商売の原点に学ぶ ― 顧客名簿の力とは何か
こんにちは。
今日は少し立ち止まって、「商売の原点」について一緒に考えてみませんか。
私が尊敬してやまない、日本の古き良き商人たちの知恵には、今の時代にも通じるヒントがたくさん詰まっています。特に「顧客との信頼関係」においては、現代のマーケティング手法がどれほど進化しても、決して色あせることのない普遍的な価値があります。
富山の薬売りに学ぶ「先用後利」の精神
まず思い浮かぶのが、富山の薬売り。ご存じの方も多いかもしれません。
彼らの商売の基本姿勢は「先用後利(せんようこうり)」。
これは、「まず相手の役に立つことが先。利益はその後でいい」という考え方。
薬売りは、見ず知らずの家庭に薬箱を置いていきます。
お金はいただきません。
そして数ヶ月後、再訪したときに「実際に使われた分だけ」代金を受け取るのです。
すごくないですか?
現代でいえば、無料サンプルを配って終わり…ではなくて、顧客が必要なときにすぐ使えるように常備薬を置いておき、後から必要な分だけ代金をいただくという超実用的な仕組み。
しかもこの方法、販売促進にもなり、信頼構築にもなる。
この「先に相手の役に立つ」という商売の姿勢があったからこそ、富山の薬売りは日本全国にネットワークを広げ、多くの家庭と長く付き合うことができたんです。
信頼がなければ成立しない仕組みですよね。
近江商人の「三方よし」という哲学
そしてもう一つ、忘れてはならないのが近江商人の「三方よし」。
「売り手によし、買い手によし、世間によし」
この三方よしの精神は、現代においても企業理念に取り入れられているほど。
「売れればいい」ではなく、「お客様が喜んでくれるかどうか」。
「自分だけ儲かればいい」ではなく、「それが社会の役に立っているかどうか」。
三方よしの商売哲学を突き詰めていくと、単なる物の売り買いではなく、人と人とのつながり、そして社会への貢献という視点に行き着きます。
この考え方を持っていたからこそ、近江商人たちは信頼を築き、長い年月にわたって多くの人たちから支持されてきたのです。
実例①:愛知県のA工務店 ―「全OB顧客に誕生日ハガキ」で受注率アップ
ある愛知県の中堅工務店では、約1,000世帯のOB顧客を名簿化し、誕生日に手書きハガキを送る施策を数年前から続けています。
最初は「そんなアナログなこと意味あるの?」と社内でも疑問視されたそうですが、2年経った今ではOBからの紹介件数が1.7倍になったそうです。
しかも驚いたのは、「実家のリフォームをお願いしたい」という子世代からの相談が増えたこと。名簿とは顧客との関係だけでなく、「家族」までつなぐものなんです。
実例②:千葉県のB工務店 ―「顧客ノート」で築いた紹介営業
B工務店では、営業スタッフが1組ごとに「顧客ノート」を作成。
これはCRMではなく、アナログな紙のノート。
そこに、初回面談で話したこと、家族構成、将来の夢、好みのインテリアなどが書かれています。
面白いのは、過去10年間の成約のうち、約65%がこのノートに書かれた情報をもとに再接触して成功していたという事実。
「忘れられていない」という安心感と、「ちゃんと覚えてくれてるんだ」という感動が、お客様の背中をそっと押してくれる。
名簿は単なる“データ”ではなく、“人との絆”なんです。
実例③:ハウスメーカーC社 ― イベント名簿からの成約率15%
ある大手ハウスメーカーの営業担当者から聞いた話です。
モデルハウスでの見学イベント。来場者はアンケートを書いて帰りますが、実際に成約に至るのは全体の1割以下。でも、そこには宝の山が眠っています。
彼が行っていたのは、「イベント来場者リストをもとに半年以内に3回接触する」というルール。
1回目:お礼の電話
2回目:3ヶ月後に近況確認DM
3回目:半年後に住宅ローンの無料相談会に招待
この3ステップだけで、イベント来場者の15%が商談化。
さらにそこから7%が実際に契約へと至ったのです。
名簿を“単なる名簿”で終わらせるか、“信頼のストック”として活用できるかで、
大きく差が生まれるのです。
両者に共通していた「顧客名簿」の重要性
さて、この二つの商人たちの哲学を並べてみると、共通していることがあります。
それは何か?
