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貸付金の適切な管理!工務店の財務健全化

公開日: : 工務店 経営

工務店経営者の皆様、日々の業務、本当にお疲れ様です。現場の管理から営業、そして会社の「お金」の管理まで、多岐にわたる業務をこなす中で、「資金繰り」は常に頭を悩ませる課題の一つではないでしょうか。特に、予期せぬ大きな出費、請負契約における入金サイトの長期化、そして社内における「貸付金」の存在は、健全な資金繰りを脅かす見えないリスクとなり得ます。

「いつの間にこんなに貸付金が増えたんだ?」「この貸付金、いつ返ってくるんだ?」「このままでは会社の資金繰りに響くのでは…?」

あなたはもしかしたら、このような疑問や不安を感じているかもしれません。役員への貸付金、関連会社への一時的な資金提供、従業員への立て替え金など、「貸付金」と一口に言っても様々な種類があります。これらが適切に管理されていない場合、本来事業に回すべき資金が流出し、会社の資金繰りを圧迫し、最悪の場合、会社の存続にも関わる問題に発展しかねません。

しかし、ご安心ください。この記事では、工務店の財務健全化を目指し、特に資金繰りにおける「貸付金」の適切な管理方法に焦点を当て、具体的な手順と実践的なアドバイスを余すことなくお伝えします。これから学ぶ内容を実践すれば、貸付金の現状を把握し、未然に防ぐ仕組みを構築し、既存の貸付金を計画的に解消することで、資金繰りの安定化に繋がる確かな一歩を踏み出せるはずです。

この記事を通じて、あなたが抱える「貸付金」と「資金繰り」に関する疑問を解消し、より強く、より安定した会社を築くためのヒントを得られることを願っています。

工務店の資金繰りと貸付金:なぜ適切な管理が不可欠なのか

工務店の経営において、キャッシュフロー、つまり「お金の出入り」は非常に重要です。請負契約に基づくビジネスモデルは、契約から着工、完成、引き渡し、そして入金まで、常に時間差が生じます。資材の購入や職人さんへの支払いは先行することが多く、売上として計上されても、実際にお金が入ってくるまでにはタイムラグがあります。このタイムラグを埋めるのが、手元の運転資金であり、健全な資金繰りの基盤となります。

このような資金繰りの中で、「貸付金」がなぜ問題となるのでしょうか?一口に貸付金といっても、様々な種類があります。代表的なものとしては、以下のような貸付金が工務店でも発生する可能性があります。

  • 役員貸付金: 役員に対し、会社資金を一時的に貸し付けるもの。
  • 関連会社貸付金: グループ会社や関連企業に資金を融通するもの。
  • 従業員貸付金: 従業員からの依頼で福利厚生的に資金を貸し付けるもの。
  • 前渡金・立替金: 取引先や従業員への支払いなどを会社が一時的に立て替えるもの(短期的な貸付金といえます)。

これらの貸付金が発生すること自体が直ちに違法というわけではありませんが、その「管理」がずさんであったり、「常態化」したりすることが、工務店の資金繰りにとって深刻な影響を及ぼします。

資金繰りへの悪影響:見えない「穴」となる貸付金

貸付金が会社の資金繰りに与える主な悪影響は以下の通りです。

1. 資金の流出と手元資金の減少:

最も直接的な影響は、会社の預金から資金が外部(役員・関連会社など)に流出することです。これは、本来運転資金として必要な資金を減らすことになります。資金繰り表上では資産(貸付金)として計上されますが、あくまで「権利」であり、現金ではありません。回収の見込みが立たない貸付金が増えるほど、実際のキャッシュは減少し、必要な支払いが滞るリスクが高まります。特に、請負金額が大きい工事が複数動いている場合、資材や外注費の支払いは常に発生するため、手元資金の減少は致命的になりかねません。

2. 借入の困難化・金利上昇:

金融機関は融資を判断する際、会社の財務諸表を詳細に分析します。多額の役員貸付金や関連会社貸付金が存在する場合、金融機関はこれを「資金の私物化」あるいは「資金繰りの悪化を隠すための操作」とみなし、融資を渋ったり、融資額が減額されたりする可能性が高まります。なぜなら、会社から個人や関連会社への貸付は、事業そのものとは直接関係ない資金の動きであり、返済の確実性も金融機関にとっては不透明だからです。健全な資金繰りには、必要に応じた外部からの資金調達が不可欠ですが、貸付金が多いとこの道が閉ざされがちです。

