コミュニティービルダー協会は
「内閣府beyond2020」の認定および「外務省JAPAN SDGs Action Platform」の紹介団体です。

商売の原点に学ぶ ― 顧客名簿の力とは何か

公開日: : 最終更新日:2025/05/26 工務店 集客, 工務店 経営

FireShot Capture 1811 -

こんにちは。

今日は少し立ち止まって、「商売の原点」について一緒に考えてみませんか。

私が尊敬してやまない、日本の古き良き商人たちの知恵には、今の時代にも通じるヒントがたくさん詰まっています。特に「顧客との信頼関係」においては、現代のマーケティング手法がどれほど進化しても、決して色あせることのない普遍的な価値があります。

 

富山の薬売りに学ぶ「先用後利」の精神

まず思い浮かぶのが、富山の薬売り。ご存じの方も多いかもしれません。

彼らの商売の基本姿勢は「先用後利(せんようこうり)」。
これは、「まず相手の役に立つことが先。利益はその後でいい」という考え方。

薬売りは、見ず知らずの家庭に薬箱を置いていきます。
お金はいただきません。

そして数ヶ月後、再訪したときに「実際に使われた分だけ」代金を受け取るのです。

すごくないですか?

現代でいえば、無料サンプルを配って終わり…ではなくて、顧客が必要なときにすぐ使えるように常備薬を置いておき、後から必要な分だけ代金をいただくという超実用的な仕組み。

しかもこの方法、販売促進にもなり、信頼構築にもなる。

この「先に相手の役に立つ」という商売の姿勢があったからこそ、富山の薬売りは日本全国にネットワークを広げ、多くの家庭と長く付き合うことができたんです。

信頼がなければ成立しない仕組みですよね。

 

近江商人の「三方よし」という哲学

そしてもう一つ、忘れてはならないのが近江商人の「三方よし」

「売り手によし、買い手によし、世間によし」

この三方よしの精神は、現代においても企業理念に取り入れられているほど。

「売れればいい」ではなく、「お客様が喜んでくれるかどうか」。
「自分だけ儲かればいい」ではなく、「それが社会の役に立っているかどうか」。

三方よしの商売哲学を突き詰めていくと、単なる物の売り買いではなく、人と人とのつながり、そして社会への貢献という視点に行き着きます。

この考え方を持っていたからこそ、近江商人たちは信頼を築き、長い年月にわたって多くの人たちから支持されてきたのです。

 

実例①:愛知県のA工務店 「全OB顧客に誕生日ハガキ」で受注率アップ

ある愛知県の中堅工務店では、約1,000世帯のOB顧客を名簿化し、誕生日に手書きハガキを送る施策を数年前から続けています。

最初は「そんなアナログなこと意味あるの?」と社内でも疑問視されたそうですが、2年経った今ではOBからの紹介件数が1.7倍になったそうです。

しかも驚いたのは、「実家のリフォームをお願いしたい」という子世代からの相談が増えたこと。名簿とは顧客との関係だけでなく、「家族」までつなぐものなんです。

 

実例②:千葉県のB工務店 「顧客ノート」で築いた紹介営業

B工務店では、営業スタッフが1組ごとに「顧客ノート」を作成。

これはCRMではなく、アナログな紙のノート
そこに、初回面談で話したこと、家族構成、将来の夢、好みのインテリアなどが書かれています。

面白いのは、過去10年間の成約のうち、65%がこのノートに書かれた情報をもとに再接触して成功していたという事実。

「忘れられていない」という安心感と、「ちゃんと覚えてくれてるんだ」という感動が、お客様の背中をそっと押してくれる。

名簿は単なる“データ”ではなく、“人との絆”なんです。

 

実例③:ハウスメーカーCイベント名簿からの成約率15%

ある大手ハウスメーカーの営業担当者から聞いた話です。

モデルハウスでの見学イベント。来場者はアンケートを書いて帰りますが、実際に成約に至るのは全体の1割以下。でも、そこには宝の山が眠っています。

彼が行っていたのは、「イベント来場者リストをもとに半年以内に3回接触する」というルール。
1回目:お礼の電話
2回目:3ヶ月後に近況確認DM
3回目:半年後に住宅ローンの無料相談会に招待

この3ステップだけで、イベント来場者の15%が商談化
さらにそこから7%が実際に契約へと至ったのです。

名簿を“単なる名簿”で終わらせるか、“信頼のストック”として活用できるかで、

大きく差が生まれるのです。

 

両者に共通していた「顧客名簿」の重要性

さて、この二つの商人たちの哲学を並べてみると、共通していることがあります。

それは何か?

答えは「顧客名簿」です。

実は、富山の薬売りも近江商人も、顧客名簿を徹底的に大切にしていたんです。

それはただの「リスト」ではありません。
単なる「名前の羅列」ではないのです。

そこには、次のような情報が記されていました。

いつ、どこで会ったか

家族構成

健康状態や持病

前回どの薬を使ったか

好きな話題、趣味

訪問時に感じた印象や会話内容

つまり、単なる「顧客管理」ではなく、顧客理解の記録だったのです。

今風にいえば「CRM(Customer Relationship Management)」ですが、それを手書きの帳面一つで、しかも実践レベルでやっていたわけです。

これって、驚異的なことです。

デジタル時代に問われる「名簿の中身」

時代は変わり、今は便利な時代になりました。

顧客データは簡単にエクセルにまとめられるし、CRMツールを使えば、過去の履歴やメール内容もワンクリックで引き出せます。

だけど、そこで思うんです。

「データはある。でも、それを活かせているだろうか?」

富山の薬売りがいた時代のように、**「あの人、最近どうしてるかな」「そろそろ行ってみようか」**という、人間としての関心やつながりまで、私たちはデータから感じ取っているでしょうか?

