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「内閣府beyond2020」の認定および「外務省JAPAN SDGs Action Platform」の紹介団体です。

クレームを未然に防ぐ!工務店の品質管理と顧客対応

公開日: : 工務店 経営

工務店経営者の皆様にとって、お客様からの信頼は事業の根幹を成すものです。しかし、高品質な施工を心がけていても、予期せぬクレームが発生することは少なくありません。クレームは単なる一時的な問題ではなく、企業の信頼失墜、追加コストの発生、最悪の場合、大きな訴訟リスクにもつながりかねません。多くの工務店経営者様は、「どうすればクレームを減らせるのか?」「そもそも品質をどうやって管理すればいいのか?」「顧客との関係を良好に保つ秘訣は?」といった疑問をお持ちでしょう。

この記事では、こうした皆様の切実な悩みに寄り添い、クレームを未然に防ぐための実践的な品質向上策と顧客対応の極意を分かりやすく解説します。品質管理の基礎から、具体的なクレーム削減のための仕組みづくり、そしてそれを継続するためのステップまで、工務店経営者の皆様が明日からすぐに実行できるアクションプランを提示します。この記事を最後までお読みいただければ、クレームへの不安から解放され、顧客満足度を高め、地域社会から選ばれる工務店へと成長する具体的な道筋が見えてくるはずです。

クレーム削減の「実践的」導入戦略:基礎から応用まで

クレーム削減は、単に問題発生時の対応に過ぎません。最も効果的なクレーム削減策は、クレームが発生しないように「予防」することです。そのためには、まずクレームが発生するメカニズムを理解し、未然に防ぐための戦略を練る必要があります。このセクションでは、クレーム削減を始めるための基礎知識と、具体的な体制構築について解説します。

1. クレーム発生の根本原因を特定する

クレームが発生した際には、その場しのぎの対応で済ませるのではなく、必ず根本原因を特定する習慣をつけましょう。原因は、施工不良だけでなく、お客様とのコミュニケーション不足、誤解、期待値のズレなど多岐にわたります。原因分析が甘いと、同じ種類のクレームが再発し、いつまで経っても品質向上に繋がりません。

  1. **発生状況の詳細な記録:** いつ、どこで、どのような内容のクレームが発生したかを漏れなく記録します。写真や図面など視覚的な情報も含めましょう。
  2. **関係者からのヒアリング:** 担当者、職人、お客様から当時の状況について詳しく聞きます。それぞれの視点から事実関係を確認することが重要です。
  3. **客観的な分析:** 感情論を排し、記録とヒアリングに基づき、原因を掘り下げます。「なぜそれが起こったのか?」を繰り返し問い、表面的な原因ではなく、そのさらに奥にある構造的な問題までたどり着くことを目指します。例:「壁に傷がついた」→「養生が不十分だった」→「養生の重要性の周知徹底がなされていなかった/チェック体制がなかった」。
  4. **原因の分類と集計:** 原因を「施工ミス」「設計ミス」「コミュニケーション不足」「手配ミス」などのカテゴリに分類し、定期的に集計します。これにより、どのような原因でクレームが発生しやすいのか傾向を掴むことができます。

2. クレーム情報の共有体制を構築する

収集したクレーム情報は、社内全体、そして協力業者間で共有されなければ意味がありません。情報が滞留したり、担当者だけが抱え込んだりすると、再発防止策や品質向上に活かすことができません。実践的な情報共有体制を構築しましょう。

  1. **クレーム報告書の統一フォーマット作成:** 上で特定した原因分析結果も含め、誰でも同じように報告・確認できるフォーマットを作成します。
  2. **定期的な情報共有会議の実施:** 経営者、現場監督、営業担当者、設計担当者など、関係者全員が参加するクレーム情報共有会議を定期的に開催します。発生したクレームの内容、原因、対応策、そして再発防止策を共有し、議論します。協力業者を含む会議も有効です。
  3. **情報共有ツールの活用:** 紙の報告書だけでなく、クラウド上の情報共有ツールやグループウェアを活用します。これにより、リアルタイムでの情報共有や過去のクレーム事例の検索が容易になります。特に現場からの写真を即時アップロード・共有できる仕組みは効果的です。
  4. **「ヒヤリ・ハット」情報の収集・共有:** クレームには至らなかったものの、「危なかった」「もしかしたら問題になったかもしれない」という「ヒヤリ・ハット」情報も積極的に収集・共有します。これは、将来のクレーム予備軍を早期に発見し、予防策を講じる上で非常に有用です。

