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後継者問題解決!工務店の事業承継プラン

公開日: : 工務店 経営

工務店を経営されている皆様にとって、「事業承継」と「後継者」の問題は非常に重要かつ難しい課題ではないでしょうか。増加する高齢化や業界構造の変化を背景に、経営者として「自分の会社を誰にどう残すか」「後継者が見つからない・育たない」という悩みをお持ちの方も多いはずです。この記事では、事業承継の現状や本質的な意義を確認したうえで、工務店経営者が実践しやすく、今日からすぐに取り組める具体的なステップと解決策を体系的にお伝えします。
この記事を読むことで、あなたの事業が持続・発展するための事業承継プラン作成のノウハウと、後継者確保・育成のための明確な手順を得られます。「事業承継はいつかやればいい」「後継者がいれば解決」という誤った認識に陥らず、計画性と実効性を伴った対応ができる状態を目指しましょう。

後継者の「実践的」導入戦略:基礎から応用まで

事業承継を考える際、最も大きな壁となるのが後継者の確保と育成です。「誰に継いでもらうのか」「どうやって後継者を成長させるのか」といった悩みは、すべての工務店に共通しています。ここでは、後継者問題の現状整理から、実際の選定・育成までの流れを実践的に解説します。

1. 現状把握:事業承継の基礎知識とリスク認識

  • まず、自社の現状を正しく把握しましょう。特に「誰が後継者候補なのか」「現経営者と後継候補者の年齢、役職、スキルバランス」は必ず整理してください。現状の従業員構成やご家族、外部人材の有無、後継者育成準備度(例:現場経験・経営経験)はどうか、チェックリストを作って数値化してみると、具体的な課題が洗い出しやすくなります。
  • また、事業承継が失敗した場合のリスクも正確に認識しましょう。例えば、後継者を決めないまま引退すると、受注減少・従業員流出・信用不安など一気に経営危機に陥ります。「まだ早い」と考えて先送りしていると、ある日突然、想定外の事態に見舞われる可能性があることを理解しておく必要があります。

2. ステップ別:後継者選定のアクションプラン

次に、事業承継の中核となる後継者の選定方法を、次のようなステップで進めてください。

  1. 事業承継の理想像を具体化する
    • 「誰がどんな会社にするのか」を明確にし、20年後の会社像、価値観(経営理念)、守るべき独自技術や地域性など、自社ならではの魅力も一緒に書き出してみましょう。
  2. 後継者候補のリストアップ
    • ご家族・親族だけでなく、社員や外部採用も候補に加えて広く検討してください。実力本位での選抜が会社の未来につながります。
  3. 短・中・長期の育成計画を立案
    • 経営・現場・顧客対応・リーダーシップ力など、求める人材像に対してどの経験やスキルが足りないのか、3~5年計画で養成カリキュラムを作りましょう。
  4. 後継者本人の意思と適性を見極める
    • 後継者のやる気や価値観の確認には、定期的な面談や第三者も交えた対話が有効です。現経営者と違う視点を持っているかも積極的に評価しましょう。

3. 指名→納得のプロセス:後継者本人と社員を巻き込む

特に事業承継では、「押し付けられる」「正当性に疑問」という空気を残すと、社内外に大きな分断や混乱が生じかねません。後継者の指名は、一方的な通告方式ではなく、次のプロセスで“納得感”を高めてください。

  • 後継者候補本人とじっくり意見交換を行い、本人のビジョンや会社に貢献したいモチベーションを確認する
  • 社員や主要な取引先にも早めに情報を共有することで、社内の理解と信頼を確保する
  • 必要であればコンサルタントや士業に第三者評価を依頼

このプロセスが、後々の摩擦・抵抗感を最小限に抑え、スムーズな事業承継につながります。

4. 実践Tips:小規模工務店ならではの工夫

  • 少人数企業の場合は、後継者の外部採用も現実的なオプションとなります。優良な協力業者や元請先・地域団体などに声をかけ、「信頼できる人物」の目利きを広げてみてください。特定人物に頼りきらず、2人体制(経営サブパートナー制)など複線化も有効な戦略です。
  • また、小規模ならではの現場密着型の教育や、家族経営を逆手に取った「世代越え現場同行」など、他社にはない柔軟性で取り組みやすい施策も多々あります。試行錯誤を恐れず、複数人で「観察・訓練・フィードバック」のサイクルを回すことをおすすめします。

5. まとめ:後継者選びは「最短で」ではなく「最適で」

ここまでの手順をご覧いただくと、工務店の事業承継と後継者育成は、早めに取り掛かることが何よりのリスク対策であり、また“会社の個性”を守るための戦略でもあることがわかります。スピードよりも“納得・適材”にこだわり、必要なステップを一つひとつクリアしていきましょう。

