コミュニティービルダー協会は
「内閣府beyond2020」の認定および「外務省JAPAN SDGs Action Platform」の紹介団体です。

親族内承継のメリット・デメリットと成功の秘訣

公開日: : 工務店 経営

工務店経営者の皆様、日々の経営、本当にお疲れ様です。地域社会を支え、お客様の夢を形にする皆様の仕事は、まさに「宝」です。しかし、その大切な事業を将来にどう引き継いでいくか、漠然とした不安や具体的な悩みを抱えている方も少なくないでしょう。特に、高齢化が進む中で、「事業承継」は待ったなしの重要な経営課題です。そして、多くの経営者が最初に頭に思い浮かべる選択肢が「親族内承継」ではないでしょうか。

長年育ててきた会社を、身内である息子さん、娘さん、あるいは親族に引き継ぐことは、感情的にも自然な流れかもしれません。一方で、親族であるがゆえの難しさや、スムーズに進めるための専門的な知識も必要になります。「うちの場合はどうすれば?」「お金のことは?」「従業員は納得してくれるか?」といった疑問や不安を抱えていることと思います。

この記事は、まさにそんな皆様の疑問に真っ向からお答えするために作成しました。親族内承継のメリット・デメリットを深く掘り下げ、工務店経営者様が直面しやすい具体的な課題に対する解決策を”実践的”なステップで解説します。この記事を読み終える頃には、親族内承継を成功に導くための具体的なロードマップが見え、取るべき行動が明確になっているはずです。あなたの築き上げてきた事業を、次世代へと力強く繋げるための一歩を、ここから踏み出しましょう。

親族内承継の「実践的」導入戦略:基礎から応用まで

事業承継の中でも、親族内承継は多くの経営者がまず検討する道です。地域に根差した工務店では、家族経営で長く続く温かさや信頼関係が強みとなっていることも少なくありません。しかし、感情が絡む親族ゆえの難しさがあるのも事実です。このセクションでは、親族内承継を検討するにあたって、まず知っておくべき基礎知識と、成功に向けた導入戦略の第一歩を具体的に見ていきます。

親族内承継が工務店にもたらすメリットとデメリット

親族内承継を選択することには、他の事業承継方法にはない独特のメリットとデメリットが存在します。これらを十分に理解することが、後悔のない選択と円滑な手続きにつながります。

メリット:なぜ親族内承継を選ぶのか

  • 信頼性と求心力: 血縁者への承継は、従業員や長年のお客様にとって受け入れやすく、事業の継続性がイメージしやすいというメリットがあります。社内外の信頼を比較的スムーズに引き継げる可能性があります。
  • スムーズな移行: 幼い頃から家業に触れていることが多く、会社の文化や雰囲気を既に理解している場合が多いです。これにより、経営権や業務の引き継ぎが比較的スムーズに進む可能性があります。
  • 情報漏洩リスクの低減: 外部の第三者に会社の機密情報や財務状況を開示する必要が少ないため、情報漏洩のリスクを抑えられます。
  • コストと時間の節約: M&Aなどに比べて、専門家への報酬や手続きにかかる時間・費用を抑えられる場合があります。
  • 経営理念の継続: 創業者が大切にしてきた経営理念や社風が、後継者にも自然な形で引き継がれやすい傾向があります。

デメリット:親族内承継の隠れた落とし穴

  • 後継者としての適性の問題: 親族だからといって、必ずしも経営者としての資質や意欲があるとは限りません。適性のない人物が承継することで、事業が傾くリスクがあります。
  • 家族間の対立: 複数の親族が関係する場合、相続問題や経営方針の違いから家族間で深刻な対立が生じ、事業承継どころか家族関係まで悪化させてしまうケースがあります。
  • 他の選択肢を閉ざす可能性: 親族内承継を早期に決定してしまうと、従業員承継やM&Aといった、より適任な後継者やより有利な条件での事業承継の可能性を検討しなくなるリスクがあります。
  • 公私の混同: 家族間の情が優先され、経営判断に私的な感情が入り込んだり、従業員との関係が曖昧になったりする可能性があります。
  • 相続との複雑な関連: 事業用資産の承継が、他の相続財産との兼ね合いで複雑化し、相続人間の公平性を保つのが難しくなることがあります。

