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住宅展示場での成約率を向上させるための接客スキル

公開日: : 工務店 経営

工務店経営者として、集客や売上向上は常に考えなければならない課題ではないでしょうか。特に、時間やコストをかけて出展している住宅展示場での成果が出にくいと感じている工務店様も少なくありません。多くの来場者があるにも関わらず、その後の個別相談や成約に繋がらないのは、どこかに改善の余地があるのかもしれません。住宅展示場は、見込み客と直接対話し、自社の強みや家づくりのコンセプトを伝える絶好の機会です。この機会を最大限に活かし、成約率を高めることは、工務店経営において非常に重要な要素となります。この記事では、住宅展示場での接客に焦点を当て、来場者の心に響く具体的なコミュニケーションスキルや、成約率を向上させるための実践的なステップをご紹介します。この記事を読むことで、あなたは住宅展示場での課題を明確にし、明日からすぐに実践できる具体的なアクションプランを手に入れることができるでしょう。結果として、来場者からの信頼を得て、理想的な顧客との出会いを増やし、最終的な成約率を大きく向上させることができるはずです。

住宅展示場での成約率向上を阻む壁:基礎を知り実践への第一歩を踏み出す

住宅展示場に時間と予算をかけて出展しているにも関わらず、期待するほど成約に繋がらないと感じている工務店経営者の方は多いのではないでしょうか。住宅展示場は、インターネットでは伝えきれない、実際に建物の雰囲気や質感を体験してもらい、スタッフと直接コミュニケーションを取ることで信頼関係を築ける貴重な機会です。しかし、その機会を十分に活かせず、来場者がただ「見て回るだけ」で終わってしまうケースも少なくありません。

成約率が伸び悩む背景には、いくつかの共通する課題が存在します。これらを明確に理解し、対処することが、成約率向上に向けた第一歩となります。

なぜ、住宅展示場での成約率は伸び悩むのか?共通の課題とは

多くの工務店が住宅展示場で直面する課題は多岐にわたりますが、特に成約率に直結しやすいのは以下の点です。

  • 一方的な情報提供になっている:来場者の興味や関心、悩みを十分に引き出せず、自社のPRばかりになってしまう。
  • 準備不足:来場者に関する事前情報(もしあれば)の共有不足、展示場の清掃や資料準備が不十分。
  • 接客レベルのばらつき:スタッフによって対応の質に差があり、せっかくの機会を活かせない。
  • 次のステップへの誘導が不明確:展示場見学で終わってしまい、個別相談やイベント参加など、次の具体的な行動に繋げられていない。
  • 追客の仕組みがない、あるいは不十分:見学してくれた来場者へのフォローアップが適切に行われていない。

これらの課題を克服するためには、まず「なぜ来場者は住宅展示場に来るのか?」という根本的な問いに対する理解を深める必要があります。

成約率アップへのマインドセット:「売る」意識から「助ける」意識へ

成約率を高める上で最も重要なのは、私たちの意識改革です。「住宅展示場で家を売るぞ!」という強い「売る」意識は、時として前のめりになりすぎたり、来場者の話を十分に聞けなくなったりすることに繋がります。来場者は、もちろん家づくりに興味がありますが、それ以上に「自分たちの理想の暮らしをどう実現できるのだろう」「失敗したくない」「資金が不安」「何から始めればいいか分からない」といった様々な期待や不安を抱えています。

ここで必要なのは、「売る」意識から「助ける」「サポートする」意識への転換です。来場者の抱える課題や悩みを「私たちが解決します」「私たちが理想の家づくりを伴走します」という姿勢で向き合うことが、信頼関係の構築に繋がり、結果として成約率向上の土台となります。住宅展示場では、まずは来場者の「味方」になることから始めましょう。

万全な準備が自信と余裕を生む:住宅展示場を迎える前のチェックリスト

優秀な営業マンは、必ず事前の準備を怠りません。住宅展示場での接客においても同様です。入念な準備こそが、当日自信を持って来場者と向き合い、質の高いコミュニケーションを実現するための鍵となります。

