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親族内承継のメリット・デメリットと成功の秘訣

公開日: : 工務店 経営

工務店経営者の皆様、こんにちは。日々の現場管理や営業活動に加え、会社の将来について考える時間を確保することは容易ではないとお察しします。築き上げてきた事業を誰に引き継ぐか、どのように次の世代へバトンを渡すかは、多くの経営者が直面する避けて通れない課題です。特に、ご自身の親族に会社を譲る「親族内承継」を検討されている方も多いのではないでしょうか。

親族内承継は、ご自身の想いや会社の文化、技術をスムーズに引き継げる可能性がある一方で、特有の難しさも伴います。「息子は本当に経営に向いているのか?」「他の兄弟との関係はどうなるのか?」「税金はどれくらいかかるのか?」といった具体的な疑問や不安を抱えているかもしれません。インターネットで調べても、一般的な情報ばかりで、工務店の現場に即した具体的な進め方が見つからず、さらに混乱することもあるかと思います。

この記事は、まさにそうした工務店経営者の皆様のために書かれています。親族内承継に焦点を当て、そのメリット・デメリットを明らかにしつつ、実際にあなたの会社でどのように事業承継を進めれば良いのか、具体的な手順をステップ形式でご紹介します。単なる制度の説明に留まらず、後継者育成のポイント、相続・贈与に関わる税務対策、従業員や取引先とのコミュニケーション方法、そして承継を成功させるための心構えまで、実践的な情報満載です。

この記事を最後までお読みいただければ、親族内承継に関する霧が晴れ、具体的な行動への第一歩を踏み出すための明確なロードマップが得られるはずです。あなたの会社と、そこで働く人々、そして地域のお客様のために、スムーズで成功に導く事業承継を実現しましょう。

親族内承継の基礎知識と向き合う:メリット・デメリットの具体的な理解

事業承継と一口に言っても、その方法はいくつかあります。親族に引き継ぐ親族内承継、会社の役員や従業員に引き継ぐ従業員承継、そして他の会社に事業を譲り渡すM&A(第三者承継)です。工務店の場合、創業者の理念や技術、地域とのつながりが重要視されるため、親族の中から後継者を選びたいと考える経営者が多い傾向にあります。まずは、親族内承継がどのようなものか、他の方法との違いを踏まえて理解を深めましょう。

工務店の事業承継における親族内承継の立ち位置

工務店経営者は、単に建物を建てるだけでなく、お客様との信頼関係の上に成り立っています。また、熟練の職人や技術者の育成も重要な役割です。こういったソフト面での資産は、親族内承継によって比較的スムーズに引き継がれる可能性があります。長年会社を見てきた息子さんや親族が後継者となることで、会社の文化や技術の核心が失われにくいというメリットがあるからです。しかし、一方で親族間であるがゆえの難しさも存在します。客観的な視点を持つことが重要です。

親族内承継の具体的なメリット

親族内承継を選択する主なメリットは以下の通りです。これらのメリットが、あなたの会社にとって本当に有効か検討してみましょう。

  • 経営理念や社風、技術の継承容易性: 後継者が幼い頃から会社を見ている場合が多く、創業者の経営哲学や社風、培われてきた技術を深く理解しているため、承継後もこれらを維持しやすい傾向があります。これは工務店にとって非常に重要な要素です。
  • 従業員や取引先の安心感: 見慣れた顔である親族が経営を引き継ぐことは、会社の安定性を印象付け、従業員や長年の取引先からの信頼を得やすい場合があります。特に、従業員の雇用継続に対する安心感は大きいでしょう。
  • 相続対策との連携: 株式の贈与や相続を活用して事業承継を進めることができるため、個人の資産である相続財産と会社の事業資産を一体的に捉えた対策が可能です。事業承継税制などの特例制度を活用できる道も開けます。
  • 意思決定のスピード感: 血縁関係にあるため、他の方法に比べて後継者決定までのプロセスが比較的スムーズに進むことがあります。ただし、関係者間の合意形成は必須です。
  • 経営の一体性維持: 会社の所有と経営が分散しにくく、経営の意思決定を統一的に行いやすい構造を維持できます。

