コミュニティービルダー協会は
「内閣府beyond2020」の認定および「外務省JAPAN SDGs Action Platform」の紹介団体です。

サービス残業をなくす!工務店の生産性向上策

公開日: : 工務店 経営

工務店の経営者として、日々、現場の運営、顧客対応、従業員のマネジメントと多岐にわたる業務に追われていることと思います。特に、人手不足が叫ばれる建設業界において、限られたリソースで最大限の成果を出し、利益改善を実現することは喫緊の課題です。その中で、見過ごされがちな、あるいは当たり前だとされてきた「サービス残業」が、実は経営を圧迫し、利益を蝕む大きな要因となっていることに気づいているでしょうか。

サービス残業は、単に労働時間が増えるだけでなく、従業員の疲弊を招き、生産性の低下、品質のばらつき、さらには離職率の上昇といった深刻な問題を引き起こします。これらはすべて、直接的・間接的に工務店の利益改善を妨げる要因となります。多くの経営者が「忙しいのは仕方がない」「ウチの仕事は時間通りには終わらない」と考えがちですが、その思考こそが、サービス残業の温床となり、さらに経営を苦しめる悪循環を生むのです。

では、どうすればこの悪循環を断ち切り、サービス残業をなくしながら、同時に生産性を大幅に向上させ、持続的な利益改善を実現できるのでしょうか。この課題に正面から向き合い、具体的な解決策を求めている経営者の方も多いはずです。「サービス残業なんて本当に無くせるのか?」「無くしたら仕事が回らなくなるのでは?」「どうやって社員の理解を得ればいいんだ?」といった疑問や不安をお持ちかもしれません。

この記事では、そうした工務店経営者の皆様が抱える具体的な疑問に答え、サービス残業の根本的な原因分析から、それを撲滅するための実践的なステップ、そしてサービス残業の解消がいかに利益改善に繋がるかを、具体的な方法論とともに徹底解説します。この記事を読み終える頃には、明日からすぐに自社で取り組める具体的なアクションプランが明確になり、生産性向上と利益改善への確かな一歩を踏み出せるようになるでしょう。

サービス残業の「実践的」削減戦略:実態把握からルール作りまで

サービス残業をなくし、利益改善を目指す第一歩は、自社のサービス残業の実態を正確に把握し、その発生原因を深く理解することです。「皆やっているから」「あたりまえ」といった古い慣習から抜け出すためには、感覚ではなくデータに基づいたアプローチが必要です。

1. サービス残業の実態を「見える化」する

サービス残業は、会社の正規の勤怠記録には現れない隠れた労働時間です。まずはこの隠れた時間を「見える化」することから始めましょう。

  1. 社員へのヒアリング・アンケート実施:匿名でのアンケートや、信頼できる社員との個別ヒアリングを通じて、現状の労働時間、残業時間、その中でも特にサービス残業となっている時間について実態を把握します。何に時間がかかっているのか、なぜサービス残業になってしまうのか、具体的な業務内容や状況を聞き出すことが重要です。
  2. 簡易的な労働時間記録の試行:全社員に義務付ける前に、一部の協力的な社員に日々の作業内容と所要時間を記録してもらう試行を行います。エクセルや簡単なノート、またはスマートフォンアプリなどを活用します。これにより、どの工程、どの業務で時間外労働が発生しやすいのか、具体的なボトルネックが見えてきます。
  3. タイムトラッキングツールの導入検討:より正確で継続的な「見える化」のために、クラウド型のタイムトラッキングツールや勤怠管理システムの導入を検討します。スマートフォンやPCから手軽に打刻でき、特定のプロジェクトや業務ごとに時間の記録ができるツールであれば、後述する業務改善にも役立ちます。無料トライアルなどを活用して使い勝手を確認しましょう。

この「見える化」のプロセスで得られたデータは、サービス残業がどこで、なぜ発生しているのかを明確にするための貴重な情報源となります。感情論ではなく、データに基づいて課題を特定することが、効果的な次の施策に繋がります。

