後継者不在の工務店へ。円滑な事業承継の進め方
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最終更新日:2025/08/16
工務店 経営
後継者問題の「実践的」導入戦略:基礎から応用まで
工務店が直面する事業承継の最初の壁は、何と言っても後継者問題です。ここでは、実際に事業承継を実現するために必要な基礎知識から、応用的な戦略までを順を追って解説します。1. 事業承継と後継者問題の現状を把握する
- まず、事業承継がなぜここまで日本全国の工務店で課題になっているのか、背景を理解することが重要です。中小工務店の経営者の高齢化が進む一方で、親族内に「後を継ぎたい」と考える人材が減少しています。多くの事業者が事業承継を先送りしてしまい、いざという時に慌ててしまうケースが増えているのです。
- 「うちは大丈夫」と思っているうちは、先々のリスクが見えにくいものです。一度現状を冷静に見つめ、後継者候補が親族にいるのか・社内にいるのか・外部から招くのか、それぞれの優劣も含めて洗い出しましょう。その上で、自社の「理想の承継像」を定めることが最初のステップになります。
2. 後継者選定の具体的なアクション
- 後継者を選び出すポイントは、「経営能力」「人柄」「事業への思い入れ」など多岐にわたります。 親族内から選任できなければ、社内の信頼できる社員、または同業他社・異業種からの外部招聘も選択肢になります。その場合は、現経営者の持つノウハウ・人脈・信頼をどのように引き継ぐかが重要です。
- 後継者がいない、決まらない場合は、専門のコンサルタントや事業承継マッチングサービス(商工会議所の事業承継支援窓口、M&A仲介業者、地域金融機関など)の活用を検討しましょう。第三者承継(M&A)や社員持株会方式など、自社に合った方法を中立の立場でアドバイスしてもらえます。
3. 事業承継計画の策定と見える化
- 承継の「見える化」は、経営者だけが将来像を描くのではなく、周囲(従業員、関係者、金融機関等)とも内容を共有し、長い目で計画的に進めることが大切です。以下のチェックリストをもとに、事業承継計画を具体的に書き出しましょう。
- 【基本のチェックリスト】
- 現経営者の年齢、健康状態、引退時期の大まかな希望
- 後継候補の有無と適性評価
- 自社の財務状態/事業価値/経営資源の棚卸し
- 課題(負債/税金/株式/知的財産など)の洗い出し
- 引継ぎに必要な期間(通常2~5年が目安)
- 承継プロセスのロードマップ(いつ、何を、誰が、どう進めるか)
- また、専門家の支援が必要なポイント(税理士・弁護士・公認会計士など)を明確にしておくとスムーズです。
4. 事業承継の初動アクション「3つのポイント」
- まずは家族会議・役員会議を開き、事業承継への問題意識を共有します。この時点で「後回しせず、行動に移す」ことが大前提です。
- 自社の現状・課題・承継に向けた希望を「書き出す」ことで、漠然とした不安を具体的なアクションに分解しましょう。
- 社内外の後継候補をリストアップし、それぞれの長所・短所を経営者・役員で話し合い、必要に応じて第三者アドバイザーの助言ももらいます。
【よくある疑問と回答】
- Q. 適任の後継者がどうしても見つからない場合、他に方法はありますか?
- 親族や社員以外にも、「外部招聘型」「M&Aによる第三者承継」など選択肢は増えています。地域の商工会議所や、事業承継ネットワーク、M&A仲介サービスに相談すると新しい出会いが見つかることもあります。
- Q. 事業承継はどの段階から動き始めるべき?
- できるだけ早く、検討を始めることが成功の鍵です。経営者の年齢や事業規模を問わず、3年~5年の計画期間を見越すのが一般的です。

事業承継×後継者問題:成果を最大化する具体的な取り組み
後継者問題を乗り越えた後は、どのように円滑な事業承継へとつなげるかが重要です。ここでは、承継プロセスを成功させるために欠かせない「社内外への発信」「業績及び財務の整理」「人材育成」に焦点を当てた実践的なステップをご紹介します。また、現場でよくある「こんな時どうする?」にも具体的に答えていきます。1. 後継者を育てる3つの重点アクション
- 早期のロールシャドウ(影武者経験) 後継者が決まったら、できるところから経営の一部を任せる形で「徐々に現場の主役」になってもらいましょう。施主面談、資材発注、協力会社との折衝、現場巡回、経営会議への同席など、実際の動きの中で判断力と度胸を磨くことが大切です。
- 外部研修や異業種交流の積極活用 後継者に「業界内だけでなく、外の世界を見る機会」を意図的に作りましょう。全国工務店ネットワークや、経営塾、各種ビジネス研修プログラムに送り出し、「自社のやり方」を広い視点で見直す土壌を築きます。
- 計画的な業務・決裁移譲と振り返り 承継プロセスを細かく分けて、「どのタイミングで、誰に、何の権限を渡すか」を年度ごとに整理します。移譲後は必ず現経営者と後継者で「振り返り会議」を行い、問題点や成長ポイントを共有しましょう。
2. 承継を支える制度とバックアップ体制
- 社内規程の整備(就業規則、権限移譲規程)、役割分担の明確化を事前に進めましょう。社員やパートスタッフにも「会社の方針は変わらない」「今後への安心感」が伝わるよう、定例の全体ミーティングなどで積極的に説明します。
- 金融機関との信頼関係再構築は特に重要です。後継者の名前で再度説明や挨拶を行い、「会社はこれからも発展していく」アピールを心がけましょう。取引先・協力会社への挨拶回りや、地域イベントへの参加もおすすめです。
- 財務状況、株式・資産の評価、借入内容など、数字面の「見える化」も承継プロセスの一部です。経理担当・税理士との連携を密にして、トラブルや誤解が生じないように整理しましょう。
3. M&A・外部承継を活用する場合の注意点
- 第三者への事業譲渡(M&A)は、「手放す」だけでなく「自社の良い文化やブランドを活かし続ける」という観点で進めることが重要です。条件次第では現経営者が一定期間残る「段階的引継ぎ」も可能です。
- 「社員の雇用が守られるか」「工務店としての特徴・地域のつながりが維持できるか」など、譲渡後の会社像を後継者や譲渡先と早めに協議します。M&Aアドバイザーによるマッチングや価値評価も第三者目線で有効です。
4. 工務店独自の承継リスクを押さえる
- 現場の引継ぎは、職人・技術系・営業系の全員との日常的なコミュニケーションを絶やさないことが肝心です。「新しい社長は現場を分かっていない」という声が出ないよう、定期的な現場同行やランチミーティングを設けましょう。
- 「お客様との関係性」も承継の見えない資産です。大口施主や長年のリピート客がいる場合は、現経営者と後継者が揃って挨拶や説明を行い、安心感を伝えましょう。
【こんなとき、どうすれば?(FAQ形式)】
- Q. 承継後、現経営者と新経営者の役割の線引きはどうすれば?