【実践チェックリスト】

  1. 来場者情報の確認・共有:もしウェブサイトからの予約など、事前に来場者情報が得られる場合は、参加スタッフ全員で共有し、どのような関心を持っていそうかの仮説を立てる。過去の同様の来場者データも参考に。
  2. 展示場の清掃・整備:建物内の清掃はもちろん、庭、アプローチ、駐車場まで、来場者が最初に目にする場所を徹底的に美しく保つ。モデルハウス内の換気、温度調整も忘れずに。
  3. 資料の準備・整理:会社案内、施工事例集、標準仕様、資金計画の例、土地情報のファイルなど、必要な資料を種類ごとに整理し、すぐに取り出せる場所に用意する。最新版かどうかも確認。
  4. お客様用スペースの準備:ゆっくり座って話ができるテーブルや椅子の準備、お茶やコーヒーの用意。小さなお子様連れのためにキッズスペースやおもちゃを用意するなどの配慮。
  5. スタッフ間の役割分担と目標確認:誰が受付、誰が案内、誰が詳しく説明するのかといった役割分担を明確にする。今日の来場者目標、個別相談予約目標などを共有する。
  6. 接客フローの確認・シミュレーション:標準的な接客の流れ(挨拶→アイスブレイク→ヒアリング→案内→提案→次のステップへ)をメンバー間で再確認。特に難しい質問への対応や、次のステップへの誘導方法について簡潔にシミュレーションしてみる。
  7. 身だしなみのチェック:清潔感のある服装、髪型、靴、名札など、プロフェッショナルとしての身だしなみを整える。笑顔のチェックも忘れずに。

これらの準備を当日慌てて行うのではなく、前日まで、あるいは当日の朝に余裕を持って完了させることが重要です。住宅展示場全体が最高の状態で来場者を迎えられるように、チーム全体で取り組んでください。

来場者の心をつかむ住宅展示場での接客術:成約に繋がる具体的な行動

事前の準備が整った上で、いよいよ来場者との対面です。住宅展示場での接客は、まさに自社の第一印象を決定づける瞬間であり、その後の成約率に大きく影響します。ここでは、来場者との信頼関係を築き、成約へと繋げるための具体的な接客スキルと行動について解説します。

最初の数秒で差をつける!印象を決定づける迎え方

来場者が住宅展示場に一歩足を踏み入れた瞬間から、接客は始まっています。最初の数秒で「話しやすそうだな」「感じが良いな」と思ってもらえるかが非常に重要です。

【実践ステップ】

  1. 最高の笑顔とアイコンタクト:来場者の顔を見て、心からの笑顔で迎える。これが最も基本的でありながら、最も強力なツールです。
  2. ハキハキとした挨拶:「こんにちは!」「いらっしゃいませ、〇〇ホームです!」など、明るく元気な声で挨拶をする。お辞儀も忘れずに。
  3. 「どうぞ、ごゆっくりご覧ください」+α:すぐに商品説明に入るのではなく、まずはリラックスしてもらうことを促す。「今日の〇〇地方は少し暑いですね。展示場内は涼しくしておりますので、ごゆっくりどうぞ」など、季節や天気、来場者の状況に合わせた一言を加えると親近感が湧きます。
  4. すぐに声をかけすぎない配慮:特に初めての来場者は、まずは自由に見て回りたいと考えている場合が多いです。入り口付近で簡単な挨拶と案内をしたら、すぐに密着せず、少し距離を置いて見守る姿勢も大切です。「ご不明な点や、何か知りたいことがございましたら、お近くのスタッフにお気軽にお声がけください」と伝え、安心感を提供します。
  5. 来場者の様子を観察する:どの部屋や場所に興味を持っているか、どのような雰囲気で見て回っているかを観察し、声をかけるタイミングや内容のヒントを得る。

最初の印象で「この人になら相談できそう」と思ってもらうことが、その後のスムーズなコミュニケーション、そして成約率向上に繋がります。

ヒアリングは「聞く」ではない、「引き出す」技術

多くの工務店が「商品の説明」に時間をかけすぎがちですが、成約率の高い接客の肝は「ヒアリング」にあります。来場者が何を求めているのか、何に悩んでいるのかを深く理解することが、的確な提案に繋がります。ヒアリングはただ質問するのではなく、来場者から自然と本音や重要な情報を「引き出す」技術です。

【実践ステップ】ヒアリングで引き出すべき情報と質問例

  1. 家づくりを考え始めたきっかけ:「お子様の入学に合わせてですか?」「今のお住まいに何か不便を感じていらっしゃいますか?」
  2. 家づくりに対する想いや憧れ:「新しい家でどんな暮らしがしたいですか?」「どんな雰囲気の家がお好みですか?(写真や雑誌を見ながら話す)」
  3. 現在の状況:「土地はお探しですか?それともお持ちですか?」「現在の住まいは賃貸ですか?持ち家ですか?」
  4. 予算や資金計画に対する考え:「資金計画については、どのようにお考えでしょうか?」「どのくらいの月々のお支払いなら無理がないと感じますか?」※非常にデリケートな話題なので、信頼関係ができてから丁寧に。
  5. 家づくりで重視するポイント:「特にこだわりのポイントはありますか?デザイン、性能、間取り、素材など。」「逆に、これは譲れないという条件はありますか?」
  6. 不安や疑問:「家づくりに関して、何か不安なことはありますか?」「今まで他社さんの話を聞いて、分かりづらかった点はありますか?」