3. 税務上のリスク:

税務調査において、貸付金、特に役員貸付金は厳しくチェックされる項目の1つです。返済の意思や具体的な返済計画がなく、実質的に役員報酬や配当とみなされる場合、源泉所得税の追徴や社会保険料の追加徴収が発生するリスクがあります。また、会社は役員貸付金に対して適正な利息を計算し、受け取る必要があります(認定利息)。これを怠ると、会社に利益が生じたものとみなされ、法人税が課税される対象となります。これは、実際のキャッシュが増えないにも関わらず税負担が増えるという、二重の痛手となり、資金繰りをさらに悪化させます。

4. 社内ガバナンスの低下:

一部の役員や特定の従業員、関連会社への貸付が曖昧なルールで進行すると、他の社員からの信用を失ったり、公私の区別がつかないような慣習が生まれたりします。これは健全な組織運営を妨げ、ひいては事業そのものにも悪影響を及ぼしかねません。

このように、一見単純に見える「貸付金」は、適切な管理を怠ると工務店の資金繰りにとって大きな障害となります。安定した資金繰りを実現し、会社の財務を健全に保つためには、この貸付金の問題に正面から向き合い、具体的な対策を講じることが不可欠なのです。

Q: 役員貸付金があると、銀行融資に具体的にどう影響するのですか?
A: 金融機関は、役員貸付金を「会社から個人への資金流出」と見なし、事業の運転資金に回すべき資金が適切に使われていない証拠だと捉える傾向があります。返済の見込みが低いと判断されれば、融資の審査に通らない、あるいは希望額を借りられない可能性が非常に高くなります。これは、資金繰りの悪化を招きかねません。

資金繰り改善へ直結!貸付金管理の具体的なステップ

それでは、実際に工務店の資金繰りを改善するために、貸付金をどのように管理し、解消していくべきでしょうか。ここでは、今日からでも始められる具体的なステップをご紹介します。

ステップ1:貸付金の正確な現状把握と可視化

まずは、隠れていた貸付金の全体像を把握することから始めます。これが資金繰り改善の第一歩です。

  • すべての貸付金をリストアップする:
    • 誰に(役員名、関連会社名、従業員名など)
    • いつ
    • いくら
    • 何のために
    • 現在の残高
    • 返済条件(もしあれば)
    • 最後に返済があったのはいつか

会計ソフトの勘定科目「役員貸付金」「関連会社貸付金」「従業員貸付金」「立替金」「前渡金」などを確認し、詳細をリストアップします。もし会計帳簿に曖昧な点があれば、過去に遡って確認する必要があります。通帳の出金記録なども照合し、不明な出金があればその使途を確認します。

  • 個々の貸付金の性質を評価する:
    • 返済能力はあるか?
    • 返済の意思はあるか?
    • 税務上のリスクはどの程度あるか?(特に長期滞留、無利息のもの)

単に残高を把握するだけでなく、「この貸付金は現実的に回収可能か?」という視点で評価します。何年も動きがない貸付金は、回収が難しい可能性が高いと考えられます。

  • 資金繰り表への影響を分析する:
    • 貸付金の発生によって、いつ、いくらの資金が会社から流出したのか。
    • その流出が現在の資金繰りにどう影響しているか。
    • もし貸付金が回収されれば、いつ、いくらの資金が入ってくる見込みか。

貸付金の発生や回収計画を資金繰り表に反映させることで、その影響度合いを具体的に理解できます。

実践のポイント: 会計担当者に協力してもらい、過去の記録を徹底的に洗います。役員や関連会社本人にもヒアリングを行い、認識のずれがないか確認することも重要です。ここで曖昧な点を残さないことが、今後の対策の精度を高めます。

