業務例: Webサイトの制作・リニューアル、コンテンツ企画・記事作成(ブログ、施工事例)、SNSアカウント運用、SEO対策、Web広告運用、顧客データ分析、広報戦略立案など。
  • アウトソーシングの効果:
    • 集客力・ブランディング強化: 専門のWeb制作会社やマーケティング会社は、最新のSEOトレンドやユーザー動向を熟知しており、効果的な集客施策を実行できます。これにより、見込み顧客の獲得から問い合わせ、成約へと繋がる流れがスムーズになり、経営効率の高い集客が可能になります。
    • 専門知識不要: Webマーケティングは専門性が高く、常に情報がアップデートされる分野です。自社で全てをキャッチアップし、実践するには膨大な時間と労力がかかります。外部に委託することで、これらの負担から解放されます。
    • 費用対効果の明確化: 広告運用などでは、目標設定に基づいた効果測定が可能であり、数値を見ながら改善を繰り返すことで、投資対効果を高めることができます。

4. 現場管理サポート・事務業務

  • 対象業務例: 現場写真の整理・編集、施工記録の作成、工事進捗報告書の作成補助、業者への連絡一部代行、近隣住民への工事説明補助(資料作成)、来客・電話対応の一部、備品管理など。
  • アウトソーシングの効果:
    • 現場監督の負担軽減: 現場監督は施工管理、品質管理、安全管理、原価管理と多岐にわたる業務を抱えています。事務作業を外部に委託することで、本来の現場管理業務に集中でき、手戻りが減り、工程がスムーズになることで、経営効率が向上します。
    • 書類作成の効率化: 定型的な書類作成やデータ入力などを専門業者に依頼することで、ミスなく迅速に処理を進められます。
    • 残業時間削減: 現場監督の長時間労働の要因となる事務作業を外部に切り出すことで、残業時間を削減し、働き方改革にも寄与します。

アウトソーシングパートナー選定のポイント

アウトソーシングの成否は、適切なパートナー選びにかかっています。以下のポイントを重視して選定を進めましょう。

  1. 専門性と実績の確認: 依頼したい業務分野において、十分な専門知識と豊富な実績があるかを確認しましょう。過去の成功事例やポートフォリオを見せてもらうのが有効です。
  2. コミュニケーション能力と報告体制: 業務の進行状況や課題をタイムリーに共有できるか、こちらの要望を正確に理解してくれるかなど、円滑なコミュニケーションが取れるかが重要です。定期的な報告会の設定や、チャットツールを使った連絡体制なども確認しましょう。
  3. セキュリティ体制と情報管理: 設計図面、顧客情報、企業の財務情報など、機密性の高い情報を扱う場合は、情報漏洩対策やセキュリティポリシーがしっかりしているかを確認することが非常に重要です。秘密保持契約(NDA)の締結は必須です。
  4. 費用対効果と契約内容: 見積もり内容が明確か、追加料金の発生条件が提示されているか、成果物の品質と費用が見合っているかなどを慎重に比較検討しましょう。契約期間や解約条件なども細かく確認し、トラブルを未然に防ぐことが重要です。
  5. 工務店業界への理解度: 可能であれば、工務店や建設業界の特性、文化、専門用語などを理解しているパートナーを選ぶと、スムーズな連携が期待でき、教育コストも削減できます。

アウトソーシングを成功させるための具体的な契約・連携のヒント

パートナーを選定したら、次は具体的な契約と連携フェーズです。以下の点を徹底し、アウトソーシングの効果を最大限に引き出しましょう。

  1. 業務範囲と成果物の明確化: 契約書には、委託する業務の範囲、具体的な作業内容、期待する成果物の品質基準、納期、報告頻度などを、可能な限り具体的に記述しましょう。「言った言わない」のトラブルを防ぐためにも、曖昧な表現は避け、数値目標などを盛り込むと良いでしょう。
  2. 秘密保持契約(NDA)の締結: 企業の機密情報や個人情報を扱う場合は、必ず秘密保持契約を締結し、情報漏洩のリスクを最小限に抑えましょう。
  3. 進捗報告と定期的なミーティング: 業務開始後も、月に1回程度の定期的なミーティングを設定し、進捗状況の確認、課題共有、フィードバックの実施を行いましょう。これにより、業務のズレを早期に修正し、連携を強化できます。
  4. マニュアルの準備と引き継ぎ: 業務を円滑に引き継ぐために、現在の業務フローや手順をまとめたマニュアルを準備し、パートナーに共有しましょう。口頭だけでなく、書面として残すことが重要です。
  5. 緊急連絡体制の確立: 予期せぬトラブルや緊急事態が発生した場合に備え、迅速に連絡が取れる体制を事前に確認しておきましょう。

Q&A:アウトソーシングの費用の相場は?どうやって良いパートナーを見つける?

