実家相続、でも子どもが住まない…後悔しないための賢い選択肢
公開日: : 最終更新日:2025/10/27 家づくりのお役立ち情報
親から受け継ぐ実家。そこにはたくさんの思い出が詰まっているからこそ、「この家を大切にしたい」という気持ちは誰しもが抱くものです。しかし、お子さんたちが将来その家に住む予定がない場合、「この家をどうしたらいいのだろうか」という漠然とした不安や悩みを抱えている方も少なくありません。特に、ご自身がマイホーム計画を進める中で、この実家の問題が重くのしかかっている方もいらっしゃるでしょう。このガイドでは、そんなあなたの不安を解消し、実家を未来へとつなぐための具体的な選択肢とステップを、初心者の方にも分かりやすく解説します。
目次
- 「今の家を相続したいが、子どもが住む予定がない」というお悩み、抱えていませんか?
- 相続した実家、子どもが住まない場合の賢い選択肢
- 専門家と連携!スムーズな実家相続・活用ステップ
- まとめ:実家を未来へ繋ぐための最初の一歩を踏み出そう
「今の家を相続したいが、子どもが住む予定がない」というお悩み、抱えていませんか?
親から受け継ぐ実家。そこには、幼い頃の記憶、家族との温かい団らん、そして親御さんが大切に守り続けてきた歴史が深く刻まれています。だからこそ、その家を「このままにしておくわけにはいかない」「なんとかして守りたい」という強い思いを抱くのは、自然なことです。しかし、一方で「子どもたちに手渡したいけれど、彼らがこの家に住む予定はなさそうだ」という現実と向き合い、漠然とした不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
特に、30代から50代のマイホーム計画を始めたばかりのあなたは、まさに人生の転換期にいます。住宅ローンの返済期間や、成長盛りのお子さんのための部屋の確保など、ご自身の家族の未来を真剣に考える中で、実家の存在は喜びと同時に、重い課題となってのしかかっているかもしれません。お子さんたちは、それぞれの学校や仕事、友だちとの関係を考慮すれば、親元を離れて自分たちの生活圏で暮らすことを望むのが一般的です。核家族化が進む現代においては、実家での同居よりも、独立した住まいを選ぶ傾向が顕著です。そうなると、大切な実家が「空き家」となってしまう可能性が出てきます。空き家になってしまうと、管理の手間や費用の負担、さらには近隣への影響(防犯、衛生面など)といった問題が新たに発生します。思い出の詰まった家が、やがて負の遺産になってしまうのではないかという不安は、切実なものです。
実家を「負の遺産」にしないために
「この家、将来どうなるんだろう…」という不安を抱えたままでは、ご自身のマイホーム計画にも集中できませんし、何より精神的な負担が大きくなってしまいます。多くの方が抱えるこの「今の家を相続したいが、子どもが住む予定がない」という悩みは、決してあなた一人だけのものではありません。実際、総務省統計局の「住宅・土地統計調査」によれば、2018年の時点で全国の空き家は846万戸に上り、空き家率は13.6%と過去最高を記録しています。この数字は、まさに多くのご家庭が同じ課題に直面していることを示しています。この問題は、今後さらに深刻化すると予測されています。
漠然とした不安を具体的に紐解く
この漠然とした不安を解消するためには、まず現状を具体的に把握し、将来の選択肢を明確にすることが重要です。実家を相続する、しないという話は、単なる感情論だけでは解決できません。法的な側面、税金の問題、経済的な負担、そして何よりも家族の将来に大きな影響を与える決断だからです。しかし、ご安心ください。適切な知識と準備があれば、この問題は「解決できる課題」へと変わります。大切な実家を負の遺産にするのではなく、未来へつなぐための「新たな価値」に変える道は必ずあります。
このガイドで得られること
このガイドでは、あなたが抱える「大切な実家を相続したいけれど、子どもが住む予定がない」という悩みに焦点を当て、具体的な解決策を段階的にご紹介します。単に感情的な側面だけでなく、不動産のプロ、税金の専門家、そして法律の専門家といった具体的なアドバイスも踏まえ、実践的な情報を提供します。この一歩を踏み出すことで、あなたは実家に関する不安を解消し、ご自身のマイホーム計画にも自信を持って取り組めるようになるでしょう。

