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仕入れ価格を抑える!工務店の原価削減術

公開日: : 工務店 経営

工務店の経営者であるあなたは、日々の経営の中で、資材高騰や人件費の上昇、そして何よりも激化する競争環境によって、利益率の維持がいかに困難であるかを痛感されていることでしょう。顧客からの期待は高まる一方で、原価は容赦なく上昇し、いつの間にか「頑張っているのに、なぜか利益が上がらない」というジレンマに陥っているかもしれません。

特に、建設資材の仕入れ価格は、原価の大半を占める要素であり、この部分をいかに最適化するかが、経営の安定と利益改善の鍵を握ります。しかし、「具体的な交渉方法がわからない」「既存の取引先との関係を壊したくない」「結局、どこから手をつければいいのか」といった疑問や不安を抱えている方も少なくないのではないでしょうか。

この記事では、そのようなあなたの疑問に正面から向き合い、仕入れ価格を効果的に抑え、持続的な利益改善を実現するための実践的で具体的なノウハウを、ステップバイステップでご紹介します。単なるコストカットに留まらず、長期的な視点でのサプライヤーとの関係構築、効率的な在庫管理、そしてデジタルツールの活用まで、今日からあなたの工務店で実践できるアクションプランを豊富に盛り込みました。

この記事を読み終える頃には、あなたは仕入れ価格を見直す明確なビジョンを持ち、具体的な行動計画を描けるようになっているはずです。そして、その行動があなたの工務店の収益性を劇的に向上させ、より安定した経営基盤を築く助けとなることをお約束します。さあ、あなたの工務店の未来を、今ここから変えていきましょう。

仕入れ価格の「実践的」導入戦略:基礎から応用まで

工務店の利益改善を考える上で、最も直接的かつ確実なアプローチの一つが、仕入れ価格の最適化です。しかし、闇雲に値下げ交渉をすれば良いというわけではありません。まずは現状を正確に把握し、戦略的なアプローチを確立することが重要です。ここでは、そのための具体的なステップをご紹介します。

1. 現状把握とコスト分析:隠れた無駄を見つけ出す

まず、あなたの工務店が抱える資材調達の現状を客観的に見つめ直すことから始めます。漠然とした「原価が高い」という認識ではなく、具体的にどの品目の仕入れ価格が高いのか、どのサプライヤーからの購入が多いのかをデータに基づいて洗い出すことが不可欠です。

  • ステップ1-1:過去の仕入れデータを徹底分析
    過去1~2年分の仕入れ伝票、請求書データを集め、以下の項目で分類・集計します。

    • 品目別:木材、建材、設備、消耗品など、主要な資材の購入量と金額。特に高額な資材や使用頻度の高い資材には重点を置きます。
    • サプライヤー別:各サプライヤーからの購入金額、取引頻度、ロットサイズ。
    • プロジェクト別:各プロジェクトにおける資材費の割合、予算との乖離。
    • 期間別:特定の月に仕入れ価格が変動していないか、季節性はないか。

    これにより、「この品目はA社から買っているが、B社の方がもっと安くなる可能性がある」「この資材は大量に仕入れているはずなのに、単価が高い」といった具体的な課題が見えてきます。

  • ステップ1-2:原価構成比の可視化
    総原価に占める資材費、労務費、外注費などの割合を明確にします。特に資材費がどの程度の割合を占めているかを知ることで、仕入れ価格の最適化が利益改善にどれほどインパクトを与えるかを定量的に理解できます。例えば、資材費が売上の30%を占める場合、1%の削減でも大きな利益貢献に繋がります。
  • ステップ1-3:目標設定とKPIの明確化
    分析結果に基づき、「来年度までに主要資材の仕入れ価格を平均5%削減する」「特定のサプライヤーとの契約を見直し、年間100万円のコストダウンを目指す」といった具体的で測定可能な目標を設定します。この目標達成度を測るためのKPI(重要業績評価指標)も同時に設定し、定期的な進捗確認を行います。

Q: 小規模工務店でデータ分析まで手が回らない場合はどうすればいいですか?
A: 大規模なシステム導入が難しくても、まずはExcelやスプレッドシートでも十分です。主要な資材上位10品目だけでも良いので、手動でデータを集計し、傾向を把握することから始めてみてください。それが次のアクションに繋がる第一歩です。