ステップ2:新規貸付金発生の強力な抑止策を構築する

既存の貸付金の解消と同時に、これ以上不要な貸付金を生み出さない仕組みを作ることが極めて重要です。まさに資金繰りの蛇口を閉める作業です。

  • 明確な社内規程・ルールを策定する:
    • 原則として、役員・関連会社・従業員への貸付は行わないことを明記する。
    • やむを得ず貸付を行う場合(例:慶弔金、災害時の緊急支援など、限定的なケース)の基準、上限金額、返済条件(利息、期間、方法)を厳格に定める。
    • 関連会社への資金提供についても、その必要性、金額、期間、返済計画、利息を明確に定めた契約書を作成することを義務付ける。

これにより、「なんとなく」「前例があるから」といった曖昧な理由での貸付を防ぎます。

  • 承認プロセスを厳格化する:
    • 貸付申請があった場合の承認者を限定する(例:社長一人の判断ではなく、役員会や特定の担当役員の承認を必須とする)。
    • 申請者が金額、目的、返済計画を明記した書面を提出することを義務付ける。
    • 承認された場合でも、必ず金銭消費貸借契約書を交わす。

プロセスを明確にし、複数の目でチェックすることで、安易な貸付を防ぎます。

実践のポイント: 策定した規程は全役員・全従業員に周知徹底します。特に役員間の合意形成が重要です。「例外」を極力認めない厳格な運用を心がけます。これにより、将来的な資金繰りの安定化に繋がります。

ステップ3:既存貸付金の具体的な解消・削減計画を実行する

把握した既存の貸付金については、計画的に解消・削減していく必要があります。これが資金繰りを実質的に改善させる最も困難かつ重要なステップです。

  • 個別の返済交渉と計画策定:
    • 貸付先(特に役員や関連会社)と誠実に話し合い、返済能力に応じた具体的な返済計画を立てる。
    • 返済期日、1回あたりの返済額、返済方法(現金、相殺など)を明確に定める。
    • 必ず「金銭消費貸借契約書」あるいは「既存貸付金に関する返済合意書」といった形で書面に残す。

曖昧な口約束ではなく、法的な効力を持つ書面を交わすことが重要です。

  • 実践的な回収方法の検討:
    • 給与・役員報酬からの天引き: 貸付先の同意を得て、毎月の給与や役員報酬から一定額を天引きし、貸付金と相殺する。最も現実的で確実性の高い方法の一つです。
    • 賞与からの充当: 賞与が支給される際に、その一部または全部を貸付金の返済に充てる。
    • 退職金との相殺: 退職時に、退職金と貸付金を相殺する。
    • 資産売却: 貸付の原因となった資産(不動産など)を売却し、その資金で返済してもらうことを検討する。
    • デッド・フォー・エクイティ・スワップ(D/Eスワップ): 関連会社への貸付金の場合、その貸付金を会社の株式に振り替える方法。これにより会社にとっては貸付金が消滅し、関連会社の支配権強化に繋がる可能性もあるが、専門的な知識が必要であり、慎重な検討が必要です。中小工務店ではあまり一般的ではないかもしれません。

貸付先の状況に応じ、複数の方法を組み合わせることも考えられます。

  • 返済状況の徹底したモニタリング:
    • 策定した返済計画通りに進んでいるかを毎月確認する。
    • 返済が滞った場合は、速やかに連絡を取り、原因を確認し、再度返済計画を見直すなどの対応をする。

「言いにくい」といった感情は一旦脇に置き、「会社の資金繰りのため」という大義をもって、毅然とした態度で臨むことが重要です。

実践のポイント: 返済計画は、貸付先の負担が大きすぎず、かつ会社の資金繰り改善に繋がる現実的なラインで設定します。回収が難しい貸付金については、弁護士などの専門家に相談することも検討しましょう。貸付金が削減できれば、その分資金繰りは改善し、会社の評価も向上します。

ステップ4:借り入れ(外部資金調達としての貸付金)の適切な管理

内部的な貸付金だけでなく、銀行からの借入金も工務店の資金繰りに関わる重要な「貸付金」です。これを適切に管理することで、資金繰りの安心感を高めることができます。

  • 借入金の全体像を把握する:
    • 借入先
    • 借入金額
    • 利率
    • 返済期間
    • 毎月の返済額(元本+利息)
    • 今後の返済予定

