ブランディングで工務店の価値を高める
工務店経営者の皆様、事業の継続と成長に日々尽力されていることと存じます。地域に根差した信頼関係を築きながらも、ハウスメーカーとの競争、価格競争の激化、資材価格の高騰、そして何より職人さんをはじめとする働き手の確保といった様々な課題に直面されているのではないでしょうか。
こうした厳しい経営環境において、単に「家を建てる」という機能価値だけでなく、「なぜ、あなたの工務店に頼むべきなのか」という独自の価値、つまりブランド力を明確にすることが、今後の経営戦略において極めて重要になります。ブランディングは、単にロゴやデザインを整えることではありません。それは、自社の理念や強みを言語化し、関わるすべての人々(顧客、従業員、地域)に対して一貫した約束を伝え、その約束を果たすことで信頼を積み上げていく活動そのものです。
適切なブランディングは、価格競争から脱却し、高付加価値なサービスを提供することを可能にし、顧客満足度を高め、さらには優秀な人材の採用にも繋がります。自社の独自の「色」を出すことは、選ばれる工務店になるための確かな経営戦略です。
「でも、うちは小さな工務店だし…」「どうやってブランディングを始めたらいいか分からない」「効果があるか不安だ」—そうお考えかもしれません。ご安心ください。この記事では、そうした皆様の疑問に直接お答えしながら、ブランディングを単なる理想論で終わらせず、皆様の工務店の経営戦略として具体的に実行していくための実践的なステップをご紹介します。この記事を読めば、ブランディングが単なる費用ではなく、未来への投資であると理解し、今日から何から始めれば良いのか、その具体的なアクションプランが明確になるはずです。共に、強いブランドを持つ工務店を目指しましょう。
ブランディングの「実践的」導入戦略:基礎から応用まで
多くの工務店経営者様が抱える疑問の一つに、「ブランディングって、大手ハウスメーカーがやることでしょ?」「具体的に何をすればいいの?」というものがあります。しかし、ブランディングは規模の大小に関わらず、あらゆる事業にとって非常に重要な経営戦略です。むしろ、地域密着型の工務店こそ、その個性を活かした強力なブランドを築くチャンスがあります。
1. そもそも、なぜ工務店にブランディングが必要なのか?
「ブランディング」と聞くと、ロゴマークや会社案内のデザイン変更、おしゃれなWebサイト制作といった表面的なイメージを持たれることがあります。しかし、ブランディングの本質は、顧客や地域社会に対して「私たちは〇〇な工務店である」という一貫した「約束」を伝え、その約束をすべての活動で果たすことで、強い信頼と共感を得るプロセスです。
なぜ今、工務店にブランディングが不可欠なのでしょうか。主な理由は3つあります。
- 価格競争からの脱却:機能や価格だけで勝負すると疲弊します。「あなたの工務店らしさ」に価値を感じてもらうことで、適正価格で選ばれるようになります。
- 選ばれる理由の明確化:数ある工務店やハウスメーカーの中から、顧客が「ここにお願いしたい」と思う明確な理由を作ることができます。これは強力な経営戦略となります。
- 優秀な人材の確保:働く側も、理念やビジョンが明確で、ユニークな価値を持つ会社で働きたいと考えます。ブランディングは採用活動においても有利に働きます。
ブランディングは、将来にわたる工務店の持続的な成長を支える土台となる経営戦略そのものなのです。
2. ブランディングを始める前に:自社の「核」を見つける
いきなりデザイン会社に相談する前に、まずは自社の内側を深く掘り下げることが重要です。ブランディングは、自己理解から始まります。以下のステップで、自社の「核」となる要素を見つけ出しましょう。
ステップ1:創業の想いや理念を問い直す
- 創業者はなぜこの工務店を始めたのか? 当初の志は?
- どのような家づくりを目指してきたのか?
- 地域社会に対してどのような貢献をしていきたいと考えているのか?
- 経営理念、社訓、行動指針などは、形骸化していませんか? それらが本当に自社の「らしさ」を表していますか?
