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経営承継をスムーズに!工務店の成功事例

公開日: : 工務店 経営

工務店経営者の皆様、日々の経営、お疲れ様です。地域に根差し、お客様の住まいづくりを支える皆様にとって、会社の未来は常に大きな関心事でしょう。しかし、多くの工務店経営者が直面する課題の一つに、経営承継、そして会社の事業承継があります。「いつかは誰かに任せたい」「子どもや社員に引き継ぎたいけれど、何から手を付ければいいのか分からない」「自分の代で終わりたくない」といった不安や疑問を抱えている方も少なくないはずです。
経営承継や事業承継は、単に社長の椅子を譲るだけではありません。長年培ってきた技術、信頼、従業員の雇用、そして地域との関係性を次世代に引き継ぎ、会社を持続的に発展させていくための最も重要な戦略です。計画的な事業承継は、会社の価値を高め、従業員の安心にも繋がり、お客様からの信頼をさらに強固なものにします。逆に準備を怠れば、会社の存続が危ぶまれたり、親族間でのトラブルに発展したりするリスクも無視できません。この記事では、工務店経営者の皆様がスムーズに経営承継、事業承継を進めるための具体的で実践的な手順をご紹介します。成功事例や知っておくべきポイントを交えながら、あなたの疑問を解消し、明日からすぐにでも取り組めるアクションプランを提供します。この記事を読み終える頃には、漠然とした不安が具体的な道筋へと変わり、未来への一歩を踏み出す自信を得られることをお約束します。

経営承継の「実践的」導入戦略:基礎から応用まで

経営承継は、工務店が未来永劫にわたり地域社会に貢献し続けるための礎となるプロセスです。しかし、「いつか考えよう」と後回しにされがちなのも事実。ここでは、経営承継を成功させるための第一歩として、何を考え、どのように準備を始めるべきか、具体的なステップで解説します。「そもそも経営承継って何から始めるの?」というあなたの疑問にお答えします。

経営承継とは何か?事業承継との違いと重要性

まず、事業承継と経営承継の違いを明確にしておきましょう。事業承継は、会社の財産、負債、権利義務を含む事業全体を後継者に引き継ぐ広義の概念です。これに対し、経営承継は、経営権、経営者としての知見、ノウハウ、人脈、そして企業文化といった「経営」そのものを引き継ぐことに焦点を当てたものです。工務店においては、単に土地や建物を引き継ぐだけでなく、社長が持つ職人との信頼関係、長年の経験に基づく現場判断力、地域のお客様からの信用、そして経営理念を次世代に受け継ぐことが、企業の存続と発展に不可欠です。計画的な経営承継は、後継者がスムーズにリーダーシップを発揮し、既存の強みを維持しつつ、新しい時代の変化に対応していくための準備期間となります。これは、事業承継全体の成功を左右する最も重要な要素の一つと言えるでしょう。

ステップ1:現状把握と「見える化」から始める

経営承継の第一歩は、自社の「現状」を正確に把握し、「見える化」することです。漠然とした感覚ではなく、具体的な数字や情報に基づいた分析を行います。

  • 財務状況の詳細な把握: 売上、コスト、利益、借入金、手元資金、固定資産、負債など、会社の血液とも言えるお金の流れを徹底的に洗い出します。特に、経営者個人の資産と会社の資産が混じり合っていないか確認が必要です。
  • 組織体制と人材の評価: 従業員のスキル、経験、年齢構成、役職、そしてそれぞれの役割や貢献度を評価します。特に、現場を支える職人さんやベテラン社員の状況は重要です。後継者候補となりうる人材がいるかどうかもここで検討します。
  • 技術・ノウハウの棚卸し: 自社の強みとなっている建築技術、施工管理ノウハウ、デザイン力、仕入れルート、協力業者との連携など、具体的な技術やノウハウをリストアップ・言語化します。これは後継者への教育や引き継ぎの核となります。
  • 顧客基盤と地域ネットワーク: 主要な顧客層、リピート顧客の状況、紹介ルート、そして地域社会や自治体との関係性などを整理します。工務店にとって地域との繋がりは非常に重要です。
  • 経営者個人の資産・負債: 会社の事業承継だけでなく、経営者個人の資産(不動産、金融資産など)や負債(個人保証など)も整理します。これらは事業承継の形式や後継者の負担に大きく影響します。

