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損益分岐点を理解する!工務店の経営改善に役立つ視点

公開日: : 工務店 経営

近年、工務店業界は原材料費の高騰や人手不足、価格競争の激化など、経営を圧迫する課題に直面しています。そのような中、自社の財務体質を強化し、安定した利益を確保するためには、戦略的な経営判断が不可欠です。本記事では、その要となる「財務戦略」と「損益分岐点」の活用方法を徹底解説します。「財務戦略を見直したいが、何から始めて良いか分からない」「損益分岐点が経営改善の鍵と聞くが、具体的な計算や活用方法に自信が持てない」といった悩みや疑問に応え、工務店の現場ですぐに実践可能なアクションプランを明確なステップでお伝えします。本記事を通じ、利益体質への転換と経営の安定化を目指しましょう。

損益分岐点の「実践的」導入戦略:基礎から応用まで

工務店が財務戦略を強化する際、まず押さえておきたいのが「損益分岐点」の考え方です。ここでは、損益分岐点の基本定義から、実践で役立つ具体的な導入手順、そして応用展開まで、初心者でも実務で使いこなすためのポイントを順に解説します。

1. 損益分岐点とは何か?その基礎と導入意義

損益分岐点とは、売上高と費用(固定費+変動費)がちょうど一致し、利益も損失も発生しない売上高です。つまり「どのくらいの売上があれば赤字から脱し、利益が発生するのか」を明確にする指標となります。工務店経営でこれを把握することで、無理のない売上計画や値決め、無駄なコストのカットなど具体的な行動指針が生まれます。

2. 実務に活かせる損益分岐点の算出ステップ

  • 費用の分類を行う:まず、年間(あるいは月間)の経費を「固定費」(人件費、家賃、保険料等)と「変動費」(材料費、外注費、工事ごとの直接経費等)に分けましょう。会計ソフトのデータや帳簿を整理することが第一歩です。
  • 限界利益率を計算する:売上高から変動費を差し引いたものが「限界利益」。これを売上高で割ることで「限界利益率(%)」が分かります。限界利益率=(売上高-変動費)÷売上高。
  • 損益分岐点売上高を計算:損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率。具体的な数字を当てはめて自社の数字を把握します。

3. 一歩進んだ応用〜プロジェクトごとの損益分岐点管理

全社単位だけでなく、工事プロジェクトごとに損益分岐点を算出・管理することで、採算のとれない受注を防ぎ、事前にリスクに気付くことが可能となります。利益が発生する閾値を明示し、適切な受注判断ができる体制を構築しましょう。

4. 実践で障壁となりやすいポイントと対処法

  • 費用の分類が曖昧な場合、会計事務所や税理士に一度相談し、分類基準を明確化しておきましょう。
  • データ入力の人的リソース不足は、システム化・クラウドツールの活用で解決しやすいです。
  • 指標を一度出しただけで活用しない課題には、月次でデータを更新、経営会議で定期的に確認すると効果的です。

5. ステップ形式:損益分岐点導入ガイド

  • 1. 固定費・変動費を毎月整理する。
  • 2. 限界利益率・損益分岐点売上高を月次で計算・記録する。
  • 3. プロジェクト受注前に事前シミュレーションを行い、採算性を見極める。
  • 4. 社内で損益分岐点の意味を共有し、担当ごとに目標売上を設定する。

6. よくある質問(FAQ)

  • Q:損益分岐点が思ったより高く出た場合、どう対処すれば良いですか?
    A:固定費削減(無駄な経費、人員見直し等)や、利益率向上(より高利益な案件の受注、施工効率化等)の取り組みを検討しましょう。併せて価格設定も見直すと効果的です。
  • Q:損益分岐点計算はどれくらいの頻度で見直すべきですか?
    A:最低でも月次・四半期ごとの見直しが推奨されます。材料費や労務費の変動が激しい時期は、その都度チェックしてください。