単なる「リスト化」ではないか?

「属性」で括って終わりではないか?

一人ひとりと、ちゃんと向き合っているか?

名簿は、顧客を“数字”で捉える道具ではなく、顧客を“人”として理解するための羅針盤

データは集めるだけでは意味がなく、「その人にどう寄り添うか」に使えてこそ、商売の力になるのです。

 

 

名簿活用の第一歩:まず「見る」

まずは、顧客名簿を「ちゃんと見てみる」ことです。

名前だけではなく、前回いつ接触したか、どんなやりとりをしたか。
何を求めていたか。どんな不安を感じていたか。

そして、こう問いかけてみましょう。

「あの人、最近どうしてるだろう?」

「あの話の続き、伝えられていないな」

「そろそろ困っているかもしれない」

FireShot Capture 1813 -

この“小さな問い”の積み重ねが、信頼を築く行動に変わっていくのです。

DM一通でも、LINEの一言でも、SNSのいいねでもいい。
その一つひとつが「私はあなたのことをちゃんと覚えていますよ」というサインになります。

 

デジタル時代の名簿活用術 小さな工夫で大きな差に

現代では、以下のような工夫もおすすめです:

Googleスプレッドシートでのクラウド名簿管理(全スタッフがリアルタイムで更新)

LINE公式での顧客リスト分割(新築・OB・検討中などで分類)

営業日報アプリと名簿を連動させて、「前回の話題」がすぐにわかる設計

名簿に「お客様の家族構成・夢・悩み」などの“感情データ”を記入欄として設置

CRMツールを使うことももちろん便利ですが、**「誰の、どんな情報を、何のために見るのか」**がはっきりしていなければ宝の持ち腐れです。

 

 

まとめ 名簿は、商売人の宝物である

改めて言います。

名簿は単なる情報リストではなく、商人の哲学と信頼の記録なのです。

富山の薬売りが薬箱と一緒に置いていったのは「安心」であり、
近江商人が三方よしで届けていたのは「喜び」でした。

その根底にあったのが、顧客一人ひとりを理解しようとする姿勢であり、
それを支えたのが、**顧客名簿という“道具”**だったわけです。

今こそ、名簿に書かれた「名前」を、もう一度見つめなおしてみてください。

あなたの商売に、またひとつ、温かな風が吹き始めるかもしれません。

プロフィール画像

この記事を書いた人

浄法寺 亘

工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。
今動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」
※8月実施予定。
住宅サイトの運営もしています。

福島県 喜多方市出身
県立会津高校卒
市立高崎経済大学卒

著書:
頼みたくなる住宅営業になれる本
https://x.gd/oatiM
SDGsに取り組もう 建築業界編
https://x.gd/MXYJr
とっておきの見込み客発掘法
https://x.gd/001or

主な講演:
鹿児島県庁主催「かごしま緑の工務店研修会」
リードジャパン主催「工務店支援エキスポ」(東京ビックサイト)
育英西中学校
その他住宅FCなど

活動実績
2019~ 千葉県にて里山竹林整備ボランティア
2020~ 木ッズ絵画コンクール

工務店の集客・営業ならジーレックスジャパン →ホームページはこちら

商品の差別化へ!制振装置はこちらから →耐震・制振装置

友達申請お待ちしてます! →代表浄法寺のfacebook

工務店のネット集客ならこちら →工務店情報サイト ハウジングバザール

関連記事

工務店経営 採用について考える

2020/04/03 |

工務店経営 採用は少し先の未来への投資です 人手不足、職人不足と言われる建築業界 採用に...

記事を読む

工務店 経営 跡継ぎのホンネとは? アンケート記事から

2023/06/26 |

先日、親が経営者である20代会社員108人を対象に、 「経営者の子どもの意識調査」 を実施し...

記事を読む

9月の建築関連トピックスから

2018/09/27 |

ことしは近年では珍しく残暑が続かず 秋らしい天気になっていますね。 大阪周辺は台風の影響...

記事を読む

工務店 経営 対浸水 100年後をにらんで住宅地をつくる

2020/09/28 |

先日、WEDGE NEWSWeb版の方に「100年後をにらんで安全なところに住宅地を作る。都内の...

記事を読む

  • 木の家住宅サイト『ハウジングバザール』

    もし、木の家をつくっていて、もっと多くのお客様と出会いたいという会社さんはぜひ見てください。
    掲載のお問合せは、画像をクリックして下さい。

  • 協会の著作

    代表理事の浄法寺が書いた住宅営業向けの本です。特にこれからの住宅営業向けに基本的な考え方と流れについて書いています。

  • 協会の著作

    代表理事の浄法寺が「SDGsをどうすれば建築業に活かせるか」を具体的な事例を取り入れながら書いた本になります。

  • 当協会監修の本です。工務店さんの集客に役立つアイデアがたくさん詰まってます!!

  • 僕たちが応援している【建築会社ができる社会貢献】のひとつのかたちです。

PAGE TOP ↑