コミュニティービルダー協会は
「内閣府beyond2020」の認定および「外務省JAPAN SDGs Action Platform」の紹介団体です。

リピート率を上げる!工務店が実践すべき顧客育成術

公開日: : 工務店 経営

工務店経営者の皆様、日々の業務、お疲れ様です。厳しい市場環境の中で、いかにして安定的な売上向上を実現するかは、常に頭を悩ませる課題ではないでしょうか。新規顧客獲得のコストが増加し続ける一方、地域の人口が減少する中で、従来の新規集客一辺倒の戦略だけでは、持続的な成長は望めません。そこで今、注目されているのが、既存のお客様との関係性を深め、リピート顧客化を促進する戦略です。一度ご縁のあったお客様は、あなたの工務店の品質、サービス、そして何より「人」を知っています。この信頼関係をさらに育むことで、リピート工事の獲得、そしてさらには「紹介」という強力な新規顧客獲得チャネルを生み出すことが可能になります。
この記事では、工務店がリピート顧客を増やし、それによって着実に売上向上を実現するための、明日からすぐに実践できる具体的なステップとノウハウを徹底解説します。読者の皆様が抱える「どうすればお客様との関係を長く続けられるのか?」「引き渡し後の具体的なアプローチ方法が分からない」「リピートや紹介を増やしてもっと売上を伸ばしたい」といった疑問に対し、豊富な事例と実践的なアドバイスで明確な答えをお示しします。この記事を読み終える頃には、リピート顧客をあなたの工務店の強力な財産に変え、持続的な売上向上の道筋が見えているはずです。

リピート顧客の「実践的」導入戦略:基礎から応用まで

なぜ今、工務店にとってリピート顧客戦略が重要なのでしょうか。そして、それをどのようにビジネスに取り入れていくべきでしょうか。このセクションでは、その基礎となる考え方から、戦略を導入するための土台作りについて解説します。持続的な売上向上を目指す上で、リピート戦略は避けて通れない道です。

リピート顧客がもたらす驚異的な効果

新規顧客を獲得するためのコストは、既存のお客様にリピートしていただく、あるいは紹介していただくコストと比較して、約5倍かかると言われています。これは一般的なビジネスの法則ですが、工務店ビジネスにおいても同様、あるいはそれ以上に当てはまります。住宅や大規模なリフォームは一生に一度の買い物であることが多いですが、小さなリフォーム、メンテナンス、増築、そしてその後に発生する様々な住まいに関するニーズは、繰り返し発生する可能性があります。
また、満足度の高いリピート顧客は、自然とあなたの工務店のファンとなり、新たな顧客を紹介してくれる可能性が高まります。紹介による新規顧客は、広告宣伝費がかからないだけでなく、紹介者の信頼もあって契約に至る確率が高いというメリットがあります。これはつまり、コスト削減と新規獲得の効率化、両面から売上向上に貢献するということです。

さらに、リピート顧客との関係が深まると、お客様の住まいに対する価値観やライフスタイルをより深く理解できるようになります。これにより、お客様の潜在的なニーズを先回りして把握し、最適な提案を行うことが可能になります。結果として、顧客単価の向上や、より利益率の高い工事を受注する機会も増え、利益面での売上向上にも繋がります。

顧客満足度を測ることから始めよう:リピート・紹介の羅針盤

リピートや紹介を生み出す源泉は、お客様の満足度です。では、その満足度を正確に把握するにはどうすれば良いでしょうか。漠然とした「満足しているだろう」という感覚ではなく、具体的な数字として捉えることが重要です。最も一般的な方法は「満足度調査」ですが、工務店においては引き渡し時に加えて、入居後数ヶ月〜1年後など、実際に住んでみた、あるいは利用してみた感想を聞くことが有効です。

具体的なステップ:

  1. 調査設計: 何を知りたいか目的を明確にします。「全体の満足度」「担当者の対応」「品質」「価格」「アフターフォロー」など、評価したい項目をリストアップします。
  2. 質問作成: 5段階評価の設問を中心に、「理由」や「具体的なエピソード」を自由に記述できる欄を設けます。「当社を友人や知人に勧める可能性はどのくらいありますか? (0-10点で)」というNPS(ネットプロモーターサスコア)の設問も、紹介意向を測る上で非常に有効です。
  3. 実施方法: アンケート用紙を郵送、またはWEBフォームを利用します。引き渡し時や定期点検時に手渡しするのも良いでしょう。回答しやすい方法を選び、返送用封筒やQRコードなどを準備します。
  4. 集計・分析: 回答を集計し、満足度が高い点、低い点を明確にします。特に、低い評価にはどのような原因があるのか深掘りします。記述式のコメントは最も重要な宝物です。喜びの声は社員のモチベーションに、改善点はサービス向上に活かします。
  5. フィードバックと改善: 調査結果を関係者で共有し、具体的な改善策を検討・実行します。お客様からのフィードバックを真摯に受け止め、改善活動に繋げることが、さらなる信頼獲得とリピート顧客化に繋がります。

満足度を定期的に測り、現状を把握すること。これがリピート戦略の第一歩です。

顧客データベース構築・活用の重要性:関係性構築の基盤

お客様との関係性を深めるには、その方の情報を体系的に管理することが不可欠です。契約時の情報だけでなく、担当者、工事内容の詳細、引き渡し日、保証期間、家族構成、趣味、イベント参加履歴、何気ない会話で出た情報(ペットを飼っている、近々子供が生まれるなど)まで、可能な限り詳細に記録します。これが「顧客データベース」です。

具体的なステップ:

  1. 管理ツールの選定: まずはExcelやGoogleスプレッドシートでも構いません。可能であれば、顧客管理機能を持つSFAやCRMツール、あるいは工務店向けの業務管理システムを導入することを検討します。
  2. 入力項目の定義: 基本情報(氏名、連絡先、住所、家族構成)、契約情報(契約日、担当者、工事内容、金額)、引き渡し日、保証期間、メンテナンス履歴、イベント参加履歴、連絡履歴、顧客満足度調査の結果、備考欄(趣味、会話内容などパーソナルな情報)。
  3. 入力ルールの統一: 誰が入力しても同じように情報が整理されるよう、入力ルールを明確にします。担当者任せにせず、組織として取り組む仕組みを作ります。
  4. 定期的な入力と更新: 情報が古くならないよう、定期的に情報を更新します。特に連絡先や家族構成の変化は重要です。
  5. 活用方法の検討: データベースは入れて終わりではありません。これを元に、定期点検の案内を送ったり、ニュースレターを送付したり、誕生日カードを送ったり、リフォーム提案のタイミングを見計らったりします。「〇年前にキッチンを交換したお客様に、最新キッチン設備の情報を提供する」「子供が生まれたお客様に、部屋の増築やリフォームの事例を紹介する」など、具体的な施策に繋げます。

質の高い顧客データベースは、お客様一人ひとりに合わせた最適なコミュニケーションを可能にし、関係性を深め、結果としてリピート顧客や紹介に繋がる重要な基盤となります。これはまさに、将来的な売上向上に向けた、目に見えない投資と言えるでしょう。

顧客接点(タッチポイント)の設計と強化:信頼を育む機会

お客様は、契約前から引き渡し後まで、様々な場面で工務店と接点を持ちます。これらの接点一つひとつが、お客様の満足度やロイヤリティを高めるチャンスです。全てのタッチポイントで、お客様に「この工務店に頼んでよかった」と感じていただくことが、リピート顧客育成の鍵となります。

具体的なタッチポイントと強化策:

  • 初回面談・打ち合わせ: お客様の話を丁寧に聞き、不安を解消する。専門用語を使わず分かりやすく説明する。
  • ご契約: 契約内容を丁寧に説明し、納得いただく。契約後も変わらぬ対応を心がける。
  • 着工前の準備: 工事の流れ、スケジュールを共有し、不安を払拭する。近隣への配慮も徹底する。
  • 工事中: 進捗状況を定期的に報告する(写真付きメール、SNSなども活用)。現場を綺麗に保つ。職人の態度や言葉遣いを徹底する。お客様が現場監督や職人に気軽に声がかけられる雰囲気を作る。
  • 現場見学会(希望者のみ): お客様の家を見学希望の方に公開いただく場合、プライバシーに配慮しつつ、協力を感謝する。
  • 中間検査・上棟式など: お客様と共に工事の節目を祝い、感謝を伝える。
  • 引き渡し: 建物の説明だけでなく、メンテナンス方法や緊急連絡先などを分かりやすくまとめた資料をお渡しする。新しい暮らしのスタートを祝い、感謝を伝える。記念品を用意するのも良い。