財務戦略×損益分岐点:成果を最大化する具体的な取り組み

損益分岐点の把握はゴールではなく、優れた財務戦略のスタート地点です。ここでは、損益分岐点の可視化結果をどのように財務管理・経営判断へ活かし、持続的な利益と現場最適化を実現するか、今日から実践可能な取組みを体系立ててご紹介します。

1. 固定費・変動費の最適化

  • 1.1 コスト構造の見直し:損益分岐点を低く抑えるには、固定費のダウンサイジングが有効です。空きスペースの事務所移転や、業務委託(アウトソース)導入などで固定費の削減を目指しましょう。
  • 1.2 材料・外注先の再選定:変動費は調達先の見直しや仕入れの適正化(共同購買等)で圧縮できます。協力業者との定例見積もり比較を実施し、コスト競争力を高めます。

2. 利益率アップに直結する受注戦略

  • 2.1 工事ごとの収益性シミュレーション:受注前に見積金額・工程ごとに損益分岐点を事前算出し、基準に届かない案件は受注を見送る勇気も必要です。そのうえで、利益率の高いリフォームや付加価値サービスの組み合わせで総額収益を向上させます。
  • 2.2 値付け・受注条件の見直し:値下げ合戦に巻き込まれず、独自の強みと付加価値(独自施工・保証・アフターサービス等)を明確化。価格競争力に加え「選ばれる理由」を営業資料やWebで発信することも重要です。

3. キャッシュフロー重視型の財務戦略

  • 3.1 入金・出金サイクルの可視化:損益分岐点を下回った場合でも資金繰りに困らないよう、工事代金の前受けや請求タイミングの見直しでキャッシュフローを改善します。
  • 3.2 資金調達の選択肢の拡充:金融機関との関係構築・私募債・補助金等の活用も視野に入れ、安定経営を下支えします。

4. ステップ形式:現場で活きる実践アクション

  1. 毎月の損益分岐点計算結果をもとに、経費使途・単価・工事採算を経営会議でレビューする。
  2. 変動費を集中的に見直す月間・四半期アクションを設定し、現場・仕入先も巻き込んだコスト改善ミーティングを開催する。
  3. 利益率基準に満たない案件は、条件交渉や付加価値提案で受注基準を達成できるか検討し、無理に受注しない方針も明確化する。
  4. 現場責任者への「損益分岐点達成会議」を定期開催し、リアルタイムで数値把握・目標シェアを徹底する。

5. Q&A:実践時によくある疑問

  • Q:利益は出ているのにキャッシュが残らないのですが?
    A:伝票上の利益と現金の流れは異なる場合があります。キャッシュフロー計算書を活用し、入金・出金のタイミング把握を徹底しましょう。大規模工事の未回収売上・在庫過多・短期借入なども要注意ポイントです。
  • Q:従業員に損益分岐点の意識を根付かせる方法は?
    A:定期的な説明会と部門ごとの数値目標設定、成功事例の表彰や共有が推奨されます。見える化ツールや、達成時のインセンティブ導入も効果的です。
  • Q:損益分岐点を超えた利益を最大化するには?
    A:追加サービス・リフォーム・メンテナンス提案などで売上総額を上乗せする、あるいはスピード・品質アップで工数削減するプロセス改善が鍵になります。

財務戦略を継続的に成功させるための「次の一手」

一度損益分岐点を把握し、財務戦略をスタートさせたあとも、工務店経営では多様な外部変化に対応するための「継続的なアプローチ」が求められます。ここでは、変化の大きい時代に対応しつつ、収益性を維持・向上し続けるために必要な仕組みづくりと実践すべき具体策を解説します。

1. PDCAサイクルの定着による財務戦略のブラッシュアップ

  • 1.1 Plan(計画):次年度の目標売上・固定費削減・変動費率圧縮の数値目標を策定。
  • 1.2 Do(実行):目標に沿ったコスト削減・利益率向上施策を部門別に実行。
  • 1.3 Check(評価):月次や四半期ごとに損益分岐点の変動をグラフ等で可視化、経営指標の達成状況を検証。
  • 1.4 Action(改善):未達要因へ対策を打ち、新たな目標設定や手法の見直しを行う。