2. サービス残業を生む根本原因を分析する

実態が見えたら、次にその根本原因を深掘りします。サービス残業は一つの原因だけで起きているわけではなく、複数の要因が絡み合っていることがほとんどです。

  • 非効率な業務フロー: 無駄な二重入力、承認プロセスの遅延、古いやり方への固執など。
  • 不正確な見積もり・工期設定: 経験や勘に頼りすぎた見積もりで、実際より短い工期を設定してしまう。
  • 不十分なスケジュール管理: 現場の進捗が見えにくく、遅延への対応が後手に回る。急な仕様変更への対応力が低い。
  • 情報伝達の不足・食い違い: 現場と事務所、職人同士の情報共有がうまくいかず、手戻りややり直しが発生。
  • 曖昧な責任範囲: 「誰が」「いつまでに」「何をする」が不明確で、作業の滞留や手待ちが発生。
  • 過剰なサービス精神: 顧客からの無理な要望に応えすぎてしまう。
  • 休憩時間の未取得: 忙しさを理由に休憩をきちんと取れていない。
  • 経営者や管理職の意識: 長時間労働を美徳とする文化、サービス残業を容認する雰囲気。

これらの原因について、「見える化」で得られたデータと照らし合わせながら、具体的にどの業務、どの現場で、どの原因が強く影響しているのかを分析します。

Q&A: サービス残業をなくすと、本当に納期遅延や利益の減少にはつながらないのでしょうか?

多くの方が抱える不安ですが、結論から言えば、適切に進めれば納期遅延や利益の減少にはつながりません。むしろ、サービス残業をなくそうとすることは、業務効率化や生産性向上を真剣に考えるきっかけとなります。無駄な作業を省き、労働時間あたりの付加価値を高めることで、結果として生産性が向上し、納期を守りながら利益を改善することが可能になります。サービス残業で成り立っていた利益は、非効率の裏返しであることが多いのです。最初は仕事のやり方を変える戸惑いから一時的に負荷が増える可能性はありますが、それは健全な経営体質への移行期間であり、長期的に見れば必ずプラスに転じます。

3. サービス残業を前提としないルール作りと文化醸成

原因が特定できたら、次はその原因を取り除くための具体的なルール作りと、それを支える社内文化の醸成です。

  1. 「サービス残業ゼロ」の方針を明確に打ち出す:経営トップが「サービス残業は認めない。健全な労働環境で生産性を高め、利益改善を目指す」という強いメッセージを全社員に発信します。これは単なるスローガンではなく、具体的な取り組みとセットで示す必要があります。「残業をするのが当たり前」という古い価値観を払拭し、「時間内に最大の成果を出すこと」を評価する文化を育みます。
  2. 適正な労働時間管理ルールの策定と徹底:正確な勤怠記録の重要性を周知徹底し、タイムカードやシステムでの打刻ルールの遵守を徹底します。サービス残業の定義(正規の残業申請・承認を経ない時間外労働)を明確にし、申請・承認プロセスを機能させます。申請なしの残業や、本来の終業時間後の作業を原則禁止とします。どうしても残業が必要な場合の申請・承認フローを明確にし、責任者による厳格なチェックを行います。
  3. 時間外労働に関する認識の統一:労働基準法における労働時間、残業時間の考え方について、管理職を含めた全社員が正しく理解しているか確認し、必要であれば研修を行います。「休憩時間も労働時間に含まれる」といった誤った認識や、「移動時間は労働時間にならない」といった業界慣習になっているが法的に問題がある可能性のある点なども含めて、専門家(社会保険労務士など)の意見も聞きながら、正しい認識を共有します。
  4. 経営目標・利益改善と個人目標の連動:サービス残業をなくすこと、つまり「時間内に終わらせる」「定時に帰る」ことの重要性を、単なる労働時間削減ではなく、生産性向上や利益改善といった経営目標と結びつけ、個人の評価や目標設定にも反映させていきます。例えば、「見積もり精度の向上による手戻り削減」「工程管理徹底による予定通りの完工」などが、個人の具体的な目標となり得ます。

ルールを作るだけでなく、なぜそのルールが必要なのか、それが会社の将来や社員自身にとってどうプラスになるのかを丁寧に説明し、全社員の理解と協力を得ることが成功の鍵となります。一方的な通達ではなく、対話を通じて進めることが重要です。

利益改善に直結!サービス残業をなくす工程管理と業務効率化

サービス残業をなくすことと利益改善は、車の両輪です。サービス残業が発生しているということは、どこかに業務上の非効率や無駄がある証拠です。ここからは、その無駄をなくし、生産性を高める具体的な工程管理と業務効率化のステップを解説します。

