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固定費を削減する!工務店の利益体質への改善

公開日: : 工務店 経営

工務店経営者の皆様、日々の経営活動、お疲れ様です。資材価格の高騰、人手不足、競争激化など、現在、建築業界を取り巻く環境は決して楽観視できるものではありません。どれだけ素晴らしい施工をしてお客様に喜ばれても、厳しい状況では、会社を継続的に発展させ、利益を改善していくことが難しくなります。

このような時代だからこそ、私たちは「攻め」と「守り」の両面で経営体質を強化していく必要があります。攻めは、新しい技術の導入や営業戦略の強化ですが、守りは、コスト管理の徹底に他なりません。特に、売上の増減に関わらず発生する「固定費」は、一度見直せば継続的な利益改善に直結する、非常に重要な要素です。

もちろん、固定費削減と聞くと、「人件費を削るのか?」「品質が落ちるのでは?」といった不安がよぎる経営者の方もいらっしゃるでしょう。しかし、本質的な目的は単なるコストカットではなく、無駄をなくし、生産性を向上させ、会社全体として利益体質を築き上げることです。そして、捻出したリソースを未来への投資や従業員への還元に使うことで、会社の持続的な成長と従業員の満足度向上を実現することにあります。

この記事では、工務店経営者の皆様が直面する「利益がなかなか増えない」という課題に対し、固定費という切り口から具体的な解決策を提示します。曖昧な精神論ではなく、すぐに実行できる実践的なステップとして、固定費の洗い出しから、項目別の具体的な削減策、そして削減効果を利益改善に繋げるための考え方、さらには継続的な改善体制の構築方法まで、網羅的に解説します。この記事を読み終える頃には、自社の固定費を見直す具体的なイメージが湧き、利益体改善に向けた最初の一歩を踏み出せるはずです。ぜひ最後までお読みいただき、貴社の更なる発展にお役立てください。

工務店の「固定費」を徹底解剖!見える化と削減の第一歩

1-1. 工務店における固定費とは?変動費との違いを理解する

利益改善を目指す上で、まず明確にしておくべきは「固定費」とは何か、そして「変動費」とどう違うかということです。工務店経営においては、これらの違いを正しく理解することが、効果的なコスト管理と利益改善の出発点となります。

固定費:売上の増減や施工量の多寡にかかわらず、ほぼ一定額発生する費用です。例えば、事務所の家賃、正社員の人件費(給与、社会保険料)、借入金の返済利息、減価償却費、通信費の基本料金、各種保険料などがこれにあたります。これらの費用は、たとえその月の売上がゼロだったとしても発生します。

変動費:売上や施工量に応じて金額が変動する費用です。主なものとしては、材料費、外注費(協力会社への支払い)、現場で発生する消耗品費、完成保証料、一部の手数料などが挙げられます。これらの費用は、工事を受注・実行する際に発生します。

なぜこの区別が重要かというと、利益改善の手法が固定費と変動費で異なるからです。変動費はひとつひとつの工事の採算管理(実行予算管理)によってコントロールしますが、固定費は経営全体のコスト構造に関わるため、組織全体での見直しと対策が必要です。特に固定費は、売上が伸び悩んだ時に利益を圧迫する大きな要因となるため、その削減は経営の安定化と利益体質強化に直結します。

【よくある疑問】

  • Q: 人件費は全て固定費ですか?
    A: 正社員の基本給や固定的な手当は固定費とみなすのが一般的です。しかし、残業手当や賞与のように業績や稼働状況によって変動する部分は変動費と捉えることもあります。また、短期雇用のパート・アルバイトの人件費や、歩合制の部分は変動費に近い性質を持ちます。自社の給与体系に合わせて適切に分類することが重要です。
  • Q: 広告宣伝費は固定費ですか?
    A: 定期的に支払いが発生するウェブサイトの保守費用や、年間契約の広告掲載料などは固定費とみなせます。一方、特定のイベント出展費用やリスティング広告費用のように、施策単位で金額が変動するものは変動費と捉えることも可能です。費用の性質によって判断が必要です。

1-2. なぜ工務店は固定費削減に取り組むべきなのか?利益改善との深い関わり

工務店経営における固定費削減は、単なる経費節約以上の意味を持ちます。これは、会社の収益構造そのものを改善し、どのような市場環境においても安定した利益を確保するための戦略的な取り組みです。利益改善を目指す上で、固定費削減がなぜこれほどまでに重要なのでしょうか。