これらは、事業活動の根幹であり、ブランドの最も重要な源泉です。改めて言語化し、従業員とも共有しましょう。
ステップ2:自社の強みと弱みを徹底的に分析する
- 技術力、デザイン力、対応力、アフターフォロー、地域との関係性、特定の工法への知見など、自社の強みは何か?(顧客視点で考えることが重要)
- 逆に、弱みや課題は何か?(例:情報発信が弱い、特定の顧客層にリーチできていない、標準仕様が不明確など)
- 競合他社と比較して、何が優れていて、何が劣っているか?
従業員全員で話し合ったり、過去の顧客にアンケートを取ったりするのも有効です。客観的な視点を取り入れましょう。
ステップ3:理想の顧客像(ペルソナ)を明確にする
- どのような顧客層に最も貢献できるか?
- どのような価値観を持つ顧客に選ばれたいか?(例:自然素材にこだわる、デザイン性を重視する、地域の気候風土を理解する、丁寧なコミュニケーションを求めるなど)
- その顧客はどのようなライフスタイルを送っているか? 家づくりに何を求めているか? どんなことに悩んでいるか?
具体的な一人の人物像(年齢、家族構成、職業、趣味、価値観、情報収集の方法など)をペルソナとして描き出すことで、今後のブランディング活動の方向性が定まります。
ステップ4:目指すブランドイメージを設定する
- ステップ1~3を踏まえ、自社は顧客や地域にどのように認識されたいか?(例:「安心できる、実直な工務店」「デザイン性の高い、おしゃれな工務店」「高性能住宅に強い工務店」「地域のお祭りにも積極的に参加する、人情味あふれる工務店」など)
- 競合との差別化ポイントは何か?
ここでのイメージが、今後のブランドコンセプトへと繋がります。
3. ブランドコンセプトを言語化する
自社の「核」が見つかったら、それをシンプルかつ魅力的な言葉で表現します。これがブランドコンセプトです。ブランドコンセプトは、事業全体を貫く「幹」となります。例:「私たちは、〇〇(ターゲット顧客)のために、〇〇(独自の強みや価値)を通じて、〇〇(顧客が得られるメリットや理想の未来)を実現する工務店です。」
このコンセプトは、従業員全員が理解し、共感し、日々の業務で体現できるものである必要があります。曖昧な表現ではなく、具体的で覚えやすい言葉を選びましょう。
【Q&A】小さな工務店でもブランディングは必要?
A: はい、むしろ小さな工務店こそブランディングが重要です。大手ハウスメーカーと価格や知名度で勝負するのは不利ですが、地域密着ならではのきめ細やかな対応、社長や職人さんの顔が見える安心感、その地域特有の家づくりのノウハウなど、小さな工務店にしかない強みがあります。これらの強みを明確に言語化し、積極的に伝えていくことが、大手との明確な差別化となり、特定の顧客層に深く響くブランディングに繋がります。規模に関わらず、自社の個性を磨き、伝えることが経営戦略の第一歩です。
【Q&A】ブランディングにかかるコストはどれくらい?
A: ブランディングにかかるコストは、その取り組みの範囲によって大きく変動します。高額な広告費やデザイン費用をかけなくても、できることはたくさんあります。例えば、自社の理念を記したタブロイド紙を自作する、現場シートのデザインを工夫する、お客様との打ち合わせ資料を見直す、OB施主様向けのニュースレターを出すなど、まずは身近なところから着手できます。重要なのは、一度に全てを変えようとするのではなく、核となるコンセプトに基づいて、実行可能な範囲から着実に改善を重ねていくことです。もちろん Webサイトやパンフレットのリニューアル、専門家への相談には費用がかかりますが、それがもたらす長期的な視点でのメリット(集客力向上、高付加価値化による利益率改善、採用コスト削減など)を考えれば、有効な経営戦略投資と言えます。まずは低コストでできることから始め、効果を見ながら投資を検討していくのが現実的でしょう。
経営戦略×ブランディング:成果を最大化する具体的な取り組み
ブランドコンセプトが明確になったら、それを具体的な活動に落とし込んでいきます。ここでは、ブランディングを単なる広報活動ではなく、事業全体の経営戦略と連携させ、最大の成果を出すための実践的な取り組みをご紹介します。
4. ブランドコンセプトに基づいた「商品」と「サービス」の設計