2. サプライヤー選定と交渉術:WIN-WINの関係を築く

仕入れ価格を抑えるためには、サプライヤーとの交渉が不可欠です。しかし、単に価格を叩くのではなく、長期的な視点で互恵関係を築くことが、持続的な利益改善には重要です。

  • ステップ2-1:新規サプライヤーの探索と複数見積もりの取得
    現在のメインサプライヤーだけでなく、競合他社や新たなサプライヤー候補を積極的に探し、複数社から見積もりを取得します。

    • 業界情報の収集:業界展示会への参加、専門誌の購読、オンラインプラットフォームの活用などで、新たなサプライヤーや資材情報を常に収集します。
    • 競合他社の調査:どのような資材を、どこから仕入れているのか、可能な範囲で情報収集し、参考にするのも良いでしょう。
    • 見積もり比較のコツ:価格だけでなく、納期、支払い条件、品質、アフターサービス、環境配慮などの項目も比較対象に含めます。単価が安くても、追加料金や品質の問題が発生すれば、結局はコスト増に繋がる可能性があるため、総合的な視点で評価します。
  • ステップ2-2:交渉の準備と戦略立案
    交渉に臨む前に、自社の強みと相手のニーズを理解し、具体的な交渉戦略を立てます。

    • 自社の購買力のアピール:年間購入量が増える見込みがある、特定の資材を継続的に発注するなどの計画があれば、それをアピールし、ボリュームディスカウントを要求する根拠とします。
    • 競合の見積もり活用:他のサプライヤーからの見積もりを提示し、「貴社との取引を継続したいが、この価格差は無視できない」と具体的に交渉材料とします。ただし、単なる恫喝ではなく、あくまで「より良い条件での取引継続」を望む姿勢を示すことが重要です。
    • 価格以外の交渉素材:支払いサイトの延長(例:60日→90日)、納期短縮、特定の資材の優先供給、品質保証期間の延長、サンプル提供、共同開発の提案など、価格以外の面でのメリットを引き出す交渉も有効です。これらはサプライヤーにとっても、長期的な取引に繋がる付加価値となり得ます。
  • ステップ2-3:WIN-WINの関係構築
    一度限りの取引ではなく、長期的なパートナーシップを意識します。

    • 透明性の確保:自社のニーズや課題を正直に伝え、サプライヤーにも理解を求めます。
    • フィードバックの提供:納品物の品質やサービスについて定期的にフィードバックを提供し、サプライヤーの改善を促します。改善が見られれば、長期的な信頼関係に繋がります。
    • 感謝と評価:良い提案や迅速な対応には感謝を示し、適切に評価することで、サプライヤーは「この工務店とは長く取引したい」と感じるようになります。

Q: 既に関係ができているサプライヤーに値下げ交渉するのは気が引けます。どうすればいいでしょうか?
A: 関係を壊す必要はありません。むしろ、正直に「資材価格高騰で利益改善が課題となっている。貴社との長期的な関係は大切にしたいが、原価を抑える努力も必要だ。何か協力できることはないか?」と相談ベースで持ちかけるのが有効です。「他社の見積もりを提示する際は、あくまで『参考として検討させてほしい』という姿勢で、現サプライヤーとの協業を優先したい意向を伝えると良いでしょう。共同での効率化提案など、WIN-WINの提案を模索する姿勢が重要です。

利益改善×仕入れ価格:成果を最大化する具体的な取り組み

仕入れ価格の交渉だけでなく、工務店全体の業務プロセスを見直すことで、さらなる利益改善の余地が生まれます。ここでは、具体的な取り組みを掘り下げていきます。

3. 共同仕入れとボリュームディスカウントの最大化

個々の工務店では難しい大規模な発注量を、複数の企業で束ねることで、ディスカウントを引き出します。

  • ステップ3-1:同業他社との連携を検討
    地域や業態の近い工務店数社と連携し、特定資材の共同仕入れを検討します。

    • 対象資材の選定:どの工務店でも共通して使用する建材、例えば構造材、断熱材、サッシ、設備機器など、大量に消費する資材から始めると効果が出やすいです。
    • 連携体制の構築:共同仕入れのルール、発注・支払いプロセス、責任分担などを明確に定めます。信頼関係が重要になるため、まずは小規模な取り組みからスタートし、成功体験を積み重ねると良いでしょう。
    • 交渉担当者の明確化:共同でサプライヤーへの交渉に臨む担当者を決め、事前に交渉戦略を共有します。
  • ステップ3-2:既存の組合・グループへの参加
    すでに共同仕入れの仕組みを持つ工務店組合、フランチャイズチェーン、地域ネットワークなどに加入することも有力な選択肢です。