- 「何を・いつまで誰がやるか」を事前に合意し、現状を定期的に話し合う機会を設定しましょう。曖昧なままで進めるとトラブルのもとになります。
- Q. 承継プロセスで社員が不安を感じているようです。何をすべきですか?
- 社員との面談やアンケートで不安要素を可視化し、「今後の体制」「方針は変わらない」などの説明会を開いてください。必要があればメンタルヘルスケアやコーチングを活用しましょう。
- Q. 承継に合わせて業績が急に悪化した場合、どう対応すべき?
- 財務・資金繰り計画を見直し、銀行など金融機関と早めに話し合うのが鉄則です。必要に応じて外部アドバイザーも利用しましょう。
事業承継を継続的に成功させるための「次の一手」
事業承継は一度で完了する作業ではありません。引き継ぎ後も継続的な成長・改善が必要です。工務店が発展し続けるため、現場で実践してほしい「次の一手」と、効果測定・見直しのコツをお伝えします。1. 定期的な効果測定とフィードバック体制の構築
- 承継後1年ごとに経営・業績・職場環境を振り返り、現経営者(可能であればOB)、後継者、幹部社員で「承継状況チェック会議」を開催しましょう。数字面(売上・利益・顧客満足度)だけでなく、組織内の風通しや新規案件開拓などの観点からも点検します。
- 結果を踏まえ、必要に応じて承継計画や役割分担を見直し、次年度の目標を具体化します。フィードバックは本人(後継者)だけでなく、周囲のスタッフにも「良かった点」「改善すべき点」としてオープンに共有しましょう。
2. 経営理念・ブランド力の継承とアップデート
- ブランドや経営理念の「本質」は何かを社内で再確認し、後継者が自分の言葉で語れるようにサポートします。先代の築いた「良い伝統」を守りつつも、時代のニーズに即した新しい価値を打ち出す姿勢が、顧客からの信頼獲得につながります。
- 「この会社で働き続けたい」「この工務店に家づくりを任せたい」と思われる“人”や“一貫した価値観”こそ、承継を機会に再定義しましょう。周年イベントやリブランディング活動もおすすめです。
3. 後継者の孤立を防ぐ支援ネットワーク
- 後継者は孤独を感じやすいものです。先代経営者、社内相談役、外部メンター(地域工務店団体や経営者サロンなど)を活用し、定期的なコミュニケーションで悩み・課題を相談できる体制を作りましょう。
- 「相談相手がいる」「一人で抱え込まない」ことが会社全体の安定にも寄与します。近隣企業の経営者交流会や、行政による経営塾への参加も励みとなります。
4. 継続的な人材育成と新たな後継者の発掘
- 現在の承継完了後も引き続き「次世代リーダー育成」を意識することが、持続的な経営基盤につながります。若手社員が自発的に新たな事業案を出す仕組みや、リーダー候補を見いだすための社内プロジェクトを定期的に行いましょう。
- 承継のサイクルを“日常業務”として組み込むことで、早期からの育成が自然に始まります。業務日報や1on1面談などを継続的に実施しましょう。
【今後さらに知りたい疑問に一問一答】
- Q. 後継者がうまく成長できるか心配です。どう支援すれば?
- 定期的な評価・フィードバックと、失敗しても挑戦できる環境づくりが欠かせません。また、現経営者が「見守る」「任せる」姿勢を明確にすることで、本人の自信につながります。
- Q. 親族内承継ではなく第三者へと判断した場合、不安はありませんか?
- 事業承継の方法ごとにメリット・デメリットがあります。第三者承継では客観的な評価や資金供給面の強化が期待できますが、「経営理念の共有」「既存社員との相性調整」なども事前に話し合いましょう。
まとめ
工務店の事業承継と後継者問題への取り組みは、単なる「引き継ぎ」ではなく、会社の未来を創る重要な経営課題です。本記事では、現状把握から後継者選定・育成、社内外への発信、承継後の現場運営や効果測定まで、段階を追った具体的な手順と即実践できるアドバイスを整理しました。どのステップにも「早めの行動」「見える化」「不安の可視化とオープンな対話」が不可欠です。今回紹介したアクションを、できるところから確実に始めていくことで、次世代に力強いバトンを渡すことができるでしょう。事業承継の成功は、会社だけでなく地域社会やお客様の安心にもつながる長期的な価値です。今この瞬間から、一歩ずつ前向きな挑戦を始めていきましょう。あなたの決断が、工務店と家づくりの未来を明るく切り拓く力になります。工務店の集客・営業ならジーレックスジャパン →ホームページはこちら
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