親族内承継の知っておくべきデメリット

一方で、親族内承継には特有のデメリットやリスクも存在します。これらを事前に把握し、対策を講じることが成功の鍵となります。

  • 後継者候補の限定と適性の問題: 親族内に後継者候補がいない、または候補はいるものの経営者としての資質や意欲に欠ける場合があります。親族だからといって安易に後継者にしてしまうと、経営が立ち行かなくなるリスクがあります。
  • 他の相続人との調整問題: 会社株式などの事業用資産を特定の親族(後継者)に集中させることに対し、他の相続人から不満が出たり、遺留分を巡るトラブルに発展したりする可能性があります。遺産分割協議が円滑に進まないことも考えられます。
  • 株式や事業用資産の評価と納税資金: 会社の株式や事業用資産の評価額が高額になる場合、後継者がこれを取得する際の負担(税金など)が大きくなります。また、他の相続人に代償金を支払う必要が生じた場合の資金繰りも問題となることがあります。
  • 公私の混同リスク: 血縁関係であるため、経営と家族関係が混同しやすく、公明正大な経営判断が難しくなるケースが見られます。従業員から見ても、馴れ合いや不公平感が生まれる可能性があります。
  • 先代経営者の影響力と引退問題: 先代経営者が経営から完全に離れることが難しく、後継者のリーダーシップ発揮を妨げたり、意見衝突が生じたりするケースがあります。スムーズな世代交代には、先代の適切な関与と引退計画が不可欠です。

これらのメリット・デメリットを冷静に比較検討し、あなたの会社の状況にとって親族内承継が最善の方法なのかをじっくり考えることから事業承継は始まります。

事業承継を成功に導く実践ロードマップ:親族内承継の具体的な手順とQ&A

親族内承継を進めるには、計画的かつ体系的なアプローチが必要です。行き当たりばったりで進めると、後々大きな問題が発生する可能性があります。ここでは、工務店経営者が実践できる親族内承継の具体的なロードマップをステップ形式でご紹介します。これらのステップを参考に、あなたの会社の状況に合わせて計画を立てていきましょう。

ステップ1:事業と経営の現状分析と課題の明確化

事業承継を行う前に、まず自社の状況を正確に把握することが重要です。会社の強み・弱み、財務状況、組織体制、人材、抱えている経営課題などを洗い出します。

  • 財務状況の分析: 過去数年間の業績、キャッシュフロー、借入状況、資産状況などを詳細に分析します。会社の価値評価も重要です。
  • 組織・人材の評価: 幹部人材、職人、営業担当者などの能力や役割、組織図、従業員の定着率などを評価します。後継者候補が引き継いだ後、組織が円滑に機能するかを見極めます。
  • 営業・技術面の評価: 受注ルート、得意な工事、技術力、地域での評判などを評価します。これらの無形資産も重要な承継対象です。
  • 経営課題の抽出: 売上の伸び悩み、コスト高、人材不足、技術習承継問題など、現在会社が抱えている課題を明確にします。これらの課題への対応策も、後継者と一緒に検討する必要があります。

この分析を通じて、後継者が引き継ぐ会社の「リアルな姿」を把握し、承継計画の基礎とします。

ステップ2:後継者の選定と育成計画の策定

親族内承継において最も重要かつ難しいステップの一つです。後継者は誰が最適かを見極め、その資質を高めるための育成計画を立てます。

  • 後継者候補との対話: まずは候補となる親族とじっくり話し合い、本人に事業を承継する意欲があるか、どのようなビジョンを持っているかを確認します。本人の意思が何よりも尊重されるべきです。
  • 経営者としての資質評価: 候補者のリーダーシップ、コミュニケーション能力、学習意欲、責任感、問題解決能力などを客観的に評価します。必要であれば、適性検査なども活用します。
  • 段階的な権限委譲とOJT: 現場作業からスタートし、徐々に管理業務、見積もり、打ち合わせ、営業、資金繰りといった経営に近い業務に携わらせます。重要な会議への同席や、一部のプロジェクトの責任者を任せるなど、実践を通じて学ばせる機会を設けます。
  • 外部教育・研修の活用: 経営塾、セミナー、業界団体の研修などに参加させ、経営に必要な知識(財務、法務、マーケティング、労務など)を体系的に学ばせます。異業種交流なども有効です。
  • 様々な部署・役割の経験: 可能であれば、営業、設計、現場管理、総務・経理など、会社の様々な部署を経験させることで、事業全体の流れや各部門の課題を理解させます。