    • メリットの確認:加入前に、どのような資材が、どの程度の割引率で調達できるのか、詳細を確認します。
    • 会費・条件の確認:加入にかかる費用や制約なども考慮し、費用対効果を見極めます。
  • ステップ3-3:自社内でのボリューム発注の最適化
    共同仕入れが難しい場合でも、自社内の発注量をまとめることで仕入れ価格の交渉力を高めることができます。

    • 工事計画の長期化・統合:複数の小規模プロジェクトでバラバラに発注するのではなく、近い時期に実行されるプロジェクトの資材をまとめて発注することで、ロット割引を引き出します。年間発注計画を見据えた交渉を行うことも重要です。
    • 標準資材の統一:可能な限り使用する資材の種類を標準化することで、特定の資材の年間発注量を増やし、単価交渉の有効な材料とします。

Q: 共同仕入れで、発注タイミングや品質のばらつきが心配です。
A: その課題を解決するためにも、事前に詳細なルール作りが不可欠です。発注は共同だが納品は各社へ直接、品質チェックは各社で行う、といった合意形成が重要です。また、最初は資材の種類を限定し、リスクの少ないものから始めるのが賢明です。

4. 在庫管理の最適化による無駄の排除

過剰な在庫は、保管コスト、陳腐化リスク、資金の固定化といった形で、見えないコストとして利益改善を阻害します。

  • ステップ4-1:現状の資材在庫を徹底的に棚卸し
    現在抱えている資材在庫を物理的に確認し、リストアップします。

    • 「死に在庫」の特定:長期間使われていない、あるいは使用予定のない資材を特定します。これらは速やかに処分するか、中古市場での売却を検討します。
    • 適正在庫量の設定:過去の消費データ、今後の工事計画、サプライヤーからの納期などを考慮し、各資材の適正在庫量を設定します。過剰在庫を避けつつ、工事の遅延を招かないギリギリのラインを見極めることが重要です。
  • ステップ4-2:発注タイミングの見直しとジャストインタイムの導入
    資材が必要な時に、必要な量だけ仕入れる「ジャストインタイム(JIT)」の考え方を導入します。

    • 発注サイクルの見直し:週ごと、月ごとなど、定期的な発注サイクルを設定し、発注頻度を減らして管理工数を削減します。
    • 発注リードタイムの把握:各資材のサプライヤーからの納期(リードタイム)を正確に把握し、工事スケジュールから逆算して適切な発注日を設定します。
    • サプライヤーとの連携強化:「必要な時に必要な資材を届けてもらう」ためには、サプライヤーとの密な情報共有と信頼関係が不可欠です。在庫状況や工事予定を共有し、サプライヤー側でも配送計画を立てやすくします。
  • ステップ4-3:資材置き場の整理整頓と紛失防止
    整頓されていない資材置き場は、資材の紛失や劣化を招き、結果的に再度購入する必要が生じるなど、無駄なコストを発生させます。

    • 5S活動の徹底:「整理・整頓・清掃・清潔・躾」の5Sを徹底し、資材の種類ごとに定位置を決め、在庫量を可視化します。
    • 在庫管理システムの導入検討:バーコード管理やクラウドベースの在庫管理システムを導入することで、リアルタイムでの在庫状況把握、自動発注の仕組み構築が可能となり、大幅な効率化と利益改善に繋がります。

Q: 在庫を減らしすぎると、急な工事で資材不足にならないか心配です。
A: ジャストインタイムは、あくまで適正な在庫を目指すものです。受注予測の精度を高め、それに合わせた安全在庫量を設定することでリスクを低減できます。また、信頼できるサプライヤーとの連携を強化し、緊急時の対応が可能であるかを確認しておくことも重要です。