  • 利益率の向上: 固定費は売上に関わらず一定額発生するため、売上に対する固定費の割合を下げることは、そのまま利益率の向上に繋がります。特に、売上が安定しない時期や、受注単価が低い場合に、固定費が低いほど利益を出しやすくなります。
  • 経営の安定化: 固定費が少ない会社は、景気変動や競争激化による売上減少の影響を受けにくくなります。いわゆる損益分岐点が低くなるため、リスク耐性の高い経営体質を築くことができます。
  • 将来への投資余力創出: 固定費を効率的に管理し、無駄を削減することで生まれた資金は、新しい工法や技術の導入、人材育成、マーケティング強化など、会社の将来的な成長に向けた投資に充てることができます。これがさらなる利益改善のサイクルを生み出します。

変動費の削減は工事ごとの個別の努力に左右されますが、固定費の削減は一度仕組みを構築して効果が出始めると、その効果が継続的に現れます。まさに「効かせたら止まらない」利益改善の特効薬となる可能性を秘めているのです。

1-3. 固定費を見える化する実践ステップ

固定費削減の第一歩は、「現状の固定費を正確に把握し、見える化する」ことです。漠然と「経費が多いな」と感じているだけでは、どこに手を付けて良いか分かりません。以下のステップで、自社の固定費を徹底的に洗い出しましょう。

ステップ1:全ての支出項目をリストアップする
過去1年間の会計データ(仕訳帳や総勘定元帳)を用意し、発生した全ての支出項目を漏れなくリストアップします。クラウド会計ソフトを利用している場合は、データの出力や分析が比較的容易に行えます。

ステップ2:固定費と変動費に分類する
リストアップした各支出項目が「固定費」なのか「変動費」なのかを判断し、分類していきます。1-1で述べた定義を参考に、自社の状況に合わせて適切に分類してください。判断に迷う項目は、「準固定費(売上増減に比例はしないが、ある段階を超えると増える費用)」のように暫定的に分類し、後で検討しても構いません。

ステップ3:固定費を詳細な費目に分ける
分類した固定費を、さらに具体的な費目に分けます。例えば、人件費、地代家賃、水道光熱費、通信費、車両費、リース料、保険料、支払利息、減価償却費、外注費・業務委託費の一部、広告宣伝費の一部、会議費、旅費交通費の一部、消耗品費・事務用品費の一部、などです。細かく分けることで、どの費目が大きな割合を占めているのか、どこに削減の余地がありそうかが見えてきます。

ステップ4:各費目の金額を集計し、割合を算出する
過去1年間の費目ごとの合計金額を集計し、固定費全体の合計額に対する各費目の割合を算出します。可能であれば、過去数年分のデータと比較することで、増減の傾向を把握できます。さらに、理想的な固定費の割合(ベンチマーク)と比較してみるのも良いでしょう。ただし、企業の規模やビジネスモデルによって適切な割合は異なるため、あくまで参考としてください。

ステップ5:課題と削減ポテンシャルを特定する
集計結果を基に、「どの費目が全体の固定費を圧迫しているか」「過去からの増加傾向があるか」「他社と比較して極端に高い費目はないか」などを分析し、削減の優先順位を付けていきます。この「見える化」のプロセスによって、漠然としていた「経費が多い」という課題が、具体的な「人件費が高い」「車両費がかかりすぎている」「無駄なリース契約がある」といった具体的な課題として明確になります。これが、次の具体的な利益改善アクションに繋がります。

利益改善の決め手!項目別・工務店のための具体的な固定費削減策

固定費の「見える化」ができたら、次はいよいよ個別の項目に対する具体的な削減策を実行に移す段階です。ここでは、工務店で特に大きな割合を占めやすい固定費を中心に、具体的なアクションプランをご紹介します。これらの実践的な取り組みが、貴社の利益改善をさらに加速させます。

2-1. 人件費の見直し:単なる削減ではない未来への投資

人件費は固定費の大部分を占めることが多く、真っ先に「削減対象」と考えられがちです。しかし、従業員は会社の財産であり、闇雲なコストカットは従業員の士気を低下させ、離職率を高めるなど、長期的に見れば会社に大きなダメージを与えかねません。ここでの人件費の見直しは、「無駄なコストを削減し、捻出したリソースを生産性向上や人材育成に繋げ、結果として人件費の費用対効果を高める」という視点が重要です。

具体的なアクション:

  1. 残業時間の徹底削減:残業代は固定費の中でも変動しやすい部分ですが、計画的な業務管理で削減可能です。
    • ✓ 各従業員の業務内容と時間配分を見える化する(タスク管理ツールの導入など)。
    • ✓ 業務の優先順位付けルールを明確にし、不急な業務による残業をなくす。
    • ✓ 定時退社を推奨・徹底する企業文化を醸成する。経営者自身が率先して取り組む。
    • ✓ 繁忙期と閑散期を予測し、年間を通して業務負荷の平準化を図る。
  2. ムダな採用計画の見直し:退職者補充や増員時には、本当にそのポジションが必要か、業務効率化で対応できないかを慎重に検討します。
    • ✓ 既存従業員のスキルアップや多角化で、新たな人員が必要か検討する。
    • ✓ 一時的な業務量増加は、業務委託やパート・アルバイト活用で対応できないか検討する。
  3. 評価制度と給与体系の見直し:成果や貢献度に応じたメリハリのある評価制度を導入し、従業員のモチベーションと生産性向上を促します。
    • ✓ 公平で透明性のある評価基準を設ける。
    • ✓ 生産性向上に繋がる資格取得支援や研修制度を充実させる。
    • ✓ (難易度は高いですが)成果連動型の一部導入を検討する。
  4. 業務効率化ツールの導入検討:管理業務、申請業務、情報共有などを効率化するツールの導入は、初期費用やランニングコスト(固定費)がかかりますが、長期的に見れば従業員一人あたりの生産性を高め、結果として人件費負担率を下げる効果が期待できます。

人件費の見直しはデリケートな問題です。従業員への丁寧な説明と、取り組みの目的(会社の安定と個人の成長のため)を明確に伝えることが不可欠です。

2-2. 家賃・オフィス費用の削減:働く場所の最適化

事務所の家賃やそれに付随する光熱費、維持費なども、工務店にとって大きな固定費です。これらのコストも工夫次第で削減が可能です。

具体的なアクション:

  1. 物理的な拠点見直し:
    • ✓ 現在のオフィスが本当に必要な広さ・立地か再検討する。
    • ✓ 在宅勤務やリモートワークを一部導入し、オフィス面積を縮小できないか検討する(設計、積算、事務部門など)。
    • ✓ 地方や郊外への移転も選択肢に入れる(ただし、顧客へのアクセスや採用への影響も考慮)。
    • ✓ 必要最低限の機能を持つサテライトオフィスや、シェアオフィス・コワーキングスペースの活用を検討する。
  2. 光熱費・通信費の削減:
    • ✓ 電力会社やガスの契約プランを見直す。より安価な新電力への切り替えを検討する。
    • ✓ LED照明への交換、省エネ家電への買い替えを進める。
    • ✓ オフィス内の省エネ意識を高める(こまめな消灯、空調温度設定の徹底など)。
    • ✓ 固定電話回線やインターネット回線の契約プランを見直し、不要なオプションを解約する。
    • ✓ 法人向け携帯電話の契約プランを見直す。
    • ✓ クラウドPBXなど、より効率的で安価な通信システムの導入を検討する。
  3. 印刷コスト削減:
    • ✓ ペーパーレス化を推進し、印刷量を削減する。
    • ✓ 両面印刷、集約印刷を徹底する。
    • ✓ トナー代の安い互換品を検討する(品質に注意)。
    • ✓ プリンター・複合機のリース契約を見直し、自社での購入と比較検討する。

家賃削減は移転を伴うためハードルが高いかもしれませんが、光熱費や通信費の見直しはすぐに取り組める可能性があります。小さな積み重ねが大きな利益改善に繋がります。

2-3. 車両費・リース費用・保険料の見直し:隠れたコストを見つける

工務店では、現場への移動や資材運搬などで多くの車両が必要です。また、様々な機材のリースや、リスクに備える保険も多額の費用が発生します。これらのコストも定期的な見直しが必要です。

具体的なアクション:

  1. 車両費の最適化:
    • ✓ 現在保有する車両が本当に全て必要か、稼働状況を確認する。
    • ✓ 購入、カーリース、レンタカー、カーシェアリングのどれが自社にとって最も効率的か比較検討する。
    • ✓ 燃費の良いエコカーや、維持費の安い軽自動車への切り替えを検討する。
    • ✓ 現場への移動ルートを最適化し、無駄な燃料費・人件費を削減する。
    • ✓ 定期的なメンテナンスを徹底し、故障による大きな修理費発生を予防する。
    • ✓ 不要になった車両は早めに売却する。
  2. リース契約の見直し:
    • ✓ オフィス機器(コピー機、PCなど)、建設機械、車両などのリース契約内容を全てリストアップする。
    • ✓ 各契約の必要性、金額、契約期間、解約条件を確認する。
    • ✓ 同様の機器を新規で購入した場合、レンタルした場合とのコストを比較検討する。
    • ✓ 高額なリース契約は、複数の業者から相見積もりを取る。
    • ✓ 不要になった機器のリース契約は速やかに解除する。
  3. 保険料の見直し:
    • ✓ 加入している各種保険(火災保険、賠償責任保険、労災保険、車両保険など)の補償内容を全て確認する。
    • ✓ 過不足、重複している補償はないかチェックする。
    • ✓ 複数の保険会社の料金や補償内容を比較検討し、より条件の良い保険に切り替える。
    • ✓ 自己負担額(免責金額)の設定変更で保険料を削減できないか検討する(リスク許容度に応じて)。
    • ✓ 保険代理店と密に連携し、常に最適なプランを相談する。

これらの費用は、一度契約すると惰性で見過ごされがちですが、定期的に棚卸しを行うことで大きな利益改善効果を得られる可能性があります。特にリース契約は、契約期間終了前に再検討することで、条件の良い再契約や購入への切り替えが検討できます。

2-4. その他の固定費削減:地道だが効果的な取り組み

大きな項目以外にも、様々な固定費が潜んでいます。地道な見直しによって、これらも着実に削減していくことが、全体の利益改善に繋がります。

具体的なアクション:

    1. 消耗品費・事務用品費の見直し:
      • ✓ 無駄な購入を防ぐため、購買プロセスのルールを決める(申請制、担当者制など)。
      • ✓ オフィス用品、現場消耗品の一括購入や、安価なネット通販・量販店の利用を検討する。
      • ✓ 不必要な備品や消耗品のリストアップと発注停止。
    2. 借入金利息の見直し:
        • ✓ 複数の金融機関を比較し、より低金利での借り換えを検討する。
        ✓ 可能であれば、繰り上げ返済を行い、返済期間と利息負担を減らす。
    3. 会費・購読料の見直し:
        • ✓ 加入している業界団体や組合、購読している新聞・雑誌、利用している有料サービスなどをリストアップする。
        ✓ それぞれが本当に必要か、費用対効果が見合っているか再検討し、不要なものは解約する。
    4. 広告宣伝費の一部見直し:
        • ✓ 効果測定が難しいオフライン広告(地域誌広告、看板など)について、費用対効果を改めて検証する。
        ✓ 効果の低いものや、目的が曖昧な広告支出は削減・停止を検討する。

✓ デジタル広告など、より効果測定がしやすく、ターゲットを絞れる手法へのシフトを検討する(ランニングコストはかかりますが、費用対効果を高める目的で)。

細かな項目かもしれませんが、塵も積もれば山となります。全従業員がコスト意識を持ち、小さな無駄にも気づけるような組織文化を醸成することも重要です。

【Q&A】固定費削減に関するよくある疑問

Q: 固定費削減は、サービスの質低下に繋がらないですか?
A: 目的は「無駄の削減」であり、「質を下げること」ではありません。例えば、不要な事務作業を効率化して人件費の費用対効果を高めることは、サービスの質とは直接関係ありません。資材の品質保証や現場管理に必要な費用は変動費であり、そちらを削ることは別のリスクを生みます。固定費削減は、あくまで会社の「間接コスト」に焦点を当てるべきです。

Q: 従業員が固定費削減に非協力的だったらどうすれば良いですか?
A: 固定費削減の目的と重要性を経営者自身が従業員にしっかりと説明することが不可欠です。これは「給料を減らすため」「ケチるため」ではなく、「会社の永続的な発展のため」「皆さんが安心して働ける環境を作るため」「生まれた利益を皆さんに還元するため」であることを明確に伝えましょう。従業員からの改善提案を募るなど、当事者意識を持たせる工夫も有効です。

Q: どこまで削減すれば良いか分かりません。目安はありますか?
A: 一律の絶対的な目安はありません。業界平均や競合他社のデータは参考になりますが、最も重要なのは「自社の事業計画に必要な活動に支障が出ない範囲で、最大限の効率化を目指す」という視点です。削減を急ぎすぎて必要な投資や従業員満足度を損なっては本末転倒です。削減目標は、事業計画や損益分岐点分析に基づいて定量的に設定するのが望ましいです。