育成には時間と根気が必要です。少なくとも3年〜5年、長い場合は10年程度の時間をかけてじっくり行うのが理想的です。後継者が自信を持って経営に臨めるよう、惜しみなくサポートすることが大切です。

ステップ3:財産と株式の承継計画

会社の支配権を後継者に移すためには、株式や事業用資産を承継させる必要があります。このプロセスには税金が大きく関係するため、専門家との連携が不可欠です。

  • 会社の株式評価: 会社の価値を算出し、株式の評価額を確定します。評価方法にはいくつか種類があり、税理士と相談しながら適切な方法を選択します。
  • 承継方法の選択: 以下の方法の中から、税金や資金繰り、他の相続人への影響などを考慮して最適な方法を選択します。
    • 贈与: 生前に後継者に株式を譲る方法。年間110万円の基礎控除枠を活用した計画的な贈与(暦年贈与)や、事業承継税制の特例を適用した贈与税の納税猶予・免除を検討します。
    • 相続: 経営者の死亡により、後継者が株式を相続する方法。相続税が発生しますが、事業承継税制の特例を適用できる可能性があります。他の相続人との遺産分割協議が重要になります。
    • 譲渡: 後継者が対価を支払って株式を買い取る方法。後継者に購入資金が必要になります。株式譲渡益に対して税金が発生します。
  • 納税資金対策: 株式や事業用資産の承継には贈与税や相続税、所得税が発生する可能性があります。これらの納税資金をどのように確保するかを事前に計画します。生命保険の活用や、会社の留保金を活用する方法などがあります。
  • 遺留分対策・他の相続人への配慮: 後継者以外の相続人が持つ遺留分(最低限保証された遺産取得分)を侵害しないよう配慮が必要です。遺言書の作成、家族信託、生前贈与によるバランス調整、または後継者以外の相続人への代償金の支払いなどを検討します。他の親族との関係を良好に保つことが円滑な事業承継には不可欠です。
  • 事業承継税制の活用検討: 一定の要件を満たすことで、事業承継時の贈与税や相続税の納税が猶予・免除される特例制度があります。適用には複雑な要件と手続きが必要なため、必ず税理士と密に連携を取りながら進めます。

このステップは特に専門的な知識が必要です。税理士、弁護士、行政書士、事業承継・引継ぎ支援センターなど、信頼できる外部専門家のサポートを必ず受けましょう。

ステップ4:社内外への周知と関係構築

新しい経営体制への移行をスムーズに行うためには、会社の内外への適切なコミュニケーションが欠かせません。

  • 従業員への説明: 事業承継の目的、後継者、今後の会社の方針などを丁寧に説明します。従業員の不安を解消し、新しい体制への協力体制を築くことが重要です。説明会や個別面談などを実施します。
  • 取引先への挨拶: 主要な取引先には、先代経営者と後継者が共に訪問し、事業承継の報告と今後の変わらぬ支援をお願いします。信頼関係の維持・強化に努めます。
  • 金融機関への報告: 借入がある場合など、主要な取引金融機関には早めに事業承継計画を報告し、理解と協力を取り付けます。融資の引き継ぎや新たな資金調達の相談を行うこともあります。
  • 関係省庁・団体への手続き: 法務局での役員変更登記、税務署への届出、許認可の名義変更など、必要な行政手続きを漏れなく行います。工務店に関わる建設業許可なども確認が必要です。