5. 仕様の見直しと代替品の検討:価値はそのままに、コストを削減

使う資材の品質や機能を損なわずに、より安価な代替品や効率的な工法を検討することも、仕入れ価格削減と利益改善に繋がります。

  • ステップ5-1:設計段階からの原価意識
    施工が始まる前の設計段階から、資材の選定において原価を意識した検討を行います。

    • VE(Value Engineering)の導入:必要な機能・品質を維持しながら、コストを下げるための「価値分析」を行います。例えば、標準的な資材で代替できないか、加工の手間を減らせる資材はないかなどを検討します。
    • 設計者・営業担当者との連携:資材調達部門だけでなく、設計者や営業担当者も巻き込み、初期段階からコスト意識を共有することが重要です。顧客の要望を満たしつつ、原価を抑えるバランスを見極めます。
  • ステップ5-2:代替資材・新技術の積極的検討
    既存の資材に固執せず、常に新しい資材や技術情報を収集し、代替可能性を検討します。

    • 品質と機能の評価:代替資材の導入にあたっては、その品質や機能が既存資材と同等以上であるか、あるいは許容範囲の低下で大幅なコスト削減が見込めるかを慎重に評価します。可能であれば、サンプルを取り寄せ、実際にテストすることを推奨します。
    • メーカーとの連携:常に最新の製品情報や技術動向を把握するため、資材メーカーの担当者と定期的に情報交換を行います。時には、特定の工務店向けにカスタマイズされた資材や、量産効果でコストを抑えた新製品の提案を受ける機会もあります。
    • 工法の見直し:資材だけでなく、施工方法自体を見直すことで、資材ロスを減らしたり、工期を短縮したりする効果も期待できます。例えば、プレカット材の活用、ユニット工法の導入なども広義の資材コスト削減に繋がります。
  • ステップ5-3:輸送費・加工費の見直し
    資材自体の価格だけでなく、そこにかかる付帯費用も原価の一部です。

    • 輸送ルート・ロットの最適化:資材の配送ルートを見直したり、一度に複数現場へ配送できるルートを検討したりすることで、輸送費を削減できます。また、輸送頻度を減らし、一度の輸送量を増やすことも有効です。
    • 現地加工の見直し:現場での加工を減らし、工場でプレカットやプレハブ化された資材を導入することで、現場でのロス削減、工期短縮、人件費削減に繋がります。

Q: 代替品に切り替えることで、品質トラブルが発生しないか不安です。
A: その懸念は当然です。そのため、代替品を導入する際は、必ず事前に品質基準を確認し、小規模なプロジェクトや社内でのテスト施工で実際の使用感や耐久性を検証することが重要です。また、サプライヤーからの保証内容や過去の実績も確認し、リスクを最小限に抑えましょう。

利益改善を継続的に成功させるための「次の一手」

一度仕入れ価格を見直し、利益改善の成果が出たとしても、それで終わりではありません。市場環境は常に変化し、新たな課題が生まれます。持続的な利益改善を実現するためには、PDCAサイクルを回し、情報を共有し、未来を見据える視点が必要です。

6. 定期的なレビューとPDCAサイクルの実践

設定した目標が達成されているか、施策がうまく機能しているかを定期的に確認し、改善を続けることが成功の鍵です。

  • ステップ6-1:成果の定点観測と効果測定
    設定したKPIに基づき、定期的に(例:月次、四半期ごと)仕入れ価格の推移、資材費率、在庫回転率などを確認します。

    • 予算と実績の比較:各プロジェクトや部門ごとに、資材費予算と実際の支出を比較し、乖離がないかを確認します。
    • 削減効果の数値化:具体的な資材ごとの削減額、削減率を数値で把握します。これにより、どの施策が最も効果的だったかが明確になります。
  • ステップ6-2:課題の特定と改善策の立案(Check & Act)
    定点観測で目標未達の項目や新たな課題が発見された場合、その原因を深掘りし、次なる改善策を立案します。

    • 原因分析:「なぜ目標を達成できなかったのか?」「どの工程、どの資材に問題があったのか?」を具体的に分析します。
    • 改善策のブレインストーミング:関係部署(設計、施工、経理など)のメンバーを集め、多角的な視点から改善策を検討します。
    • 新たな目標設定と計画の修正:改善策を計画に落とし込み、必要であれば目標やプロセスを修正し、次のアクションへと繋げます。