アウトソーシングの費用は、業務内容、量、求める品質、パートナーの専門性によって大きく異なります。例えば、経理代行なら月数万円から、Webサイト制作・運用なら数十万円~数百万円、積算業務は案件ごとの見積もりなど様々です。まずは複数の業者から見積もりを取り、比較検討することが重要です。

良いパートナーを見つけるには、以下のアプローチが有効です。

  • 同業他社からの紹介: 実際にアウトソーシングを活用している工務店経営者からの紹介は信頼性が高いです。
  • 専門サービス比較サイト: アウトソーシング専門のマッチングサイトやプラットフォームを活用すると、多くの候補から比較検討できます。
  • コンサルティング会社への相談: まずはアウトソーシング戦略全体を相談できるコンサルタントに依頼し、最適なパートナーの選定支援を受けるのも一つの手です。
  • 無料相談やトライアルの活用: 多くの企業が無料相談や一部業務のトライアルサービスを提供しています。実際に試してみて、コミュニケーションの取りやすさや担当者の対応を評価しましょう。

経営効率を継続的に成功させるための「次の一手」

アウトソーシングは一度導入すれば終わりではありません。導入後の効果をきちんと測定し、継続的に改善していくことで、真の経営効率向上に繋がります。この章では、アウトソーシングの効果測定方法、潜在的なリスクとその対策、そして内製化とアウトソースの最適なバランスについて具体的に解説します。

アウトソーシング導入後の効果測定と評価基準

アウトソーシングの効果を測るためには、いくつかの明確な評価基準を設定し、定期的に測定することが重要です。漠然と「業務が楽になった」と感じるだけでなく、客観的なデータに基づいて効果を可視化しましょう。

  1. コスト削減効果の可視化:
    • 具体策: アウトソーシング導入前後で、該当業務にかかる総コスト(人件費、光熱費、設備の維持費など)を比較します。パートナーへの支払い費用だけでなく、自社でその業務を行っていた場合に発生していたであろう間接コストも加味して算出しましょう。
    • 評価基準: 「導入前比で○○%のコスト削減」や「年間で○○万円のコスト削減」といった具体的な数値を目標に設定します。
  2. 業務時間削減効果と社員の生産性向上:
    • 具体策: アウトソーシングした業務に社員が費やしていた時間を記録し、それがどれだけ削減されたかを確認します。その削減された時間を社員がどのようなコア業務に充て、どれだけの成果を出せたかを評価します。
    • 評価基準: 「○○業務の担当者の残業時間が月間○○時間削減された」「削減された時間により、新規顧客への提案件数が○○%増加した」「設計担当者が月に2棟追加で図面作成に至った」など、定量的・定性的な目標を設定します。
  3. サービス品質向上、顧客満足度向上:
    • 具体策: 例えばWebマーケティングをアウトソーシングした場合、Webサイトへのアクセス数、問い合わせ数、成約率の変化を追跡します。経理業務であれば、間違いの減少や報告の迅速化などが挙げられます。顧客アンケートや口コミなども参考にしましょう。
    • 評価基準: 「Webサイトからの問い合わせが月間○○件増加」「確定申告の処理が滞りなく進み、経理関連の問い合わせが減少した」「顧客アンケートの満足度が○○ポイント向上した」など。
  4. 経営効率全体への寄与度:
    • 具体策: 上記の具体的な効果が、最終的に企業の利益率、売上高、キャッシュフローといった経営指標にどう影響したかを長期的に分析します。
    • 評価基準: 「年間売上高が○○%増加」「営業利益率が○○%向上」など、経営目標達成への貢献度を評価します。

これらの評価は、「見える化」が重要です。定期的な報告書やダッシュボードを作成し、経営陣や関係者と共有することで、アウトソーシングの価値を社内に浸透させることができます。

アウトソーシングのリスクと対策

アウトソーシングは非常に有効な手段ですが、リスクも存在します。これらのリスクを事前に理解し、適切な対策を講じることで、失敗を回避し、持続的な成功に繋げることができます。

  • 情報漏洩リスク: 顧客情報や企業独自のノウハウなどの機密情報が外部に流出するリスク。
    • 対策: 秘密保持契約(NDA)の厳格な締結、パートナー企業のセキュリティ体制の確認(ISMS認証の有無など)、アクセス権限の適切な管理、定期的な監査の実施。
  • 品質低下リスク: 委託先の能力不足や認識のズレにより、成果物の品質が期待以下のものになるリスク。
    • 対策: 事前の十分なすり合わせと契約内容の明確化、実績と評価の高いパートナー選定、定期的な進捗確認とフィードバック、品質基準の具体的な提示。
  • ブラックボックス化リスク: 業務を外部に丸投げした結果、自社内に業務ノウハウが蓄積されず、業務プロセスがブラックボックス化してしまうリスク。
    • 対策: 定期的な報告を義務付け、業務プロセスや進捗状況を把握する。緊急時に備え、主要な業務マニュアルをパートナーに作成してもらう、あるいは共有してもらう。完全に依存せず、いつでも内製に戻せる準備をしておく。
  • ノウハウ流出リスク: 工務店独自の強みや技術的ノウハウが、アウトソーシング先を通じて競合他社に流出するリスク。
    • 対策: 委託する業務範囲を明確にし、企業の中核をなす技術やノウハウに直結する部分は安易にアウトソースしない。NDAで競合他社への情報提供を禁止する条項を盛り込む。