透明性の高いコミュニケーションを心がけ、関係者からの理解と協力を得ることが、引き継ぎ後の事業運営を円滑にします。

ステップ5:先代経営者の引退計画と後継者の自主性尊重

事業承継は、後継者の経営開始であると同時に、先代経営者の引退でもあります。スムーズな移行には、先代の適切な関与と、後継者が自身のリーダーシップを発揮できる環境が不可欠です。

  • 引退の時期と役割の明確化: 先代がいつまでに、どの程度経営に関与するかを明確に取り決めます。完全に経営から離れるのか、会長として一部の助言を行うのか、顧問として外部との関係維持に努めるのかなど、役割を具体的に定義します。
  • 後継者への全面的な権限移譲: 決定権や責任を完全に後継者に移譲します。先代が口出ししすぎると、後継者の成長を妨げ、従業員にも混乱を招きます。
  • セカンドライフの計画: 先代経営者自身が、会社から離れた後の人生設計(趣味、地域活動、新たな事業など)を立てることも重要です。これが軌道に乗れば、会社への過度な干渉を防ぐことにつながります。

「現役は口出し無用、OBは金と口は出さない」といったルールを設けることも有効です。後継者が新しい時代に合わせた独自の経営スタイルを確立できるよう、温かく見守り、必要な時にだけサポートする姿勢が理想です。

親族内承継に関するよくあるQ&A

これまでのステップを踏まえる中で、様々な疑問が湧いてくるはずです。ここでは、工務店経営者が親族内承継に関してよく抱く具体的な疑問とその回答をいくつかご紹介します。

Q1: 後継者候補が複数いる場合、どのように選び、他の兄弟との関係を調整すれば良いですか?

A1: 後継者候補が複数いる場合は、まず各候補者の経営に対する意欲、能力、適性を客観的に評価します。家族全体で、誰が事業承継の最適任者であり、なぜその人なのかを丁寧に話し合う場を持つことが極めて重要です。会社という「器」をどう守り発展させるか、という共通認識を持つことが出発点となります。後継者以外の兄弟に対しては、株式以外の財産(不動産など)で公平性を保つ、後継者からの定期的な配当を約束する、会社への関わり方(非常勤役員など)を検討するなど、様々な配慮と具体的な取り決めが必要です。遺言書の作成や、生前贈与・家族信託の活用も有効な手段となります。

Q2: 後継者が経営に関して全く経験がないのですが、どのように教育すれば間に合いますか?

A2: 経営経験が全くない場合でも、計画的な育成によって十分に能力を高めることは可能です。重要なのは、まず本人の学ぶ意欲を引き出すこと。そして、現場、事務、営業、管理といった会社の核となる部署を順番に経験させ、全体像を理解させることから始めます。社内OJTに加え、外部の経営者向け研修や工務店経営塾を活用し、財務、法務、労務、マーケティングなど、経営に必要な知識を体系的に学ばせます。他の経営者と交流する機会も大いに刺激になります。育成には最低でも3年〜5年、可能であれば10年程度の時間をかける覚悟が必要です。慌てず、着実にステップアップさせていきましょう。

Q3: 株式評価額が高額で、贈与税や相続税の納税資金が心配です。どのような対策がありますか?

A3: 株式評価額が高い場合の納税資金対策は重要な課題です。まず、税理士に正確な株式評価と試算を依頼します。対策としては、会社に利益を積み増して配当可能な資金を確保すること、後継者や会社が金融機関から融資を受けること、生命保険を活用して納税資金を準備すること、不動産収入などで後継者の資金力を強化するといった方法が考えられます。また、要件を満たせば事業承継税制の特例を活用し、納税猶予・免除を受けるのが最も効果的ですが、適用要件が厳格であり、手続きも複雑なため、必ず専門家と連携して慎重に進める必要があります。相続や贈与のタイミングを計画的に分散させることも有効です。

Q4: 事業承継後、先代経営者が会社に残り続けることでトラブルになることはありませんか?どうすればスムーズな移行ができますか?