3. 初期対応の質でクレームを最小限に抑える

どれだけ予防策を講じても、ゼロにすることは難しいのがクレームです。しかし、発生したクレームに対する初期対応の質によって、問題を大きくするか、早期に解決できるかが決まります。初期対応における最も重要な点は、「お客様に寄り添う姿勢」を示すことです。

  1. **迅速な対応:** クレーム連絡を受けたら、すぐに(可能であれば1時間以内、遅くとも当日中に)一次応答をします。この段階で解決できなくても、「連絡を受け付けたこと」「状況を確認し、後ほど改めて連絡すること」を伝えるだけで、お客様の不安を軽減できます。
  2. **お客様の声に耳を傾ける(傾聴):** お客様の話を遮らず、最後までしっかりと聞きます。まずは問題を正確に把握することに努め、お客様の感情に共感する姿勢を見せることが大切です。「それは大変でしたね」「ご不便をおかけして申し訳ありません」といった言葉を添えましょう。
  3. **その場での断定を避ける:** 原因が不明な段階で、「それは設計ミスです」「職人の責任です」などと安易に断定したり、責任転嫁したりすることは絶対に避けてください。まずは事実確認と原因究明に努めることを伝え、調査のための時間を頂きます。
  4. **次に取るべき行動を明確に伝える:** 状況を確認した後、いつまでに、誰が、どのような対応をするのかを具体的に伝えます。「明日中に担当者から状況確認のためお電話します」「来週水曜日に専門の者と伺い、現場を確認させてください」など、具体的な行動と期日を約束し、必ず守ります。

4. お客様との期待値のズレをなくすコミュニケーション技術

多くのクレームは、お客様の期待と実際のサービスや成果物の間にズレがあることから発生します。この期待値のズレをなくすためには、契約前から引き渡し後まで、一貫して丁寧かつ透明性の高いコミュニケーションを行うことが不可欠です。

  1. **契約前の詳細な説明:** 契約内容、金額、工期だけでなく、使用する建材の特性(経年変化など)、施工方法、起こりうるリスク(騒音、ホコリなど)について、専門用語を避け、お客様が理解できるよう丁寧に説明します。書面での説明も忘れず行います。
  2. **定期的な進捗報告:** 工事の進捗状況を定期的に報告します。写真や動画を添えて報告することで、お客様は安心感を得られますし、疑問点や不安を早期に解消できます。定例の打ち合わせを設定するのも良い方法です。
  3. **変更点の明確な伝達と合意:** 設計や仕様に変更が生じる場合は、必ずお客様に変更内容、理由、費用、工期への影響を明確に伝え、書面で合意を得ます。口頭での変更はトラブルの元です。
  4. **引き渡し時の丁寧な説明:** 設備の操作方法、メンテナンス方法、保証内容、緊急時の連絡先などを丁寧に説明します。アフターサービスについてもお伝えし、引き渡し後も関係が続くことを明確にします。

クレーム削減は、これらの基本的な対応を体制化し、継続することが最初のステップです。次に、これらの土台の上で、いかにして建設的な品質向上活動へと繋げていくかを見ていきましょう。

品質向上×クレーム削減:成果を最大化する具体的な取り組み

品質を向上させることは、直接的にクレームを削減する最も効果的な方法です。しかし、品質向上は単に「良いものを作る」という意識だけでは実現しません。明確な基準、チェック体制、そして関係者全員の協力が必要です。ここでは、品質向上とクレーム削減を両立・強化するための具体的な取り組みを解説します。

1. 明確な品質基準の設定と共有

「良い品質」の定義は、人によってあいまいになりがちです。誰もが同じレベルの品質を目指せるよう、社内で明確な品質基準を設定し、関係者全員が理解・共有することが必要です。

