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事業承継のための事業評価!工務店の価値を見極める

公開日: : 工務店 経営

工務店経営において「事業承継」の準備が不十分だと、家業の存続や従業員の将来に大きな影響を及ぼします。特に「事業評価」が曖昧なままでは、後継者へ引き継ぐ際に適正な価値が分からず、資産や信用、ブランドの維持が難しくなりがちです。この記事では、現場で日々悩まれる経営者の視点に立ち、「うちの工務店にどんな価値があるのか?」「どうやって次代へ安心して渡せるのか?」といった切実な疑問に、実践的なステップで応えます。創業者の汗と工夫が詰まった工務店を、価値ある形で次世代へ承継させたい読者のため、事業評価の導入からACTUAL(実際の)承継戦略、継続的な改善策までを具体的に解説。今日から動き出せる手順をわかりやすくご案内し、着実な「未来への一歩」を後押しします。

事業評価の「実践的」導入戦略:基礎から応用まで

工務店の事業承継において、まず不可欠なのが自社の客観的な価値把握です。事業評価を正しく実施すれば、感覚的な引き継ぎではなく、データに基づいた「納得感」のある承継が可能となります。ここでは、工務店経営者が実際に使える事業評価の手順を、基礎から応用まで段階的にご説明します。

1. 事業評価の目的と重要性を明確にする

  • なぜ事業評価が必要かを経営陣・後継者で共有しましょう。
    自社の強み・課題の可視化、公平な承継条件の設定、従業員・取引先への説明責任など、評価の狙いを明文化してください。

2. 工務店に最適な事業評価手法を選ぶ

  • 一般的な評価方法は、
    • 資産評価法(所有不動産・機械・設備など資産ベース)
    • 収益評価法(将来得られる利益に基づく価値算定)
    • 市場比較法(同業の売買事例や市場取引価格を参考)

    工務店の場合「収益評価法」と「資産評価法」の組み合わせが有効です。

3. 必要資料の整理・収集

  • ・過去3-5年分の決算書(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)
  • ・主要不動産、機械設備の一覧と評価額
  • ・顧客リスト、主要な取引先情報、工事実績
  • ・従業員構成、生産性指標
  • ・権利関係(借入、保証、契約の明細)

評価に必要な資料を網羅的に集めて、一覧化します。

4. 収益評価法による事業価値の算出ステップ

  1. 過去3-5年分の営業利益から、特別要因(不定期な売上や経費)を除外した「平常収益」を算出
  2. その利益に今後の成長性や事業リスク(受注先や職人不足、エリア特性等)を反映した「割引率」を乗じて現在価値へ調整
  3. 「事業価値=平常営業利益÷割引率」として算定
  4. この金額から有利子負債や余剰資産を加減算して、純粋な事業評価額を導きます

5. 資産評価法の具体的アプローチ

  1. 帳簿上の所有資産(不動産、車両、設備)の実勢価格を見積もる
  2. 簿価と市場価格の大きな乖離がないかチェック
  3. 不要資産や、今後価値が下がるリスクも「減価修正」する
  4. 負債・未払い債務も正確に合算し、純資産額を把握する

6. 事業評価結果に基づく「強み」と「弱み」の洗い出し

  • 評価の過程で、地域ブランド力、独自技術、既存客基盤、従業員のスキルや定着率など無形資産にも注目し、財務諸表だけでない多面的な強み・弱みをリストアップします。

7. 専門家との協働で精度を高める

  • 税理士、公認会計士、中小企業診断士、M&Aアドバイザー等の助力を得て、自社の特性に最適な評価方法と査定の確からしさを担保しましょう。

8. 社内での情報共有と説明責任の履行

  • 事業評価の根拠・結果は、後継者、主要社員、関係取引先にも丁寧に説明し、納得と信頼を築くべきです。隠したままの事項をなくし、円滑な事業承継へつなげましょう。

ポイントまとめ

  • 「なぜ今、事業評価が必要か?」を経営陣・後継者間で徹底共有
  • 評価方法は複数を使い分け、専門家と連携する
  • 数字だけでなく、自社の知的財産・無形の強みも洗い出す
  • 評価結果の説明責任を果たし、承継への合意・納得感を高める