2. 外部環境の変化対応力を高める

  • 2.1 物価・賃金変動へのリアルタイム対応:材料費・人件費の高騰時には三ヶ月に一度の単価再計算や見積もり基準の改定を実施。主要仕入先との連携や情報収集体制の強化が重要です。
  • 2.2 市場・法改正対応:省エネ住宅補助金や新規規制への即応体制づくり、最新業界動向を経営MTGで共有しましょう。

3. DX・IT活用による財務戦略の持続的進化

  • 3.1 クラウド会計ソフト・BIツールの導入:損益分岐点や利益率分析が瞬時に見える化され、経営判断のスピードアップが期待できます。
  • 3.2 データドリブンマネジメント:過去データの蓄積を元に収益予測し、早期に財務戦略の修正を実施できる体制へ移行しましょう。

4. ステップ形式:継続的成長のためのアクションプラン

  1. 財務戦略の年次・月次レビュー日を社内に設定し、必ず振り返り・アップデートを行う。
  2. 自社の損益分岐点や利益率の推移を「見える化」し、全社員・協力業者と数値感覚を共有する。
  3. 外部セミナー・コンサルタント活用も視野に入れ、定期的に第三者の評価や意見を取り入れる。
  4. ITツールやアプリの最新情報は積極的にキャッチアップし、業務効率化やコスト管理精度向上を図る。

5. Q&A:財務戦略の運用・定着フェーズの疑問

  • Q:財務戦略の見直しに現場や幹部の協力を得るには?
    A:「数字が会社を守る」ことを丁寧に説明し、現場にも成果やリスクをわかりやすく伝えることが重要です。成功事例・失敗例の社内共有や、シンプルな指標で達成感が得られる仕組みを設けましょう。
  • Q:会計知識の乏しいスタッフでも対応できますか?
    A:最新の会計クラウドやビジュアル化ツールを活用すれば、直感的に理解しやすくなります。外部研修・勉強会も有効です。
  • Q:継続的な財務戦略の推進役を社内でどう作る?
    A:部門横断のプロジェクトチーム編成や、若手リーダーの抜擢がおすすめです。トップダウンとボトムアップを組み合わせると長期的な定着が期待できます。

まとめ

この記事では、損益分岐点を起点とした工務店の実践的な財務戦略構築、そして成果を最大化し続けるための具体的な手順と継続的なアクションプランをご紹介しました。まずは自社の損益分岐点を正確に把握し、利益を生み出すための最低限の売上高やコスト構造を明確化することが第一歩です。そのうえで、コスト削減・利益率向上・キャッシュフロー最適化など一つひとつ着実に取り組むことが、財務体質を根本から強化します。そして、定期的な見直し・改善サイクルとIT活用によって、どんな外部環境変動にも柔軟に対応できる企業体質を実現しましょう。今こそ、具体的なアクションを一歩踏み出す時です。この記事で得た知識と手順が、貴社の安定経営と未来の成長の土台になることを力強く確信しています。継続的なチャレンジに向け、焦らず着実に財務戦略を磨き続けてください。

この記事を書いた人

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浄法寺 亘

福島県 喜多方市出身。県立会津高校、市立高崎経済大学卒。工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。現在動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」。住宅情報サイト「ハウジングバザール」の運営にも携わっている。

著書:
頼みたくなる住宅営業になれる本
https://x.gd/oatiM
SDGsに取り組もう 建築業界編
https://x.gd/MXYJr

主な講演:
鹿児島県庁主催「かごしま緑の工務店研修会」
リードジャパン主催「工務店支援エキスポ」(東京ビックサイト)
育英西中学校、その他住宅FCなど

活動実績
2019~ 千葉県にて里山竹林整備ボランティア
2020~ 木ッズ絵画コンクール

工務店の集客・営業ならジーレックスジャパン →ホームページはこちら

商品の差別化へ!制振装置はこちらから →耐震・制振装置

友達申請お待ちしてます! →代表浄法寺のfacebook

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