相続した実家、子どもが住まない場合の賢い選択肢
実家を相続するにあたり、お子さんが住む予定がないという状況は、新たな展望を開くチャンスでもあります。感情的な側面を乗り越え、「資産」としての実家をどう活用するか、具体的な選択肢を検討することが大切です。ここでは、主要な選択肢とそのメリット・デメリット、注意点を詳しく見ていきましょう。
選択肢1:売却し、新たな資金源に
最もシンプルで、実家から新たな価値を生み出す手段の一つが「売却」です。売却によって得た資金は、ご自身のマイホーム購入費用に充てたり、お子さんの教育資金、老後の生活資金など、未来に向けた大切な資金として活用できます。特に、実家の立地が良く、市場価値が高い場合は、大きな売却益が期待できます。
- メリット:
- まとまった現金が得られる
- 固定資産税や維持管理費用から解放される
- 「負動産」となるリスクを回避できる
- デメリット・注意点:
- 売却時には譲渡所得税がかかる可能性がある(相続から3年10ヶ月以内の売却など、税制特例がある場合も。専門家への相談が必須)
- 不動産会社への仲介手数料が発生する
- 思い出の家を手放す寂しさ
売却を決意したら、まずは複数の不動産会社に査定を依頼し、実家の適正価格を把握することが重要です。古い家であっても、リフォームやリノベーション前提で売却することも可能です。また、一定の要件を満たせば「空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除」といった税制優遇措置が適用される場合があります。
選択肢2:賃貸に出して安定収入を得る
実家を第三者に賃貸することで、家賃収入という安定した収益を得る方法です。特に、駅近や生活利便施設が充実しているなど、賃貸ニーズが高い立地の実家であれば、有効な選択肢となります。収益物件として活用することで、家の維持管理費用を賄いながら、家計にプラスの収入をもたらすことができます。
- メリット:
- まとまった売却益はなくても、継続的な収入が得られる
- 実家という資産を手元に残せる
- 将来的にご自身が住む、あるいは売却するといった選択肢を残せる
- デメリット・注意点:
- 家賃収入には不動産所得税がかかる
- 入居者募集や契約、トラブル対応、修繕など、管理に手間がかかる(専門の管理会社に依頼することも可能だが、その分の費用が発生)
- 空室リスクや家賃滞納リスクがある
- 大規模なリフォームが必要となる場合がある
賃貸経営を検討する際は、専門の不動産管理会社に相談し、地域の賃貸相場や物件の改修費用、管理委託費などを事前に把握しましょう。また、築年数が古い場合は、入居者が快適に暮らせるよう、水回りや内装のリフォーム費用も考慮に入れる必要があります。
選択肢3:空き家として保持、そのリスクと覚悟
売却も賃貸もせず、そのままの状態で「空き家」として維持することもできます。感情的なつながりや、将来的に何らかの形で利用する可能性を残したい場合に選ばれることがあります。しかし、この選択肢は最も慎重に検討すべきです。
- メリット:
- 思い出の家をそのまま残せる
- 急いで決断する必要がない
- デメリット・注意点:
- 固定資産税や都市計画税がかかり続ける(住宅用地の特例が解除され、税負担が増える可能性も)
- 定期的な通風、清掃、草むしり、庭木の手入れなど、維持管理の労力と費用がかかる
- 老朽化が進行しやすく、建物の価値が低下する
- 不審者の侵入、放火、倒壊、景観悪化など、近隣へのリスクとなり「特定空き家」に指定されると指導や勧告、最悪の場合罰金になる可能性もある
- 将来売却する際も、空き家の状態での売却は買い手が見つかりにくいことも
「特定空き家」の指定は、行政が定めた基準(例えば、倒壊の危険、衛生上の問題、景観を損なうなど)に基づいて行われます。国土交通省の資料によれば、年間約500件もの特定空き家の指導・勧告が行われているとされています。これを避けるためにも、空き家として保持する場合は、定期的な管理体制を整えるか、専門の空き家管理サービスを利用することを強くお勧めします。