  1. **施工マニュアルの作成・整備:** 各工程(基礎、躯体、断熱、内装仕上など)ごとに、具体的な施工方法、使用材料、注意点、許容範囲などを明記したマニュアルを作成します。写真や図解を多用し、現場で働く職人さんがすぐに確認できるよう工夫します。
  2. **品質チェックリストの作成:** 各工程の完了時に確認すべき具体的な項目をリスト化します。例えば、「基礎コンクリート打設前に配筋ピッチ、かぶり厚さを確認」「サッシ取り付け前に水平・垂直、防水処理を確認」など、Yes/Noや数値で判断できる具体的な項目を設定します。
  3. **基準の共有と研修:** 作成した施工マニュアルやチェックリストを、社内スタッフはもちろん、協力業者にも配布し、内容に関する研修や説明会を実施します。なぜその基準が必要なのか、品質が低下した場合のリスクなどを丁寧に説明し、理解と協力を求めます。
  4. **お客様への品質基準の説明:** 可能であれば、お客様に対しても、どのような品質基準に基づいて施工が進められるのかを、無理のない範囲で説明します。これにより、お客様の安心感が増し、引き渡し後のクレーム予防にも繋がります。

2. 施工段階ごとの徹底した品質チェック

品質は、一箇所でチェックするだけでは不十分です。設計段階から引き渡し後まで、各工程で徹底したチェックを行い、問題点を早期に発見・修正する仕組みを構築します。これが品質向上への近道です。

  1. **設計段階でのチェック:** 設計図面だけでなく、仕様書、標準図(収まり図)などが抜け漏れなく、矛盾なく作成されているか、技術基準や法規に適合しているかを確認します。積算担当者との連携も重要です。
  2. **着工前チェック:** 地盤調査結果、近隣への配慮(挨拶、説明)、資材の発注内容、協力業者への指示内容などを確認します。
  3. **施工中の各工程チェック:** 作成したチェックリストを用いて、各工程の完了時に必ず現場監督がチェックを行います。チェック項目をクリアしなければ次の工程に進めないルールを徹底します。写真や動画で証拠を残すことを習慣化します。
  4. **自社検査と第三者機関による検査:** 社内での厳重な自主検査に加え、可能であれば第三者機関による検査も導入します。客観的な視点での指摘は、自社の盲点を発見し、より質の高い品質向上に繋がります。
  5. **お客様との現場確認:** 構造段階や内装仕上げ前など、重要な節目でお客様と一緒に現場を確認していただきます。お客様の疑問や不安をその場で解消し、認識のズレを防ぐ効果があります。

3. 協力業者との強固な連携と品質意識の共有

工務店の品質は、協力業者の技術力と意識に大きく依存します。協力業者と単なる取引先ではなく、品質向上を目指す「パートナー」として連携を強化することが不可欠です。

  1. **明確な指示と情報提供:** 発注時には、図面、仕様書、施工マニュアル、品質チェックリストなどを漏れなく提供し、施工内容や品質基準について丁寧に説明します。不明点があればすぐに確認できるよう、連絡体制を整えます。
  2. **定期的な協力業者会・品質会議:** クレーム事例やヒヤリ・ハット事例を共有し、原因分析や再発防止策を一緒に議論する会議を定期的に開催します。成功事例や新しい技術情報の共有も行い、お互いの技術力向上に繋げます。
  3. **現場での積極的なコミュニケーション:** 現場監督は、職人さんと積極的にコミュニケーションを取り、困っていること、改善提案などを聞き出します。信頼関係を築くことで、品質に対する意識を高めることができます。
  4. **品質に関する評価・表彰制度:** 高い品質で施工してくれた協力業者を表彰する制度を導入します。これにより、協力業者のモチベーションを高め、品質向上への意欲を刺激します。
  5. **共通研修の実施:** 必要に応じて、安全講習だけでなく、新しい工法や品質基準に関する共通研修を実施します。

4. 職人の技術力向上と品質への意識付け

実際に手を動かす職人さんの技術力と品質への意識が、最終的な品質を大きく左右します。職人さんがプライドを持って仕事に取り組める環境づくりと、継続的な技術向上が重要です。

