実家を相続しても子どもが住まない!空き家問題を未然に防ぐ5つの対策

公開日: : 家づくりのお役立ち情報

   

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親から相続した実家をどうするか悩んでいませんか?自分は住む予定がなく、子どもも「住みたくない」と言っている場合、将来的な空き家問題に発展する可能性があります。相続した家が放置されることで、資産価値の低下だけでなく、固定資産税などの負担も続きます。しかし、適切な対策を講じることで、こうした問題を回避できます。

この記事では、実家を相続したものの家族が住む予定がないケースに焦点を当て、選択肢や具体的な対策について解説します。「できるだけ実家を有効活用したい」「将来的な負担を減らしたい」という方に、ぜひ参考にしていただきたい内容です。親の思い出が詰まった家だからこそ、最適な選択をして後悔のない決断をしましょう。

目次

相続した実家に誰も住まない問題とは

相続した実家の5つの活用方法 親の家を相続する前に考えておくべきこと

まとめ:後悔しない実家相続の選択肢

相続した実家に誰も住まない問題とは

親から家を相続したものの、自分も子どもも住む予定がない場合、いくつかの問題が発生します。「親の家だから大切にしたい」という思いは理解できますが、現実的な問題も直視する必要があります。

空き家になることで発生するリスク

相続した家に誰も住まなくなると、「空き家」となります。総務省の統計によると、2018年時点で日本の空き家数は約849万戸、空き家率は13.6%と過去最高を記録しています。この数字は今後さらに増加すると予測されており、2033年には約2,167万戸、空き家率は30.2%に達するという試算もあります。

空き家になると、以下のようなリスクが発生します:

  1. 資産価値の急速な低下:住居は人が住まなくなると急速に劣化します。特に木造住宅の場合、定期的な換気や清掃がなされないことで、カビや害虫の発生、木部の腐食などが進みます。国土交通省の調査によれば、築20年の住宅でも適切な管理がなされていれば資産価値を80%程度維持できる一方、空き家として放置された場合は40%程度まで下がるケースが多いとされています。
  2. 維持費の継続的な負担:空き家となっても、固定資産税や都市計画税などの税金、火災保険料、管理費などの費用は継続的にかかります。特に注意したいのは、2015年5月に施行された「空家等対策特別措置法」により、適切に管理されていない「特定空家」に指定されると、固定資産税の住宅用地特例(最大で1/6に軽減される特例)が適用されなくなり、最大で6倍の税金がかかる可能性があることです。
  3. 防犯・防災上の問題:空き家は不審者の侵入や放火などの危険性が高まります。また、管理不足による家屋の倒壊リスクや、周辺環境への悪影響(雑草の繁茂、害虫・害獣の発生など)も懸念されます。警察庁の統計では、空き家での不法侵入や器物損壊などの犯罪は年間約5,000件報告されています。

家族間で起こりがちな相続トラブル

実家の相続は、想像以上に家族間の軋轢を生む原因になりがちです。「みんなの実家」という認識の違いから、以下のようなトラブルが発生することがあります:

  1. 維持費用の負担割合をめぐる争い:兄弟姉妹で実家を共有名義にした場合、維持費用(修繕費、税金など)の負担をめぐって意見が対立することがあります。特に経済状況に差がある場合や、遠方に住んでいて実家の利用頻度に差がある場合に争いが生じやすいです。
  2. 処分方法についての意見相違:「売却したい」「賃貸に出したい」「リフォームして使いたい」など、処分方法についての意見が分かれることもあります。日本相続学会の調査によれば、相続した不動産の処分方法について家族間で意見が対立するケースは相続トラブル全体の約40%を占めるとされています。
  3. 感情的な愛着の差:成長過程で実家での思い出や親との関係性に差があると、家への愛着にも違いが生じます。「思い出が詰まった家だから手放したくない」という感情的な理由で、経済的に合理的な判断ができなくなることもあります。

相続税と維持費の実態

相続した実家には、想像以上の経済的負担がつきまといます:

  1. 相続税の負担:相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。例えば相続人が配偶者と子2人の場合、控除額は4,800万円となりますが、都市部の不動産価値が高い地域では、この控除額を超えることも少なくありません。相続税率は最大で55%に達するため、現金資産が少ない場合、税金の支払いのために不動産を売却せざるを得ないケースもあります。
  2. 固定資産税の実例:例えば、東京都内の土地面積100㎡、建物面積80㎡の木造2階建て住宅(築30年)の場合、年間の固定資産税は約15万円程度かかります。これに都市計画税や管理費用を加えると、年間20〜30万円の維持費がかかる計算です。
  3. 将来的なリフォーム・解体費用:老朽化した家屋を維持するためには、定期的なリフォームが必要です。屋根や外壁の塗装は10年ごとに必要で、費用は100〜200万円程度。大規模なリフォームとなれば数百万円から1,000万円以上かかることもあります。解体する場合も、木造住宅で80㎡の場合、解体費用は150〜200万円程度必要です。

このように、相続した実家を放置することは、経済的・社会的に大きな負担となります。次のセクションでは、こうした問題を回避するための具体的な活用方法について見ていきましょう。

相続した実家の5つの活用方法

実家を相続したものの、自分も子どもも住む予定がない場合、どのような選択肢があるのでしょうか?以下に5つの活用方法とそれぞれのメリット・デメリットを解説します。

1. 売却して現金化する

最もシンプルな選択肢は、相続した実家を売却して現金化することです。

メリット:

  • 資金化による自由度の向上:売却代金を得ることで、自分の住宅ローン返済や子どもの教育費など、より優先度の高い支出に充てることができます。不動産会社の調査によれば、相続した実家の売却資金の使途として最も多いのは「自宅のローン返済」(32%)、次いで「老後資金」(28%)、「子どもの教育資金」(21%)となっています。
  • 維持管理の負担からの解放:固定資産税や修繕費などの継続的なコストから解放されます。相続した時点で築年数が経っている場合、将来的な大規模修繕や設備更新のリスクも回避できます。
  • 相続税の納税資金の確保:相続税の支払いが必要な場合、その資金を確保できます。相続税の申告期限は相続開始から10ヶ月以内と短いため、納税資金の確保は重要な課題です。

デメリット:

  • 感情的な喪失感:思い出が詰まった実家を手放すことへの感情的な抵抗が大きい場合があります。
  • 将来の不動産価値上昇の機会損失:立地条件によっては、将来的に不動産価値が上昇する可能性を失うことになります。特に都市部の好立地物件では、長期的には価値が上昇するケースもあります。
  • 売却時の税金負担:3,000万円の特別控除を超える譲渡所得がある場合、所有期間に応じた譲渡所得税(長期譲渡所得税:20.315%、短期譲渡所得税:39.63%)がかかります。

売却の適したタイミング: 築年数が浅い(20年以内)、または立地条件が良く需要が見込める物件は早めの売却が有利です。不動産は築年数が経つほど価値が下がる傾向にあるため、「様子を見る」という選択が結果的に大きな損失につながることもあります。不動産鑑定士の意見では、相続してから3年以内に売却を決断するのが理想的とされています。

2. 賃貸物件として運用する

実家を賃貸物件として活用することで、定期的な収入を得ながら資産を維持する方法もあります。

メリット:

  • 定期的な家賃収入:立地条件や物件の状態にもよりますが、定期的な収入源となります。例えば、東京都内の70㎡程度の戸建て住宅では、月額10〜15万円程度の家賃収入が見込めるケースもあります。
  • 資産価値の維持:人が住むことで適切な管理がなされ、空き家による急速な劣化を防げます。
  • 将来的な選択肢の確保:売却せずに保有しておくことで、将来的に市場状況が改善した時点での売却や、子どもが成長して住む可能性が出てきた場合の活用など、選択肢を残しておけます。

デメリット:

  • 初期投資の必要性:賃貸に出すためには、リフォームや設備更新が必要になることが多く、数百万円の初期投資が必要になるケースもあります。不動産会社の調査によれば、相続した実家を賃貸に出す場合の平均リフォーム費用は300〜500万円程度とされています。
  • 管理の手間とコスト:入居者対応、修繕、家賃収受など、管理業務が発生します。管理会社に委託する場合、家賃の5〜10%程度の管理費がかかります。
  • 空室リスク:立地条件や物件の魅力によっては、長期間の空室が生じるリスクがあります。特に地方の実家では、賃貸需要が限られている場合もあります。

