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事業承継計画を立てる!工務店のスムーズな移行

公開日: : 工務店 経営

工務店を経営する多くの方が直面するのが、自社の事業承継に関する悩みです。「いつかは誰かに会社を任せたいが、どう計画を立てればいいのか分からない」「具体的な手順や進め方が不安」といった疑問は、現場の経営者の間で共通するテーマです。しかし、しっかりとした事業承継計画があれば、組織の混乱や引き継ぎミスを最小限に抑え、事業の発展と従業員の安心を守ることができます。本記事では、工務店経営者が今すぐ取り組める事業承継と事業承継計画の実践的なアクションプランを、ステップごとに詳しく解説します。実例を交えながら、実践的なノウハウを得られる内容ですので、今後の安定した経営・事業継続の第一歩として、ぜひ参考にしてください。

事業承継計画の「実践的」導入戦略:基礎から応用まで

事業承継における第一歩は、計画的な準備です。事業承継計画を立てることは、自社の未来だけでなく、お客様や社員、取引先の安心にもつながります。ここでは「なぜ事業承継計画が必要なのか」、そして工務店経営者がスムーズに導入できる基礎から応用までの戦略を6つのステップで具体的に紹介します。

1. 事業の現状把握から始める

最初に実施すべきは、自社の現状分析です。具体的には、経営状況(財務、組織体制)、事業の強みや課題、主要な顧客や仕入れ先リストなどを整理してください。経営者自身が「自分たちの会社の何を引き継ぐ必要があるのか」を明確にすることがスタートラインとなります。

  • 財務諸表と資産・負債のリストアップ
  • 会社の事業内容や取引先、スタッフの業務分担状況をまとめる
  • 強み(独自工法やノウハウ、ブランド価値)・弱み(人材不足、依存先など)の棚卸し

2. 承継タイプの選定(親族内・社内・第三者)

事業承継には主に「親族内承継」「社内承継」「第三者承継(M&A)」の3タイプがあります。それぞれのメリット・デメリットを整理し、自社にとって最適な選択を検討しましょう。ポイントは、一時的な損得ではなく、中長期的な経営の安定や事業の持続性を重視することです。

  • 親族内承継:現社長の考えを反映しやすいが、適任者がいない場合もある
  • 社内承継:従業員の安心感やスムーズな引き継ぎを期待できる
  • 第三者承継(M&A):経営資源の外部調達や新事業展開も可能

3. 後継者の選定と育成プラン作成

問題は「誰に事業を任せるか」だけでなく、「いかに引き継ぎを円滑に進めるか」です。後継候補者の経験・適性を評価し、能力に応じた育成計画を立てましょう。OJT(現場での実践指導)や経営セミナー、段階的な権限移譲など数年かけた計画的育成が鍵となります。

  • 現場業務からマネジメント分野まで幅広いOJTの実施
  • 業界外からの専門家(税理士、経営コンサルタント)によるサポート
  • 後継者と定期的な面談や振り返りミーティングの実施

4. 事業承継計画書の作成

計画を可視化することで、社内外への発信力が格段に増します。下記ポイントを網羅した事業承継計画書を作成すると、引き継ぎの「道しるべ」が明らかになります。

  • 承継のゴールイメージと達成時期
  • 承継対象(事業、株式、不動産など)の明確化
  • 実務引き継ぎスケジュール(半年、1年、3年など)
  • トラブル時の対応フローや専門家への相談先リスト

5. ステークホルダーへの周知・合意形成

事業承継の過程で最も重要なのは、関係者(社員・取引先・金融機関)への情報共有と納得感の醸成です。タイミングを見た説明会や面談、書面での通知などを段階的に実施し、風評リスクや現場混乱を防ぎましょう。