親族内承継成功のための「実践的」導入ステップ

これらのメリット・デメリットを踏まえ、どのように親族内承継を進めていくべきでしょうか。闇雲に進めるのではなく、計画的に、段階を踏んで行うことが重要です。

ステップ1:現状分析と「見える化」

自社の状況を客観的に把握することから始めます。

  • 財務状況の分析: 売上、利益、キャッシュフロー、負債など、会社の健康状態を詳細に把握します。特に、事業承継時の自社株評価に影響する要素は重要です。
  • 経営資源の棚卸し: 人材(従業員のスキル、組織体制)、技術(保有技術、ノウハウ)、無形資産(顧客リスト、ブランド力、地域との信頼関係)、有形資産(土地、建物、重機)など、事業を支えるあらゆる資源をリストアップし、その価値を評価します。
  • 強み・弱みの再確認: 競合他社との比較や市場環境を踏まえ、自社の強み(差別化ポイント)と弱み(改善すべき点)を明確にします。これらは後継者が引き継ぎ、さらに発展させていくべき基盤となります。

この現状分析は、単なる数字の確認に留まらず、会社の「本質的な価値」を言語化するプロセスです。これを経営者だけでなく、可能であれば後継者候補とも共有することで、認識のずれを防ぎ、スムーズな事業承継の土台を築きます。

ステップ2:後継者候補との対話と意向確認

最も繊細かつ重要なステップの一つです。

  • 候補者の洗い出しと見極め: 息子、娘、その他親族の中で、誰が最も経営者としての資質(リーダーシップ、コミュニケーション能力、学習意欲、責任感など)を有しているか、あるいは今後伸ばせるかを慎重に見極めます。会社の将来を任せられる人物か、冷静な判断が必要です。
  • 正直な対話: 後継者候補に対し、事業承継の可能性について、あなたの考えや期待を率直に伝えます。同時に、後継者候補自身のキャリアプラン、会社への関心、経営者になりたいという意欲があるか否かを丁寧に聞き出します。
  • 意向の確認と共通認識の構築: 後継者候補が承継に前向きな場合でも、漠然としたものではなく、具体的な役割や責任、将来のビジョンについて共通認識を構築します。もし意欲がない場合は、無理強いせず、他の事業承継方法(従業員承継やM&A)を検討する柔軟性も必要です。

この段階でのコミュニケーション不足は、後々のトラブルの大きな原因となります。「言わなくてもわかるだろう」は禁物です。お互いの本音を話し合い、納得のいく形で進めることが何よりも重要です。

ステップ3:早い段階からの承継計画策定

事業承継は、準備期間が長いほど成功確率が高まります。理想的には数年から10年以上の期間をかけて行うべきです。

  • ロードマップの作成: いつまでに何を達成するか、具体的なスケジュールを盛り込んだロードマップを作成します。後継者教育、経営権の移譲、資産の承継、社内外への周知など、必要なステップを洗い出し、実行時期を定めます。
  • 後継者教育の開始: 後継者候補に対し、会社の財務、税務、法務、営業、現場など、経営に必要なあらゆる知識と経験を積ませます。社内での様々な部署の経験はもちろん、外部の研修や他社の経営者との交流なども有効です。
  • 社内における後継者の位置づけ: 後継者候補を早い段階から役員に登用するなど、責任ある立場を与え、社内外に次期経営者であることを認識させることも重要です。ただし、先代経営者が権限を与えすぎず、後継者自身が判断し、経験を積める環境を整える配慮が必要です。

計画は一度作ったら終わりではなく、状況に応じて柔軟に見直す必要があります。重要なのは、「いつかやる」ではなく「いつまでにやるか」を決め、実行に移すことです。

Q&A:親族内承継の導入でよくある疑問

Q1: 息子や娘が会社を継ぎたがらない場合、どうすればいいですか?