Q: 定期的なレビューが形骸化しがちです。どうすれば効果的にできますか?
A: レビューの目的を明確にし、参加者を限定することです。単なる現状報告会ではなく、「次に何をするか」というアクションプランを決定する場と位置づけましょう。また、小さな成功体験を共有し、チーム全体のモチベーション維持に努めることも大切です。

7. デジタルツールの活用と情報共有の推進

効率的なデータ管理と情報共有は、仕入れ価格最適化と利益改善を加速させます。

  • ステップ7-1:原価管理システムの導入検討
    Excelでの管理が限界に近づいてきた場合、専門の原価管理システムやERP(統合基幹業務システム)の導入を検討します。

    • メリット:リアルタイムでの原価状況把握、発注・請求業務の自動化、在庫管理との連携、過去データの分析などが容易になります。
    • 選定のポイント:工務店の業務に特化しているか、既存システムとの連携は可能か、導入コストと運用コスト、サポート体制などを考慮して選定します。
  • ステップ7-2:E-Procurement(電子調達)の活用
    オンラインでの見積もり取得、発注、請求処理を電子化するシステムを活用することで、業務効率化とコスト削減を図ります。

    • サプライヤーとの連携:サプライヤー側にも電子取引に対応してもらうことで、双方の事務負担が軽減されます。
    • 透明性の向上:取引履歴が電子的に残るため、不正防止にも繋がり、より透明性の高い取引が可能です。
  • ステップ7-3:社内でのコスト意識の醸成と情報共有
    仕入れ価格の最適化は、購買担当者だけの仕事ではありません。社員一人ひとりがコスト意識を持つことが重要です。

    • 定期的な勉強会・研修:資材価格の動向、効率的な資材利用方法、コスト削減成功事例などを共有し、知見を深めます。
    • 目標の共有と貢献の可視化:会社の利益改善目標を全社員に共有し、各個人の業務がどのように利益に貢献しているかを可視化することで、モチベーション向上に繋げます。
    • アイデアの募集:現場の社員からのコスト削減に関するアイデアを積極的に募集し、採用されたアイデアには報奨を与えるなどのインセンティブ制度も有効です。

Q: 高額なシステム導入は負担が大きいです。他にできることはありますか?
A: まずは、現状の紙ベースやExcelでの管理を、クラウドストレージ(Google Drive, OneDriveなど)を活用してデータ共有を強化することから始められます。また、SaaS型の安価な業務管理ツールや、会計ソフトに搭載された簡易的な原価管理機能を利用するのも一つの手です。いきなり高額システムを導入するのではなく、スモールスタートで効果を実感してからステップアップすることも可能です。

8. 補助金・助成金の活用とビジネスモデルの進化

原価削減だけでなく、外部からの支援を積極的に活用したり、事業全体を見直したりすることも、利益改善の重要なアプローチです。

  • ステップ8-1:国の補助金・助成金の情報収集と活用
    省エネ資材の導入、スマート建設機械の導入、ITツールの導入など、国や自治体は様々な補助金・助成金制度を提供しています。

    • 情報源の確認:経済産業省、国土交通省、各自治体のウェブサイト、商工会議所、中小企業診断士などから最新情報を収集します。
    • 専門家への相談:申請手続きが複雑な場合も多いため、税理士や中小企業診断士など、専門家に相談することを検討します。

    これらを活用することで、初期投資を抑えつつ、資材調達の効率化や環境性能の向上を実現し、長期的な利益改善に繋げられます。

  • ステップ8-2:高付加価値化と差別化戦略
    仕入れ価格の削減は重要ですが、それだけでは価格競争に陥りかねません。提供するサービスの質や、工務店独自の強みを磨き、高付加価値化を図ることも利益改善に不可欠です。