これらのタッチポイント一つひとつで最高の顧客体験を提供することが、お客様の満足度を最大化し、リピート顧客や紹介を生み出す土壌となります。特に工事中は、お客様の期待と現実のギャップが生まれやすい時期です。丁寧なコミュニケーションと情報共有を心がけましょう。

売上向上×リピート顧客:成果を最大化する具体的な取り組み

リピート戦略の基礎が固まったら、次はお客様との関係性を活用した具体的な売上向上施策を実行する段階です。このセクションでは、特に工務店のビジネスモデルに合わせた、リピート顧客から収益を生み出すための具体的な取り組み方法を詳しく解説します。これらの取り組みは、新規顧客獲得コストを抑えつつ、安定した売上向上に直結するものです。

引き渡し後が勝負!OB顧客向けのアフターフォローと収益化

工務店様の中には、「引き渡したら終わり」という考え方が根強く残っているところもあるかもしれません。しかし、真のリピート顧客戦略は、引き渡し後からが本番です。お客様が実際に住まいを利用する中で発生する様々なニーズに応えることで、新たな売上向上の機会が生まれます。

具体的な取り組み:

  1. 定期点検の仕組み化と付加価値提供:
    • 点検時期の明確化: 3ヶ月、6ヶ月、1年、2年、5年、10年など、定期点検のスケジュールを定めます。長期保証制度と連携させるのも良いでしょう。
    • きめ細やかな点検内容: 単なる不具合の確認だけでなく、建物の状態チェック、適切なメンテナンスアドバイスを行います。
    • 報告書の作成と共有: 点検結果を分かりやすくまとめた報告書を作成し、お客様に手渡すか送付します。写真付きだとより親切です。
    • 潜在ニーズの掘り出し: 点検時にお客様との会話を通じて、「最近寒くて」「収納が足りなくて」「庭の手入れが大変で」といった、リフォームに繋がる潜在的なニーズを拾い上げます。
    • 有料メンテナンスサービス: 簡単な修繕やクリーニングなど、有料で提供できるメンテナンスメニューを用意し、収益化を図ります。
  2. OB顧客向けの情報提供とコミュニケーション:
    • ニュースレターやDM: 不定期で、住まいに関する役立つ情報(季節ごとのメンテナンス方法、省エネのヒント、最新の住宅設備情報、リフォーム事例紹介、工務店の近況)などを掲載したニュースレターやDMを送付します。手書きのメッセージを添えるなど、温かみのある工夫も有効です。
    • メールマガジンやSNS: デジタルツールを活用し、よりタイムリーな情報発信や双方向のコミュニケーションを目指します。ブログやYouTubeでメンテナンス動画を配信するのも良いでしょう。
    • OB顧客限定イベント: 交流会、ワークショップ(DIY教室、ライフプランセミナー)、完成見学会への招待(建築中のお客様の家を見せることに同意を得た上で)など、OB顧客同士や工務店との繋がりを深めるイベントを企画します。
  3. リフォーム・増改築ニーズの計画的な掘り起こし:
    • ライフステージ変化の把握: 顧客データベースを活用し、お子様の成長、独立、親御さんとの同居、定年など、お客様のライフステージの変化を予測し、それに合わせたリフォーム提案を行います。
    • 築年数を考慮した提案: 築10年、20年といった節目に、水回り設備の交換、外壁・屋根のメンテナンス、断熱改修など、築年数に応じた必要なリフォームを提案します。これらの計画的な提案は、お客様の住まいを長持ちさせるサポートにも繋がります。
    • 「〇〇(お困りごと)解決」視点の提案: 単なる工事の提案ではなく、「光熱費が高い」なら断熱リフォームや省エネ設備、「収納が少ない」なら収納リフォーム、といったお客様のお困りごとを解決する視点で提案します。
  4. 紹介キャンペーンの実施:
    • 明確な特典設定: OB顧客が友人・知人を紹介し、契約に至った場合に、紹介者と新規顧客双方にメリットがある特典を用意します(例:紹介者に商品券進呈、新規契約者にオプション工事割引など)。
    • 周知徹底: ニュースレター、DM、イベント時など、様々な機会に紹介キャンペーンの存在を周知します。
    • 感謝の表明: 紹介があった際には、契約に至るかどうかにかかわらず、迅速かつ丁寧な感謝のメッセージを送ります。
  5. 付帯サービスや外部パートナーとの連携:
    • お客様の住まいに関するニーズは多岐にわたります。外構、インテリア、ガーデニング、ハウスクリーニング、引っ越し、保険など、自社で手掛けない分野であっても、信頼できる外部パートナーを紹介することで、お客様の利便性を高め、工務店への信頼感を深めることができます。これらの紹介手数料を収益に繋げることも可能です。