これらの情報を網羅的にリストアップし、整理することで、何を、誰に、どのように引き継ぐべきか、具体的な課題が見えてきます。これは、経営承継計画を立てる上での羅針盤となる重要な作業です。

ステップ2:理想の未来像と承継の目的を明確にする

次に、「会社を将来どうありたいか」「なぜ事業承継を行うのか」という理想の未来像と承継の目的を明確にします。これは、後継者や従業員、そして専門家と情報を共有し、共通理解のもとで計画を進めるために不可欠です。

  • 会社の将来ビジョン: 承継後、会社をどのような規模・方向性で展開していきたいか(例:地域密着を強化、リフォーム事業を拡大、デザイン住宅に特化など)。
  • 後継者に託したいこと: 単に会社を維持するだけでなく、どんな新しい価値を生み出してほしいか、どのような文化を継承してほしいか。
  • 従業員の雇用維持と働きがい: 従業員が安心して働き続けられる環境をどう守るか。
  • 地域貢献のあり方: 承継後も地域社会との関係を維持・発展させていく方法。

これらの目的が明確であれば、「なんのために承継するのか」の軸がブレず、様々な課題に直面した際も適切な判断ができます。ぜひ、ノートに書き出すなどして整理してみてください。

ステップ3:後継者候補の選定と育成計画の策定

経営承継において最も重要な要素の一つが「後継者」です。誰に、いつ、どのように引き継ぐかを具体的に検討します。

  • 誰が後継者候補になりうるか?:
    • 親族内承継: 子どもや配偶者、兄弟姉妹など。身近な存在だが、本人の意欲や能力、他の親族の同意が課題となることも。
    • 従業員承継: 番頭格の社員や幹部。会社のことをよく理解しているが、経営者としての資質や資金調達能力が課題となることも。
    • M&A(第三者への承継): 外部の企業や個人に譲渡。短期間で承継できる可能性があるが、企業文化や従業員の待遇維持が課題となることも。

    複数の候補がいる場合は、それぞれの候補の適性、意欲、能力、そして会社への影響を多角的に比較検討します。

  • 後継者育成計画: 後継者候補が決まったら、具体的な育成計画を立てます。
    • 「帝王学」の実践: 財務、法務、人事、営業、現場管理、経営戦略など、経営全般に必要な知識や経験を計画的に積ませます。外部の研修やセミナーを活用するのも効果的です。
    • 権限の段階的移譲: 最初は一部門の責任者から始め、徐々に大きな権限と責任を与えていきます。失敗を経験させ、そこから学ばせることが重要です。
    • 経営者とのコミュニケーション: 定期的に経営会議や個別面談の場を設け、経営方針や理念、判断の背景などを伝えます。後継者の意見にも耳を傾け、対話を通じて信頼関係を築きます。
    • 社内外のネットワーキング: 協力業者、金融機関、税理士、弁護士、同業他社など、社外の関係者とのネットワーク構築をサポートします。

    育成には数年〜10年以上かかることも珍しくありません。早期に着手し、焦らずじっくりと進めることが成功の鍵です。

ステップ4:専門家チームの組成と連携

経営承継は、税務、法務、労務、財務など、多岐にわたる専門知識が必要となります。これらのプロセスを一人の力で進めるのは困難です。信頼できる専門家チームを組成し、彼らの知見を借りることが非常に重要です。

  • 税理士: 事業承継に伴う税務問題(贈与税、相続税、所得税、法人税など)についてアドバイスを受け、最適な承継方法を検討します。株式評価や事業評価にも精通している必要があります。
  • 弁護士: 遺言書の作成、株主間の合意形成、契約書の確認、親族間や従業員との法的なトラブル防止・解決など、法務面でのサポートを受けます。
  • 事業承継コンサルタント: 承継計画全体の立案、後継者育成、関係者間の調整など、事業承継プロセス全体を俯瞰してナビゲートしてくれます。工務店の業界知識を持つコンサルタントだと話がスムーズでしょう。
  • 金融機関: 承継に伴う資金調達や既存借入金の引き継ぎについて相談します。保証協会などの情報も提供してくれます。