賃貸運用に適した物件の条件: 最寄り駅から徒歩10分以内、または主要なバス停から徒歩5分以内の物件で、築年数が30年以内であれば、賃貸運用の検討の余地があります。また、周辺に学校や職場が多い地域も、安定した賃貸需要が見込めます。

3. 民泊やシェアハウスとして活用する

通常の賃貸よりも高収益を目指す方法として、民泊やシェアハウスとしての活用があります。

メリット:

  • 高い収益性:通常の賃貸よりも高い収益を得られる可能性があります。特に観光地や大学周辺などでは、民泊は通常賃貸の1.5〜2倍の収益が見込めるケースもあります。
  • 短期の契約:民泊の場合、長期契約ではないため、将来的に用途変更しやすいという利点があります。
  • 空き部屋の有効活用:部屋数が多い実家の場合、シェアハウスにすることで空間を有効活用できます。

デメリット:

  • 法的規制の複雑さ:民泊は「住宅宿泊事業法(民泊新法)」に基づく届出が必要で、年間提供日数の上限(180日)や、地域によっては条例による規制もあります。
  • 大規模なリノベーション費用:シェアハウスにする場合、共有スペースの確保や各個室のセキュリティ対策など、大規模なリノベーションが必要になることが多いです。シェアハウスへの改修費用は、規模にもよりますが500万円〜1,000万円程度かかるケースが一般的です。
  • 運営の手間:民泊は入退去が頻繁で、清掃やキー管理、トラブル対応などの運営業務が発生します。専門の運営会社に委託する場合、収益の30%前後の手数料がかかることも。

民泊・シェアハウスに適した条件: 観光地や大学周辺、ビジネス街に近い立地で、アクセスの良い物件が適しています。また、個室数が多い間取りや、共有スペースを確保できる広さがあることも重要です。

4. 福祉施設や地域の拠点として活用する

社会貢献と資産活用を両立させる方法として、福祉施設や地域の交流拠点としての活用があります。

メリット:

  • 社会的意義:高齢者向けのグループホームやデイサービス、児童向けの学童保育や子育て支援施設など、地域に貢献できる施設として活用できます。
  • 安定した収益:福祉施設として賃貸する場合、長期契約が多く、安定した収益が見込めます。
  • 税制優遇の可能性:NPO法人などに貸し出す場合、一定の条件を満たせば税制優遇を受けられる場合があります。

デメリット:

  • 用途変更の手続き:住居から福祉施設への用途変更には、建築基準法上の手続きや、場合によっては大規模な改修が必要になります。
  • 専門知識の必要性:福祉施設として活用する場合、関連法規や補助金制度についての専門知識が必要です。
  • 初期投資の大きさ:バリアフリー化や防火設備の強化など、施設基準を満たすための改修費用が高額になることがあります。

福祉施設等に適した条件: バリアフリー化しやすい構造(平屋や低層)で、駐車スペースが確保できる物件が適しています。また、周辺に類似施設が少なく、需要が見込める地域であることも重要です。

5. 解体して土地のみを活用する

建物の状態が悪い場合や、立地の良い土地では、建物を解体して土地のみを活用する選択肢もあります。

メリット:

  • 土地の価値最大化:築年数の経った建物は資産価値を下げることがあるため、解体することで土地の価値を最大化できることがあります。
  • 活用の自由度向上:更地にすることで、売却、賃貸、自己使用など、様々な選択肢が広がります。
  • 維持管理コストの削減:建物の修繕費や火災保険料などのコストが不要になります。

デメリット:

  • 解体費用の負担:木造住宅で80㎡の場合、解体費用は150〜200万円程度必要です。鉄筋コンクリート造の場合はさらに高額になります。
  • 固定資産税の増加:住宅用地に対する固定資産税の特例(最大1/6に軽減)が適用されなくなり、税負担が増加します。例えば、東京都内の100㎡の土地の場合、建物がある状態では年間約6万円の固定資産税が、更地になると約30万円に跳ね上がるケースもあります。
  • 感情的な喪失:思い出の詰まった家を解体することへの感情的な抵抗が大きい場合があります。