これらの具体的な取り組みは、単にサービスを提供するだけでなく、お客様との信頼関係を維持・強化し、新たな売上向上の機会を積極的に作り出すことを目的としています。

工務店ならではの強みを生かす:地域密着と人間関係

大手ハウスメーカーにはない、地域密着型の工務店ならではの最大の強みは、地域に根差した信頼と、経営者や担当者、職人との間に築かれる個人的な人間関係です。この強みを生かさない手はありません。

具体的なアクション:

  • 地域イベントへの参加・主催: 地元のお祭りへの出店、地域清掃への参加、子供向けの木工教室やDIY教室の開催など、地域住民との交流を通じて、工務店の存在をアピールし、親しみを感じてもらう機会を作ります。OB顧客を招待することで、コミュニティの場としても機能させます。
  • 顔の見えるコミュニケーション: ニュースレターに担当者の顔写真とメッセージを載せる、ブログで現場の様子やスタッフの横顔を紹介するなど、お客様が「誰が自分の家を建ててくれたのか、メンテナンスしてくれるのか」を意識できるようにします。
  • OB顧客間のコミュニティ形成支援: FacebookグループやLINEグループなどを活用し、OB顧客同士が情報交換したり、工務店に気軽に質問したりできるオンラインコミュニティの場を提供します。これにより、工務店を中心とした緩やかな繋がりが生まれ、紹介にも繋がりやすくなります。
  • OB顧客宅訪問(定期的ではない形での声かけ): 定期点検とは別に、近くを通った際に挨拶に立ち寄る、季節の便りを送るなど、お客様との繋がりを維持する努力を続けます。ただし、お客様のプライベートに配慮し、事前に連絡するなど丁寧に行います。

これらの活動は、直接的な売上には繋がらないように見えるかもしれませんが、地域での評判を高め、お客様とのエンゲージメントを深める上で非常に重要です。結果的に、信頼関係が強化され、長期的な売上向上に貢献します。

顧客からの「声」を収集・活用する:改善とマーケティングの両輪

お客様の声は、ビジネス改善の宝庫であるとともに、強力なマーケティングツールでもあります。ポジティブな声は自信と改善の方向性を示し、ネガティブな声は課題を浮き彫りにし、改善の機会を与えてくれます。

具体的なステップ:

  1. 様々なチャネルで声を集める: 満足度調査だけでなく、点検時のヒアリング、工事中の会話、電話やメールでの問い合わせ、SNSへの書き込み、口コミサイトへの投稿など、あらゆる機会を通じてお客様の声を収集します。
  2. 社内での共有と分析: 集まった声を担当者や経営層など関係者全員で共有します。定期的な会議で顧客の声について話し合う場を設けます。共通する課題や、特に評価されている点を分析します。
  3. 改善活動への反映: 収集した声を元に、商品・サービスの改善、社内プロセスの見直し、従業員教育などを行います。「お客様の声を受けて、標準仕様の一部を変更しました」「アフターフォロー体制を強化しました」など、具体的な改善策を実行します。
  4. 感謝の言葉を伝える: ポジティブな声だけでなく、ネガティブな声に対しても、貴重なフィードバックとして感謝の意を伝えます。誠実な対応は、お客様からの信頼を損なうどころか、逆に高めることもあります。
  5. マーケティングへの活用: お客様から許可を得た上で、喜びの声や感謝のメッセージをウェブサイト、パンフレット、SNS、ニュースレターなどに掲載します。「お客様の声」として紹介することで、工務店の信頼性やサービス品質を具体的にアピールできます。写真や動画を取り入れると、より説得力が増します。

お客様の声は、現在のサービスレベルを知るだけでなく、未来の売上向上に向けた改善のヒントと、新規顧客への強力な訴求材料の両方を提供してくれます。積極的に集め、最大限に活用しましょう。