答えは「顧客名簿」です。
実は、富山の薬売りも近江商人も、顧客名簿を徹底的に大切にしていたんです。
それはただの「リスト」ではありません。
単なる「名前の羅列」ではないのです。
そこには、次のような情報が記されていました。
いつ、どこで会ったか
家族構成
健康状態や持病
前回どの薬を使ったか
好きな話題、趣味
訪問時に感じた印象や会話内容
つまり、単なる「顧客管理」ではなく、顧客理解の記録だったのです。
今風にいえば「CRM(Customer Relationship Management)」ですが、それを手書きの帳面一つで、しかも実践レベルでやっていたわけです。
これって、驚異的なことです。
デジタル時代に問われる「名簿の中身」
時代は変わり、今は便利な時代になりました。
顧客データは簡単にエクセルにまとめられるし、CRMツールを使えば、過去の履歴やメール内容もワンクリックで引き出せます。
だけど、そこで思うんです。
「データはある。でも、それを活かせているだろうか?」
富山の薬売りがいた時代のように、**「あの人、最近どうしてるかな」「そろそろ行ってみようか」**という、人間としての関心やつながりまで、私たちはデータから感じ取っているでしょうか?
単なる「リスト化」ではないか?
「属性」で括って終わりではないか?
一人ひとりと、ちゃんと向き合っているか?
名簿は、顧客を“数字”で捉える道具ではなく、顧客を“人”として理解するための羅針盤。
データは集めるだけでは意味がなく、「その人にどう寄り添うか」に使えてこそ、商売の力になるのです。
名簿活用の第一歩:まず「見る」
まずは、顧客名簿を「ちゃんと見てみる」ことです。
名前だけではなく、前回いつ接触したか、どんなやりとりをしたか。
何を求めていたか。どんな不安を感じていたか。
そして、こう問いかけてみましょう。
「あの人、最近どうしてるだろう?」
「あの話の続き、伝えられていないな」
「そろそろ困っているかもしれない」
この“小さな問い”の積み重ねが、信頼を築く行動に変わっていくのです。
DM一通でも、LINEの一言でも、SNSのいいねでもいい。
その一つひとつが「私はあなたのことをちゃんと覚えていますよ」というサインになります。
デジタル時代の名簿活用術 ― 小さな工夫で大きな差に
現代では、以下のような工夫もおすすめです:
Googleスプレッドシートでのクラウド名簿管理(全スタッフがリアルタイムで更新)
LINE公式での顧客リスト分割(新築・OB・検討中などで分類)
営業日報アプリと名簿を連動させて、「前回の話題」がすぐにわかる設計
名簿に「お客様の家族構成・夢・悩み」などの“感情データ”を記入欄として設置
CRMツールを使うことももちろん便利ですが、**「誰の、どんな情報を、何のために見るのか」**がはっきりしていなければ宝の持ち腐れです。
まとめ ― 名簿は、商売人の宝物である
改めて言います。
名簿は単なる情報リストではなく、商人の哲学と信頼の記録なのです。
富山の薬売りが薬箱と一緒に置いていったのは「安心」であり、
近江商人が三方よしで届けていたのは「喜び」でした。
その根底にあったのが、顧客一人ひとりを理解しようとする姿勢であり、
それを支えたのが、**顧客名簿という“道具”**だったわけです。
今こそ、名簿に書かれた「名前」を、もう一度見つめなおしてみてください。
あなたの商売に、またひとつ、温かな風が吹き始めるかもしれません。
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