1. 工程管理を徹底し、計画倒れを防ぐ

工務店のサービス残業の大きな原因の一つに、工程管理の甘さがあります。計画通りに進まないことで、現場が遅延し、最終的に無理な突貫工事や残業でカバーせざるを得なくなるケースが多々見られます。

  1. 詳細な実行計画の作成:設計段階から、各工程にかかる標準的な時間をより正確に見積もります。過去の類似案件データや、現場からのフィードバックを元に、現実的なスケジュールを作成します。余裕のない計画は、サービス残業を生むだけでなく、品質低下にもつながります。不確定要素(天候、資材の納期、顧客の変更依頼など)を考慮したバッファ期間を設けることも重要です。
  2. 進捗状況のリアルタイム「見える化」:エクセルでのガントチャートや、専用の工程管理システム、クラウド型プロジェクト管理ツールなどを活用し、各現場の進捗状況を事務所や他の担当者からもリアルタイムで確認できるようにします。遅延が発生した場合、早期に察知し、原因究明と対策に乗り出すことができるようになります。スマートフォンやタブレットから現場が報告できる仕組みを整えると、情報収集がスムーズになります。
  3. マイルストーンとチェックポイントの設定:大きな山場となる工程(基礎完了、上棟、外装完了など)や、後戻りが困難な重要なポイント(配管、電気工事など)にマイルストーンを設定し、その達成を厳格にチェックします。問題が発生した場合、このチェックポイントで早期に発見し、手戻りによるサービス残業や遅延を防ぎます。
  4. 緊急時対応計画の策定:予期せぬトラブルや天候不良などが発生した場合の対応計画をあらかじめ策定しておきます。代わりの対応策、優先順位のつけ方などを事前に決めておくことで、混乱を防ぎ、無駄な残業を減らすことができます。

計画性と「見える化」された進捗管理は、サービス残業を削減し、予定通りの完工を可能にすることで、無駄なコストを削減し、利益改善に大きく貢献します。

2. 徹底的な業務効率化で作業時間を短縮する

サービス残業は、業務の非効率が原因で発生する時間が含まれていることがほとんどです。一つ一つの業務を見直し、効率化を図ることで、同じ仕事量をより短い時間で完了させることが可能になります。

  1. 「やめること(削減)」を決める:全ての業務をリストアップし、「この顧客報告書は本当に必要か?」「この定例会議は誰にとって有益か?」「この二重入力は避けられないか?」など、その業務が本当に生産性や利益改善に貢献しているかを厳しく評価します。効果が薄い、あるいは全くない業務は、思い切って削減または簡略化します。
  2. 「標準化・仕組み化」を進める:繰り返し行う業務(見積もり作成のフォーマット、特定の工事の進め方、提出書類の作成)は、マニュアルやチェックリストを作成し、誰が行っても一定の品質と時間で完了できるように標準化します。これにより、担当者による差が減り、教育コストも削減できます。
  3. 「ITツール・クラウドサービス」を積極的に活用する:工務店向けのクラウド型業務管理システム、図面・写真共有アプリ、チャットツール、オンラインストレージ、電子契約システムなど、様々なITツールが登場しています。情報共有のタイムラグ解消、書類作成の自動化、現場での情報入力効率化など、積極的に活用することで劇的に業務時間を短縮できます。初期投資は必要ですが、長期的に見ればサービス残業削減による人件費抑制や、生産性向上による利益改善効果の方が大きくなる場合が多いです。スモールスタートで、まずは特定の業務課題を解決できるツールから導入を検討しましょう。
  4. 打ち合わせや移動時間を最適化する:顧客との打ち合わせ時間を事前に明確に設定し、議題を定めます。社内ミーティングも目的と時間を明確にし、オンライン会議ツールなども活用して効率化します。現場への移動ルートの見直しや、資材配送スケジュールの最適化なども、積もり積もれば大きな時間削減につながります。
  5. 情報共有の仕組みを構築する:現場の状況や進捗、事務所との連携に必要な情報を、必要な人がいつでもアクセスできる一元化された仕組みを構築します。クラウドストレージでの書類共有、現場写真の共有アプリ、チャットグループの活用などが有効です。情報伝達の遅れや不足による手戻り・手配ミスを防ぎ、サービス残業を減らします。

これらの業務効率化は、単に作業時間を短縮するだけでなく、ミスの削減、品質向上にも繋がり、結果として顧客満足度を高め、リピートや紹介を増やすことによる利益改善の間接的な効果も期待できます。

Q&A: 小さな工務店でも高価なITツールを導入する余裕はありません。他にできることはありますか? また、社員が新しいやり方に抵抗するのでは?