  • 主要スタッフとの個別面談/グループミーティング
  • 取引先への説明資料の配布・直接訪問
  • 金融機関との事前相談・事業承継計画書の提示

6. トライアル期間の設定と見直しサイクルの確立

計画に完璧を求めるよりも、実行しながら小さく軌道修正できる体制を作ることが大切です。トライアル的な権限委譲や部分承継を経て、実績や課題を随時レビューしましょう。

  • 引き継ぎ開始後、半年ごとの進捗ミーティング設定
  • トラブル発生時のフィードバック体制を明文化
  • 小さな成功体験を積み重ねる段階的な承継運営

以上のプロセスを順守することで、事業承継の混乱リスクを最小限に抑えられます。最初の一歩に悩んでいる経営者こそ、小さな棚卸し・記録から着手してみてください。

事業承継×事業承継計画:成果を最大化する具体的な取り組み

事業承継計画の骨組みを理解したら、次は実務で成果を発揮するための実践例と、よくある疑問への具体的な答えを紹介します。ここでは各ステップで生まれがちな課題への解決策と併せ、工務店ならではの要注意ポイントを重点解説します。

1. 「現場引き継ぎ」の実践例と注意点

工務店事業では、紙の引継ぎ書以上に「現場オペレーション」「顧客対応」「資材調達」「安全管理」など実働のノウハウ共有が肝心です。具体的には、

  • 通常業務をマニュアル化し、現場のリーダーへの説明会を開催
  • 重要案件(リピート顧客や大型案件)は実際に同行して現地指示まで伝える
  • 関係者の顔合わせやコミュニケーション機会を設け“人脈も引き継ぐ”ことを重視

このフェーズでは、日報・週報の共有や「困ったときの相談窓口」を明確にすることで、承継初期の混乱や品質ダウンを回避できます。

2. 「経営ノウハウ・意思決定」の伝授方法

経営感覚や意思決定力は、「学び」だけでなく「現場での経験」によって磨かれます。例えば、受注〜施工〜引き渡しまでの全工程を一度後継者に主担当させ、経営者がメンター役としてアドバイスする「OJT逆転方式」が効果的です。また、株式や事業資産の引き渡しも計画的に進めましょう。

  • 模擬プロジェクト(担当者全権付与)によるトレーニング実施
  • 経営判断の場では理由・選択肢・決断の根拠を「言語化」して共有
  • 株式譲渡のタイミングや税務対策(贈与税・譲渡所得)の事前検討

3. 「承継後」のトラブル予防とサポート体制

承継後、現経営者やOBが良き相談役として関わることで、後継者の孤立防止や事業承継計画の軌道修正が可能です。特に工務店では「伝統工法」や「地域の慣習」、「リピート受注先」など見えにくい部分こそ丁寧な移管がカギです。

  • 旧役員や経営者が一定期間アドバイザーとして残る
  • サポート担当や外部顧問(弁護士・税理士)との定期面談を実施
  • 編集可能な事業承継計画書を活用し、随時アップデートする文化を育む

4. 【Q&A】事業承継・事業承継計画のよくある疑問と回答集

  • Q. 事業承継計画はどの段階から始めるべき?
    A. 目安は「5〜10年前」から準備開始が理想的ですが、「後継候補が現れた」時点からでも遅くはありません。市場や社内外の状況変化を踏まえ、柔軟に見直しましょう。
  • Q. 後継者が育たない場合、どのような選択肢がある?
    A. 社内で適任者がいない場合は「社外登用」や「第三者承継(M&A)」も有力です。外部の専門家に相談し、広い視点で可能性を探ることがおすすめです。
  • Q. 社員や顧客の混乱を防ぐには?
    A. 承継プロセスの事前説明に加え、引き継ぎ後半年〜1年をかけて丁寧な周知とフォローアップを徹底しましょう。信頼性と継続性を重視した広報が大切です。
  • Q. 事業承継計画を見直すタイミングは?
    A. 半年〜1年ごとの進捗状況レビュー時・後継者の成長や事業環境の変化時に柔軟に修正・再策定しましょう。

5. 事業承継で失敗しないための外部リソース活用法

事業承継は経営者一人で抱え込む必要はありません。税理士・弁護士・金融機関・事業承継支援センター等の専門家を早めに巻き込むことで、法務・税務・資産評価などの複雑な課題をプロの知見で解消できます。