A4: 先代経営者が経営に深く関与しすぎる「院政」は、後継者のリーダーシップを阻害し、従業員の混乱を招く大きな原因となります。これを避けるためには、事前に先代経営者の引退時期、役割、権限の範囲を明確に定めた「引退計画」を策定し、後継者と合意しておくことが重要です。例えば、一定期間は会長として全体を見守るが、具体的な業務執行は後継者に任せる、特定の取引先との関係維持のみを行う、といった具体的な役割分担を文書にしておくのも良いでしょう。そして、定めた時期が来たら完全に経営から離れ、後継者に全てを委ねる覚悟が必要です。先代自身が会社以外の活動(趣味、地域貢献、新たな事業など)に楽しみを見つけ、セカンドライフを充実させることも、会社への依存度を減らし、スムーズな移行を助けます。

Q5: 親族内承継を進める上で、誰に相談すれば良いですか?

A5: 親族内承継は、税務、法務、労務、組織、財務など多岐にわたる専門知識が必要です。まずは信頼できる税理士に相談することをお勧めします。税務面の試算、承継方法の検討、事業承継税制の適用可能性など、肝となる部分のアドバイスが得られます。遺産分割や他の相続人との調整については弁護士、登記関係は司法書士または行政書士、会社の組織や人事については社会保険労務士や経営コンサルタントといった専門家と連携していくことになります。また、全国の商工会議所・商工会や、国が設置している事業承継・引継ぎ支援センターは、無料で相談に乗ってくれ、適切な専門家を紹介してもらえる公的機関です。これらの機関も積極的に活用しましょう。

承継後の未来を見据える:事業の継続的な発展と専門家の活用

親族内承継は、後継者がバトンを受け取って操業を開始した時点で完了するものではありません。むしろ、そこからが新しい会社の歴史の始まりです。後継者が経営者として事業を継続的に発展させていくためには、承継後に直面する課題を見据え、先手を打つことが重要です。

承継後の経営課題への対応

後継者は、先代が築いた基盤を引き継ぎつつも、変化する時代に合わせて会社をアップデートしていく必要があります。承継後にありがちな課題と、その対応について考えましょう。

  • 新しい経営戦略の策定: 市場の変化、技術革新(例:BIM、DXなど)、顧客ニーズの変化に対応するため、新たな経営戦略を策定します。省エネ住宅、リフォーム、リノベーション、耐震改修など、工務店の得意分野を活かしつつ、新しい収益の柱を模索することも重要です。
  • 組織改革と人材育成: 後継者のリーダーシップのもと、組織を活性化させます。幹部社員の育成、若手人材の登用、評価制度の見直しなど、時代に合った働きがいのある環境づくりを進めます。職人の高齢化や後継者不足は工務店業界全体の課題であり、育成システムやIT活用による効率化は必須です。
  • 財務体質の強化: 承継時に借入金を引き継いだり、新たな設備投資が必要になったりすることもあります。常に財務状況を把握し、資金繰りをコントロールする能力が求められます。金融機関との良好な関係維持や、補助金・助成金の活用も視野に入れます。
  • 先代経営者との「距離感」の調整: 承継後も先代経営者との良好な関係を保ちつつ、経営判断は後継者が主体的に行えるように、意識的に線引きをすることが大切です。定期的な報告や相談は行いつつも、最終的な決定権は後継者にあることを明確にします。

事業承継を機に、会社のデジタル化を進めたり、新しい工法や技術を取り入れたりするなど、攻めの経営に転じるチャンスととらえることもできます。

継続的な成功のための外部専門家の活用術

一人で抱え込まず、必要に応じて外部の専門家を頼ることが、後継者の負担を減らし、より確実な経営につながります。事業承継後も専門家との関係を継続し、様々な場面でアドバイスを受けましょう。