ITツールの導入はあくまで手段の一つであり、全てではありません。まずは「整理整頓」や「情報の共有ルール作り」といった基本的な業務環境の見直しでも効果はあります。例えば、書類の保管場所を決めたり、報告書のフォーマットを統一したりするだけでも、無駄な探し物やフォーマット修正の時間が減ります。ホワイトボードでの工程共有や、日報の提出ルールの徹底など、アナログな方法でも改善できることは沢山あります。社員の抵抗については、「なぜ新しいやり方が必要なのか(サービス残業をなくして定時に帰れるようにするため、給与アップに繋げるためなど具体的なメリットを提示)」「導入することで具体的に何が変わるのか」「難しい場合はサポートする」といった丁寧な説明と、スモールスタートで成功体験を積ませることが有効です。一部の社員を推進役にするのも良いでしょう。

3. 見積もり精度向上と適切な利益確保

サービス残業の常態化は、「このくらいならサービスでやってしまおう」「赤字にはしたくないから自分の時間を削るしかない」といった心理を生みやすく、正規の見積もりや請求から漏れる作業が発生しがちです。これは、サービス残業を温存するだけでなく、正当な利益を確保できていない状態です。見積もり精度の向上は、利益改善とサービス残業削減の両方に貢献します。

  1. 積算基準の見直しとデータベース化:過去の類似案件の原価データ(材料費、労務費、外注費など)を蓄積・分析し、より現実的で正確な積算基準を構築します。特定の作業項目にかかる標準時間や必要な人工などを明確にすることで、見積もり段階での精度を高めます。積算システムや見積もり作成ソフトの活用も有効です。
  2. リスク要素の洗い出しと予算化:予期せぬ追加工事や仕様変更、天候による遅延など、リスクとなりうる要素をあらかじめ洗い出し、一定の予備費やバッファ期間を見積もりに含めます。リスクを織り込んでおくことで、発生時にもサービス残業で対応する必要がなくなり、追加費用を顧客と交渉する際の根拠にもなります。
  3. 労務費の見直しと適正な計上:人件費、特に現場で働く職人さんの労務費を、実態に合わせて適切に見積もりに計上します。サービス残業時間も含めた実質の労働時間を考慮し、それをカバーできるようなコスト構造に見直します。適正な労務費計上なくして、健全な利益改善はありえません。
  4. 顧客への丁寧な説明:見積もりの内容、工期、そして「予期せぬ事態が発生した場合の追加費用」に関する考え方などを、契約前に顧客に丁寧に説明します。これにより、後々のトラブルを防ぎ、正規の追加請求や工期変更をスムーズに行えるようにします。過剰なサービスを期待する顧客には、できること・できないことを明確に伝え、合意形成を行うことが重要です。

見積もり精度が高まれば、工事全体にかかるコストと時間が正確に予測でき、サービス残業によるコストの隠れ蓑をなくすことができます。これにより、適正な利益を確保し、その利益を従業員に還元したり、さらなる投資(設備投資、IT導入、研修など)に回したりすることで、持続的なサービス残業削減と利益改善のサイクルを生み出すことができるのです。

サービス残業「ゼロ」を持続させ、利益改善を加速する組織改革と評価

サービス残業をなくし、生産性を向上させる取り組みは、一度行って終わりではありません。継続的な改善が必要です。そのためには、組織全体の意識を変え、取り組みを評価し、さらに良くしていくための仕組みづくりが不可欠です。そして、これがさらなる利益改善へと繋がります。