事業承継×事業評価:成果を最大化する具体的な取り組み

次に、「事業承継」を具体的に進めるためのステップをご紹介します。事業評価で得た知見を活かしつつ、現場でどのような実務アクションが有効か、成功率の高い流れで解説します。よくある疑問への回答も含め、実戦的なアクションプランをご提案します。

1. 承継計画の策定と関係者の合意形成

  • 計画は「短期(1年内)」「中期(3-5年)」「長期(5年以上)」で策定。承継の対象(経営権、株式、資産、顧客・取引先関係等)を明確化しましょう。
  • 後継候補者・現経営陣・主要社員・金融機関・親族等、各ステークホルダーと目線合わせを早期に行い、合意形成を重視します。

2. 「見える承継」に向けた業務・資産整理

  • 事業評価結果に基づき、無駄な資産・不要な契約・古い取引関係の整理をリスト化し、承継前にクリアにします。
  • 経理・業務フローの標準化、マニュアル化も重要です。経営ノウハウを「暗黙知」から「形式知」へ変換し、誰が継いでも迷わない業務設計に取り組みましょう。

3. 後継者育成プランの実行

  1. 現場経験を積ませる(営業・施工・現場管理・経理までローテーション)
  2. 経営数字の読み方、事業評価の解釈、人脈引き継ぎ(取引先・金融機関との同席・挨拶)を段階的に移行
  3. 少額から意思決定を任せて徐々に裁量範囲を広げる
  4. 経営外部セミナー・工務店ネットワーク等への参加で知見・刺激を増やす

4. 承継スケジュールの策定と進捗管理

  • 全体の工程表を作り、事業評価の「見直し時期」もスケジュールに含める(四半期、半期ごとに経営状況を再評価し、計画修正をかけることが肝要)
  • 要所では第三者(外部コンサルや金融機関)によるアドバイス・客観的チェックも活用

5. 従業員・取引先などステークホルダーへのアナウンス

  • 「なぜ承継するのか」「どのように変わるのか」「事業評価に基づき会社は今後どんな方向を目指すか」を、説明会や書面で全社員・主要取引先に周知
  • 顧客からの信用維持、離反防止には、現・後継者の連名あいさつや工事現場でのWネーム対応が有効です

6. トラブルへの備えとリスク管理

  • 親族間・社員間の感情的な対立、株式や資産分配の不公平感、金融機関との条件変更リスク等、論点を洗い出して事前に合意形成・法的文書化も検討

Q&A よくある疑問への実践解答

  • Q. 事業評価は何年ごとに見直すべき?

    A. 通常は1~2年ごとの見直しを推奨しますが、業績や外部環境に大きな変化があれば臨時で再評価を行いましょう。

  • Q. 親族外を後継者にする場合、何に注意すべき?

    A. 早い段階で現経営陣・社員・取引先へ透明性を持って説明し、人間関係のトラブルを最小化します。加えて信頼ベースの権限移譲が不可欠です。

  • Q. 事業評価でマイナス面が見つかったら承継は難航?

    A. 必ずしもそうではありません。課題が明確になれば改善プランとセットで承継を進めることで「伸びしろ」としてポジティブに提示可能です。

  • Q. 外部専門家にはどのタイミングで相談すべき?