内製化とアウトソースのバランス、段階的拡大戦略

全ての業務をアウトソーシングすることが常に最善とは限りません。自社の強みとなるコア業務は内製化し、それ以外の非コア業務や専門性が高く一時的な対応が必要な業務をアウトソースするという、バランスの取れた戦略が重要です。

  • コア業務の定義: 貴社の工務店の競争優位性や収益の源泉となる業務は何ですか? 例えば「顧客との対面での深いヒアリング」「独自のデザイン提案」「現場での熟練した施工技術」「きめ細やかなアフターサービス」など、これらは内製化すべき「核」となる業務です。
  • 段階的拡大戦略(スモールスタート):
    • ステップ1:まずは「小さな成功」から。 最初から大規模なアウトソーシングを行うのではなく、まずは経理の一部やWebサイトの一部更新など、比較的小規模な業務から委託し、その効果やパートナーとの連携を確認しましょう。
    • ステップ2:効果検証と課題抽出。 導入後に定期的に効果測定を行い、意図した効果が出ているか、課題はないかを検証します。
    • ステップ3:成功体験を基に拡大。 小規模な成功体験や得られたノウハウを基に、徐々にアウトソーシングの範囲を拡大していきます。これにより、リスクを抑えつつ、確実に経営効率を向上させることができます。
  • 柔軟な見直し: 外部環境の変化や自社の成長段階に合わせて、アウトソーシングしている業務範囲やパートナーを見直す柔軟性を持つことが重要です。一度委託したからといって、永遠にそのまま続ける必要はありません。

Q&A:アウトソーシングで失敗しないために注意すべきことは?

最も重要なのは「丸投げしないこと」と「コミュニケーションを怠らないこと」です。業務を委託しても、それはあくまで「外部の力を借りて自社の業務を行う」という意識を持つべきです。定期的な進捗確認、疑問点の解消、明確な指示出しを徹底し、パートナーとの信頼関係を築くことが成功の鍵となります。

また、自社の業務プロセスを明確にし、マニュアル化できていない業務をいきなり外注すると、説明に手間取ったり、期待通りの成果が得られない原因になります。まずは「標準化」できる業務から選定し、丁寧に引き継ぎを行うことが失敗を防ぐ有効な手段です。

まとめ

工務店経営における経営効率の向上は、持続的な成長と競争力強化のために不可欠なテーマです。そして、その実現に向けた戦略的な手段として、アウトソーシングは計り知れない可能性を秘めています。この記事では、業務の棚卸しから、経理・設計・マーケティング・現場サポートといった具体的なアウトソーシングの範囲、そして信頼できるパートナーの選定方法、契約のポイント、さらには導入後の効果測定やリスク管理まで、工務店経営者の皆様が直面するであろう疑問に対し、実践的かつ具体的な解決策を提示してきました。

目の前の雑務に追われ、本来注力すべきコア業務に集中できない状況は、成長を阻む大きな要因となりがちです。アウトソーシングは、そうしたボトルネックを解消し、貴社の貴重な人材と時間を、顧客への価値提供と新たな事業機会の創出に振り向けることを可能にします。それは単なるコスト削減に留まらず、業務品質の向上、専門性の獲得、ひいては企業の収益力向上へと直結する、未来への投資なのです。

今日から貴社の業務を見つめ直し、このガイドで提示された具体的なアクションプランを一つずつ実行してみてください。小さな「非コア業務」の切り出しから始め、その効果を実感するたびに、貴社の経営効率は確実に向上していきます。この一歩が、貴社の工務店経営を次のステージへと押し上げ、激しい市場で勝ち抜くための強固な基盤を築き、持続的な成長と発展の礎となることを心から願っています。

この記事を書いた人

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浄法寺 亘

福島県 喜多方市出身。県立会津高校、市立高崎経済大学卒。工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。現在動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」。住宅情報サイト「ハウジングバザール」の運営にも携わっている。

著書:
頼みたくなる住宅営業になれる本
https://x.gd/oatiM
SDGsに取り組もう 建築業界編
https://x.gd/MXYJr

主な講演:
鹿児島県庁主催「かごしま緑の工務店研修会」
リードジャパン主催「工務店支援エキスポ」(東京ビックサイト)
育英西中学校、その他住宅FCなど

活動実績
2019~ 千葉県にて里山竹林整備ボランティア
2020~ 木ッズ絵画コンクール

工務店の集客・営業ならジーレックスジャパン →ホームページはこちら

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