    【実践テクニック】

  7. オープンクエスチョンを多用する:「はい/いいえ」で答えられるクローズドクエスチョンだけでなく、「どのように?」「どんな時に?」「なぜ?」といった質問で、来場者が自身の言葉で話せるように促す。
  8. あいづちと共感:相手の話にしっかりと耳を傾け、「なるほど」「そうなんですね」といったあいづちを打つ。来場者の感情や状況に共感する言葉(「それは大変でしたね」「よくわかります」)を挟むことで、話しやすさを高める。
  9. 沈黙を恐れない:質問を投げかけた後、来場者が考え込む時間も大切です。すぐに次の言葉を重ねず、じっと待つことで、より深い話が出てくることがあります。
  10. メモを取る:話を聞きながら重要なポイントや要望をメモする。これは真剣に話を聞いている姿勢を示すと同時に、後で見返して提案に活かすために不可欠。
  11. バックトラッキング:相手が言った言葉を繰り返す。「〇〇ということですね?」と確認することで、理解のずれを防ぎ、相手は「ちゃんと聞いてもらえている」と感じる。

ヒアリングは、来場者との信頼関係を築き、彼らの真のニーズや潜在的な要望を引き出すための最も強力なツールです。時間をかけて丁寧に行うことで、その後の提案の質が格段に向上し、成約率に直結します。

来場者の心に響く!住宅展示場での効果的な案内と提案

ヒアリングで得た情報を元に、住宅展示場を案内し、自社の家づくりを提案します。ここでは、一方的な説明ではなく、来場者の関心やニーズに合わせたパーソナルな案内と提案を心がけることが重要です。

【実践ステップ】

  1. ヒアリング内容に基づいた案内:来場者が特に興味を示した部屋や仕様から案内を始める。「〇〇様は特にキッチンにこだわりがおありとのことでしたので、まずはこちらをご案内します」など、ヒアリングで得た情報を活用していることを伝える。
  2. ポイントを絞った説明:全ての設備や仕様を網羅的に説明する必要はありません。来場者のニーズや疑問点に関連する部分に焦点を当てて、分かりやすく説明する。
  3. 体験談やストーリテリング:「以前、同じように△△に悩んでいたお客様が、この仕様を採用されて大変喜ばれまして…」「このキッチン、実は我が家の妻もお気に入りなんですよ」など、具体的なエピソードやストーリーを交えることで、説明に深みが増し、聞き手の記憶に残りやすくなります。
  4. 五感に訴えかける:住宅展示場だからこそできる体験を提供します。「この床材、ぜひ触ってみてください」「窓からの景色を眺めてみましょう」「この部屋の空気のきれいさを感じてみてください」など、視覚だけでなく、触覚、嗅覚、聴覚にも訴えかける工夫を。
  5. 専門用語は避ける・解説する:建築用語、専門的な工法や仕様について説明する際は、必ず来場者に分かりやすい言葉に置き換えるか、丁寧に解説を加える。「これは〇〇という工法でして、簡単に言うと地震にとても強くなるんです」のように。
  6. 競合との「違い」を伝える:さりげなく、しかし明確に、他社ではなく自社を選ぶメリット、自社の強みやこだわりを伝える。「同じような間取りに見えるかもしれませんが、当社の場合は断熱材に〇〇を使っているので、夏は涼しく冬は暖かく過ごせるんです」のように、具体的なメリットとともに伝える。
  7. 不安や疑問をその場で解消:案内中や提案中に来場者が疑問や不安を感じていないか、表情や仕草を観察し、積極的に「何か気になる点はございますか?」「〇〇について、もう少し詳しく知りたいことはありますか?」と問いかける。どんな小さな疑問にも真摯に答える姿勢が信頼につながる。

住宅展示場での案内と提案は、単なる建物の見学ではなく、来場者の「理想の暮らし」という夢を具体的にイメージしてもらうための時間です。共感と理解に基づいたパーソナルな対応が、来場者の心を動かし、その後の成約率を高めます。