ブランドコンセプトは、提供する住宅やサービスの仕様、品質、設計思想に直接反映されるべきです。もし「自然素材にこだわる、健康的な家」というコンセプトを掲げるなら、使用する建材の選定基準、換気計画、断熱性能などがそのコンセプトと整合している必要があります。デザイン性の高さを売りにするなら、標準仕様のデザインクオリティ、設計士の技量、提案の幅などが問われます。
また、家づくりというプロセス全体もブランド体験の一部です。問い合わせへの対応、打ち合わせの丁寧さ、現場の整理整頓、職人さんの態度、引き渡し時の演出、そしてアフターフォローまで、全ての顧客接点において、ブランドコンセプトが体現されているかを見直しましょう。例えば、「安心・丁寧」がブランドコンセプトなら、問い合わせには迅速に、打ち合わせは分かりやすく、現場は常にきれいに、職人さんは挨拶を徹底するといった具体的な行動指針を定めます。これは非常に強力な経営戦略となり得ます。
5. ブランドを伝えるコミュニケーション戦略の実行
どんなに素晴らしいブランドコンセプトがあっても、それが顧客や地域に伝わらなければ意味がありません。効果的なコミュニケーションチャネルを選び、一貫したメッセージを発信することが重要です。
実践的なコミュニケーションチャネルの活用法
- Webサイト:工務店の顔となるWebサイトは最も重要です。
- トップページでブランドコンセプトや強みを明確に伝える。
- ターゲット顧客が求める情報(施工事例、家づくりの流れ、価格帯、お客様の声)を分かりやすく掲載。
- 施工事例写真は、単に完成した家を見せるだけでなく、どのようなコンセプトで建てたのか、お客様がどのような暮らしを実現しているのかをストーリーで見せる。
- 会社紹介ページでは、経営者や従業員、大工さんの顔写真やメッセージを載せ、人柄や仕事への想いを伝える。
- 問い合わせフォームや電話番号は分かりやすく表示し、すぐに連絡が取れる安心感を与える。
- ブログやコラムで、家づくりへの考え方や技術的なこだわり、地域の情報などを発信し、専門性と人間性を同時に見せる。
Webサイトは単なる会社概要ではなく、顧客との最初の重要な接点であり、ブランド体験の入り口です。
- SNS(Instagram, Facebook, LINEなど):
- 建築現場の様子や、完成までのストーリー、材料へのこだわりなどを写真や動画で発信する。
- 従業員の働く姿や日常の一コマを見せることで、親近感や信頼感を醸成する(インナーブランディングの成果を見せる場にもなります)。
- 見学会やイベントの告知を行う。
- お客様からの嬉しい声や引き渡し式の様子などを許可を得て紹介する。
- LINE公式アカウントで、顧客からの問い合わせに素早く対応したり、役立つ情報をプッシュ通知で届けたりする。
SNSは、工務店の「中の人となり」や日々の活動を見せることで、ファンを作っていくのに効果的です。
- パンフレット・会社案内:
- 統一されたデザインとトーンで、ブランドコンセプトや家づくりへの想いを表現する。
- 質の高い写真やイラストを使用し、視覚的に魅力を伝える。
- 分かりやすい言葉で、専門用語を避けながら説明する。
手元に残る印刷物は、 Webbサイト等と連携し、顧客にじっくり検討してもらうための重要なツールです。
- 見学会・構造見学会:
- 単に「見学」だけでなく、工務店のこだわりや技術、家づくりにかける想いを伝える「ブランド体験イベント」として企画する。
- 現場の整理整頓や掲示物を工夫し、丁寧な仕事ぶりを見せる。
- 経営者や担当者が直接説明することで、信頼感を深める。
実際に「場」を通じてブランドを体感してもらうことは、非常に説得力があります。
- OB施主様との関係構築:
- ニュースレターや季節のご挨拶を送る。
- OB施主様向けのイベント(感謝祭など)を開催する。
- 定期的なメンテナンスや訪問を通じて、長期的な関係性を築く。
満足度の高いOB施主様は、最大の協力者であり、強力な口コミ、つまり自然なブランディングの担い手となります。これは LTV (Life Time Value: 顧客生涯価値) の向上にも繋がる重要な経営戦略です。
- 地域との連携:
- 地域のお祭りやイベントに積極的に参加・協力する。
- 地域の発展に貢献する活動(セミナー開催、空き家対策への協力など)を行う。