A1: 無理強いは禁物です。まずは彼らの本心や将来の希望を丁寧に聞き出すことから始めましょう。なぜ継ぎたくないのか、他にやりたいことがあるのか。対話を通じて、会社の魅力ややりがいを伝えつつ、それでも意欲が低い場合は、従業員承継やM&Aといった他の事業承継の道を真剣に検討すべきです。複数の選択肢を視野に入れることが、最終的な事業の存続・発展につながります。

Q2: 後継者候補が複数いる場合、どうやって一人に決めればいいですか?

A2: 家族間の公平性を保ちつつ、会社の将来にとって誰が最も適任かを客観的に判断する必要があります。経営者としての資質、経営への意欲、従業員からの信頼、業界知識などを多角的に評価しましょう。家族会議で話し合い、専門家(親族間の調整に長けた専門家など)の意見を聞くことも有効です。承継しない他の親族への配慮や、相続でのバランスなども含めて総合的に判断することが求められます。

事業承継×親族内承継:成果を最大化する具体的な取り組み

親族内承継の導入を決断したら、次は具体的な手続と対策に進みます。この段階では、財務、税務、法務といった専門的な知識が不可欠になります。また、従業員や取引先への配慮も忘れてはなりません。ここでは、事業承継、特に親族内承継を円滑かつ有利に進めるための具体的な方法を解説します。

親族内承継を成功に導く具体的なステップ

ステップ4:専門家チームの組成と活用

事業承継は多岐にわたる専門知識が必要です。一人で抱え込まず、信頼できる専門家のサポートを得ることが不可欠です。

  • 必要な専門家: 税理士(自社株評価、相続税・贈与税対策、事業承継税制)、弁護士(遺言書作成、株主間契約、法務トラブル対応)、M&Aアドバイザー(他の選択肢検討の場合)、コンサルタント(事業計画策定、後継者教育)、金融機関(資金調達、情報提供)。
  • チームとしての連携: 各専門家が連携し、全体として整合性の取れたアドバイスを受けられる体制を築きます。誰か一人の専門家に丸投げするのではなく、経営者自身が指揮を執り、チームとして動いてもらう意識が重要です。
  • 工務店業界に詳しい専門家を選ぶ: 可能であれば、建設業界や中小企業の事業承継に詳しい専門家を選ぶと、より実践的なアドバイスを得られます。

専門家への相談は、準備の早い段階で始めるほど、対策の選択肢が広がり、コストも抑えられる傾向があります。

ステップ5:財務・税務対策の徹底

事業承継時の資産移転には、税金が大きく関わってきます。適切な対策を講じることで、不要な税負担を避け、後継者の経営基盤を安定させることができます。

  • 自社株評価: 会社の評価方法を理解し、承継時の自社株の株価を把握します。株価が高いと贈与税や相続税の負担が重くなるため、計画的に株価対策(例えば、役員退職金や設備投資による内部留保の圧縮など)を行うことも検討します。
  • 相続税・贈与税対策: 株式や事業用資産を後継者に移転する方法(贈与、相続、売買など)を検討し、それぞれの税金への影響を把握します。計画的な生前贈与や、相続時精算課税制度の活用などが考えられます。
  • 事業承継税制の活用: 要件を満たせば、特定の資産にかかる相続税や贈与税の納税が猶予・免除される、非常に有利な税制です。適用には厳格な要件と複雑な手続きが必要なため、専門家(特に税理士)と密に連携しながら検討・準備を進めます。
  • 納税資金の準備: 税制の特例を活用しても、一部税金が発生したり、他の相続人に支払う代償金が必要になる場合があります。これらの資金の準備を早めに計画しておくことが重要です。