  1. **技術研修の支援:** 新しい技術や工法に関する研修への参加を奨励・支援します。専門的な資格取得をサポートする制度なども有効です。
  2. **品質に関する個別フィードバック:** 現場チェックの結果に基づき、良い点、改善すべき点を具体的に伝えます。一方的な指摘ではなく、共に品質を高めていくという姿勢で接します。
  3. **意見交換の機会創出:** 工程会議などで職人さんの技術や現場での工夫について意見交換する時間を作ります。長年の経験に基づく彼らの知見は、品質向上に非常に役立ちます。
  4. **良い仕事への正当な評価:** チェックリストをクリアしたことや、お客様からの評価が高い仕事に対して、正当な評価や感謝の言葉を伝えます。職人さんのやりがいを高め、品質への意識を向上させます。

Q&A:品質管理に関するよくある疑問

Q1: 小規模な工務店でも大規模な品質管理体制は必要ですか?

はい、規模に関わらず品質管理は重要です。大規模なシステムを導入する必要はありませんが、チェックリストの活用、写真による記録、協力業者とのコミュニケーション徹底など、できることから実践していくことがクレーム削減につながります。特に、経営者や現場監督の「目」によるチェックと、協力業者との密な連携は重要です。

Q2: 品質基準を厳しくすると、工期が延びたりコストが増えたりしませんか?

一時的にそういった側面もあるかもしれませんが、長期的には品質の高さがクレーム削減に繋がり、手直しの減少、引き渡し後の対応コスト削減、施主様からの紹介増など、むしろ経営効率と利益率を高めます。初期投資として捉えるべきです。また、基準の明確化は手戻りを減らし、結果的に工期遅延リスクも低減します。

Q3: 協力業者からの反発が心配なのですが?

一方的に新しい基準を押し付けるのではなく、なぜ品質向上に取り組むのか、それが協力業者自身にもどのようなメリット(無駄な手戻りの削減、顧客からの信頼獲得など)があるのかを丁寧に説明し、理解と協力を求める姿勢が重要です。共に高め合う「パートナー」として接し、技術交流や意見交換を積極的に行うことで、協力関係を強化できます。

このように、品質向上は様々な要素が組み合わさることで実現します。特に、働く人々の意識と連携が重要になります。次のセクションでは、これらの取り組みを単発で終わらせず、継続的な改善サイクルへと繋げていく方法を解説します。

品質向上を継続的に成功させるための「次の一手」

品質向上とクレーム削減は、一度取り組めば終わり、という性質のものではありません。市場環境は変化し、技術は進歩し、そして何より、お客様のニーズは変わり続けます。継続的に品質を高め、クレーム発生率を低く保つためには、仕組みを維持・改善し続けるための「次の一手」が必要です。ここでは、効果測定、PDCAサイクルの運用、そして組織文化の醸成について掘り下げます。

1. 効果測定による現状把握と成果の可視化

品質向上活動やクレーム削減の取り組みが、実際どの程度効果を上げているのかを定量的に把握することは、改善努力の方向性を定める上で不可欠です。感覚に頼るのではなく、具体的なデータに基づいて評価しましょう。

  1. **クレーム発生件数のトラッキング:** クレームの種類ごとの発生件数、対応にかかった時間や費用などを定点観測します。これにより、取り組みの効果を最もダイレクトに把握できます。目標とするクレーム発生率を設定するのも良いでしょう。
  2. **顧客満足度調査の実施:** 引き渡し後一定期間後に、顧客満足度アンケートを実施します。サービス全般、施工品質、対応の丁寧さなど、多角的な視点から評価をいただきます。自由記述欄を設けると、具体的な評価理由や改善点が見えてきます。回収率を高める工夫(Webアンケート、簡単な返礼品など)も重要です。
  3. **協力業者からのフィードバック収集:** 協力業者から、現場の状況、工務店側の指示や体制に関する意見などを定期的に収集します。品質管理体制の盲点や、改善のヒントが得られることがあります。
  4. **社内プロセスの所要時間・コスト測定:** 各工程にかかる時間、手直しに費やした時間やコストなどを測定します。品質向上により無駄な手戻りが減れば、これらの数値は改善するはずです。
  5. **目標値の設定と定期的なレビュー:** 上記の各指標に対して具体的な目標値を設定し、月次や四半期ごとに達成状況をレビューします。目標と現状のギャップを把握し、次の改善策に繋げます。