選択肢4:リフォーム・リノベーションで新たな価値を創造
実家の状態が良く、リフォームやリノベーションによって新たな価値を生み出せる余地がある場合、この選択肢を検討する価値があります。例えば、二世帯住宅への改築、一部を賃貸に出す、民泊施設として活用するなど、多様な可能性を探ることができます。
- メリット:
- 実家を大幅に改修することで、現代のニーズに合わせた快適な住空間に変えることができる
- 物件の売却価値や賃貸価値を高めることができる
- 場合によってはご自身で住むことも含め、選択肢の幅が広がる
- デメリット・注意点:
- 大規模な費用がかかる(数百万円〜数千万円)
- 間取りや建物の構造によっては、希望通りの改修が難しい場合がある
- 工事期間中、仮住まいが必要になる場合も
- リフォーム費用が売却価格に十分反映されない可能性もある
リフォーム・リノベーションを検討する際は、複数のリフォーム会社や建築士に相談し、具体的なプランと見積もりを取ることが大切です。また、費用対効果をしっかりと見極め、将来の活用方法と合わせて検討しましょう。
家族会議で最善策を見つける
これらの選択肢はいずれも、家族全員の理解と協力が必要です。実家をどうするかは、単なる不動産の問題ではなく、家族の歴史と未来に関わる大切な決断です。特に、お子さんたちが住まないという前提であれば、そのお子さんたちの率直な意見も尊重すべきです。お互いの意見を尊重し、メリット・デメリットを共有しながら、時間をかけてじっくりと話し合うことが、後悔のない選択をするための鍵となります。必要であれば、中立的な立場のアドバイザー(ライフプランナーなど)を交えて話し合いを進めることも有効です。
専門家と連携!スムーズな実家相続・活用ステップ
実家を相続し、お子さんが住まないことを前提とした活用を進める上で、一人で全てを解決しようとするのは非常に困難です。法的な手続き、税金の問題、不動産の売買や管理など、専門的な知識が不可欠だからです。ここでは、目的達成のためにどのような専門家と連携し、どのようなステップを踏んでいけば良いのかを具体的に解説します。
ステップ1:現状把握と情報収集
まず最初に行うべきは、実家の現在の状況把握です。土地や建物の権利関係(名義は誰か、共有名義はないか)、住宅ローンの残債確認、固定資産税などの支払い状況、建物の築年数や劣化状況、そして何よりも「相続人が誰なのか」を明確にしましょう。
- 確認事項:
- 登記簿謄本・固定資産評価証明書:法務局で取得し、所有者名義、地積、床面積、評価額などを確認。
- 相続関係図:相続人が誰か、戸籍謄本などから確認。
- 実家の状態:雨漏り、シロアリ被害など、専門家(建築士や住宅診断士)による建物調査も検討。
- 周辺の不動産相場:売却や賃貸を検討する上で、地域の市場価格をリサーチ。
この初期段階での情報収集が、その後のスムーズな手続きの土台となります。特に、相続人の確認は非常に重要で、法定相続人が複数いる場合は、全員の合意なくして売却などの手続きを進めることはできません。
ステップ2:実家を相続するための手続きと専門家
実家の名義を親御さんからあなたへ変更する「相続登記」は必須の手続きです。これは、原則として相続が発生してから3年以内に完了させる必要があります。2024年4月1日からは相続登記が義務化され、正当な理由がないのに期限内に手続きを怠ると、過料が科される可能性もありますので注意が必要です。
- 司法書士:相続登記の専門家です。複雑な書類作成や法務局への申請を代行してくれます。相続人が複数いる場合の遺産分割協議書の作成支援も依頼できます。
- 弁護士:もし相続人間で遺産分割に関する争いがある場合や、特別受益、寄与分などの法的な問題が絡む場合は、弁護士に相談すべきです。
相続の手続きは複雑で、時間と手間がかかります。専門家に依頼することで、ミスなく迅速に進めることができますし、何よりも精神的な負担を軽減できます。
ステップ3:税金の専門家と相談する