株価対策や税金対策は、短期的なものと長期的なものがあります。会社の状況や後継者の状況に合わせて、最適なプランを専門家と共に作成・実行します。

ステップ6:法務・契約関係の整備

権利義務の移転は、法的に正確に行われなければなりません。

  • 株式譲渡や相続手続き: 自社株の所有権を後継者に移転する手続きを行います。贈与や売買による場合は契約書を作成し、相続の場合は遺産分割協議などを行います。
  • 経営権の移譲: 代表取締役の変更登記など、商業登記の手続きを行います。また、取締役会の構成なども見直します。
  • 事業用資産の移転: 土地、建物、車両、機械設備などの名義変更や、関連する許認可の承継手続きを行います。
  • 遺言書の作成: 経営者個人の財産と会社の資産が混在している場合や、複数の相続人がいる場合は、遺言書を作成しておくことが、後のトラブル防止に非常に有効です。事業用資産を後継者に確実に引き継ぐ意思を明確に示せます。
  • 株主間契約や遺産分割協議書の作成: 承継後の経営安定化のため、他の株主との間で経営に関する取り決めを契約で交わしたり、相続人間の合意を明確にする遺産分割協議書を作成します。

これらの手続きは形式的なものですが、疎かにすると後々大きな問題に発展する可能性があります。専門家(弁護士、司法書士など)の関与が必須です。

ステップ7:従業員と取引先への丁寧な説明と配慮

事業承継は、会社に関わるすべての人にとって大きな変化です。特に従業員の理解と協力は、承継後も事業を継続・発展させる上で不可欠です。

  • 情報開示のタイミングと方法: いつ、誰に、どこまで情報を開示するかは、会社の状況や人間関係によって異なりますが、基本的には決定事項を隠さず、誠実に伝えることが信頼を得る上で重要です。まずは役員や管理職、次に全従業員、最後に取引先という順序が考えられます。
  • 新しい体制へのフォロー: 後継者への権限移譲と並行して、従業員が新しいリーダーシップを受け入れられるよう、先代経営者がサポートします。後継者の強みやビジョンを従業員に伝え、不安を解消するための場を設けることも有効です。
  • 雇用条件や福利厚生の維持: 事業承継後も、従業員の雇用条件や福利厚生は基本的に維持されることを明確に保証し、安心感を提供します。
  • 取引先との関係維持: 長年培ってきた取引先との信頼関係を損なわないよう、後継者が丁寧に挨拶に回り、今後の取引継続について説明します。

人が資本である工務店において、従業員のモチベーション維持は生命線です。丁寧なコミュニケーションは、事業承継の成功確率を大きく左右します。

ステップ8:会社の「強み」と「文化」の引き継ぎ

資産や経営権だけでなく、会社の核となる強みや独自の文化をどう引き継ぐかも重要です。

  • ノウハウや技術の言語化・共有: 熟練の職人の技術、効率的な現場管理の方法、特定の工法に関するノウハウなど、これまで言語化されていなかった暗黙知を形式知に変換し、後継者や若手社員に共有する仕組みを作ります。マニュアル作成、研修プログラム、OJTなどを活用します。
  • 顧客リストと関係性の承継: 誰がどの顧客とどのような関係を築いているか、顧客のニーズや履歴などをデータベース化し、後継者が参照できるようにします。先代経営者と後継者が一緒に مشتریを訪問し、引き継ぎを行うことも有効です。
  • 地域社会との連携: 工務店は地域密着が強みです。地域のイベントへの参加、自治体との連携、地元住民との関係性など、地域とのつながりを後継者に引き継ぎます。
  • 会社の文化・理念の浸透: 創業者が大切にしてきた価値観、仕事への姿勢、お客様への向き合い方といった企業の文化や理念を改めて言語化し、後継者だけでなく全 karyawan に共有・浸透させる取り組みが必要です。

これらの「見えない資産」こそが、工務店ならではの競争力の源泉です。これらを確実に次世代に引き継ぐ仕組みを構築することが、事業の継続的な発展には不可欠です。

Q&A:事業承継×親族内承継でよくある疑問

Q3: 自社株の評価って、どうやるんですか? 工務店特有の注意点はありますか?