借入金の一覧表を作成し、キャッシュアウトの予定を明確にします。会計ソフトや資金繰り管理ツールを活用すると便利です。

  • 資金繰り計画に借入返済を組み込む:
    • 将来の資金繰り予測を行う際に、借入金の毎月の返済額を必ず支出項目として計上する。
    • これにより、返済後の手元資金がいくら残るのかを正確に把握し、必要な運転資金を確保できるかを確認できます。

借入金の返済は固定費に近い感覚で、確実に発生するキャッシュアウトとして資金繰り計画に織り込む必要があります。

  • 金利負担や返済条件を見直す:
    • 複数の借入がある場合、より低金利の融資への借り換えを検討する。
    • 一時的に資金繰りが厳しい時期には、金融機関に相談し、返済期間の延長(リスケジュール)が可能か相談する。ただし、リスケジュールは会社の信用に影響する場合があるため、慎重な判断が必要です。

定期的に借入条件を見直すことで、資金繰りの負担を軽減できる可能性があります。

実践のポイント: 資金繰り計画は最低でも3ヶ月、理想的には1年先まで予測を立てましょう。借入金の返済予定を正確に把握することは、安心した資金繰りのために不可欠です。

ステップ5:資金繰り表の作成と活用

ステップ1からステップ4の取り組みの結果を反映させ、資金繰り表を作成し、継続的に活用することが、資金繰り改善のカナメです。ここでいう資金繰り表は、単なる過去のお金の出入りを記録するものではなく、将来の予測を行うためのツールです。

  • 資金繰り表の項目設定:
    • 収入: 請負契約に基づく入金予定、完成・引き渡しベースの入金、その他収入。工事ごとの進捗率や支払いサイトを考慮して具体的に予測します。
    • 支出: 資材費、外注費、人件費、家賃、水道光熱費、借入金返済、リース料、税金、社会保険料、そして「貸付金の発生・回収」など。変動費と固定費を分けて考えると管理しやすくなります。
    • 月末残高: 収入合計から支出合計を差し引いた、期末の手元資金残高予測。

特に、大型工事の進捗に伴う入金と支出のズレを正確に予測することが、工務店の資金繰りでは重要です。

  • 貸付金の動きを資金繰り表に反映:
    • 新規貸付が発生した場合、支出として計上。
    • 既存貸付金が返済された場合、収入として計上(ただし、税務上の貸付金利息収入とは区分け)。
    • 貸付金解消計画に基づく毎月の回収予定額を、収入予測に含める(現実的な回収見込み額を)。

これにより、貸付金の管理が資金繰り予測にどう影響するかを具体的に確認できます。

  • 資金繰り表の定期的な見直しと活用:
    • 少なくとも月に一度、資金繰り表を更新し、実績とのずれを確認する。
    • 予測と実績が大きく異なる場合は、原因を分析し、今後の対策を検討する。
    • 資金不足が予測される場合は、早期に資金調達の準備に取り掛かる(銀行との相談など)。資金繰りがマイナスになる前にアクションを起こせることが、資金繰り表活用の最大のメリットです。

実践のポイント: 資金繰り表は、最初は簡易的なものでも構いません。項目を洗い出し、予測値を入力することから始めましょう。会計ソフトのオプション機能や、資金繰り専用のクラウドツールも活用できます。将来の資金繰りを「見える化」することが、計画的な経営、ひいては安心感のある経営に繋がります。

Q: 貸付金を回収できない場合、どうすれば良いですか?
A: 返済計画が実行されない場合は、貸付先と再交渉し、返済条件を見直します。それでも回収が見込めない場合は、会計上「貸倒損失」として処理することになります。ただし、税務上、貸倒損失として認めてもらうには厳しい要件がありますので、税理士にご相談ください。貸付金が焦げ付くと、資金繰りへの悪影響が確定し、会社の損失となるため、新規貸付を厳しく抑止し、早期回収に努めることが何よりも予防策として重要です。

資金繰りを盤石にするための継続的な仕組みと「次の一手」

貸付金管理だけに留まらず、工務店の資金繰りを継続的に健全に保つためには、日々の管理体制の強化と、事業全体のキャッシュフロー改善に向けた取り組みが必要です。ここでは、さらに一歩進んだ対策をご紹介します。