【Q&A】よくある疑問に答える

Q1: OB顧客への連絡頻度はどのくらいが適切ですか?
A1: 一概には言えませんが、引き渡し直後は手厚く、数ヶ月後は3〜6ヶ月に一度、それ以降は年に1〜2回程度を目安にすると良いでしょう。ただし、個々のお客様との関係性や、提供する情報の内容(役立つ情報か、単なる営業か)によって調整が必要です。ニュースレターやSNSなど、お客様が「購読を解除する」「フォローを外す」ことで距離を置けるプッシュ型ではない情報提供も組み合わせると、押し付けがましさを減らせます。

Q2: OB顧客向けのイベントを開催する費用対効果は?
A2: イベントは直接的な売上向上に繋がりにくい活動ですが、顧客ロイヤリティ向上、口コミや紹介の促進、そして工務店とお客様、お客様同士の繋がりを強化する上で非常に有効です。費用対効果を測るには、参加者の満足度、イベント後の紹介件数、リピート依頼の増加などを長期的な視点で評価する必要があります。まずは小規模なものから始めて、反応を見ながら継続可否や規模を検討すると良いでしょう。

Q3: スタッフが足りず、OB顧客対応に手が回りません。どうすれば?
A3: まずは既存業務を見直し、効率化できる部分がないか検討します。次に、手が回らない理由(時間、スキルなど)を明確にし、必要な人員配置や外部委託(ニュースレター作成代行、DM発送代行など)を検討します。優先順位をつけ、全てのOB顧客に手厚く対応するのが難しければ、築年数や過去の取引金額などを考慮して、ターゲットを絞ることも現実的な選択肢です。また、アフターフォローやOB顧客対応を、単なる「サービス」ではなく、重要な売上向上のための「投資」として捉え、予算や人員を戦略的に割り当てる必要があります。

売上向上を継続的に成功させるための「次の一手」

リピート顧客戦略は、一度構築すれば終わりではありません。常に改善を続け、組織全体で取り組むことで、持続的な売上向上の基盤となります。このセクションでは、リピート戦略を組織文化として根付かせ、テクノロジーを活用し、効果を最大化するためのさらに踏み込んだステップを解説します。

リピート戦略を組織全体に浸透させる方法

リピート戦略を成功させるには、特定の担当者任せにするのではなく、経営者を含む全ての従業員がその重要性を理解し、日々の業務の中で意識することが不可欠です。

具体的なステップ:

  1. 経営者自らのコミットメント: 経営者がリピート顧客戦略の重要性を繰り返し発言し、社内で共有します。売上向上におけるリピートの貢献度を具体的に示し、組織の共通目標とします。
  2. 全従業員への研修・教育: お客様との関係性構築の重要性、コミュニケーションの基本、お客様の声の拾い方、データベースへの入力ルールなど、リピート戦略に必要な知識やスキルについて全従業員に研修を行います。職人さんにも、現場での挨拶や清掃の重要性を共有します。
  3. 評価制度への反映: 担当者だけでなく、組織全体の目標として、リピート率や紹介件数、顧客満足度などを評価項目に加えることを検討します。個人の評価に反映させる場合は、目標達成度に応じたインセンティブを設定することもモチベーション向上に繋がります。
  4. 成功事例の共有: OB顧客からの嬉しい声、紹介で受注に繋がった事例などを社内で共有し、良い取り組みを称賛します。「〇〇さんの丁寧な対応でお客様から感謝のメッセージをいただいた」「△△さんのニュースレターがきっかけでリフォームの相談があった」など、具体的なエピソードを伝えることが重要です。
  5. 定期的な進捗確認と改善会議: 定期的にリピート戦略の進捗状況(顧客満足度、リピート・紹介件数など)を確認し、課題や改善策について話し合う会議を設定します。部署間の連携も強化します。

リピート戦略を組織文化として根付かせるには時間がかかりますが、従業員一人ひとりが「お客様にとって何が最善か」を考え、行動するようになれば、自然と高い顧客満足度が生まれ、それがリピート顧客や紹介、ひいては売上向上に繋がります。

テクノロジーを活用する:効率化とパーソナライズの促進

顧客データベースの構築でも触れましたが、適切なテクノロジーの活用は、リピート戦略の効率を高め、よりパーソナライズされたアプローチを可能にします。

活用すべきテクノロジー:

  • CRM(顧客関係管理)システム: お客様情報の管理、連絡履歴の記録、対応履歴の一元化、タスク管理などが可能です。OB顧客リストの抽出や、特定の条件uffixuffixuffixに合わせて自動で連絡を促す機能を持つものもあります。工務店特化型のCRMも存在します。
  • 顧客ポータルサイト: お客様専用のウェブサイトを提供し、工事進捗の確認、図面・書類の共有、アフターメンテナンスの依頼受け付け、チャットでの質疑応答などを可能にします。お客様の利便性を高め、工務店への信頼感を深めます。
  • メール配信システム: セグメント別のメール配信(例:築10年のお客様向け、過去に水回り工事をしたお客様向けなど)や、開封率・クリック率の測定が可能です。ニュースレターやキャンペーン情報を効率的に届けられます。
  • SNS活用ツール: 定期的な情報発信、お客様とのコミュニケーション、キャンペーン告知などに活用します。お客様が工務店の情報を気軽に受け取れるチャネルとなります。
  • アンケートツール: Webベースのアンケートツールを利用すれば、満足度調査の実施・集計・分析が容易になります。

これらのツールを導入する際は、自社の規模や予算、必要な機能を慎重に検討し、スモールスタートで試してみるのが良いでしょう。テクノロジーはあくまでツールであり、重要なのはそれを使ってお客様との関係性をいかに深めるか、売上向上にどう繋げるかという戦略です。

データに基づいた効果測定と継続的な改善(PDCA)

リピート戦略の取り組みがどの程度効果を上げているのかを定期的に測定し、改善サイクルを回すことが、持続的な売上向上には不可欠です。

測定すべき指標:

  • リピート率: (一定期間内のリピート顧客数 ÷ 一定期間内の全顧客数) または (リピート工事売上 ÷ 総売上) など、定義を決めて測定します。「引き渡しから〇年以内」「〇〇円以上の工事」など、より具体的に定義すると分析しやすくなります。
  • 紹介率: (紹介による新規契約件数 ÷ 全新規契約件数) または (紹介経由の売上 ÷ 総売上) で測定します。
  • 顧客満足度(CSI)や推奨度(NPS): 定期的に調査を実施し、スコアの推移を確認します。
  • OB顧客向け施策の反応率: ニュースレターの開封率、イベント参加率、DMからの問い合わせ率などを測定します。
  • OB顧客からの問い合わせ・リクエスト件数: 関係性が強化されれば、気軽に相談してくれるようになります。

これらの指標を定期的に確認し、計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Action)のPDCAサイクルを回します。例えば、紹介率が低い場合は、紹介キャンペーンの見直しや、OB顧客へのコミュニケーション tần độ や内容を改善するといった具体的なアクションに繋げます。顧客満足度が特定の項目で低い場合は、その原因を究明し、業務プロセスや従業員教育に反映させます。

データに基づいた効果測定と継続的な改善こそが、リピート戦略を単なる「お客様サービス」で終わらせず、着実な売上向上に結びつけるための重要な営みです。

【Q&A】さらに踏み込んだ疑問に答える

Q1: 小規模な工務店でも、これらのリピート戦略は実践できますか?
A1: はい、十分に可能です。むしろ、少数の顧客に深く寄り添う小規模工務店だからこそ、人間関係を重視したリピート戦略は大きな強みになります。大規模なシステム導入やイベント開催が難しくても、手書きのニュースレター、電話での声かけ、地域イベントへの参加といった、コストを抑えつつ温かみを伝える施策から始めることができます。重要なのは、「やらない理由」を探すのではなく、「できること」から一歩踏み出すことです。まずは顧客データベースを手書きのノートやExcelで作り始めるところからでも良いのです。

Q2: CRMツールなどの導入コストが気になります。
A2: 工務店向け以外にも、比較的安価な汎用CRMツールや、最初は無料プランがあるツールも存在します。導入にあたっては、初期費用だけでなく月額費用、運用コスト、そしてツールによって削減できる時間や生み出される機会(=効果)を総合的に判断することが重要です。また、補助金制度を利用できる場合もありますので、情報収集をしてみる価値はあります。しかし、最も重要なのは、ツールありきではなく、現状の課題と「ツールを使って何をしたいのか」を明確にすることです。