A3: 自社株評価には、主に類似業種比準価額方式、純資産価額方式、配当還元方式などがあります。中小企業では、類似業種比準価額方式と純資産価額方式を併用することが多いです。工務店の場合、土地や建物といった不動産の含み益が大きい場合があり、これが純資産価額を押し上げ、株価が高くなることがあります。また、評価対象となる事業用資産(重機、車両など)の現況や簿価も評価に影響します。正確な評価には専門知識が必要なため、必ず税理士に依頼してください。事前に株価対策を行うことも検討できます。

Q4: 事業承継税制って難しそうですが、検討する価値はありますか?

A4: 事業承継税制は非常に有利な税制ですが、要件が複雑で、適用後の継続要件も厳格です。しかし、適用できれば多額の納税負担が猶予・免除される可能性があるため、検討する価値は大いにあります。特に自社株評価が高い場合や、後継者に納税資金の余裕がない場合に有効です。ただし、特例措置の適用を受けるためには、都道府県への計画提出や認定申請など、煩雑な手続きが必要です。後継者が経営権を維持できるか、雇用を維持できるかなど、適用後の要件をクリアできるかどうかも含めて、税理士と慎重に検討してください。

Q5: 従業員には、事業承継のことをいつ話すべきですか?

A5: 従業員への告知は、風評被害や従業員の不安を避けるため、決定事項が固まった段階で、かつ実行に移すあまり直前にならないタイミングが望ましいです。理想的には、後継者教育が進み、新体制の方向性が明確になった頃です。まずは役員会で共有し、次に各部署の責任者に伝え、情報の取り扱いに注意喚起した上で、全従業員に説明会などで直接伝えます。この際、事業継続の方針、従業員の雇用は守られること、新しい体制への期待などを誠実に伝えることが重要です。

事業承継を継続的に成功させるための「次の一手」

事業承継は、単に経営者が交代するだけでなく、会社の新たなスタートを意味します。引き継ぎが完了した後も、事業が継続的に発展していくためには、計画的なフォローアップと、変化を恐れない姿勢が不可欠です。このセクションでは、親族内承継後の課題と、事業をさらに成長させていくための「次の一手」について解説します。

承継後の課題と成功のためのポイント

先代経営者の「引き際」と関わり方

親族内承継において、先代経営者の引き際は非常に重要です。いつまでも経営に口を出しすぎると、後継者がリーダーシップを発揮できず、従業員も混乱します。かといって、完全に手を引いてしまうと、後継者が孤立したり、長年の経験が失われたりするリスクもあります。

  • 権限移譲の徹底: 経営判断は後継者に任せ、先代経営者は基本的に口を出さないようにします。重要な意思決定権限は、早いうちに後継者に移譲します。
  • 新しい役割の設定: 会長、相談役、顧問など、新しい役職に就くか、完全に引退するかを明確にします。新しい役職に就く場合でも、その役割と権限範囲を明確に定義し、後継者の経営と干渉しないように注意が必要です。
  • 後継者へのアドバイス方法: 求められた場合にのみ、経験に基づいたアドバイスをするように心がけます。上から目線ではなく、共に会社の将来を考えるパートナーとしての姿勢が大切です。重要なのは、あくまで後継者の「判断」を尊重することです。
  • 社内外への周知: 先代経営者の新しい立場と役割を、従業員や取引先、地域社会に明確に伝えます。これにより、誰が現在の責任者であるかを明確にします。