  • 県や市町の「事業承継ネットワーク」活用
  • 公的金融機関や下請け先への相談窓口利用
  • 業界や地域のOB会での情報交換やアドバイス

自社に適したサポート体制を築きながら、業界横断的な視点を持つことも、成果最大化への近道です。

事業承継を継続的に成功させるための「次の一手」

無事に事業承継が完了しても、それで終わりではありません。事業承継の成果を持続させ、さらなる事業発展へとつなげていくには「定期的な振り返り」と「次世代へのイノベーション」が不可欠です。ここでは、事業承継後の効果測定や次の経営改善につなげるポイントを解説します。

1. 承継後の現場モニタリングとフィードバック

承継直後は想定外のトラブルや不安が生じがちです。半年ごとなど節目で「現場巡回」「業績レビュー」「社員面談」を実施し、承継計画通りに進んでいるか客観的に点検しましょう。

  • 業務・売上・品質・顧客満足度に関するKPI(評価指標)を明示
  • 現場担当者のヒアリングによる課題抽出
  • 後継者自身の振り返り(現経営者orOBとの1on1ミーティング)

このサイクルが自然に根付くことで、会社全体の課題発見力や改善体質が養われます。

2. 事業承継計画の継続アップデートと次世代化

事業承継計画自体も、時代や事業の成長に応じて進化させていくべきものです。「後継者→次のリーダー」への承継も視野に入れ、継続的な見直し文化を作りましょう。

  • 年1回、経営者・幹部・後継者の三者全体レビュー会議を開催
  • 担当部門ごとに改善提案を公募・採用するボトムアップ文化創出
  • 事業承継計画書はデジタル管理し、改訂履歴を可視化

「後継者自身が承継経験を次世代に伝えていく」ことが、会社の強い伝統や自走力となります。

3. 新体制でのブランド強化・新規事業開発への挑戦

事業承継を機に「新しい経営ビジョン」や「地域密着のブランド化」、「IT・省エネ建築など新分野への挑戦」など発展的な戦略を検討することも大切です。安定した承継基盤の上に、次代の成長シナリオを描きましょう。

  • 新サービスや技術導入による差別化戦略
  • 地元市場への深掘りアプローチ・自治体との連携強化
  • 後継者チーム主導のプロジェクト開発や人材育成制度拡充

承継の安定後ほど、思い切った「攻め」の一歩が現場に活気と希望をもたらします。

4. 事業承継事例から学ぶ、継続的成功のポイント

地域工務店A社では、事業承継計画に基づき3年かけて引き継ぎを実施。引き継ぎ完了後半年ごとの振り返りと経営課題の公開フォーラムを定期開催した結果、社員のモチベーションと自主性が飛躍的に向上しました。こうした取り組みこそが、事業承継の成功を持続的な現場力へと結びつけるポイントです。

まとめ

工務店における事業承継と事業承継計画は、単なる「引き継ぎ」ではなく、会社の未来像を描くとともに当事者・社員・顧客の安心と期待をつなぐ責任ある仕組みです。今回解説した6つのステップで、現状把握〜後継者選定〜計画書作成・周知・トライアルの見直しまでを順序立てて実行することが、スムーズな移行の最短ルートとなります。承継後も定期的なレビューとアップデートを繰り返すことで、会社の成長が止まることはありません。自社に適したペースで一歩ずつ進むことで、不安や課題も必ず乗り越えられます。今日からできる小さな「棚卸し」や「後継者との対話」からスタートし、あなたの工務店にとって理想的な承継を叶えてください。それが未来の発展への力強い礎となるはずです。

この記事を書いた人

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浄法寺 亘

福島県 喜多方市出身。県立会津高校、市立高崎経済大学卒。工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。現在動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」。住宅情報サイト「ハウジングバザール」の運営にも携わっている。

著書:
頼みたくなる住宅営業になれる本
https://x.gd/oatiM
SDGsに取り組もう 建築業界編
https://x.gd/MXYJr

主な講演:
鹿児島県庁主催「かごしま緑の工務店研修会」
リードジャパン主催「工務店支援エキスポ」(東京ビックサイト)
育英西中学校、その他住宅FCなど

活動実績
2019~ 千葉県にて里山竹林整備ボランティア
2020~ 木ッズ絵画コンクール

工務店の集客・営業ならジーレックスジャパン →ホームページはこちら

商品の差別化へ!制振装置はこちらから →耐震・制振装置

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