実家の相続には相続税が、売却には譲渡所得税が、賃貸には不動産所得税が関係してきます。これらの税金は、選択肢によって大きく異なるため、事前に税理士に相談し、具体的なシミュレーションを行うことが非常に重要です。
- 税理士:相続税の申告、売却時の譲渡所得税の計算(特例の適用可否を含む)、賃貸する場合の不動産所得税の申告など、税金に関するあらゆる相談に乗ってくれます。
例えば、相続税には基礎控除があり、遺産総額が一定額以下であれば相続税はかかりません。また、先述の通り、空き家を売却する際に受けられる税制優遇措置など、知っておくべき特例が多数存在します。税理士の専門知識が、あなたの税金負担を最小限に抑える上で不可欠となります。データによると、相続税申告における税理士の関与率は9割以上であり、それだけ専門性が必要とされる分野であることが分かります。
ステップ4:活用方法に応じた専門家との連携
相続登記と税金の問題がクリアになったら、いよいよ実家の活用方法を具体的なものにするための専門家との連携です。
- 不動産会社:
- 売却の場合:複数社に査定を依頼し、最も信頼できる会社を選びましょう。地域密着型や、空き家物件の取り扱いに強い会社を見つけるのがポイントです。
- 賃貸の場合:賃貸仲介・管理を専門とする不動産会社に相談。賃料査定、入居者募集、契約、その後の管理までを一括して依頼することで、手間を大幅に削減できます。
- 建築士・リフォーム会社・工務店:
- リフォーム・リノベーションの場合:複数の業者から見積もりを取り、比較検討しましょう。あなたの希望を具体的に伝え、費用対効果の高い提案をしてくれる会社を選ぶことが重要です。耐震診断や耐震補強の相談もここで行えます。
各専門家との連携においては、あなたの目的を明確に伝え、疑問点は遠慮なく質問することが大切です。相見積もりを取る、セカンドオピニオンを求めるなどして、焦らず、最も納得のいく選択をしましょう。多くの専門家は初回相談無料のところも多いので、上手に活用することをお勧めします。
ステップ5:家族会議の定期的な実施
これらの専門家と連携しながら進める中でも、家族会議は定期的に行い、進捗状況を共有し、新たな課題や疑問点について話し合う時間を設けることが重要です。特に、お子さんが住まないという前提で話を進めている以上、現在の状況と将来の計画についてオープンに話し合うことで、お互いの理解を深め、納得感のある決断へと繋がります。「実家を相続したいが、子どもが住む予定がない」というデリケートな問題だからこそ、透明性を持った話し合いが重要になります。

まとめ:実家を未来へ繋ぐための最初の一歩を踏み出そう
親から受け継ぐ大切な実家。「今の家を相続したいが、子どもが住む予定がない」という悩みは、多くのご家庭が直面する現代的な課題です。しかし、この問題は決してネガティブなものだけで終わる必要はありません。適切な知識と専門家との連携によって、実家は新たな価値を生み出し、あなたの家族の未来に貢献する「資産」へと生まれ変わることができます。
この記事では、実家を売却する、賃貸に出す、空き家として保持する、リフォーム・リノベーションで価値を高めるといった具体的な選択肢と、それぞれのメリット・デメリットを解説しました。そして、相続登記を行う司法書士、税金相談の税理士、売却や賃貸の不動産会社、リフォームの建築士といった、頼れる専門家との連携ステップをご紹介しました。大切なのは、漠然とした不安を抱え続けるのではなく、具体的な「行動」に移すことです。
まずは、実家の現状を把握し、家族でじっくりと話し合うことから始めてみましょう。そして、一人で抱え込まずに、それぞれの専門知識を持つプロフェッショナルへ相談してください。彼らは、あなたの状況に合わせた最適なプランを提案し、複雑な手続きをサポートしてくれるでしょう。思い出の詰まった実家を、負の遺産にするのではなく、未来を築くための大切なバトンとして次世代へ繋ぐ一歩を、今ここから踏み出してください。あなたの家族の未来が、より豊かで確かなものになることを心から願っています。
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