削減効果を最大化し、利益体質を定着させる継続的な取り組み

固定費の見える化と具体的な削減策の実行は、利益改善に向けた強力な一歩です。しかし、これは一時的な対策に過ぎません。真の利益体質を築くためには、これらの取り組みを一時的なイベントで終わらせず、継続的な経営改善活動として定着させることが不可欠です。ここでは、削減効果を測定し、さらに効果を最大化するための仕組みづくりと、継続的な改善活動の重要性について解説します。

3-1. 削減効果の測定と評価:数字で見る利益改善の成果

固定費削減の取り組みがどれだけ効果があったのかを正確に把握することは、達成感を得るためだけでなく、次の改善策を検討し、関係者のモチベーションを維持するためにも非常に重要です。

具体的なアクション:

  1. 目標設定と実績の対比:削減活動を開始する前に、「いつまでに、どの費目を、いくら削減するか」という具体的な目標を設定しておきます。数ヶ月後、半年後、1年後などに、設定した目標に対して実績がどうだったのかを定量的に評価します。
  2. 損益計算書を活用した効果測定:削減に取り組んだ期間の損益計算書を作成し、前年同期や目標値と比較します。特に、売上総利益は変わらないのに営業利益が増加している場合は、固定費削減の成果が出ている証拠です。損益分岐点売上高が低下しているかどうかも確認することで、経営の安定性が向上しているか評価できます。
  3. 費用項目ごとの分析:削減に取り組んだ各固定費項目(家賃、通信費、車両費など)について、削減前と削減後の金額を比較します。具体的な削減額を把握することで、どの取り組みが効果的だったのか、どの費目にまだ削減の余地があるのかを分析できます。
  4. 従業員一人あたり、または売上高あたりの固定費比率を見る:これらの指標を追跡することで、生産性向上や経営効率の改善効果が数値として現れているかを確認できます。全体として固定費が下がっていなくても、売上や従業員が増加している中でこれらの比率が維持・改善されていれば、一定の成果と言えます。

これらの数値データは、経営会議や部門責任者とのミーティングで共有し、取り組みの成果や課題を全員で認識することが、継続的な利益改善に向けた意識を高めます。

3-2. 継続的な管理体制の構築:習慣としてのコスト意識

一度の固定費削減で満足するのではなく、コスト意識を組織全体の文化とし、継続的に固定費を管理・見直す体制を構築することが、持続的な利益改善には不可欠です。

具体的なアクション:

  1. 定期的な固定費見直し会議の実施:月に一度、または四半期に一度など、定期的に固定費の見直しを行う会議を設定します。経営層だけでなく、経理担当者や各部門の責任者を巻き込み、現状報告、課題検討、次のアクション決定を行います。
  2. 部門ごとの予算管理と権限移譲:各部門に予算管理の責任を持たせ、コスト意識を高めます。一定の金額までは部門責任者の判断で購入できるが、それ以上は承認が必要、といったルールを設けることで、自律的なコスト管理を促します。
  3. 経費精算システムの導入とルールの徹底:クラウド型の経費精算システムを導入し、経費処理の効率化と透明化を図ります。経費規定を明確にし、全従業員に周知徹底することで、無駄な経費発生を抑制します。
  4. コスト意識向上のための社内研修・啓蒙活動:単に「節約しろ」と言うだけでなく、なぜコスト管理が重要なのか、自分の業務がコストにどう影響するのかを理解してもらうための研修や、社内報での情報共有などを行います。「固定費を削減することで、利益を改善し、その利益が皆さんの給与や会社の未来への投資に繋がる」というポジティブなメッセージを繰り返し伝えます。
  5. ITツールの継続的な活用:会計システム、経費精算システム、プロジェクト管理ツール、勤怠管理ツールなど、業務効率化に役立つITツールを継続的に活用し、データに基づいた意思決定や無駄の発見に繋げます。必要に応じて、より高機能なシステムへの移行や、新たなツールの導入を検討します。

これらの体制構築は、時間を要するかもしれませんが、一度仕組みができれば、日々の業務の中で自然とコスト意識が働き、常に無駄の排除や効率化を考える組織へと変化していきます。これは、工務店の利益体質を盤石なものにするための基盤となります。