1. 改善効果の測定とフィードバック

これまでの取り組み(サービス残業の見える化、業務効率化、工程管理徹底など)が、実際にどれだけの効果を生んでいるのかを測定します。

  1. 定量的な成果の測定:サービス残業時間の合計がどの程度削減されたか、一人あたりの生産性(担当現場数、売上や粗利など)がどう変化したか、特定の業務にかかる時間がどの程度短縮されたか、納期遵守率が上がったかなどを数値で追跡します。勤怠管理システムやプロジェクト管理ツールのレポート機能が役立ちます。
  2. 定性的な成果の評価:社員の満足度(サービス残業が減ったことによるプライベート時間や疲労度の変化)、現場の雰囲気、顧客からの評価の変化などをヒアリングやアンケートで把握します。数値では見えにくい効果も重要な成果です。
  3. 定期的なレビュー会議の実施:測定した成果を元に、経営層と現場の責任者、可能であれば社員代表も交えて、定期的に改善の進捗状況をレビューする会議を実施します。うまくいった点は共有し、課題が見つかった場合はその原因と次なる改善策を検討します。
  4. 成果の共有とフィードバック:改善の成果(サービス残業削減、生産性向上、利益改善への貢献)を具体的な数値や事例で全社員に共有し、努力を称賛します。また、社員からの改善提案や意見を継続的に募集し、施策に反映させる仕組みを作ります。

成果を「見える化」し、適切にフィードバックすることで、社員のモチベーションを維持し、さらなる改善への意欲を高めることができます。良いサイクルを回すことが、持続的な利益改善には不可欠です。

2. 社員のエンゲージメント向上と評価制度の見直し

サービス残業をなくし、生産性を高めるのは、最終的には社員一人ひとりの協力があってこそです。社員が「やらされている」ではなく、「自分事」として改善に取り組めるような環境づくりと、それに見合った評価が重要です。

  1. 「時間あたりの成果」を評価する仕組み:単に長時間働いたこと(サービス残業含む)を評価するのではなく、「決められた時間内でどれだけの成果を出したか」「業務効率化に貢献したか」といった時間あたりの生産性を重視する評価体系を検討します。これにより、社員は漫然と残業するのではなく、どうすれば時間内に効率よく終えられるかを考えるようになります。
  2. 多能工化・スキルアップ支援:様々な業務に対応できる多能工を育成したり、専門スキルを深めるための研修機会を提供したりすることで、属人化を防ぎ、現場の柔軟性を高めます。これは、特定の作業が特定の担当者に集中し、その担当者のサービス残業を生むリスクを減らすことにも繋がります。スキルアップは社員のキャリアパスにも繋がり、モチベーション向上に貢献します。
  3. 正当な報酬体系の見直し:サービス残業をなくし、高い生産性を実現した社員に対して、賞与での評価や昇給、あるいは歩合制の導入など、成果に見合った正当な報酬を検討します。利益改善によって生まれた果実を社員に還元することは、さらなる生産性向上への強力なインセンティブとなります。
  4. オープンなコミュニケーションと相談しやすい環境:経営層と社員が気軽に意見交換できる場を設けたり、業務上の悩みや不安(「この工程が計画通りに進まない」「人手が足りない」など、サービス残業につながりそうなサイン)を早期に相談できる体制を整えます。風通しの良い組織は、問題が表面化しやすく、早期解決に繋がり、サービス残業を未然に防ぐ効果があります。

社員が「この会社で働くのは楽しい」「自分の成長が会社の成長に繋がる」と感じるような組織文化を育むことが、高い生産性を維持し、サービス残業をなくすための最強の土台となります。社員の満足度向上は、結果的に離職率低下にも繋がり、採用コスト削減という形で利益改善にも間接的に貢献します。

Q&A: 改善活動に終わりはあるのでしょうか? また、社員との良好な関係を保ちながら、どう改善を進めれば良いですか?

改善活動に終わりはありません。市場環境、技術、顧客ニーズは常に変化するため、組織もそれに対応して変化・進化し続ける必要があります。むしろ、継続的な改善を文化にすることが重要です。社員との良好な関係については、一方的な押し付けではなく「なぜこれが必要なのか」「どうすれば皆にとってより良い働き方ができるのか」を根気強く対話すること、そして改善の成果を適切に評価し、社員に還元することが最も重要です。経営者の「社員の働き方を良くしたい」という強い想いを伝え、共感を呼ぶことが鍵です。成功事例を共有し、皆で喜びを分かち合うことも、モチベーション維持に繋がります。

