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工務店のポートフォリオ戦略!リスク分散と収益最大化

公開日: : 工務店 経営

現代の工務店経営は、新築注文住宅市場の縮小や、リフォーム需要の変動、競合の増加など様々な課題に直面しています。「どうすれば安定した経営を維持しながら、収益性を最大化できるのか?」という疑問は、多くの工務店経営者がいま最も強く抱えている悩みでしょう。
こうした経営環境のなかで、確実に成長していくためには「経営戦略」の再構築が不可欠です。なかでも、事業領域やサービス、顧客層を分散・最適化する「ポートフォリオ」型の考え方が注目されています。
本記事では「経営戦略」および「ポートフォリオ」について、工務店経営で失敗しないための具体的な実践手順、今日から着手できるアクション、成果を最大化するためのポイント、そして将来への着実な一歩を提案します。「経営戦略の再構築のやり方がわからない」「何から始めればリスク分散できる?」といった方でも、明日から自社で実行可能な内容となっています。ぜひ、ご自身の経営に照らし合わせてご活用ください。

ポートフォリオの「実践的」導入戦略:基礎から応用まで

まずは「ポートフォリオ」という考え方を、工務店経営にどのように組み入れるかを明らかにしましょう。ここからは、基本的な概念の整理と併せて、自社でポートフォリオ戦略を導入する際の手順を、業種特性に即して分かりやすく解説します。

1. ポートフォリオの基本:なぜいま分散型経営が強いのか

工務店経営でいう「ポートフォリオ」とは、事業やサービス内容、または顧客ターゲットを複数に分けてバランスよく展開する手法を指します。新築住宅だけでなく、リフォーム・リノベーション、不動産関連サービス、外構・エクステリアなど、複数の収益源を持つことがその特徴です。
このアプローチをとる理由は、景気や需要の波による影響を局所化させ、ひとつの市場環境変化に過度に依存しないためです。つまり、リスクを分散しながら収益を安定させることができるのです。昨今の住宅市場の先細りや、災害リスク、法改正といった外的要因に対抗できる意味があります。

2. 成功するポートフォリオ設計の手順

実際にポートフォリオ型の経営戦略を導入するためのステップを、できるだけ具体的にアクションベースで整理します。

  1. 現状把握・事業分解
    まず、自社が現在どのような事業・サービスを持ち、各々の売上・利益構造、人的資源の配分状況を把握しましょう。
    ・「新築住宅」「リフォーム」「小規模営繕」「不動産」「外構」など、現在手掛けている全事業をリストアップしてください。
    ・各部門の売上高、粗利、人材配置、年間受注件数、顧客属性などを表などで見える化しましょう。
  2. 事業ごとのポジション分析
    各事業領域ごとに、「市場の成長性」「自社の強み・シェア」「競争環境」などを評価します。
    ・「どの分野に今後伸びしろがあるか?」
    ・「自社が最も得意な得意分野はどこか?」
    ・「リスクが高い領域はどこか?」
    主観的な評価だけでなく、国交省や業界団体のデータも活用して客観性を担保しましょう。
  3. 分散度(ポートフォリオ)の最適化
    上記2ステップを踏まえ、以下2つの視点で最適解を検討してください。
    ・「今後も力を入れるべき収益源はなにか?」
    ・「新たに追加・強化する事業はなにか?」
    たとえば、住宅リフォームや高齢者住宅対応、省エネ改修など社会の動きを取り入れ、着実に拡大しそうなテーマに注力するのが現実的です。
  4. 優先順位づけ・経営資源配分
    複数の事業を同時に展開する場合、ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源を効率よく配分する必要があります。
    ・主要な人材(営業、設計、現場監督など)の得意分野と希望をヒアリング
    ・収益性、将来性、リスクなどの指標に応じ、重点投下部門を決定
    ・新事業分野には新たな採用や人材育成、あるいは外部パートナーの活用も検討しましょう
  5. ポートフォリオの可視化と管理体制の構築
    最後に、経営戦略として策定したポートフォリオが、実際の業績や日々のオペレーションでどのように機能しているかを、定期的に見える化・チェックする体制が重要です。
    ・定例経営会議で各事業別KPIの推移を報告・分析
    ・予算、実績、人員配置の進捗を四半期ごとにレビュー
    ・経営環境の変化に応じて、柔軟に組み換えができるよう留意しましょう

3. 工務店における典型的な失敗パターンと回避策

・一つの事業(多くは新築受注)への依存度が高すぎる
・ポートフォリオ構築後もメリハリなくリソースを分散しすぎて、全部が中途半端になる
・短期的な売上や流行だけに振り回され、じっくり自社の強みを作り込んでいない