円満な引き継ぎは、後継者が経営に邁進するための強力な後押しとなります。先代経営者自身も、第二の人生を豊かに過ごすための計画を立てておくことが重要です。

新体制による変化への対応

後継者が経営者になれば、当然、経営方針ややり方に変化が生まれるでしょう。この変化を会社全体の成長に繋げるための対応が必要です。

  • 新しいビジョンと目標の共有: 後継者が描く会社の新しいビジョンや目標を、従業員や関係者と丁寧に共有します。「なぜ変えるのか」「変えることでどう良くなるのか」を明確に伝えることで、理解と協力を得やすくなります。
  • 組織文化のアップデート: 親族経営ならではの文化の良い部分は残しつつも、時代に合わせて組織体制や働き方を見直す柔軟性が必要です。従業員の意見を聞き、風通しの良い組織を目指します。
  • 失敗を恐れずチャレンジできる環境: 後継者が新しい取り組みに挑戦する際、失敗を過度に恐れる必要はありません。先代経営者はもちろん、従業員も、挑戦を応援し、たとえ失敗してもそこから学びを得られるような建設的な組織文化を育むことが重要です。

「前と違う」という変化への抵抗感はつきものですが、変化なくして成長はありません。新しい風を前向きに捉えられるよう、組織全体で意識を高める取り組みが求められます。

継続的な成長戦略の構築

事業承継はゴールではなく、事業をさらに発展させていくための新たなスタートです。承継後も継続的な成長を目指す戦略が必要です。

  • 市場環境の変化への対応: 建設業界の動向、顧客ニーズの変化、技術革新(例:BIM/CIM、省エネ基準、再生可能エネルギー関連工事)などを常に把握し、事業戦略をアップデートします。
  • 新たな分野への挑戦: リフォーム分野の強化、特定の専門工事(耐震、断熱など)への特化、DX(デジタルトランスフォーメーション)による業務効率化や新しいサービス提供など、事業の多角化や高度化を検討します。
  • 人材育成への投資: 後継者だけでなく、中堅社員や若手社員の育成にも継続的に投資します。技術継承はもちろん、マネジメント能力や新しい技術への対応力を持つ人材を育てることが、会社の将来を支えます。
  • 財務体質の強化: 経営の安定化のために、引き続き財務状況を健全に保つ努力が必要です。無借金経営が良いとは限りませんが、適切な資金繰り計画とリスク管理を行います。

親族内承継によって安定的な経営基盤を引き継いだ後は、後継者のリーダーシップのもと、攻めの経営に転じることも可能です。市場の変化を捉え、積極的に事業を拡大・革新していく姿勢が、会社の持続的な成長を保証します。

Q&A:事業承継の継続的な成功に関する疑問

Q6: 先代経営者は、承継後どこまで経営に関わるべきでしょうか? 口出しすぎてしまうのではと心配です。

A6: 理想的には、権限は完全に後継者に移譲し、先代経営者は「相談役」や「顧問」として、経験に基づくアドバイスを求められた場合にのみ行うのが良いでしょう。承継計画の段階で、お互いの役割と権限範囲を明確に定めることが非常に重要です。もし口出しが心配なら、一定期間は連絡を最小限にするなど、物理的に距離を置くことも方法の一つです。最も大切なのは、後継者が自分の考えで経営を判断し、責任を持つ機会を与えることです。

Q7: 承継後に業績が悪化した場合、どう立て直せばいいですか?

A7: 承継直後に業績が不安定になることは珍しくありません。重要なのは、問題を早期に発見し、原因を分析することです。市場環境の変化か、新しい方針がフィットしていないのか、従業員のモチベーション低下かなど、課題を特定します。その上で、後継者自身のリーダーシップを発揮し、従業員と協力して対策を打ちます。必要であれば、外部の経営コンサルタントや専門家のアドバイスを再度求めることも有効です。先代経営者も、後継者の求めに応じて精神的なサポートや具体的な助言を行うことで支えます。

まとめ

本記事では、工務店経営者様が直面する重要な課題である事業承継、特に多くの経営者が最初に検討する親族内承継について、そのメリット・デメリットから具体的な準備、実行、そして承継後の成功に繋げるためのステップまでを実践的に解説しました。