次の一手へ繋げる!スムーズなクロージングと追客戦略

住宅展示場での滞在時間を終えるにあたり、重要なのは来場者が「次の行動」を取りたくなるような流れを作ることです。ここで強引なクロージングは逆効果。自然な形で次のステップへと誘導し、丁寧な追客に繋げることが、成約率向上には不可欠です。

【実践ステップ】

  1. 感謝を伝える:貴重な時間を割いて来場してくれたことへの感謝を伝える。「本日は弊社住宅展示場にご来場いただき、誠にありがとうございました。」
  2. 学びや気づきを共有する:ヒアリングで得た内容を簡単にまとめながら、「〇〇様は△△という点を非常に大切にされていることがよくわかりました。当社の家づくりは、まさにそのお手伝いができると思っております」など、来場者の話をしっかり聞いた上で理解したことを伝える。
  3. 次のステップを具体的に提示する:来場者の状況や興味に合わせて、具体的な次の行動を提案します。
    • 資金計画や土地探しに不安がある方へ:「まずは、資金計画について専門家とじっくり話せる無料相談会にご参加いただけますか?」「ご希望のエリアで今出ている土地情報をいくつかご紹介しましょうか?」
    • もっと詳しく自社の家づくりを知りたい方へ:「後日改めて、〇時間ほどお時間をいただき、今回のヒアリング内容に基づいた具体的なプランを一緒に考える『個別相談会』はいかがでしょうか?」
    • 他の工務店とも比較検討したい方へ:「本日の内容を踏まえ、もし今後もっと詳しく知りたい点や疑問点が出てきましたら、ご遠慮なくお電話やメールでご連絡ください。」

    提案する際は、そのステップを踏むことで来場者にとってどのようなメリットがあるのかを明確に伝えることが重要です。(例:「資金計画の不安が解消されるので、安心して家づくりを進められますよ」)

  4. 連絡先の交換と許可:連絡先の交換(アンケート記入など)をお願いし、「今後、家づくりに関する有益な情報などをメールでお送りしてもよろしいでしょうか?」など、追客の許可を得る。
  5. 感謝のお手紙やメール:住宅展示場来場から1~2日以内には、あらためて感謝の気持ちを伝えるとともに、今日の話で心に残った点や、提案した次のステップについて触れるお礼のメールや手紙を送る。(手書きのお手紙は特に印象に残ります)
  6. 継続的な情報提供:許可を得た方に対して、家づくりに関するコラム、イベント情報、見学会の案内など、一方的な売り込みではなく、来場者にとって価値のある情報を定期的に提供し、繋がりを保つ。
  7. 反応に応じた柔軟な対応:追客に対する来場者の反応(返信、質問など)に合わせて、電話や面談など、最適な方法でフォローアップを行う。しつこすぎず、忘れられない程度のペースと内容を心がける。

重要なのは、住宅展示場での一度の出会いを大切にし、その後も継続的に来場者との良好な関係性を築いていくことです。これにより、来場者が「家を建てるならこの工務店に頼みたい」と感じる信頼感を醸成し、成約へと繋がっていきます。

よくある疑問を解消!住宅展示場での接客FAQ

Q1: 住宅展示場に来ても、ほとんど話をしてくれない方への対応はどうすれば良いですか?
A1: 強引に話しかけるのは逆効果です。まずは笑顔で挨拶し、「ごゆっくりご覧ください」と伝え、見守る姿勢が大切です。もし機会があれば、「何か特に興味のあるところはありますか?」「何かお探しのものはございますか?」など、来場者が答えやすい短い質問を投げかけてみる程度に留めます。もし反応がなければ、連絡先や資料だけお渡しし、「何かあればいつでもお声がけください」と伝えて、プレッシャーを与えないようにします。彼らが話したいタイミングを待つ、あるいは資料を持ち帰って後で検討する自由を与えることが、工務店への信頼に繋がる場合もあります。
Q2: 他のお客様を接客している時に、新しい来場者が来たらどうすれば良いですか?
A2: 状況によりますが、まずは最初に気づいたスタッフが速やかに新しい来場者へ挨拶に伺います。現在接客中であることを伝え、「申し訳ございません、今他のお客様をご案内しております。〇〇分ほどでお声がけできますが、先にご自由にご覧になってお待ちいただけますでしょうか?」と伝えます。もし他のスタッフがおらず、どうしてもすぐに手が離せない場合は、入口に「ただいま接客中です。恐れ入りますが、ベルを鳴らしてお待ちください」といった案内を表示するなどの工夫も有効です。いずれにしても、来場者を無視しないことが最も重要です。
Q3: 専門知識があまりない新人スタッフでも、住宅展示場で活躍できますか?
A3: もちろん可能です。新人には、高度な専門知識を伴う説明よりも、来場者に気持ちよく過ごしてもらうための役割を担ってもらうのが効果的です。例えば、笑顔での挨拶、お茶出し、会場の簡単な案内、キッズスペースでの対応、アンケート記入のお願いなどです。重要なのは、来場者の話を丁寧に聞き、「私には詳しいことは分かりかねますが、すぐに担当の〇〇を呼んできます」といったように、自分一人で抱え込まずに、社内の詳しいスタッフに繋ぐエスカレーションをスムーズに行えるようにしておくことです。来場者は、質問に対する答えだけでなく、誠実な対応や心地よい空間を求めています。新人の誠実さや丁寧な対応は、そのまま工務店の印象アップに繋がります。