- 地域の住民がいつでも気軽に立ち寄れるような事務所にする。
地域密着型の工務店にとって、地域経済やコミュニティへの貢献は、そのままブランドイメージの向上に繋がります。
6. 従業員がブランドを体現するための「インナーブランディング」
ブランディングは社外だけでなく、社内にも向けられる必要があります。従業員一人ひとりがブランドコンセプトを理解し、共感し、日々の業務でそれを体現することで、初めて説得力のあるブランドが構築されます。これをインナーブランディングと呼びます。
実践的なインナーブランディングのステップ
- ブランドコンセプトの共有:
- ワークショップや全体会議を開き、ブランドコンセプトが生まれた背景や意味、目指す姿を経営者自らが熱意を持って伝える。
- ブランドコンセプトを記したカードやポスターを社内に掲示し、常に意識できるようにする。
- 行動指針の作成と共有:
- ブランドコンセプトに基づき、「顧客に対してどのように接するか」「どのような家づくりを心がけるか」「職人さん、協力業者さんとはどう連携するか」といった具体的な行動指針を従業員と共に作成する。
- 「私たちはいつでも笑顔で挨拶します」「現場は毎日清掃して帰ります」など、誰にでも分かりやすい言葉で表現する。
- 教育・研修:
- 行動指針を実践するための研修を行う。
- 経営戦略や理念について語り合う機会を設ける。
- 外部講師を招いて、接客やコミュニケーション、整理整頓などについての研修を行う。
- 評価制度への反映:
- ブランドコンセプトや行動指針を体現できているかを評価項目に含める。
- ブランド体現に貢献した従業員を称賛・表彰する。
- 経営者自らの体現:
- 経営者自身が誰よりも率先してブランドコンセプトや行動指針を実践する姿勢を見せることが最も重要です。
インナーブランディングが成功すれば、従業員は単なる作業者ではなく、ブランドの推進者となります。彼らの誇りを持った仕事ぶりや顧客への対応の一つ一つが、外部への強力なブランディングとなるのです。
【Q&A】Webサイトはどう見せるべき?テンプレートで安く済ませていい?
A: テンプレートを全く使うなとは言いませんが、単に安く済ませるという視点だけでは不十分です。Webサイトは工務店の「顔」であり、オンラインでのブランド体験の核となります。テンプレートを使用する場合でも、写真、テキスト、構成などで自社のブランドコンセプトを明確に表現できるものを選び、内容をしっかり作り込むことが重要です。特に、施工事例ページでお客様のストーリーを丁寧に紹介したり、スタッフ紹介ページに人柄が伝わる写真を掲載したりするなど、テンプレートでは表現しきれない「工務店らしさ」を出す工夫が必要です。可能であれば、ブランディングを理解しているWeb制作会社に依頼し、自社の強みや個性を最大限に引き出すデザインや構成を検討することが、長期的な経営戦略を考えると賢明です。
【Q&A】SNSで何を投稿すればいい?プライベートなことばかりはNG?
A: SNSで何を投稿するかは、誰に何を伝えたいか(ターゲットとブランドコンセプト)によって変わります。基本は「工務店の仕事ぶり」「家づくりへの想い」「人柄」「地域への貢献」などを伝えることです。建築現場の進捗報告はもちろん、使用する材料へのこだわり、難しい納まりを工夫している様子、清掃状況、「休憩中に職人さんとこんな話をしました!」といった現場の裏側を見せる投稿は、信頼感と親近感に繋がります。経営者や従業員の「家」や「地域」に対する熱い想いを語る投稿も良いでしょう。プライベートなことばかりは避けるべきですが、例えば「子どもの頃からこの地域の風景が好きで…」といった、仕事や地域に繋がる人間性が伝わる投稿は、親近感を持ってもらいブランディングに繋がります。重要なのは、一貫したトーンとメッセージで、読者が「この工務店にお願いしたいな」「ここで家を建てたら楽しそうだな」と感じるような情報を発信し続けることです。無理に毎日更新するより、質の高い投稿を心がけましょう。
経営戦略を継続的に成功させるための「次の一手」
ブランディングは一度取り組めば完了するものではありません。市場環境は常に変化し、顧客のニーズも多様化しています。構築したブランドを維持・強化し、さらには事業の持続的な成長に繋げるためには、継続的な取り組みと経営戦略の見直しが不可欠です。