    • デザイン性・機能性の追求:他社にはない独自のデザイン、高性能な住宅設備、スマートホーム化など、顧客が「この工務店に頼みたい」と思える付加価値を提供します。
    • 専門性の深化:特定の建築分野(例:ZEH住宅、耐震リフォーム、古民家再生など)に特化し、その分野での専門性を高めることで、競争優位性を確立します。
    • 顧客体験の向上:丁寧なヒアリング、きめ細やかなサポート、アフターサービスの充実など、顧客が工事プロセス全体で満足できる体験を提供することで、顧客単価の向上や紹介に繋げます。
  • ステップ8-3:新たな収益源の探索
    建設工事だけでなく、建物のメンテナンス、改修、不動産仲介、コンサルティングなど、工務店の知見を活かした新たなビジネス展開も検討します。

    • ストックビジネスへの転換:新築だけでなく、リフォーム・リノベーション、賃貸物件管理、定期メンテナンスなど、継続的な収入が見込めるストック型のビジネスモデルを取り入れることで、経営の安定化と利益改善を図ります。
    • 地域特性を活かした事業展開:地域のニーズに合わせた空き家再生、地域産材の活用、観光施設開発など、地域密着型の事業展開も有効です。

Q: 補助金や助成金は申請が大変そうですが、メリットはありますか?
A: はい、申請には労力が必要ですが、返済不要な資金を得られる大きなメリットがあります。特に、初期投資を要する新しい技術や設備の導入、従業員のスキルアップなど、長期的な利益改善に繋がる投資への活用は非常に有効です。情報を早くキャッチし、計画的に準備を進めることが成功の秘訣です。

まとめ

本記事では、工務店の経営者であるあなたが直面する「利益が出にくい」という課題に対し、仕入れ価格の最適化を軸とした具体的な利益改善のアプローチを8つのステップでご紹介しました。

まず、セクション1では、あなたの工務店の現状をデータに基づいて正確に把握し、戦略的な目標を設定することの重要性を強調しました。過去の仕入れデータを分析し、隠れた無駄を見つけ出すことが利益改善の第一歩となります。そして、新規サプライヤーの探索と、長期的な関係を意識した交渉術で、より有利な条件を引き出す具体的な方法をお伝えしました。

続くセクション2では、実践的な行動を通じて成果を最大化するための具体的な取り組みを深く掘り下げました。同業他社との共同仕入れによるボリュームディスカウントの活用、過剰な在庫を排し資金効率を高める在庫管理の最適化、さらには資材の仕様を見直し代替品を検討することで、品質を損なわずにコストを削減する手法を詳述しました。

最後のセクション3では、一度きりの取り組みで終わらせず、持続的な利益改善を実現するための「次の一手」を提示しました。定期的なレビューによるPDCAサイクルの実践、原価管理システムや電子調達といったデジタルツールの活用、そして社員全体のコスト意識を高める情報共有の重要性について解説。さらに、補助金・助成金の有効活用や、高付加価値化、新たな収益源の探索といった、工務店の未来を見据えた経営戦略についても触れました。

これらの具体的なアクションプランは、決して魔法の解決策ではありません。しかし、一つひとつを着実に実行し、継続的に改善していくことで、あなたの工務店の原価構造は劇的に変化し、確固たる利益改善、ひいては経営基盤の強化に繋がります。今こそ、現状を変える勇気と行動力を持って、これらの実践的なノウハウをあなたの工務店に導入してください。小さな一歩が、きっとあなたのビジネスを次のステージへと押し上げる大きな力となるはずです。未来に向けた力強い変革を、今すぐ始めていきましょう。

この記事を書いた人

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浄法寺 亘

福島県 喜多方市出身。県立会津高校、市立高崎経済大学卒。工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。現在動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」。住宅情報サイト「ハウジングバザール」の運営にも携わっている。

著書:
頼みたくなる住宅営業になれる本
https://x.gd/oatiM
SDGsに取り組もう 建築業界編
https://x.gd/MXYJr

主な講演:
鹿児島県庁主催「かごしま緑の工務店研修会」
リードジャパン主催「工務店支援エキスポ」(東京ビックサイト)
育英西中学校、その他住宅FCなど

活動実績
2019~ 千葉県にて里山竹林整備ボランティア
2020~ 木ッズ絵画コンクール

工務店の集客・営業ならジーレックスジャパン →ホームページはこちら

商品の差別化へ!制振装置はこちらから →耐震・制振装置

友達申請お待ちしてます! →代表浄法寺のfacebook

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