親族内承継は、信頼性の高さやスムーズな移行といったメリットがある一方で、後継者の適性、家族間の対立、公私の混同といったデメリットも存在します。これらの光と影を十分に理解し、計画的に進めることが成功の鍵となります。

成功のための具体的なステップとして、まずは自社の現状を正確に「見える化」し、後継者候補との誠実な対話を通じて意向を確認すること。そして、早い段階から専門家チームを組成し、ロードマップに基づいた長期的な承継計画を策定・実行していくことが重要です。特に、自社株評価を含む財務・税務対策、法務手続き、そして従業員や取引先への丁寧な配慮は、円滑な事業承継に不可欠な要素です。さらに、会社の核となる「強み」や「文化」を次世代に確実に引き継ぐ仕組みづくりも忘れてはなりません。

事業承継は、決して「終わり」ではなく、培ってきた事業と地域との絆を未来へ繋ぐための「新たな始まり」です。承継後も、先代経営者の適切な引き際、新体制での変化への柔軟な対応、そして市場の変化を捉えた継続的な成長戦略の構築が求められます。この記事で提示した具体的なアクションプランが、皆様の事業承継への不安を解消し、力強く、そして希望に満ちた次の世代へのバトンタッチを実現するための一歩となることを願っています。あなたの築いた大切な事業は、必ず次世代へと引き継がれ、地域社会の未来を創り続けることができるはずです。

この記事を書いた人

プロフィール画像

浄法寺 亘

福島県 喜多方市出身。県立会津高校、市立高崎経済大学卒。工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。現在動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」。住宅情報サイト「ハウジングバザール」の運営にも携わっている。

著書:
頼みたくなる住宅営業になれる本
https://x.gd/oatiM
SDGsに取り組もう 建築業界編
https://x.gd/MXYJr

主な講演:
鹿児島県庁主催「かごしま緑の工務店研修会」
リードジャパン主催「工務店支援エキスポ」(東京ビックサイト)
育英西中学校、その他住宅FCなど

活動実績
2019~ 千葉県にて里山竹林整備ボランティア
2020~ 木ッズ絵画コンクール

工務店の集客・営業ならジーレックスジャパン →ホームページはこちら

商品の差別化へ!制振装置はこちらから →耐震・制振装置

友達申請お待ちしてます! →代表浄法寺のfacebook

工務店のネット集客ならこちら →工務店情報サイト ハウジングバザール

関連記事

工務店 集客 エースホームの新デザイン

2022/05/12 |

皆さんこんにちは。 一般社団法人コミュニティビルダー協会の浄法寺です。 気温も上がってき...

記事を読む

工務店の強みを見つける!他社と差別化する視点

2025/07/14 |

工務店経営は、地域密着型でありながらも激しい競争にさらされています。「仕事はあるが利益率が不安」「他...

記事を読む

現場管理で利益を増やす!工務店のノウハウ

2025/07/22 |

「一生懸命やっているのに、どうも利益が出ている実感が湧かない…」 「現場がバタバタしていて、ちゃんと...

記事を読む

旅費交通費を削減する!工務店の経費削減

2025/07/18 |

工務店経営において、最大の課題の一つは利益の確保と支出の最適化です。なかでも日々の業務で生じやすい旅...

記事を読む

  • 木の家住宅サイト『ハウジングバザール』

    もし、木の家をつくっていて、もっと多くのお客様と出会いたいという会社さんはぜひ見てください。
    掲載のお問合せは、画像をクリックして下さい。

  • 協会の著作

    代表理事の浄法寺が書いた住宅営業向けの本です。特にこれからの住宅営業向けに基本的な考え方と流れについて書いています。

  • 協会の著作

    代表理事の浄法寺が「SDGsをどうすれば建築業に活かせるか」を具体的な事例を取り入れながら書いた本になります。

  • 当協会監修の本です。工務店さんの集客に役立つアイデアがたくさん詰まってます!!

  • 僕たちが応援している【建築会社ができる社会貢献】のひとつのかたちです。

PAGE TOP ↑