7. ブランディングの効果測定と改善のサイクルを回す
ブランディング活動が、実際に経営にどのような影響を与えているのかを把握し、必要に応じて改善を行うことが重要です。
実践的な効果測定と改善の方法
- 成果指標(KPI)の設定:
- 例えば、「問い合わせ件数の増加」「Webサイトのアクセス数(特に特定のコンテンツへのアクセス)」「資料請求数の増加」「契約単価の上昇」「紹介率の向上」「従業員のエンゲージメント向上」「地域での認知度向上(アンケート調査など)」といった、ブランディングによって改善したい具体的な指標を設定します。
- 顧客からのフィードバック収集:
- 契約前の打ち合わせ時、工事中、引き渡し時、アフターフォロー訪問時など、様々なタイミングで顧客から率直な意見を伺います。
- お客様アンケートを実施し、「なぜ当社を選んでいただけたのか」「当社の良い点・改善点」などを具体的に質問します。
- SNSのコメントや問い合わせ内容なども参考にします。
- WebサイトやSNSの分析:
- Google AnalyticsなどでWebサイトのアクセス状況、ユーザーの行動(よく見られているページ、離脱率など)を分析します。
- SNSのインサイト機能で、投稿に対する反応率(いいね、コメント、シェア)、フォロワー数の変化などを確認します。
- どのようなコンテンツが響いているのかを把握し、今後の情報発信に活かします。
- 定期的な見直しと改善:
- 設定したKPI、収集したフィードバック、分析データなどを基に、ブランディング活動の効果を定期的に評価します(四半期ごと、半期ごとなど)。
- うまくいっている点はさらに強化し、課題となっている点は改善策を検討・実行します。
- 例えば、「お客様から丁寧な説明が分かりやすかったという声が多い」→打ち合わせマニュアルをさらに充実させる。「Webサイトの写真が見にくいという指摘があった」→プロに依頼して写真を撮り直す、といった具体的なアクションに繋げます。
この効果測定と改善のサイクルを継続的に回すことが、ブランディングを陳腐化させずに、常に鮮度を保ち、より強力な経営戦略へと進化させていく鍵となります。
8. ブランディングを軸にした事業の多角化や進化
確立されたブランドは、新たな事業展開やサービスの進化を後押しします。例えば、「高性能で健康的な家」というブランドイメージが定着したら、リノベーション事業においてもそのノウハウや品質基準を活かすことができます。「地域密着で頼りになる」というブランドイメージがあれば、リフォームやメンテナンス事業だけでなく、地域のコミュニティスペース運営やイベント企画といった事業も展開しやすくなります。
また、特定の顧客層に特化したブランディング(例:デザインコンシャスな若年層向け、セカンドライフを楽しむシニア層向けなど)を深めることで、専門性を高め、独自のポジションを築くことも可能です。新しい技術(IOT住宅、ZEHなど)や工法を取り入れる際も、それが自社のブランドコンセプトと合致しているかを判断基準にすることで、一貫性を保ちながら事業を進化させることができます。これは、変化の激しい時代における重要な経営戦略の視点です。
9. 採用戦略と連動させ、ブランドを担う人材を確保・育成する
魅力的なブランドは、顧客だけでなく、働きたいと思う人材も惹きつけます。人材確保が難しくなっている昨今、ブランディングの重要性は増しています。どのような人材に来てほしいのかを明確にし、求人情報や採用活動においてもブランドコンセプトをしっかりと伝えることが重要です。
- 自社のパーパスやミッション、ビジョンを明確に打ち出す。
- 仕事のやりがい、成長機会、社風、チームワークの良さなどを具体的に伝えるコンテンツ(採用サイト、説明会、ブログ記事など)を作成する。
- 「私たちはこんな家づくりをしています」「こんな想いで働いています」といった、働くイメージが湧く情報を提供する。
- 入社後も、インナーブランディングを継続し、ブランドへの理解と共感を深める教育・研修を行う。
- 従業員のキャリアパスを描けるように支援し、長期的な成長を促す。
ブランドを体現する優秀な人材こそが、工務店の持続的な成長の原動力となります。ブランディングは、採用・育成戦略と切り離せない経営戦略なのです。
【Q&A】ブランディングの効果って、目に見えるまで時間がかかる?