これらの専門家と密に連携し、情報を共有しながら計画を進めることで、スムーズな事業承継、経営承継が可能となります。専門家選びは慎重に行い、複数の専門家の意見を聞くことも検討しましょう。

事業承継×経営承継:成果を最大化する具体的な取り組み

ここまで経営承継の準備段階について解説しました。ここからは、事業承継という器の中に、どのように「経営」という魂をスムーズに注入していくか、より具体的な実行段階に焦点を当てます。後継者が経営者として独り立ちし、会社を発展させていくための具体的な取り組みや、工務店特有の課題と解決策、そして多くの経営者が抱える疑問への回答をまとめました。

ステップ5:事業承継計画の策定と実行スケジュールの設定

ステップ1〜4で整理・検討した内容に基づき、具体的な事業承継計画書を作成します。この計画書は、関係者全員が共有すべき事業承継のロードマップです。

  • 計画書に盛り込む内容:
    • 承継の目的とビジョン
    • 後継者と承継の形式(親族内、従業員、M&Aなど)
    • 株式や事業用資産の承継方法とスケジュール
    • 後継者育成計画の詳細スケジュール
    • 財産評価と税務対策
    • 資金調達計画(必要な場合)
    • 従業員、顧客、取引先への周知計画
    • 事業承継後の会社の経営方針
    • リスク対策と予備計画
  • 実行スケジュールの設定: 各項目において、誰が、いつまでに、何をするかを明確にしたスケジュールを設定します。事業承継は長期にわたるプロジェクトであり、計画通りに進まないことも想定されます。柔軟な対応が必要ですが、期日を設けることで計画の遅延を防ぎ、関係者の意識を高める効果があります。実行スケジュールは、少なくとも数年単位で設定するのが現実的です。

この計画書は一度作成したら終わりではなく、状況の変化に応じて定期的に見直し、更新していくことが重要です。

ステップ6:株式・資産の承継と財産評価

事業承継における財産的な側面、特に株式や事業用資産の承継は、税務や法務の知識が不可欠であり、非常に複雑なプロセスです。工務店の場合、自社ビルや土地、設備など、事業用資産の評価も重要になります。

  • 株式の評価方法: 非上場株式の評価は、いくつかの方法(類似業種比準価額方式、純資産価額方式など)があり、税務上の評価額を正確に算出するためには税理士の専門知識が必要です。
  • 承継方法の検討:
    • 贈与: 生前贈与による早期の承継が可能。税負担や後継者の納税資金が課題となることも。事業承継税制(一定の要件を満たせば贈与税・相続税の納税猶予・免除を受けられる制度)の活用も検討します。
    • 売買: 後継者が株式を買い取る方法。後継者の資金繰りが課題となることが多いですが、先代経営者には売却益(所得税)が発生します。
    • 相続: 経営者の死亡に伴って相続人に引き継がれる方法。最も計画が遅れやすいですが、相続税の非課税枠や事業承継税制の適用も可能です。

    どの方法を選択するかは、経営者・後継者の状況、会社の財務状況、税負担 등을 고려して専門家と十分に相談して 결정해야 합니다。

  • 個人保証・担保の解除または引き継ぎ: 経営者が会社の借入金に対して個人保証を行っている場合が多いです。事業承継と同時に、後継者に保証人を変更するか、金融機関との交渉により保証を解除または軽減してもらうことが重要です。これは後継者の大きな負担となるため、金融機関との早期かつ丁寧な情報共有と交渉が不可欠です。

これらの手続きは専門的な知識なくしては進められません。必ず税理士や弁護士、金融機関と密に連携してください。

ステップ7:工務店特有の課題「職人・技術の承継」への対応

地域密着型の工務店にとって、経営承継と同時に非常に重要なのが、長年培われてきた高い技術を持った職人さんたちの処遇と、彼らが持つ技術・ノウハウの承継です。これは単なる経営権の移行とは異なる、工務店ならではの課題です。