2. PDCAサイクルによる継続的な改善

品質向上とクレーム削減の取り組みを単発で終わらせず、継続的に改善していくためには、PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Action)を回す仕組みを構築することが効果的です。計画し、実行し、その結果を確認し、さらに改善を加えるというサイクルを繰り返します。

  1. **Plan (計画):** 測定結果や収集した情報に基づき、どの部分の品質を、どのように向上させるのか、具体的な目標とアクションプランを立てます。例えば、「今後3ヶ月間で〇〇に関するクレームを半減させるために、チェックリスト項目を増やし、担当者研修を実施する」といった具体的な計画です。
  2. **Do (実行):** 計画に基づき、改善策を実行します。関係者への十分な説明と訓練を行い、新しい手順やルールが現場で確実に実施されるよう徹底します。
  3. **Check (評価):** 効果測定で設定した指標を用いて、実行した改善策がどの程度効果を上げたのかを評価します。当初の目標に対して達成できた点、できなかった点を明確にします。
  4. **Action (改善):** 評価結果をもとに、改善策を標準化する(成功した場合)、計画を修正する、新たな課題に取り組むなど、次のアクションを決定します。このフェーズで得られた知見は、次のPlanの基礎となります。

このサイクルを高速で回すほど、組織全体の品質は向上し、クレーム削減効果も高まります。

3. 最新技術やツールの活用

IT技術の進歩は、工務店の品質管理を効率化し、精度を高める可能性を秘めています。新しいツールや技術の導入を検討し、品質向上とクレーム削減に役立てましょう。

  1. **クラウド型情報共有ツールの活用:** 現場写真の共有、進捗報告、打ち合わせ議事録、クレーム報告などを一元管理し、関係者全員がいつでもアクセスできる環境を整備します。これにより、情報の抜け漏れや伝達ミスを防ぎ、コミュニケーションが円滑になります。
  2. **検査・チェックリストアプリの導入:** スマートフォンやタブレットで、写真や動画を撮りながらチェックリストを入力できるアプリを導入します。チェック漏れを防ぎ、報告書作成の手間を省き、データの集計・分析を容易にします。
  3. **BIM(Building Information Modeling)の活用:** 設計段階から施工、維持管理まで、建物のあらゆる情報を一元的に管理できるBIMを導入することで、設計ミスや施工時の納まりミスを減らし、手戻りを大幅に削減できます。
  4. **ドローンやVR/AR技術の検討:** ドローンによる現場撮影や点検、VR/ARを使った完成イメージの共有などは、お客様への訴求だけでなく、現場確認や品質チェックの効率化にも繋がる可能性があります。

4. 従業員と協力業者の品質意識を育む文化づくり

どのような素晴らしい仕組みやツールを導入しても、最終的に品質を決めるのは「人」です。従業員一人ひとりと協力業者が、自律的に品質向上を目指すような組織文化を醸成することが、最も長期的なクレーム削減効果をもたらします。

  1. **経営トップの強いコミットメント:** 経営者が品質向上とクレーム削減への取り組みの重要性を繰り返しメッセージとして発信し、率先して関与することで、全従業員・協力業者の意識が高まります。「品質は会社の顔である」という共通認識を浸透させます。
  2. **品質に関する研修・教育の継続:** 新規入社者だけでなく、既存の従業員や協力業者に対しても、品質に関する研修や勉強会を継続的に実施します。単なる技術研修だけでなく、お客様視点での品質の重要性、コミュニケーションのあり方なども含めます。
  3. **成功事例の共有と称賛:** 品質に関して良い取り組みを行った事例や、お客様から高い評価を得た事例を社内や協力業者会で共有し、担当者を称賛します。前向きな行動を促進する仕組みを作ります。
  4. **失敗から学ぶ文化:** クレームやミスが発生した場合、担当者を責めるのではなく、なぜ問題が起こったのかを組織全体で分析し、再発防止策を共に考える姿勢を育てます。失敗を隠蔽するのではなく、共有して学びの機会とする文化が、継続的な品質向上を支えます。
  5. **提案制度の導入:** 従業員や協力業者から、品質向上や効率改善に関するアイデアを自由に提案できる制度を設けます。現場の声を吸い上げることで、より実践的で効果的な改善策が生まれることがあります。

Q&A:継続的な取り組みに関するよくある疑問

Q1: 顧客満足度調査はどのように実施すれば効果的ですか?