A: はい、多くの場合、ブランディングの効果が売上や問い合わせ件数の増加といった具体的な成果として目に見えるまでには、ある程度の時間がかかります。すぐに劇的な変化が現れるわけではありません。しかし、ブランドコンセプトが明確になり、従業員の意識が変わる(インナーブランディングの効果)ことで、顧客とのコミュニケーションの質が向上したり、現場がきれいになったりといった、小さな変化は比較的早期に現れることがあります。また、Webサイトの改善やSNSでの情報発信を続けることで、問い合わせの質が向上したり、特定の想いを持った顧客からの反応が増えたりといった兆候が見られることもあります。重要なのは、目先の成果だけを追うのではなく、長期的な視点を持って、ブランドを育成していく意識を持つことです。継続的な取り組みこそが、最終的に大きな成果に繋がる経営戦略なのです。
【Q&A】従業員がブランドにノッてくれない場合は?
A: 従業員がブランドコンセプトや新しい行動指針になかなか順応しない、関心を示さない、といった状況はよく起こり得ます。これにはいくつかの原因が考えられます。
- 納得感の不足:なぜブランディングが必要なのか、自分たちの仕事にどう繋がるのかが腑に落ちていない。
- やらされ感:上から指示されたもの、単なるスローガンだと感じている。
- 具体的な行動が不明確:ブランドコンセプトは理解できても、「具体的に何をすればいいの?」が分からない。
- 経営者との意識のズレ:経営者の考える「理想の姿」と、現場で働く従業員の現実や課題との間に乖離がある。
これらの原因を踏まえ、粘り強く以下の対応を試みましょう。まず、改めて「なぜ今、ブランディングが必要なのか」「従業員一人ひとりの仕事がブランドにどう繋がるのか」を、具体的な言葉で、繰り返し、様々な場で伝えます。一方的な指示ではなく、対話を通じて理解を深める努力が必要です。ワークショップ形式で従業員の意見を取り入れながら行動指針を作成するなど、「自分たちもブランディングに参加している」という意識を持ってもらうことが重要です。また、「丁寧な挨拶」「現場清掃の徹底」など、すぐに実践できる具体的な行動から始め、できている点を積極的に褒め、小さな成功体験を積み重ねていくことも効果的です。経営者自身が率先してブランド体現を行う姿を見せることも、最高の説得力となります。そして、従業員が日々の業務で抱える課題や不満にも耳を傾け、改善に努めることで、会社への信頼感、ブランディングへの協力意識を高めることにも繋がります。
インナーブランディングは、経営戦略の中でも特に人間的な側面が強く、時間と根気が必要なプロセスです。しかし、従業員の共感と協力なしに、強力なブランドを築くことはできません。諦めずに、対話と行動を続けましょう。
まとめ
この記事では、工務店の価値を高めるためのブランディングについて、単なる表面的な装飾ではなく、事業の持続的な成長を支える重要な経営戦略として解説しました。競争が激化し、顧客ニーズが多様化する現代において、「あなたの工務店は何が違うのか」「なぜ選ばれるのか」を明確にし、一貫して伝える「ブランド力」の構築は避けて通れない道です。
まずは、創業の想いや自社の強み、理想の顧客像といった「自社の核」を深く掘り下げ、明確なブランドコンセプトを言語化する自己分析から始めましょう。次に、そのコンセプトを、WebサイトやSNSでの情報発信、見学会、そして何より日々の顧客対応や現場の仕事ぶりといった具体的な活動全体で体現することが重要です。そして、従業員一人ひとりがブランドの価値を理解し、誇りを持って仕事に取り組めるよう、インナーブランディングにも力を入れましょう。
ブランディングは、すぐに目に見える成果が出なくても、継続こそが力となります。効果測定を通じて改善を重ね、常に市場や顧客の変化に合わせて進化させていく意識が不可欠です。本記事でご紹介した具体的なステップは、貴社の経営戦略を次のステージに進めるための確かな道標となるはずです。今日、この記事を読み終えたその瞬間から、まずは自社の「核」について考える時間を持ち、小さな一歩を踏み出してみてください。皆様の工務店が、地域で圧倒的な信頼と共感を得る、強いブランドとして輝き続けることを心より応援しております。
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