  • ベテラン職人との信頼関係構築: 後継者は、先代経営者が築き上げてきた職人さんたちとの人間関係を大切にしつつ、新しい信頼関係を構築する必要があります。会社の将来像や自身の経営方針を丁寧に伝え、理解と協力を得るための努力が不可欠です。
  • 技術継承の仕組みづくり: ベテラン職人さんの持つ暗黙知とも言える技術やノウハウを、若手に継承するための仕組みを検討します。OJTだけでなく、マニュアル化、勉強会の開催、社内研修制度などが有効です。
  • 処遇と働きがいの確保: 職人さんたちが安心して働き続けられるよう、雇用条件や給与体系の見直し、福利厚生の充実なども検討します。単なる労働力ではなく、会社の財産として尊重する姿勢を示すことが重要です。
  • 協力業者との関係維持・強化: 長年付き合いのある協力業者との関係も、工務店の強みです。後継者は積極的に協力業者とのコミュニケーションを図り、良好な関係を維持・強化していく必要があります。

職人・技術の承継は一朝一夕にはいきません。時間をかけ、丁寧に進めることが、工務店のコアコンピタンスを未来へ繋ぐ鍵となります。

ステップ8:従業員、顧客、取引先へのスムーズな周知

事業承継は、会社の内部だけでなく、外部の関係者にも大きな影響を与えます。混乱や不安を招かないよう、計画的かつ丁寧な周知が必要です。

  • 従業員への説明: 最も身近な存在である従業員への説明は、早期かつ誠実に行うべきです。会社の将来像、新しい経営体制、雇用条件などについて、不安を解消できるよう丁寧に説明します。後継者と現経営者が一緒になって説明することで、連続性と安心感を与えることができます。
  • 顧客、取引先への周知: いつ、誰が引き継ぐのか、今後の窓口はどうなるのかなど、顧客や取引先への情報は明確に伝えます。地域密着型の場合、あいさつ回りを丁寧に行うなど、顔の見えるコミュニケーションが信頼維持に繋がります。新しい経営者による事業方針やサービス継続についても明確に伝えることが重要です。
  • 地域社会への情報発信: 必要に応じて、地域のメディアや商工会などを通じて事業承継について発信することも検討します。会社の存続と発展は地域経済にも関わるため、ポジティブな情報を伝えることで地域からの応援を得やすくなります。

関係者への周知は、情報伝達だけでなく、新しい経営体制への信頼を早期に築くための大切な機会です。計画的に、漏れなく行うことを心がけてください。

事業承継に関するよくある質問(FAQ)

工務店の経営者が事業承継を検討する際に、よく抱く疑問とその回答をまとめました。

Q1:後継者がいない場合はどうすれば良いですか?

A1:後継者不在の場合でも、事業承継の道は閉ざされていません。選択肢としては、従業員への承継(MBO:Management Buy-Out)、M&A(第三者への事業譲渡や株式譲渡)、または廃業などが考えられます。従業員の中から意欲のある人材を見つける、M&A仲介企業に相談するなど、外部の力を借りて最適な方法を探すことが重要です。国の事業承継・引継ぎ支援センターなども活用できます。

Q2:事業承継にかかる費用はどれくらいですか?

A2:事業承継にかかる費用は、承継の方法や会社の規模、依頼する専門家によって大きく異なります。主な費用としては、専門家(税理士、弁護士、コンサルタントなど)への報酬、株式や資産の評価費用、登記費用、M&Aの場合は仲介手数料などがあります。特にM&Aの場合は、会社の規模に応じて手数料が高額になる傾向があります。事前に専門家から見積もりを取り、資金計画に含めておくことが大切です。

Q3:自社株や事業用資産の評価方法が分かりません。

A3:非上場企業の自社株評価には、いくつかの専門的な評価方法があります(例:類似業種比準価額方式、純資産価額方式、配当還元方式など)。事業用資産の評価も、建物や土地の評価、設備の評価など専門知識が必要です。これらは税務上の評価額算出に不可欠であり、承継時の税金に大きく影響します。必ず税理士に依頼して正確な評価を行ってもらってください。

Q4:借入金の個人保証はどうなりますか?