解体が適した条件: 築40年以上で大規模修繕が必要な建物や、立地は良いが建物の状態が悪い物件は、解体して土地活用を検討する価値があります。特に再建築不可の土地では、現在の建物を維持するか慎重に判断する必要があります。

以上の5つの選択肢から、相続した実家の状況や自分の経済状況、将来計画に合わせて最適な活用方法を選ぶことが重要です。次のセクションでは、親の家を相続する前に考えておくべきことについて解説します。

親の家を相続する前に考えておくべきこと

実家の相続問題は、発生してから対応を考えるのではなく、前もって家族間で話し合い、準備しておくことが重要です。以下に、親の家を相続する前に考えておくべきポイントを解説します。

家族での話し合いの重要性

実家の将来について、親が元気なうちに家族で話し合うことは非常に重要です:

  1. 親の意向を確認する:親自身が実家をどうしたいと思っているのかを確認しましょう。「子どもに住んでほしい」「売却して現金化してほしい」など、親の希望を把握することが第一歩です。相続コンサルタントの調査によれば、親の意向を把握している家族は、相続トラブルの発生率が70%低下するという結果も出ています。
  2. 兄弟姉妹間での認識共有:将来的に誰が実家に住む可能性があるのか、維持費用はどう分担するのかなど、兄弟姉妹間での認識を共有しておくことが重要です。特に遠方に住んでいる家族がいる場合、実家の管理や処分についての考え方に違いが生じやすいため、早めの話し合いが必要です。
  3. 話し合いの進め方:以下のようなステップで進めると効果的です:
    • まず、親の意向を尊重した上で、各自の考えを共有する
    • 実家の現状(築年数、修繕状況、周辺環境の変化など)を客観的に評価する
    • 各自の将来計画(住居予定、経済状況など)を考慮する
    • 複数の選択肢を検討し、メリット・デメリットを比較する
    • 定期的に再検討する機会を設ける

家族間の話し合いは、一度で結論を出す必要はありません。時間をかけて、様々な可能性を検討することが大切です。

実家の資産価値を正確に把握する

相続判断の重要な要素として、実家の正確な資産価値を把握することが挙げられます:

  1. 不動産鑑定の活用:不動産会社の無料査定や、より正確な評価が必要な場合は不動産鑑定士による鑑定評価(10万円〜20万円程度)を受けることで、実家の市場価値を把握できます。ただし、査定額は不動産会社によって最大で20〜30%ほど差がつくことがあるため、複数の会社に査定を依頼することをおすすめします。
  2. 土地と建物の価値を区別する:多くの場合、築年数が経った建物は資産価値が低く、価値の大部分は土地にあります。例えば、築30年以上の木造住宅では、建物の評価額は建築費用の10〜20%程度まで下がっているケースが一般的です。
  3. 周辺環境の将来性を評価する:実家周辺の開発計画、人口動態、高齢化率などを調査することで、将来的な価値変動を予測する材料になります。例えば、新駅の開発計画がある地域では不動産価値の上昇が期待できる一方、過疎化が進む地域では今後も価値が下落する可能性が高いです。
  4. 再建築不可物件の確認:旧耐震基準の住宅や、接道義務を満たさない住宅は「再建築不可」となっている可能性があります。この場合、建物の老朽化後に新しい建物を建てることができず、資産価値が大きく制限されます。相続前に確認しておくべき重要なポイントです。

相続税と維持費用のシミュレーション

実家を相続する際の税金や、その後の維持費用を事前に計算しておくことで、現実的な判断が可能になります:

  1. 相続税の試算:相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える不動産価値がある場合、相続税がかかります。例えば、実家の評価額が5,000万円で、法定相続人が配偶者と子2人の場合、基礎控除額は4,800万円となるため、200万円に対して相続税が課税されます。税率は10〜55%の累進課税で、この例では10%の税率が適用され、20万円の相続税となります。
  2. 小規模宅地等の特例の検討:被相続人の居住用の宅地(330㎡まで)については、相続税評価額を80%減額できる「小規模宅地等の特例」が適用できる場合があります。ただし、相続後3年以内に売却すると、この特例が遡及的に適用されなくなるため注意が必要です。
  3. 年間維持費用の計算:実家を維持する場合の年間コストを計算しておきましょう。具体的には:
    • 固定資産税・都市計画税:評価額の1.4%〜2.1%程度(地域により異なる)
    • 火災保険料:年間2〜5万円程度
    • 修繕積立金:年間建物価値の1%程度を目安に
    • 水道光熱費:最低限の管理のために月5,000円程度
    • 定期的な清掃・メンテナンス費:年間5〜10万円程度
  4. 将来的な大規模修繕費用の見積もり:屋根や外壁の塗装(10年ごと:100〜200万円)、給排水管の交換(20〜30年ごと:100〜300万円)、設備更新(15〜20年ごと:100〜200万円)など、将来的に必要となる大規模修繕費用も考慮しておく必要があります。

相続前にできる対策

親が元気なうちに、以下のような対策を検討することで、将来の相続をスムーズにすることができます:

  1. 生前贈与の活用:年間110万円までの贈与は非課税となる制度を利用し、計画的に親から子へ資産を移転する方法があります。例えば、実家の共有持分を生前に少しずつ贈与することで、相続税の負担を軽減できる場合があります。
  2. 家族信託の検討:認知症などで親が判断能力を失った場合に備え、家族信託を設定しておくと、不動産の管理・処分権限を子などの信頼できる人に委託できます。これにより、成年後見制度を利用する場合に比べて、柔軟な不動産活用が可能になります。設定費用は30〜50万円程度ですが、将来的なトラブル防止に有効です。
  3. 遺言書の作成サポート:親の意向を明確にするために、遺言書の作成をサポートしましょう。特に複数の相続人がいる場合や、実家以外の資産も含めた総合的な相続プランを検討する場合に有効です。公正証書遺言の作成費用は10〜30万円程度ですが、相続トラブル防止の観点からは費用対効果の高い対策といえます。
  4. 不動産の共有を避ける対策:相続で最も問題が生じやすいのは、複数の相続人による不動産の共有状態です。遺産分割協議で、可能な限り不動産は一人が相続し、他の相続人には別の資産で調整する方針を検討しておくことが望ましいでしょう。
  5. 定期的な実家の手入れ:親が元気なうちから、定期的に実家の手入れを行い、資産価値の維持に努めることも重要です。特に高齢の親が一人で住んでいる場合、気づかないうちに家の傷みが進行していることがあります。子ども世代が定期的に訪問し、必要な修繕を行うことで、将来的な資産価値の急激な低下を防ぐことができます。

このように、親が元気なうちから実家の相続について家族で話し合い、準備を進めることで、将来的な負担やトラブルを大きく減らすことが可能です。

まとめ:後悔しない実家相続の選択肢

ここまで、実家を相続したものの子どもが住む予定がない場合の問題点や、具体的な活用方法、相続前に考えておくべきことについて解説してきました。最後に、後悔しない実家相続のための考え方をまとめます。

感情と経済合理性のバランス

実家の相続では、感情的な価値と経済的合理性のバランスを取ることが重要です:

  1. 思い出の価値を認識する:実家には家族の思い出が詰まっており、その感情的価値は経済的価値に換算できないものです。しかし、感情だけで判断すると、将来的な負担が大きくなる可能性があります。心理学的研究によれば、実家への過度の感情的執着が「合理的な判断を妨げる最大の要因」とされています。
  2. 経済的合理性を考慮する:感情的価値を認めつつも、維持費用や機会損失など、経済的な側面も考慮しましょう。特に子どもが住む予定がない場合、長期的な維持は資産としての効率が悪いケースが多いです。ファイナンシャルプランナーの試算では、築35年以上の実家を維持するよりも売却して資金運用する方が、20年後の資産価値が平均で40%以上高くなるというデータもあります。
  3. 将来の負担を考える:実家を維持することで、自分や子ども世代に将来的な負担を残す可能性があることも考慮すべきです。特に地方の物件では、時間の経過とともに売却自体が困難になるケースもあります。

専門家の活用と情報収集

実家の相続や活用については、専門家のアドバイスを受けることで選択肢が広がります:

  1. 不動産のプロに相談する:不動産会社や不動産鑑定士に相談することで、客観的な市場価値や活用可能性について助言を得られます。特に、複数の不動産会社の意見を聞くことで、より多角的な視点を得ることができます。
  2. 税理士・ファイナンシャルプランナーへの相談:相続税対策や資産活用については、税理士やファイナンシャルプランナーに相談することで、税制面や資金計画面でのアドバイスを受けられます。相続税の申告期限は10ヶ月と短いため、早めの相談が重要です。
  3. 自治体の空き家対策窓口の活用:多くの自治体では、空き家対策の専門窓口を設置しています。補助金制度や活用事例など、地域特有の情報を得ることができます。国土交通省の調査によれば、自治体によっては空き家のリフォーム費用の最大50%(上限100万円)を補助する制度もあります。
  4. 最新の制度や市場動向のチェック:不動産市場や税制は常に変化しています。定期的に情報をアップデートすることで、最適な判断ができます。特に相続税制度は頻繁に改正されるため、最新情報の収集が重要です。

時間軸を考慮した決断

実家の相続問題は、時間の経過とともに選択肢が狭まる傾向があります:

  1. 早期決断のメリット:相続後、時間が経過するほど建物の劣化が進み、資産価値は低下します。国土交通省のデータによれば、木造住宅の場合、相続後5年放置すると市場価値が平均25%低下するとされています。特に売却を検討する場合は、早めの決断が有利です。
  2. 段階的な計画の立案:「すぐに売却」「しばらく賃貸運用してから売却」など、時間軸を考慮した段階的な計画を立てることで、柔軟な対応が可能になります。不動産コンサルタントの間では「3年ルール」という考え方があり、相続後3年以内に今後の方針を決定することが推奨されています。
  3. 定期的な見直し:一度決めた方針も、家族の状況や不動産市場の変化に応じて定期的に見直すことが大切です。特に賃貸運用を選択した場合は、収支状況や物件の劣化状況を踏まえて、毎年見直すことをおすすめします。

最適な選択のための5つの問いかけ

実家の相続について悩んでいる方は、以下の5つの問いかけを自分自身に投げかけてみてください:

  1. 10年後、自分や子どもが実家に住む可能性は本当にあるか? 実家に対する漠然とした「いつか住むかもしれない」という思いは、具体的な将来計画と照らし合わせると現実的でないことも多いです。家族会議で具体的な可能性を話し合いましょう。
  2. 実家を維持する年間コストを10年間払い続けられるか? 固定資産税や修繕費などの継続的なコストを10年分合計すると、かなりの金額になります。この資金を他の用途(自宅のローン返済や子どもの教育費など)に充てた方が有効な場合も多いです。
  3. 実家を相続した場合、自分の子どもはどうするだろうか? 自分が解決を先送りにすると、将来的に子どもに同じ悩みを残すことになります。相続専門の弁護士によれば「親の代で解決しなかった実家問題は、子の代ではさらに複雑化する」ケースが一般的だといいます。
  4. 実家に住まない選択をしても、親の思い出を大切にする方法はあるか? 実家を手放すことが、親の思い出を失うことではありません。家の中の大切な品々を引き継いだり、思い出の写真をアルバムにまとめたりするなど、物理的な家とは別の形で思い出を残す方法はたくさんあります。
  5. 今決断を先延ばしにすることで、将来どのようなリスクが生じるか? 「今は様子を見る」という選択が、実は最もリスクの高い選択肢である可能性があります。建物の劣化による資産価値の低下、将来的な売却困難化、管理負担の増大など、先延ばしのリスクを具体的に考えてみましょう。

最後に

実家の相続問題に正解はありません。それぞれの家族の状況や価値観に応じた最適解を見つけることが大切です。しかし、「決断を先延ばしにする」ことが最も避けるべき選択肢であることは間違いありません。

親が元気なうちから家族で話し合い、専門家のアドバイスも取り入れながら、計画的に準備を進めることで、将来の負担を軽減し、実家の価値を最大限に活かすことができます。実家に詰まった思い出や親の想いを大切にしながらも、次の世代に負担を残さない選択をすることが、親孝行の新しい形かもしれません。

あなたの実家相続の悩みが、この記事をきっかけに少しでも解決に向かうことを願っています。

   

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