これらを防ぐため〈中長期的な視野を持つこと〉や、事業ごとに達成目標を明確化すること、定期的な見直しの仕組み化が必須です。

経営戦略×ポートフォリオ:成果を最大化する具体的な取り組み

ここでは、経営戦略とポートフォリオをどう組み合わせれば、実際に成果=数字(売上・利益・案件数・お客様満足度など)を最大化できるのか、その具体的な実践工程や工夫例を、すぐ実行できる形で紹介します。

Q&A:ポートフォリオ戦略に関するよくある疑問と実践例

Q1. どんな事業ポートフォリオが望ましいのか?
「最適なポートフォリオ」は、地域や会社規模、既存顧客層によって異なりますが、多くの工務店に共通するおすすめの分散例は以下の通りです。

  • 主軸(例:新築住宅)60~70%
  • リフォーム 20~30%
  • 不動産売買や賃貸仲介 5~10%
  • 外構・エクステリア・小修繕など 5~10%

一律の正解はありませんが、利益率や商材自体のバラつきを加味し、成長性ある分野はやや多めにリソース投下するのがコツです。

Q2. 新規分野や新サービスをどう立ち上げるべきか?
まずは既存顧客へのヒアリングやアンケートを実施し、潜在ニーズを探ることから始めましょう。小規模なテスト販売やイベント開催で反響や継続性を検証後、本格的に人員配分やPR展開を検討してください。最初から大きく投資せず、現場で「売れる・求められる」実感を得てからリソースを最適化しましょう。
Q3. 競合との差別化はどうすべき?
一つの事業分野で価格やカタログ勝負になるより、「自社ならではの組み合わせ」「ワンストップ体制」「地域密着のアフターサービス」など横断的な強みを事業のクロスセルで活かすのが有効です。ポートフォリオの分散は、提案力やブランド強化にも大きな力となります。
Q4. ポートフォリオ転換時に起こる現場の混乱を避けるには?
新規分野への進出やリソース再配分時は、社内での情報共有や意義説明が不可欠です。現場スタッフや営業担当者から「なぜいま変えるのか」「どうやって成果をはかるのか」具体的に伝え、教育や業務フローの試行期間を設けて徐々にスムーズに移行しましょう。

成果を出す経営戦略×ポートフォリオ 実践ステップ

  1. ターゲット市場・サービスの選定と深掘り
    例えば、お客様の年代ごとに「子育て世代リノベ」「シニア世代向けバリアフリー」「二世帯住宅」など、顧客ニーズを軸にポートフォリオを細分化します。
    逆に、収益性より集客入口として位置づける「外構・修繕」、リピート率や紹介を増やすための「OB管理」など、目的ごとに事業分野を設計するのも有効です。
  2. 部署横断型チームの設置と社内ノウハウ共有
    複数事業を並行する際は、組織内連携を強めるためプロジェクトベースのチーム編成や、現場の経験・成功事例共有の文化を築きましょう。
    定例会議で事例発表の機会をつくるなど、社内での気づきから新ビジネスの種が見つかることも少なくありません。
  3. 全方位の収益管理(KPI・KGIの再設定)
    新たに設定したポートフォリオの各事業には、それぞれ独立したKPI(受注件数、粗利益、顧客満足度など)と目標設定(KGI)が不可欠です。一律の「売上」目標だけでなく、「事業ごとの成果指標」を明確化することが継続的な成果の鍵になります。
  4. 失敗からの学びとPDCA体制の強化
    新事業や新分野への挑戦には必ず「想定外」が生じます。重要なのは、うまくいかなかった点を毎回現場で振り返り、「次の改善策」を全社で共有すること。
    ・毎月、部署ごとの小型レビュー会議を実施
    ・失敗体験もオープンに発表できる雰囲気を形成
    これにより、現場のリアルな成功事例が蓄積され、ポートフォリオの組み換え判断も一段と精緻になります。

事例紹介:ポートフォリオ転換で成果を上げた工務店のリアルな声

愛知県のある工務店では、従来新築メインだった事業体制を見直し、リフォーム・不動産事業へ経営資源を段階的に配分。新規部門は小規模からスタートし、2年後には全体売上の30%を担うまでに成長しました。スタッフ定着率・お客様リピート率も向上しています。
このように、自社の状況や地域特性を加味しつつ、着実に実行可能なポートフォリオを自社オリジナルで作り込むことが、経営戦略の肝となります。

経営戦略を継続的に成功させるための「次の一手」

ポートフォリオ型の経営戦略は一度つくれば終わりではありません。時代や市場、顧客の変化に合わせて、柔軟かつスピーディーな見直し、そして「進化させていく」運用こそが継続的成功のカギとなります。ここでは、実効性のある「運用・改善」のための仕組みや、今日から使えるアクションをご紹介します。