3-3. 削減だけではない、売上向上との両立:利益改善の最適なバランス

固定費削減は利益改善の強力な手段ですが、それだけでは会社の成長には限界があります。重要なのは、固定費削減で生まれた経営資源(資金、時間、人材の余裕)を、どのように売上向上や生産性向上に繋げるかという視点です。攻めと守りのバランスが、真の利益体質を築きます。

例えば、通信費や事務用品費を節約して生まれた資金を、新しいお客様を獲得するためのウェブマーケティング費用に充てる。残業時間を削減して生まれた従業員の時間を、新しい建築技術やデザインの学習、顧客満足度向上のためのサービス改善に使う。こうした前向きな投資によって、売上を増やし、顧客単価を上げ、生産性を向上させることが、固定費削減効果をさらに高め、利益改善の幅を広げます。

また、固定費を削減しすぎると、必要な設備投資ができなかったり、優秀な人材を確保・維持できなかったりして、結果として生産性が落ち、売上を落とすリスクもあります。何でもかんでも削るのではなく、「これは将来の利益に繋がる固定費なのか?」「これは事業継続に不可欠な固定費なのか?」といった視点で、賢く固定費をコントロールすることが重要です。

利益改善は、固定費削減と売上向上の両輪で初めて実現されます。自社の状況に合わせて、常に最適なバランスを追求する姿勢が求められます。

まとめ

この記事では、工務店経営者様が直面する利益改善の大きな課題に対し、固定費の見直しという切り口から、その重要性、見える化の方法、そして具体的な削減策、さらには効果測定と継続的な取り組みの重要性まで、実践的な視点で解説しました。冒頭で提起した「利益がなかなか増えない」という悩みは、固定費という聖域にメスを入れることで、必ず突破口が見つかるはずです。

固定費を削減することは、単に支出を減らすことではありません。それは、会社のコスト構造を根本から見直し、無駄を排除し、より効率的で生産性の高い組織へと生まれ変わるための経営戦略です。人件費の見直しは生産性向上、家賃・オフィス費用の見直しは効率的な働き方、車両費・リース料・保険料の見直しは無駄な支出のカットとリスク管理の最適化に繋がります。これらの地道な努力が積み重なることで、売上が多少変動しても安定した利益を確保できる、強固な利益体質が構築されます。

重要なのは、「見える化」から始まり、具体的な「アクション」を実行し、その「効果を測定」し、「継続的な仕組み」として定着させることです。この記事で紹介した具体的なステップや項目別の削減策は、貴社が明日からすぐにでも取り組めることばかりです。まずは一歩踏み出し、自社の固定費を徹底的に洗い出すことから始めてください。

固定費削減によって生まれた時間と資金は、次の成長への大きな力となります。新しい技術の習得、優秀な人材の育成、地域社会への貢献活動など、会社とそこで働く人々の未来を豊かにするために活かしてください。利益改善は、経営者だけでなく、全従業員の幸福に繋がる取り組みです。この記事が、貴社のさらなる発展と、持続可能な利益体質の実現に向けた確かな一歩となることを心から願っています。

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浄法寺 亘

工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。 今動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」 ※8月実施予定。 住宅サイトの運営もしています。 福島県 喜多方市出身 県立会津高校卒 市立高崎経済大学卒 著書: 頼みたくなる住宅営業になれる本 https://x.gd/oatiM SDGsに取り組もう 建築業界編 https://x.gd/MXYJr とっておきの見込み客発掘法 https://x.gd/001or 主な講演: 鹿児島県庁主催「かごしま緑の工務店研修会」 リードジャパン主催「工務店支援エキスポ」(東京ビックサイト) 育英西中学校 その他住宅FCなど 活動実績 2019~ 千葉県にて里山竹林整備ボランティア 2020~ 木ッズ絵画コンクール
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浄法寺 亘

工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。
今動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」
※8月実施予定。
住宅サイトの運営もしています。

福島県 喜多方市出身
県立会津高校卒
市立高崎経済大学卒

著書:
頼みたくなる住宅営業になれる本
https://x.gd/oatiM
SDGsに取り組もう 建築業界編
https://x.gd/MXYJr
とっておきの見込み客発掘法
https://x.gd/001or

主な講演:
鹿児島県庁主催「かごしま緑の工務店研修会」
リードジャパン主催「工務店支援エキスポ」(東京ビックサイト)
育英西中学校
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活動実績
2019~ 千葉県にて里山竹林整備ボランティア
2020~ 木ッズ絵画コンクール

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