管理体制の強化と責任の所在明確化

貸付金管理を含む資金繰り管理は、特定の担当者だけでなく、経営層を含めた社内の仕組みとして定着させることが重要です。

  • 資金繰り担当者を明確にする:
    • 日々の入出金管理、資金繰り表の作成・更新、貸付金の管理リスト作成などを担当する責任者を決めます。
    • 小規模な工務店であれば経理担当者や経営者自身が兼任することも多いですが、責任者を置くことで情報の集約と管理が効率化されます。
  • 定期的な資金繰り会議を実施する:
    • 月に一度など、定期的に経営層や関係部署(営業、経理、工事担当など)で資金繰り会議を開きます。
    • 資金繰り表の確認、実際の入出金の分析、将来の予測、懸念事項(大型工事の支払い予定、未回収の売掛金、貸付金の状況など)の共有と対策検討を行います。

単に数字を見るだけでなく、工事の進捗状況や営業の受注見込みといった現場の情報と資金繰りの情報を連携させることが、工務店ならではの資金繰り管理においては非常に有効です。

ITツールの積極活用

手作業での資金繰り管理には限界があります。ITツールを導入することで、効率的かつ正確な管理が可能になります。

会計ソフト: 日々の取引入力により、売掛金、買掛金、借入金、そして貸付金などの残高を正確に把握できます。多くの会計ソフトには資金繰り関連のレポート機能や、銀行口座との連携機能があり、入力の手間を減らせます。

資金繰り管理ツール: 会計ソフトのデータを取り込み、将来の入出金を予測することに特化したクラウドツールなどが提供されています。工事ごとの入金・出金予定を詳細に管理し、自動的に資金繰り表を作成できる機能を持つものもあります。導入にはコストがかかりますが、資金繰りの精度向上と担当者の負担軽減に大きく寄与します。

実践のポイント: 現在の資金繰り管理の課題を洗い出し、それを解決できるツールは何か検討します。無料トライアル期間を設けているツールも多いので、いくつか試してみて自社に合うものを選ぶと良いでしょう。

専門家との連携強化

複雑な税務処理や法的な手続き、あるいは経営改善全般について、専門家の知見を活用することは非常に有効です。

税理士: 役員貸付金などの税務上の取り扱い、貸倒損失の処理、税務調査への対応などについて専門的なアドバイスを受けられます。また、税金支払いのための資金繰り対策についても相談できます。

ファイナンシャルプランナー/経営コンサルタント: 資金繰り計画の策定、金融機関との交渉、会社の財務体質強化に向けたアドバイスなどを提供してもらえます。工務店の経営に詳しい専門家を選ぶと、より実践的な支援が得られるでしょう。

キャッシュフロー重視の経営への転換

貸付金管理や外部借入管理といった「点」の対策だけでなく、会社全体のキャッシュフローを改善する「面」の取り組みも重要です。

請負契約・支払い条件の見直し:

  • 工事請負契約において、できるだけ早いタイミングでの着手金受け取りや、中間金の割合を増やす交渉を行う。
  • 支払いサイトを短縮してもらう交渉を行う。
  • 契約前に支払条件を明確に確認し、資金繰り計画に無理がないか精査する。

在庫・原価管理の徹底:

  • 資材の過剰な在庫は運転資金を圧迫します。必要な資材を必要な時に調達するよう、在庫管理を徹底します。
  • 工事ごとの原価管理を厳密に行い、予定通りに進んでいるか、無駄な支出が発生していないかを確認します。原価のずれは資金繰りの予測にも影響します。

売掛金の早期回収:

  • 完成・引き渡し後の請求書は速やかに発行し、入金期日を明確に伝えます。
  • 入金期日を過ぎたものについては、速やかに督促を行います。未回収の売掛金は、貸付金と同様に本来あるべき手元資金を減少させる原因となります。

これらの取り組みは、直接的には貸付金と関係ないように見えますが、キャッシュインを早め、キャッシュアウトを遅らせ、キャッシュフローを安定させる効果があり、健全な資金繰りの継続には不可欠です。