1. 毎年「ポートフォリオ健康診断」を実施する

年に一度は、各事業の「現状維持か強化か撤退か?」をゼロベースで見直しましょう。売上・利益はもちろん、
・地域社会との関わり
・従業員の満足度や成長
・将来の収益源育成につながるか
の観点も盛り込んでバランスよく評価してください。必要なら事業分野の新規追加や統廃合も視野にいれましょう。

2. 組織・人材・現場オペレーションの再点検

ポートフォリオ経営は現場スタッフの協力なくして成立しません。毎年、
・人材の適正配置(年齢、キャリア、志向に応じた再配置)
・新規分野への人材育成(研修、資格取得サポート、他社視察)
・「現場の声を吸い上げる」仕組み(定期ヒアリングや、業務改善提案制度)
を点検し、よどみなく動く体制を作りましょう。
また、受注~現場引き渡し~アフターケアまでの業務フローも継続的に見直し、ムリ・ムダ・ムラを減らす取り組みを定着させてください。

3. デジタル活用×情報の見える化で経営判断を加速

近年は小規模工務店でも、クラウド会計や業務管理、営業支援(CRM)のシステム導入が主流になってきています。
・全事業の進捗データを一元管理できるシステム
・現場写真/日報のクラウド共有
・顧客属性や受注経路のデータ分析
こうしたデジタルツール活用により、経営戦略の意思決定やポートフォリオの軌道修正を迅速に行えるようになります。まずは身近なクラウドサービスから、小さく始めてみるのもおすすめです。

4. 地域密着型ブランド構築と持続可能性への貢献

ポートフォリオ経営と並行し、「自社だからできること」をさらに尖らせていきましょう。
・地域イベントや勉強会参加による認知拡大
・地域のお困りごと(空き家対策、子育て住宅、断熱・省エネ改修など)への積極的な関わり
・地場ネットワーク(職人、異業種企業、行政など)との連携強化
こうした活動の積み重ねが、単なる数字の成長に留まらず「地元になくてはならない工務店」への進化を促します。
持続可能な社会づくりという観点から、自社の経営戦略を意識的に地域貢献やSDGs的テーマと絡めていくのも中長期的なブランド力向上の近道です。

5. 成果測定とフィードバックループの仕組み作り

事業ごとの定量データ(売上、利益、成約率、顧客満足度、リピート率)の記録・分析、成功要因の整理、問題点の早期抽出を仕組み化しましょう。四半期ごとの振り返り会議、社内報による事例共有など「PDCAサイクル」が自社文化として根付けば、経営戦略も現場で生かされ続けます。

実践し続けるために:経営者自身が持つべき視点

短期的な売上アップや流行に踊らされることなく、自社の本質的な強み・社会的使命を見据え、環境変化にフレキシブルに対応できる「しなやかさ」と「現場密着型リーダーシップ」が重要です。
経営戦略×ポートフォリオの実践は、単なる流行の経営手法ではなく、工務店としての持続的成長のための「当たり前の基本」として定着させていくことが、未来を切り開く道となります。

まとめ

本記事では、工務店の経営戦略に不可欠なポートフォリオ型思考の基礎から、明日から始められる実践ステップ、そして成果を測定しながら継続的に進化させるための具体策までを体系的にご紹介しました。自社の現状分析、事業分野の再構築、組織体制・人財育成、デジタル活用、地域密着経営、成果のフィードバック…。これら一つひとつのアクションが“経営基盤の安定”と“成長スピード”を支えます。
「今日からなにを始めよう?」と迷うときは、まず自社の事業全体を見える化し、現実を直視することからスタートしてみてください。変化を恐れず、しかし目先の流行に流されすぎず、自社らしい「経営戦略×ポートフォリオ」のかたちを作っていけば、どんな環境変化のなかでも持続的に成長できる経営体質が築けるはずです。皆さまの新たな挑戦に期待し、心からエールをお送りします。

この記事を書いた人

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浄法寺 亘

福島県 喜多方市出身。県立会津高校、市立高崎経済大学卒。工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。現在動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」。住宅情報サイト「ハウジングバザール」の運営にも携わっている。

著書:
頼みたくなる住宅営業になれる本
https://x.gd/oatiM
SDGsに取り組もう 建築業界編
https://x.gd/MXYJr

主な講演:
鹿児島県庁主催「かごしま緑の工務店研修会」
リードジャパン主催「工務店支援エキスポ」(東京ビックサイト)
育英西中学校、その他住宅FCなど

活動実績
2019~ 千葉県にて里山竹林整備ボランティア
2020~ 木ッズ絵画コンクール

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