3. 顧客との関係性構築とサービス範囲の明確化

サービス残業の一因として、顧客からの度重なる仕様変更や無理な要求に応えすぎてしまうことが挙げられます。適正な範囲でサービスを提供し、正当な追加費用や工期変更を交渉するためには、顧客との良好かつ明確な関係性構築が必要です。

  1. 契約時の丁寧なすり合わせ:契約前に、工事内容、仕様、工期、費用について顧客と徹底的にすり合わせを行います。どこまでが契約範囲内で、それを超える変更があった場合の追加費用や工期に関する取り決めなどを明確に文書化し、双方で確認します。
  2. こまめな進捗報告とコミュニケーション:工事中、定期的に進捗状況を報告し、顧客の疑問や不安に迅速に答えます。良好なコミュニケーションは信頼関係を構築し、後々起こりうるトラブルや手戻りを未然に防ぎます。顧客も進捗が見えることで安心し、無茶な要求が減る傾向があります。
  3. 「できないことはできない」と伝える勇気:どうしても対応できない無理な要望や、契約外の無償サービスを求められた場合は、毅然として、しかし丁寧に「なぜできないのか」「それを行うには、追加費用が発生する」「実現可能な代替案は何か」を説明します。これは、健全な取引関係を築く上で非常に重要です。過剰なサービスは、自社のサービス残業を増やすだけでなく、顧客にとっても次の依頼時に同様のレベルを期待させてしまい、お互いにとって不幸な結果を招く可能性があります。

顧客との関係性構築は、単にサービス残業を減らすだけでなく、顧客満足度を高め、口コミや紹介を通じて新たな案件獲得に繋がり、結果として工務店の持続的な利益改善に大きく貢献します。過剰なサービスではなく、高品質な仕事とプロフェッショナルな対応で顧客の信頼を得ることが重要です。

まとめ

工務店経営におけるサービス残業は、単なる「働き方の問題」ではなく、生産性の低下、コスト増、社員の士気低下、採用難といった様々な問題を複合的に引き起こし、結果として利益改善を阻む最大級の壁となり得ます。この記事では、そのサービス残業の実態把握から原因分析、そしてサービス残業をなくし、生産性を飛躍的に向上させるための具体的な手順を解説しました。実態の「見える化」、工程管理の徹底、業務効率化、そして社員のエンゲージメント向上と評価制度の見直しは、どれも着実に利益改善に繋がる実践的なステップです。

サービス残業「ゼロ」への道のりは、決して易しいものではないかもしれません。しかし、それは工務店を古い体質から脱却させ、新たな成長ステージに進むための大きな転換点となります。サービス残業をなくすということは、無駄な時間とコストを削減し、労働時間あたりの生産性を最大化することに他なりません。これにより、適正な利益を確保し、その利益を社員に還元することで、さらに高いモチベーションと生産性が生まれ、持続的な利益改善という好循環を生み出すことができます。

今日紹介した具体的なHow-toは、すぐに実践できるものばかりです。まずはご自身の会社のサービス残業の実態を見える化することから始めてみてください。抵抗や課題に直面することもあるでしょう。しかし、社員との丁寧な対話、情報共有、そして経営者自身の「より良い会社を作りたい」という強い意志があれば、必ず乗り越えられます。サービス残業のない健全な働き方は、社員の満足度を高め、優秀な人材の確保にも繋がり、工務店の未来を明るく照らす投資となるはずです。この記事が、あなたの工務店がサービス残業を克服し、さらなる利益改善と成長を実現するための一助となれば幸いです。諦めずに、今日から一歩踏み出しましょう!

この記事を書いた人

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浄法寺 亘

福島県 喜多方市出身。県立会津高校、市立高崎経済大学卒。工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。現在動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」。住宅情報サイト「ハウジングバザール」の運営にも携わっている。

著書:
頼みたくなる住宅営業になれる本
https://x.gd/oatiM
SDGsに取り組もう 建築業界編
https://x.gd/MXYJr

主な講演:
鹿児島県庁主催「かごしま緑の工務店研修会」
リードジャパン主催「工務店支援エキスポ」(東京ビックサイト)
育英西中学校、その他住宅FCなど

活動実績
2019~ 千葉県にて里山竹林整備ボランティア
2020~ 木ッズ絵画コンクール

工務店の集客・営業ならジーレックスジャパン →ホームページはこちら

商品の差別化へ!制振装置はこちらから →耐震・制振装置

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