    A. 資料整理が最低限終わり、承継計画のたたき台ができた段階で早めに相談するとアドバイスの精度が高まります。

事業承継を継続的に成功させるための「次の一手」

承継は一度きりのイベントではなく、引き継いだ後の持続的発展こそ最大のテーマです。ここでは事業承継後に会社を成長軌道に乗せ、かつ次回承継も「楽」に進められる “勝ちパターン” をご紹介します。

1. 承継後も継続する定期的な事業評価

  • 新経営体制になった後も、少なくとも年1回は事業評価を実施し、経営課題・成長可能性・市場変化を点検、数値的な進捗と現場感覚をすり合わせます。

2. 目標・数値管理の徹底とフィードバックサイクル

  • 短期(半年~1年)、中期(3年)、長期(5-10年)のKPI(売上・利益率・新規受注数・リピート率等)を設定し、定期会議でレビュー。未達要因の洗い出しと次回アクションを明確化します。

3. 後継者自身のリーダーシップ育成

  • 組織のトップとして経営・現場双方に「顔」を出すことで従業員・顧客への安心感を醸成
  • 技術や経験だけでなく「対外発信力」(ブログ、SNS、見学会等)にも積極投資し、新世代ならではの強みを育てます

4. 組織文化・暗黙知の可視化・継承

  • 工務店ならではの“現場で大切にしている理念・作法“を、文章化・映像化して文書マニュアルや社内研修に活用。新入社員や次世代への知識移転を仕組み化しましょう。

5. イノベーション推進と成長戦略への挑戦

  • 省エネ住宅・リノベーション・DX化・地域ネットワーク連携など、新しい挑戦にも事業評価視点をもって着手。チャレンジ案件を年度目標に組み込み、小さな成功体験を積み重ねましょう。

6. 社外ネットワーク強化と二重承継リスク対策

  • 業界交流、金融機関、専門家と定期的に情報交換。後継者不在や病気リスクにも備え、緊急時の「経営委譲先」や「後継者候補プール」を常時構築しておきましょう。

7. 承継後にも使えるチェックリスト例

  • ・事業評価を定期的に実施しているか
  • ・年度予算・KPIを設定しているか
  • ・後継者の意思決定範囲が明確化されているか
  • ・次世代候補の育成計画があるか
  • ・主要取引先との関係が維持・発展しているか

8. 継続的改善への具体アクション

  1. 最低でも年1回、全社で「承継後レビュー」ミーティングを実施
  2. 評価・目標の達成状況、現場からの課題、新たな顧客ニーズを点検
  3. 課題にはオーナーシップを持った担当を割当て、進捗管理を徹底
  4. 成功事例を社内で共有し、ナレッジ蓄積・全社員参加型の改善文化を定着させます

まとめ

工務店の事業承継を成功させるためには、まず公平かつ精度の高い事業評価の導入が不可欠です。評価を手順化し、社内の合意形成・無形資産の整理を進めることで、納得感のある承継計画が立てられます。そのうえで、後継者の育成や業務の「見える化」、関係者への丁寧な説明を積み重ねましょう。事業評価や承継計画は一度きりではありません。承継後も目標・KPI管理、定期的なレビュー、改善文化を継続し、自分たちの工務店が時流に対応できる組織にアップデートし続けることが大切です。この記事で示した具体的なアクションは、経営者と後継者が協力し合い、工務店の価値を守り抜く「実効力のある承継」の強い武器になるでしょう。今から一つ一つ着手することで、未来の繁栄と安心を手にできます。応援しています!

この記事を書いた人

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浄法寺 亘

福島県 喜多方市出身。県立会津高校、市立高崎経済大学卒。工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。現在動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」。住宅情報サイト「ハウジングバザール」の運営にも携わっている。

著書:
頼みたくなる住宅営業になれる本
https://x.gd/oatiM
SDGsに取り組もう 建築業界編
https://x.gd/MXYJr

主な講演:
鹿児島県庁主催「かごしま緑の工務店研修会」
リードジャパン主催「工務店支援エキスポ」(東京ビックサイト)
育英西中学校、その他住宅FCなど

活動実績
2019~ 千葉県にて里山竹林整備ボランティア
2020~ 木ッズ絵画コンクール

工務店の集客・営業ならジーレックスジャパン →ホームページはこちら

商品の差別化へ!制振装置はこちらから →耐震・制振装置

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