Q3: リピート戦略に取り組む上で、従業員のモチベーションを保つには?
A3: まず、リピート戦略が単なる業務負担の増加ではなく、会社の売上向上に貢献し、自身の評価にも繋がることを理解させることが重要です。お客様からの感謝の言葉や成功事例を積極的に共有し、やりがいを感じてもらうことも有効です。また、顧客対応に自信を持てるよう、研修や情報共有の機会を設けることも大切です。経営層が率先してリピート戦略に取り組む姿勢を見せることも、従業員の意識を変える大きな力となります。

まとめ

工務店の持続的な売上向上にとって、既存のお客様を大切にし、リピート顧客や紹介を生み出す戦略は、新規集客と同じくらい、いやそれ以上に重要です。新規顧客獲得コストが高騰し、市場が変化する時代において、一度築いた信頼関係こそが、あなたの工務店の揺るぎない財産となります。この記事では、リピート戦略の重要性から、顧客満足度の測定、顧客データベースの構築、引き渡し後の具体的なアプローチ、地域密着の強みの活用、そしてデータに基づいた改善活動まで、実践的なステップを詳しく解説しました。リピート戦略は、特別なことではなく、日々の業務の中でお客様一人ひとりと真摯に向き合うことの積み重ねです。ご紹介した具体的なアクションプランの中から、まずは「これならできそう」というものから一つでも二つでも取り組んでみてください。小さな一歩でも、それがお客様との関係性を深め、新たなリピートや紹介に繋がり、着実な売上向上へと結びついていきます。工務店経営者の皆様が、地域のお客様から長く愛され、安定した経営を実現されることを心より応援しています。この記事が、そのための具体的な道標となれば幸いです。さあ、今日からリピート顧客育成の第一歩を踏み出しましょう!

この記事を書いた人

プロフィール画像

浄法寺 亘

福島県 喜多方市出身。県立会津高校、市立高崎経済大学卒。工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。現在動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」。住宅情報サイト「ハウジングバザール」の運営にも携わっている。

著書:
頼みたくなる住宅営業になれる本
https://x.gd/oatiM
SDGsに取り組もう 建築業界編
https://x.gd/MXYJr

主な講演:
鹿児島県庁主催「かごしま緑の工務店研修会」
リードジャパン主催「工務店支援エキスポ」(東京ビックサイト)
育英西中学校、その他住宅FCなど

活動実績
2019~ 千葉県にて里山竹林整備ボランティア
2020~ 木ッズ絵画コンクール

工務店の集客・営業ならジーレックスジャパン →ホームページはこちら

商品の差別化へ!制振装置はこちらから →耐震・制振装置

友達申請お待ちしてます! →代表浄法寺のfacebook

工務店のネット集客ならこちら →工務店情報サイト ハウジングバザール

関連記事

従業員満足度UPで工務店の業績改善

2025/07/18 |

工務店経営において、利益の確保やサービス品質の向上といった課題は避けて通れません。その一方、現場を支...

記事を読む

工務店 経営 住宅資材の上昇

2022/07/12 |

皆さんこんにちは 一社)コミュニティービルダー協会の 浄法寺です。   ...

記事を読む

リクシルの住宅ローン部門売却!利用中のお客様は?

2024/07/12 |

2024年7月1日、LIXILとその子会社であるLIXILホームファイナンスは、LIXILホ...

記事を読む

地域特性を活かした住宅展示場戦略

2025/07/17 |

住宅展示場への来場者数の減少、集客の地域間格差、反響営業の難航――多くの工務店経営者が直面するこれら...

記事を読む

  • 木の家住宅サイト『ハウジングバザール』

    もし、木の家をつくっていて、もっと多くのお客様と出会いたいという会社さんはぜひ見てください。
    掲載のお問合せは、画像をクリックして下さい。

  • 協会の著作

    代表理事の浄法寺が書いた住宅営業向けの本です。特にこれからの住宅営業向けに基本的な考え方と流れについて書いています。

  • 協会の著作

    代表理事の浄法寺が「SDGsをどうすれば建築業に活かせるか」を具体的な事例を取り入れながら書いた本になります。

  • 当協会監修の本です。工務店さんの集客に役立つアイデアがたくさん詰まってます!!

  • 僕たちが応援している【建築会社ができる社会貢献】のひとつのかたちです。

PAGE TOP ↑