  • 税理士: 毎年の税務申告はもちろんのこと、経営状況に応じた節税対策、財務改善のアドバイス、資金繰りの相談など、継続的な税務・財務サポートを受けます。
  • 弁護士: 取引上のトラブル予防や対応、労務問題、後継者以外の親族との法的な問題など、発生しうる様々な法的リスクへの対応について相談します。
  • 社会保険労務士: 雇用契約、就業規則、人事評価制度、労務トラブル対応など、従業員に関わる様々な問題について専門的なアドバイスを受けます。労働環境の整備は、優秀な人材を確保し、組織を活性化させる上で不可欠です。
  • 経営コンサルタント: 新規事業の立ち上げ、マーケティング戦略、組織改革、業務効率化など、経営全般に関するアドバイスを求めます。工務店業界に詳しいコンサルタントを選ぶと、より実践的な示唆が得られます。
  • 事業承継・引継ぎ支援センター: 承継後の経営に関する悩みや、M&Aによる事業拡大、他の事業者との連携など、幅広い相談に対応してくれます。必要に応じて適切な専門家や支援機関を紹介してくれます。

これらの専門家は、社内にはない客観的な視点や豊富な知識を提供してくれます。定期的に相談する顧問契約を結ぶなどして、気軽にアドバイスを求められる関係を築いておくことが、経営判断の質を高めることにつながります。

事業承継は終わりではなく通過点です。先代が培った信頼と実績を財産に、後継者は自分らしいリーダーシップを発揮し、工務店という事業をさらに発展させていく責任があります。そのためには、承継前からしっかりと準備し、承継後も学び続け、変化を恐れずに挑戦していく姿勢が不可欠です。

まとめ:確かな一歩を、未来への力に変える

この記事では、工務店経営者の皆様が直面する事業承継の中でも、特に親族内承継に焦点を当て、そのメリット・デメリットから具体的な進め方、そして承継後の発展までを包括的に解説しました。「事業承継」という言葉に漠然とした不安を感じていた方も、親族内承継には多くの考慮すべき点があることを理解し、具体的なステップが見えてきたのではないでしょうか。

親族内承継は、会社の理念や技術、地域との絆といった工務店にとってかけがえのない資産を次世代にスムーズに引き継げる可能性を秘めています。しかし、後継者の適性、他の親族との調整、納税資金の確保、そして何よりも先代と後継者間のコミュニケーションといった、血縁関係ゆえの難しさも存在します。これらの課題から目を背けず、一つ一つ丁寧に向き合うことが、親族内承継を成功させるための絶対条件です。

事業承継は長いプロセスであり、一朝一夕には完了しません。この記事でご紹介したロードマップ(現状分析→後継者育成→財産承継→社内外周知→引退計画)を参考に、焦らず、計画的に進めていくことが重要です。特に、十分な時間をかけた後継者の育成と、税務・法務・組織といった多岐にわたる専門知識を補うための外部専門家の活用は、成功のために欠かせない要素です。一人で抱え込まず、信頼できるパートナーと共に歩むことで、課題は解決へと導かれていきます。

あなたの工務店は、地域の暮らしを支え、人々の夢を形にしてきました。この素晴らしい事業を次世代に引き継ぐことは、単に経営者の務めというだけでなく、会社で働く従業員の生活を守り、お客様からの期待に応え続けるための社会的な責任でもあります。この記事が、その重責を果たすための一助となり、具体的な行動へ踏み出す勇気となれば幸いです。さあ、今日から、未来への確かな一歩を踏み出し、あなたの志と技術を、次の世代の力として繋いでいきましょう。

この記事を書いた人

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浄法寺 亘

福島県 喜多方市出身。県立会津高校、市立高崎経済大学卒。工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。現在動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」。住宅情報サイト「ハウジングバザール」の運営にも携わっている。

著書:
頼みたくなる住宅営業になれる本
https://x.gd/oatiM
SDGsに取り組もう 建築業界編
https://x.gd/MXYJr

主な講演:
鹿児島県庁主催「かごしま緑の工務店研修会」
リードジャパン主催「工務店支援エキスポ」(東京ビックサイト)
育英西中学校、その他住宅FCなど

活動実績
2019~ 千葉県にて里山竹林整備ボランティア
2020~ 木ッズ絵画コンクール

工務店の集客・営業ならジーレックスジャパン →ホームページはこちら

商品の差別化へ!制振装置はこちらから →耐震・制振装置

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