Q: 資金繰り表はどのように作成すれば良いですか?
A: Excelなどの表計算ソフトや、市販の資金繰り管理ツールで作成できます。最低限必要な項目は、「期首現預金残高」「収入項目(売掛金回収、借入、その他入金など)」「支出項目(仕入、外注費、人件費、家賃、借入返済、税金支払、貸付など)」「期末現預金残高」です。過去の実績と、各工事や契約に基づく将来の見込みを具体的な日付や金額で入力していきます。初めは予測精度が低くても、毎月作成・更新することで精度が向上していきます。

まとめ

工務店の資金繰りは、長期にわたる工事期間や段階的な入金システム、そして予期せぬ出費など、他の業種にはない特有の難しさがあります。そして、「貸付金」は、この資金繰りの中に潜む見えにくい落とし穴となり得ます。役員貸付金や関連会社貸付金などが積み重なることは、会社の資金を流出させ、借入を困難にし、税務リスクを高め、健全な資金繰りを遠ざけてしまいます。

この記事では、工務店の資金繰りを改善し、財務を健全化するために、「貸付金」に焦点を当てた具体的なステップをご紹介しました。

まずは、社内に存在するすべての貸付金を正確に把握し、その実態を「見える化」することが第一歩です。次に、不要な貸付金が今後一切発生しないよう、明確なルールと厳格な承認プロセスを定めます。そして、把握した既存の貸付金については、給与天引きなど実践的な方法を駆使し、現実的な返済計画に基づいて計画的に解消を進めます。同時に、外部からの借入金(これも広義の貸付金です)も資金繰り計画に正確に組み込み、負担軽減の可能性を探ります。これらの取り組みを通じて得られる将来の資金の動きを、定期的に資金繰り表に反映させ、常に会社のキャッシュフロー状況を把握することが、安心感のある経営に繋がります。

資金繰りの改善は、一度取り組めば終わり、というものではありません。継続的な管理体制を構築し、ITツールや専門家の助けを借りながら、日々の事業活動と連動させてキャッシュフローを意識した経営を実践していくことが不可欠です。請負条件の見直しや原価管理の徹底といった、事業そのものに踏み込んだ改善 efforts も、資金繰りの安定には欠かせません。

これらの具体的なアクションは、一朝一夕に劇的な変化をもたらすものではないかもしれません。しかし、着実に実行していくことで、会社の資金は少しずつ潤沢になり、予測不能な事態への対応力が向上し、新しい事業への投資など、攻めの経営を行うための土台が築かれていきます。貸付金の適切な管理は、「守り」の経営であると同時に、将来の「攻め」に繋がる重要な一歩なのです。

資金繰りの悩みから解放され、建設の本業に集中できる日を目指して、ぜひ今日の学びを実践に移してください。あなたの工務店が、地域社会に貢献し続け、より強く、より安定した形で発展していくことを心より応援しています。

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浄法寺 亘

工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。 今動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」 ※8月実施予定。 住宅サイトの運営もしています。 福島県 喜多方市出身 県立会津高校卒 市立高崎経済大学卒 著書: 頼みたくなる住宅営業になれる本 https://x.gd/oatiM SDGsに取り組もう 建築業界編 https://x.gd/MXYJr とっておきの見込み客発掘法 https://x.gd/001or 主な講演: 鹿児島県庁主催「かごしま緑の工務店研修会」 リードジャパン主催「工務店支援エキスポ」(東京ビックサイト) 育英西中学校 その他住宅FCなど 活動実績 2019~ 千葉県にて里山竹林整備ボランティア 2020~ 木ッズ絵画コンクール
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この記事を書いた人

浄法寺 亘

工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。
今動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」
※8月実施予定。
住宅サイトの運営もしています。

福島県 喜多方市出身
県立会津高校卒
市立高崎経済大学卒

著書:
頼みたくなる住宅営業になれる本
https://x.gd/oatiM
SDGsに取り組もう 建築業界編
https://x.gd/MXYJr
とっておきの見込み客発掘法
https://x.gd/001or

主な講演:
鹿児島県庁主催「かごしま緑の工務店研修会」
リードジャパン主催「工務店支援エキスポ」(東京ビックサイト)
育英西中学校
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活動実績
2019~ 千葉県にて里山竹林整備ボランティア
2020~ 木ッズ絵画コンクール

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