事業承継×後継者:成果を最大化する具体的な取り組み

後継者が決定すれば事業承継は完了、というわけでは決してありません。「引継ぎが形骸化する」「社員や取引先が新体制に不安を覚える」「実務運営に移行できない」など、むしろここからが本番です。このセクションでは、事業承継を“会社の成長”に必ずつなげるためのアクションと、よくある疑問・つまずきポイントへの実践的な解決方法を解説します。

1. 事業承継計画書の作成・共有

  1. 承継スケジュールの策定
    • いつ、誰が、どの業務・権限・資産を引き継ぐかを、月単位・期単位で明文化します。うやむやな部分は全て「未決定リスト」に挙げて今後の議題に。
  2. 経営情報・ノウハウの見える化(マニュアル化)
    • 「社長しか知らない」「属人化」している業務(たとえば顧客リスト、協力業者ネットワーク、資金繰りの勘どころ)を全て棚卸しし、文書化・ファイル化します。A4用紙1枚で1業務手順、写真や動画も積極的に活用してください。
  3. 組織体制・役割分担の再点検
    • 事業承継時は組織改編のチャンスです。経営補佐や現場責任者のラインを強化し、“後継者を支える人”にも役割と権限を明示しましょう。

2. 引継ぎ期のコミュニケーション強化策

  • 「事業承継は社内コミュニケーションの大改革」とも言えます。重要なのは、全社員&取引先(特に主要な元請・協力業者)と継続的に意見交換の場を設けること。月例の全体会議や、個別の「後継者とのランチ会」、職人OBも含めた座談会など、非公式な場を活かして本音を拾いましょう。
  • 同時に、後継者による経営方針説明会・就任挨拶も早い段階で実施し、顧客に「体制は変わっても会社としての信頼・品質は変わらない」ことを納得してもらう工夫が不可欠です。
  • 協力業者や金融機関との情報共有も徹底し、元社長と新後継者が2人で同行営業・相談を半年~1年かけて実施しましょう。「引き継いだから終わり」ではなく、「一緒に現場を回る」期間が最も重要な安定期です。

3. 失敗事例から学ぶ!つまずきポイントとその克服策

  1. 後継者が社員や顧客から受け入れられない
    • 早期から現場出入り・職人との雑談・顧客対応を増やし「現場の苦労」「職人文化」「地域事情」への理解を徹底的に身に着けてもらってください。例えば、経営会議で決して職人を責めない・正論だけで押し切らないという姿勢も大切です。
  2. 現経営者が“口出ししすぎて”新体制が定着しない
    • 前オーナーがいつまでも現場に介入し過ぎると、権限委譲が進まず、組織に混乱が生じます。明確な「見守り期間」と「干渉NG項目リスト」を決め、前社長にも責任感と安心感を持ってもらいましょう。
  3. 資金繰りや相続など、数字のトラブルを見逃す
    • 事業承継をきっかけに、預金・借入・保証・担保・自社株・個人保証など、財務面を第三者専門家(税理士、公認会計士、司法書士、行政書士など)と定期的に点検・再評価してください。数字に強い体制こそ持続的な成長の礎になります。

4. よくある疑問&プロが答えるQ&A

Q. 後継者に経営経験がまったくありません。不安ですが、どうすればよいですか?
A. 小規模の工務店では「現場指揮→営業→経営」の順に段階的OJTを行う事で実効力ある“社長力”を身につけられます。社内外の経営塾・先代との週1面談・外部勉強会への参加も有効です。柔軟に“育てる”体制を作ることが大切です。
Q. 家族が後継者になる場合、社員や取引先へどんな説明をすればよいでしょう?
A. 「なぜ家族なのか」「どんな経営をめざすのか」「現オーナーは今後どう関与するのか」を、具体的に伝えてください。あいまいな説明や情報隠しは不信につながるので、タイミングを見て全員説明会や書面案内を行うとトラブル回避に繋がります。
Q. 「息子(娘)が本当に経営者向きかどうか」悩みます。適性を見極めるコツは?
A. 経営適性は、“数字が得意か”や“リーダーシップがあるか”だけでなく「現社長と違う視点」「地道な現場当番への耐性」「周囲の反応を受け入れる謙虚さ」も大切です。社外メンターやOBの意見を聞く、半年ほどサブリーダー業を任せてみて実際の「態度・反応」で判断してみてください。

5. 実践!成果につなげる7つのチェックリスト

  • 事業承継計画書を「紙とデータ」両方で作成し、印刷して社内の見える場所に貼っているか?
  • 引継ぎ業務のToDoリスト(チェックリスト)が作成され、何項目まで完了したか現時点でわかるか?
  • 後継者が現場・顧客・取引先全てへ“顔を売る”行動ができているか?
  • 社員・現オーナー・後継者の三者で“ミニ懇談会”が月1回ペースで開催できているか?
  • 外部士業(税理士など)との定期面談で、企業理念・財務・規程見直しが進んでいるか?
  • 新体制への移行時に、全体ミーティングや社内報・掲示物で周知活動を実行したか?
  • 「誰もが意見できる」「後継者が失敗しても再チャレンジできる」といった社内風土づくりが進んでいるか?