成果を継続させる住宅展示場のマネジメント:測定、改善、そしてチーム力

住宅展示場での成約率向上は、一回の素晴らしい接客で終わるものではありません。継続的に成果を出し続けるためには、接客内容の改善に加え、展示場運営全体のマネジメント、データ分析、そしてチーム全体のレベルアップが不可欠です。

数字で見る、住宅展示場の真実:成約率向上に繋がるKPI設定とデータ分析

感覚だけでなく、具体的な数字を見ることで、住宅展示場の効果測定と改善点を見つけ出すことができます。成約率を向上させるためには、最終的な成約数だけでなく、そこに至るまでの途中段階の数字(KPI:重要業績評価指標)を追うことが重要です。

【設定すべきKPIと測定方法】

  1. 来場者数:期間中の延べ来場者数。住宅展示場への集客効果を示す。天候やイベントの有無、広告の効果測定にも。
  2. 詳細ヒアリングができた割合:来場者のうち、名前や連絡先を含め、ある程度詳しい要望や状況のヒアリングができた割合。質の高い接客ができているかの指標。
  3. アンケート回収率:アンケート用紙を配布できた来場者のうち、記入・回収できた割合。後の追客やデータ分析に活用。
  4. 個別相談予約率(二次アポ率):来場者のうち、住宅展示場後に行われる個別相談会や打ち合わせのアポイントメントに繋がった割合。住宅展示場での接客の具体的な成果を示す最も重要な指標の一つ。
  5. 追客後の返信率/接触率:住宅展示場後に送ったメールや電話に対し、返信があったり、連絡が取れたりした割合。追客の効果測定。
  6. 成約数/成約率:住宅展示場来場がきっかけで最終的に契約に至った件数と、来場者数に対する成約件数の割合(ただし、リードタイムが長いので、数ヶ月スパンで測定が必要)。

これらの数字を週ごと、月ごと、イベントごとに集計し、分析します。「なぜ今回は個別相談予約率が低いのだろう?」「どのスタッフが成約率が高いのだろう?その接客に共通点はあるか?」といった問いを立て、原因を探り、改善策を検討します。データに基づいた議論は、感情論ではなく、具体的な行動に繋がります。

改善活動を仕組み化する:PDCAサイクルと成功事例の共有

データ分析で課題が見つかったら、それを改善するための具体的な行動計画を立て、実行し、再び結果をチェックするというPDCAサイクルを回すことが重要です。

【実践ステップ】

  1. 課題の特定:KPIデータやスタッフの経験から、現在の住宅展示場運営や接客における課題を具体的に特定する。(例:ヒアリングはできるが、次のステップへの誘導が弱い)
  2. 改善策の立案:課題解決に向けた具体的な改善策を検討。(例:次のステップへの誘導トークを標準化し、ロールプレイング研修を行う)
  3. 改善策の実行:決定した改善策を、担当者や期限を決めて実行する。
  4. 結果の測定と評価(Check):改善策実施後、再度KPIを測定し、効果があったかを検証する。(例:ロールプレイング後、個別相談予約率が〇%向上したか)
  5. 改善策の定着や次のアクション(Action):効果があった施策は標準化し、チーム全体で共有・定着させる。効果がなかった施策は原因を分析し、再度計画を見直す。

このサイクルの過程で、成功事例や効果的な接客スキルは積極的にチーム内で共有し、全体のレベルアップに繋げます。ミーティングで具体的なロープレを行ったり、ベテランスタッフの接客を見学したりといった機会を作ることも非常に有効です。住宅展示場だけでなく、工務店全体の成約率向上にも繋がる知見が蓄積されます。

