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SDGsで持続可能な経営を!工務店の社会貢献

公開日: : 工務店 経営

工務店の経営者の皆様、日々の業務に追われる中で、将来を見据えた経営戦略について深く考える時間は取れているでしょうか? 人手不足、資材価格の高騰、顧客ニーズの変化、そして環境問題への意識の高まりなど、工務店を取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。「この先も安定して事業を続けていくために、何か新しい取り組みが必要なのは分かっているけれど、具体的に何をすれば良いのか分からない…」と感じている経営者の方もいらっしゃるかもしれません。まさにそこに光を当てるのが、今や世界共通の羅針盤とも言えるSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みです。SDGsは単なる社会貢献活動ではなく、工務店が時代の変化に対応し、むしろ成長していくための強力な経営戦略となり得ます。特許取得や技術開発といった高度な取り組みだけでなく、日々の業務や社員・地域との関わり方を見直すことでも、SDGsに貢献し、それが「持続可能な経営」へと繋がっていきます。この記事では、SDGsを工務店の経営にどう組み込み、持続可能な経営を実現していくのか、その具体的な手順と実践的なアドバイスを余すところなくご紹介します。この記事を通じて、読者の皆様は、SDGsへの取り組みが自社の強みとなり、新たなビジネスチャンスを掴むための具体的なロードマップを手に入れることができるでしょう。ぜひ最後までお読みいただき、貴社の「持続可能な未来」を共に築き始める第一歩としてください。

持続可能な経営の「実践的」導入戦略:基礎から応用まで

工務店経営において、持続可能な経営を目指すことは、もはや選択肢ではなく必須の戦略となりつつあります。このセクションでは、まずSDGsが工務店にどう関係するのか、そしてなぜ今、持続可能な経営に取り組むべきなのか、その基礎から具体的な導入の第一歩について掘り下げていきます。

SDGsとは何か?工務店との関係性

SDGs(Sustainable Development Goals)は、2015年に国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された、2030年までに持続可能でより良い世界を目指すための国際目標です。17のゴールと169のターゲットから構成されており、「誰一人取り残さない」ことを誓っています。一見、国や大企業の目標のように感じられるかもしれませんが、工務店の事業と密接に関連する目標が数多く存在します。例えば、「すべての人々のために、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」(目標7)や、「都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭かつ持続可能にする」(目標11)などは、まさに工務店が住宅や建築を通じて直接的に貢献できる目標です。SDGsは、私たちの仕事が世界全体の持続可能性にどう貢献できるかを示してくれる「羅針盤」なのです。

なぜ今、SDGsに取り組むべきか?工務店経営における重要性

現在、多くの企業がSDGsへの取り組みを加速させています。工務店も例外ではありません。なぜなら、SDGsへの取り組みは、単なる社会貢献ではなく、工務店経営に直接的なメリットをもたらすからです。

  • ブランドイメージ向上と差別化: 環境や社会に配慮した家づくり、地域に根差した活動は、顧客からの信頼と共感を得やすく、競合との差別化に繋がります。特に若い世代は企業のSDGsへの意識に関心が高く、集客に有利に働く可能性があります。
  • 新たな顧客層の獲得: ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)や長期優良住宅、再生可能エネルギーの導入など、SDGsに関連する技術やサービスは、環境意識の高い顧客層からの需要があります。
  • 優秀な人材の確保と定着: 若い世代は「社会貢献」を重視する傾向があります。SDGsに取り組む企業は、そこで働くことに意義を感じやすく、採用活動において有利になります。また、社員のエンゲージメント向上や離職率低下にも貢献します。
  • サプライヤー・金融機関との連携強化: サプライヤーや金融機関もSDGsへの取り組みを重視し始めています。協力先との円滑な関係構築や、有利な条件での資金調達に繋がる可能性があります。
  • リスクの低減: 環境規制への対応、労働環境の改善などは、将来的な法改正や社会情勢の変化によるリスクを低減します。
  • 経営効率の改善: 省エネ対策や資源の有効活用は、コスト削減や生産性向上に繋がる場合があります。

これらのメリットは、まさに持続可能な経営を実現するための重要な要素です。SDGsは、短期的な利益だけでなく、長期的な視点で企業の価値を高めるための視点を提供してくれます。