A4:経営者が会社の借入に対して個人保証を行っている場合、事業承継後も保証が引き継がれることが一般的です。これは後継者にとって大きな負担となります。事業承継の計画段階から金融機関と相談し、後継者への保証変更、保証の解除、または保証協会の活用などにより、後継者の負担を軽減する交渉を行うことが極めて重要です。国の「経営者保証ガイドライン」に基づく対応なども金融機関に相談できます。

Q5:事業承継税制について知りたいです。

A5:国の事業承継税制(法人版事業承継税制、個人版事業承継税制)は、一定の要件を満たすことで、後継者が引き継いだ非上場株式等や事業用資産に係る贈与税・相続税の納税が猶予され、最終的に免除される可能性のある制度です。非常に有利ですが、適用には複雑な要件(対象資産、雇用継続要件、資産保有特定会社等に該当しないことなど)を満たす必要があり、煩雑な手続きが必要です。適用を検討する場合は、制度に精通した税理士に必ず相談してください。特例措置が講じられている期間もありますので、最新の情報を確認しましょう。

事業承継を継続的に成功させるための「次の一手」

事業承継はゴールではなく、会社の新しいスタートラインです。後継者が経営者として自立し、会社が持続的に成長していくためには、承継後も継続的なサポートと改善が必要です。このセクションでは、事業承継を真の成功に導くために、承継後に取り組むべきことについて解説します。

ステップ9:承継後の経営課題への対応とサポート体制構築

新しい経営体制がスタートした後も、様々な課題に直面することが予想されます。先代経営者や周囲のサポートが不可欠です。

  • 先代経営者の役割: 承継後、先代経営者はどのように関わるかを事前に決めておくことが重要です。完全に身を引くのか、会長として経営に関与するのか、顧問としてアドバイスを行うのかなど、役割を明確にします。ただし、後継者が主体的に経営判断できるよう、口出ししすぎないバランス感覚が求められます。
  • 後継者への継続的なサポート: 新しい経営者は、特に最初のうちは経験不足から困難にぶつかることもあります。相談しやすい体制を作り、適切なアドバイスや精神的なサポートを行います。社内外のネットワーク(同業者の集まり、商工会、セミナーなど)への参加を促し、後継者自身の成長を支援することも重要です。
  • 組織体制の見直し: 新しい経営者のリーダーシップのもと、必要に応じて組織体制や人事評価制度を見直します。従業員一人ひとりが能力を発揮できるような環境を整備することは、会社の活力維持に繋がります。

承継によって一時的に組織が不安定になる可能性もあります。丁寧なコミュニケーションと組織内の信頼関係構築に努めることが大切です。

ステップ10:新しい経営者による企業文化の醸成と革新

長年培われてきた企業文化は工務店の財産ですが、時代の変化に合わせて新しい風を取り入れることも必要です。後継者には、これまでの良さを引き継ぎつつ、自身のカラーを出していくことが求められます。

  • 既存の企業文化の尊重と継承: 「お客様第一」「品質へのこだわり」「職人を大切にする」といった、会社の根幹をなす価値観はしっかりと従業員や後継者に引き継ぎます。経営理念や行動指針を再確認し、言語化することも効果的です。
  • 新しい企業文化の創造: 環境問題への対応、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進、新しい工法の導入、働き方改革など、時代に合わせた新しい価値観や取り組みを積極的に導入します。後継者自身のビジョンや価値観を明確に示し、従業員と共に新しい企業文化を創り上げていく姿勢が重要です。
  • 対話とエンゲージメント: 従業員との対話を重視し、彼らの意見やアイデアを取り入れることで、会社へのエンゲージメント(愛着心、貢献意欲)を高めます。新しい試みに対する抵抗感を和らげ、変革を推進するための協力体制を築きます。