全員が「成約率向上」の担い手:スタッフ育成とチーム連携の重要性

住宅展示場での接客は、限られた時間の中で来場者の心を開き、信頼を得る高度なコミュニケーション能力が必要です。それは一人のスタープレイヤーだけが担うのではなく、チーム全体の底上げによって初めて継続的な成果に繋がります。

【実践ステップ】

  1. 定期的な研修と勉強会:ヒアリングスキル、提案方法、資金計画の説明、契約に関する知識など、住宅展示場での接客に必要な知識・スキルに関する研修を定期的に実施。外部講師を招いたり、他の成功している工務店の事例を学んだりすることも有効です。
  2. ロールプレイングの実践:実際の接客場面を想定したロールプレイングを繰り返し行うことで、本番での対応力を高めます。一方的に教えるだけでなく、参加者同士でフィードバックし合うことで、気づきが深まります。
  3. 目標共有とモチベーション向上:チーム全体で成約率向上という目標を共有し、達成に向けたプロセスを可視化する。成功事例を称賛したり、目標達成のインセンティブを設定したりすることで、スタッフのモチベーションを高めます。
  4. 情報共有の徹底:住宅展示場での来場者情報は、その後の追客や次回接客に不可欠です。CRM(顧客管理システム)などを活用し、誰でも必要な情報にアクセスできるよう情報を一元管理・共有する仕組みを構築します。
  5. フォロー体制の構築:新人スタッフや経験の浅いスタッフが困った時に、すぐに経験豊富なスタッフに相談・交代できるようなサポート体制を整えておく。チーム全体で助け合う文化を醸成します。
  6. 他部門との連携:設計担当、工務担当、コーディネーターなど、他の部門のスタッフも住宅展示場での接客に参加してもらう機会を作る。それぞれの専門知識を活かした多角的な視点での対応は、来場者の信頼獲得に繋がります。また、営業担当も他の部門の業務を理解することで、より具体的で現実的な提案が可能になります。

住宅展示場は、工務店の「顔」であり、チーム全体で最高のパフォーマンスを発揮すべき場所です。継続的なスタッフ育成と強固なチーム連携こそが、成約率を安定的に高めるための土台となります。

まとめ

この記事では、工務店経営者の皆様が住宅展示場での成約率を向上させるために、準備から接客、そしてその後の改善활동に至るまで、具体的なステップをご紹介しました。住宅展示場は、単に建物を見せる場ではなく、来場者の夢や希望、そして不安に寄り添い、信頼関係を築くための重要な機会です。最初の数秒での印象、来場者の本音を引き出すヒアリング、ニーズを踏まえたパーソナルな案内と提案、そして次のステップへのスムーズな誘導と丁寧な追客。これら一つ一つのプロセスを丁寧に行うことが、成約率向上への道を開きます。さらに、データに基づいた効果測定と継続的な改善活動、そしてスタッフ全体のスキルアップとチーム連携こそが、住宅展示場での成果を一時的なものにせず、安定したものとする鍵となります。この記事で得た知識と具体的なアクションプランを、ぜひ今日から貴社の住宅展示場運営に取り入れてみてください。一つずつ実践を重ねることで、来場者との関係性は深まり、理想的な家づくりパートナーとしての信頼を確実に築き上げることができるはずです。あなたの工務店が、住宅展示場を通じて多くの素晴らしいお客様と出会い、たくさんの理想の家づくりを実現できることを心から応援しています。この記事で紹介したステップが、貴社の未来を力強く拓く一助となれば幸いです。

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この記事を書いた人

浄法寺 亘

工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。
今動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」
※8月実施予定。
住宅サイトの運営もしています。

福島県 喜多方市出身
県立会津高校卒
市立高崎経済大学卒

著書:
頼みたくなる住宅営業になれる本
https://x.gd/oatiM
SDGsに取り組もう 建築業界編
https://x.gd/MXYJr
とっておきの見込み客発掘法
https://x.gd/001or

主な講演:
鹿児島県庁主催「かごしま緑の工務店研修会」
リードジャパン主催「工務店支援エキスポ」(東京ビックサイト)
育英西中学校
その他住宅FCなど

活動実績
2019~ 千葉県にて里山竹林整備ボランティア
2020~ 木ッズ絵画コンクール

工務店の集客・営業ならジーレックスジャパン →ホームページはこちら

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