引き渡し後、少し落ち着いた頃(1ヶ月後など)に実施するのが良いでしょう。質問項目は、建物の品質、担当者の対応、協力業者の対応、価格への納得度などをバランス良く含めます。回収率を上げるためには、オンライン調査、返信用封筒付きの郵送、電話でのフォローアップなどを組み合わせるのが有効です。結果は顧客からの貴重なフィードバックとして、真摯に受け止め、改善活動に活かします。

Q2: どのようにすれば従業員の品質への意識を高められますか?

品質の重要性を繰り返し伝え、日々の業務が最終的な品質にどう繋がるのかを理解させることが基本です。また、彼らの頑張りを正当に評価し、報奨制度やキャリアアップの機会と結びつけることも有効です。最も重要なのは、経営者を含むマネジメント層が品質に対して真剣である姿勢を見せ続けることです。

Q3: 新しい技術やツール導入のハードルが高いと感じるのですが?

一度に全てを導入する必要はありません。まずは情報共有ツールなど、比較的手軽に始められるものから試してみるのが良いでしょう。導入にあたっては、費用対効果だけでなく、従業員のITリテラシーも考慮し、必要であれば研修を行います。無料トライアルを活用したり、同業者の事例を聞いたりするのも参考になります。

これらの「次の一手」は、組織全体の「器」を強くし、変化に対応しながら品質を高め続ける力を与えてくれます。一度仕組みを作ったら終わりではなく、常に改善の意識を持ち続けることが重要です。

まとめ

工務店経営における品質向上とクレーム削減は、単なる顧客対応の一環ではなく、事業の持続的な成長と強固な企業文化を築くための最重要課題です。クレームを減らすことは、直接的な手直しコストや対応時間の削減だけでなく、お客様からの信頼獲得、紹介による新規顧客の獲得、そして従業員の士気向上といった多くの経営メリットをもたらします。

この記事では、クレームが発生する原因の分析から始まり、情報の共有体制構築、迅速な初期対応、そして最も重要な予防策としての品質管理の具体的なステップをご覧いただきました。明確な品質基準の設定、計画的かつ徹底した現場チェック、そして協力業者や職人との連携強化、これらの取り組みは、高品質なサービスの提供を可能にし、結果としてクレーム削減に直結します。

しかし、これらの取り組みは一度行えば完了するものではありません。効果測定に基づいた計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Action)のPDCAサイクルを継続的に回すこと、そして最新技術の活用や組織全体の品質意識を育む文化づくりこそが、長期的な品質向上と安定した経営を実現するためのカギとなります。今日からできることから一歩を踏み出し、小さな成功を積み重ねてください。

高品質な建物を提供し、すべてのお客様に心から満足していたくことは、工務店として何よりの喜びであり、誇りとなるはずです。クレームの不安を力に変え、地域に根差した確かな品質で、明るい未来を切り拓いていきましょう。

この記事を書いた人

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浄法寺 亘

福島県 喜多方市出身。県立会津高校、市立高崎経済大学卒。工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。現在動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」。住宅情報サイト「ハウジングバザール」の運営にも携わっている。

著書:
頼みたくなる住宅営業になれる本
https://x.gd/oatiM
SDGsに取り組もう 建築業界編
https://x.gd/MXYJr

主な講演:
鹿児島県庁主催「かごしま緑の工務店研修会」
リードジャパン主催「工務店支援エキスポ」(東京ビックサイト)
育英西中学校、その他住宅FCなど

活動実績
2019~ 千葉県にて里山竹林整備ボランティア
2020~ 木ッズ絵画コンクール

工務店の集客・営業ならジーレックスジャパン →ホームページはこちら

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