企業文化の醸成は、会社の「らしさ」を規定し、求心力を高める上で非常に重要です。承継を機に、より強く魅力的な組織へと進化させましょう。

ステップ11:引き継ぎ効果の評価と継続的な改善

事業承継は一度やれば終わりというものではありません。計画通りに進んでいるか、期待した効果が出ているかを定期的に評価し、必要に応じて改善策を講じることが重要です。

  • KPI(重要業績評価指標)の設定: 承継後の会社の状態を測るための具体的な指標を設定します。例えば、売上目標の達成度、利益率、顧客満足度、従業員満足度、離職率、技術継承の進捗度などです。
  • 定期的なレビュー: 設定したKPIに基づき、経営幹部や専門家を交えて定期的に事業承継の進捗状況や効果をレビューします。計画とのズレがないか、新たな課題が発生していないかなどを確認します。
  • 改善策の実行: レビューの結果、課題が見つかった場合は、その原因を分析し、具体的な改善策を立案・実行します。例えば、売上が伸び悩んでいるなら営業戦略の見直し、従業員のモチベーションが低いなら人事評価制度の改善などです。
  • 専門家との継続的な連携: 承継後も、税務や法務、経営に関する課題は発生します。顧問税理士や弁護士、経営コンサルタントなどとの関係を継続し、いつでも相談できる体制を維持しておくことが安心に繋がります。

継続的な評価と改善のサイクルを回すことで、事業承継の効果を最大化し、会社の長期的な安定と成長を実現することができます。

ステップ12:地域との関係強化と新たな事業機会の創出

工務店は地域社会に根差した事業です。事業承継を機に、地域との関係性を改めて見直し、新たな事業機会に繋げることも可能です。

  • 地域イベントへの参加・協力: 祭りへの参加、地域のボランティア活動への協力などを通じて、地域社会との繋がりを深めます。顔の見える関係は、信頼獲得に繋がります。
  • 地域特有のニーズへの対応: 高齢化社会に対応したバリアフリー改修、空き家対策、地域の伝統工法の継承など、地域特有のニーズに合わせたサービスを提供することで、地域からの信頼を得て、安定的な受注に繋げます。
  • 異業種連携による新しいサービス: 不動産業者、設計事務所、家具店、介護事業者など、地域の異業種と連携し、住まいに関するワンストップサービスを提供することで、新たな顧客層の獲得や売上向上を図ります。

新しい経営者のフレッシュな視点で地域を見つめ直し、これまでの関係性を大切にしつつ、新しい価値提供を追求することで、工務店は地域社会に不可欠な存在として生き残ることができます。

まとめ

工務店の事業承継、特に経営承継は、経営者が現役のうちから計画的に取り組むことで、多くのメリットを享受できる重要な経営戦略です。この記事では、現状把握から後継者育成、専門家との連携、そして承継後の継続的な取り組みまで、事業承継を成功させるための具体的な12のステップをご紹介しました。単に会社を「渡す」のではなく、長年培ってきた価値観や技術、信頼、そして従業員の未来を「託す」という意識が大切です。経営者と後継者、そして従業員、専門家が一体となってこの課題に取り組むことで、スムーズな移行と、会社という組織のさらなる発展が実現します。「自分には難しい」「何から始めていいか全く分からない」と感じていた方も、まずはこの記事で紹介したステップ1「現状把握」から始めてみてください。一歩踏み出す勇気が、未来の工務店、そしてあなたの会社の確固たる礎を築きます。事業承継は、困難な道のりであると同時に、会社が生まれ変わり、新しい時代を切り拓く絶好の機会でもあります。地域社会に必要とされる工務店であり続けるために、今日からぜひ、未来に向けた確かな一歩を踏み出しましょう。あなたの会社の輝かしい未来を心から応援しています。

この記事を書いた人

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浄法寺 亘

福島県 喜多方市出身。県立会津高校、市立高崎経済大学卒。工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。現在動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」。住宅情報サイト「ハウジングバザール」の運営にも携わっている。

著書:
頼みたくなる住宅営業になれる本
https://x.gd/oatiM
SDGsに取り組もう 建築業界編
https://x.gd/MXYJr

主な講演:
鹿児島県庁主催「かごしま緑の工務店研修会」
リードジャパン主催「工務店支援エキスポ」(東京ビックサイト)
育英西中学校、その他住宅FCなど

活動実績
2019~ 千葉県にて里山竹林整備ボランティア
2020~ 木ッズ絵画コンクール

工務店の集客・営業ならジーレックスジャパン →ホームページはこちら

商品の差別化へ!制振装置はこちらから →耐震・制振装置

友達申請お待ちしてます! →代表浄法寺のfacebook

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