これらをチェックしつつ、定期的に進捗を振り返りましょう。

事業承継を継続的に成功させるための「次の一手」

無事に後継者がスタートを切っても、事業承継は「終わり」ではありません。継続的な企業成長のためには、“承継後”にどのように振り返り・改善し、未来につなげていくかが非常に重要です。ここでは、より発展的な活用手法と、実践的な改善方法について解説します。

1. 定期的な事業承継レビューのすすめ

  1. 承継後1年目・3年目の「振り返り会議」開催
    • 「何が上手くいき、何が想定と違っているのか」「後継者の強み・弱み」「社員や顧客の反応」を客観的にレビューします。“成功している点”の共有で後継者の自信を高め、“改善点”は早期に施策へ落とし込んでください。
  2. 第三者による定期診断や相談窓口の設置
    • 地域の商工会・専門士業・顧問コンサルタントなど、外部から「経営のプロ」に定期診断・アドバイスを依頼しましょう。「慣れ」や「遠慮」の弊害をなくし、客観的課題発見につなげます。

2. 後継者の「社長力」育成と世代間ギャップ克服

  • 工務店では“地域の顔”としての責任感・人脈力・クレーム対応力・コミュニティ発信力など、単なる経営以外のスキルが求められます。後継者の得意・不得意を把握し、社外の異業種社長勉強会や、「社長の悩み・実例交流会」への積極参加を習慣化しましょう。
  • 世代間ギャップについては、旧経営者と新後継者が「昔の成功事例」「今の取組や苦労」を定期的に情報交換できる“親子会議”や、“顧客・取引先を交えた座談会”の開催も効果的です。承継前後で温度差が出ていないか、外部アンケートで本音を拾うこともお勧めします。

3. 新たな成長戦略への着手

  • 事業承継を経て生まれた「新しい目線」を最大限に活かしましょう。例えば、新後継者の得意分野(DX、SNS活用、リフォーム新事業、人材育成、女性職人の積極採用など)を起点とした新事業プロジェクトを立ち上げる。また、小規模事業者持続化補助金・経済産業省の事業承継補助金など、各種支援策も積極活用し、時代に合った挑戦を始めてください。
  • 「現状維持」だけに満足せず、新しい成長の芽を植えることで、社員・取引先・地域社会すべてに“前向きな変化”を感じてもらえる会社になります。

4. 失敗を恐れない、“再チャレンジ”風土づくり

  • 承継後のうまくいかないエピソードや失敗事例も、全社員の前で正直に語りましょう。後継者が「間違っても大丈夫」「挑戦をやり直せる」社風を作ることで、会社全体の士気も格段に高まります。
  • 「10年後もまた、さらに良い形で事業承継を続けていく」ため、未来の“次期後継者”も今から育て始める視点を持ちましょう。

5. 実践的効果測定・PDCAサイクルの確立

  1. 定量的な経営指標(売上・粗利・受注件数・新規顧客率など)で、前後比較を必ず実施
  2. 社員満足度・顧客リピート率・業者(協力会社)の定性アンケートも半年毎に実施
  3. 気になる点はすぐ「臨時会議」を設け、小さな変化も早期に拾い上げてください

効果と課題を数値化・見える化することで、今後の“持続可能な事業承継”につなげていけます。

まとめ

工務店の事業承継と後継者育成は、「後回しにできない会社の最重要課題」であると同時に、実は“未来を切り拓く最大のチャンス”でもあります。現状の課題把握から実践的な選定・育成手順、計画的な引継ぎ、承継後の会社の成長戦略まで、この記事で紹介した具体策を一歩ずつ実践していくことで、貴社は社内外の信頼感と競争力を着実に高めていけます。
何よりも大切なのは、「行動を始めるタイミング」です。今日からチェックリストや承継計画書の作成・共有、社内外の対話促進、後継者への実践的訓練など、できることから取り組んでみてください。積み重ねが必ず「将来、良かった」と思える道につながります。事業承継の課題を乗り越えた先に、あなたと事業の未来が明るく続いていくことを、心より願っています。

この記事を書いた人

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浄法寺 亘

福島県 喜多方市出身。県立会津高校、市立高崎経済大学卒。工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。現在動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」。住宅情報サイト「ハウジングバザール」の運営にも携わっている。

著書:
頼みたくなる住宅営業になれる本
https://x.gd/oatiM
SDGsに取り組もう 建築業界編
https://x.gd/MXYJr

主な講演:
鹿児島県庁主催「かごしま緑の工務店研修会」
リードジャパン主催「工務店支援エキスポ」(東京ビックサイト)
育英西中学校、その他住宅FCなど

活動実績
2019~ 千葉県にて里山竹林整備ボランティア
2020~ 木ッズ絵画コンクール

工務店の集客・営業ならジーレックスジャパン →ホームページはこちら

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