持続可能な経営とは?SDGsとの違いと連携

「持続可能な経営」とは、環境、社会、経済の3つの側面を考慮し、将来にわたって企業が成長・存続していくための経営手法です。短期的な利益追求だけでなく、地球環境への負荷を減らし、働く人々や地域社会、顧客など、あらゆるステークホルダー(利害関係者)にとって望ましい状態を維持・発展させていくことを目指します。

SDGsは、この持続可能な世界を実現するための具体的な目標群であり、持続可能な経営を行う上での「羅針盤」や「フレームワーク」として活用できます。つまり、SDGsへの取り組みは、持続可能な経営を実現するための具体的な行動そのものと言えます。SDGsの各目標を自社の事業と照らし合わせることで、「何をすれば持続可能な経営に繋がるか」が明確になります。

取り組み開始の第一歩:現状分析と課題特定

SDGsと持続可能な経営への取り組みを始める上で、最初に行うべきは自社の現状分析と課題特定です。漠然と始めるのではなく、まずは自社が現在どのようなSDGs目標と関連があり、どのような課題を抱えているのかを洗い出すことから始めます。

Step 1: SDGs目標との関連性を洗い出す

17のSDGs目標すべてに取り組む必要はありません。まずは自社の事業内容や経営活動(設計、施工、資材調達、社員教育、地域との関わりなど)と関連の深い目標を確認しましょう。特に工務店に関係が深いと考えられる目標は以下の通りです。

  • 目標7: エネルギーをみんなに そしてクリーンに
  • 目標8: 働きがいも 経済成長も
  • 目標9: 産業と技術革新の基盤をつくろう
  • 目標11: 住み続けられるまちづくりを
  • 目標12: つくる責任 つかう責任
  • 目標13: 気候変動に具体的な対策を
  • 目標15: 陸の豊かさも守ろう
  • 目標17: パートナーシップで目標を達成しよう

これらの目標を参考に、自社の事業活動がどの目標に貢献できているか、あるいはどのような課題を抱えているかを考えます。

Step 2: 社内外の課題を特定する

関連性の強いSDGs目標が見えてきたら、次に社内外の具体的な課題を洗い出します。これは、持続可能な経営を実現するための改善点とも言えます。以下のような観点から考えてみましょう。

  • 環境面: 建築資材の廃棄ロスはどのくらいか? エネルギー消費は効率的か? 自然素材やリサイクル材は活用できているか? 建設現場の騒音や振動は周辺環境に配慮できているか?
  • 社会面: 社員の長時間労働はないか? 労働安全管理は徹底されているか? 若手育成やスキルアップの機会は十分か? 女性や高齢者、外国人労働者など、多様な人材が活躍できる環境か? 地域のお祭りや活動に関わっているか? 近隣住民との関係は良好か? 顧客への丁寧な説明やアフターフォローはできているか?
  • 経済面: 資材の購入は安定供給できる信頼できるサプライヤーから行っているか? 適正な価格でサービスを提供できているか? 社員の適正な賃金は支払われているか? 地域内での資材調達や取引を増やし、地域経済に貢献できているか?

経営層だけでなく、現場の職人さんや 사무직(事務職)の方々にも意見を聞く機会を設けると、より多くの課題が見えてきます。また、可能であれば顧客やサプライヤーにアンケートやヒアリングを実施することも有効です。

Step 3: 取り組む目標と優先順位を設定する

洗い出した課題の中から、特に重要度が高く、かつ自社が貢献しやすいSDGs目標と具体的な取り組みを絞り込み、優先順位をつけます。いきなり多くの目標に取り組もうとせず、まずは2~3個の目標に焦点を絞るのが現実的です。例えば、「目標11 住み続けられるまちづくり」と関連付けて、「地域産木材の利用促進と空き家改修による地域活性化」といった具体的な取り組みを掲げるなどです。この段階で、後の効果測定を見据え、可能な範囲で数値目標(KPI)を設定することも考慮しましょう(例:「地域産木材の利用率を〇%向上させる」)。

Q&A:小規模工務店でもSDGsに取り組めますか?コストはかかりますか?

Q: 小規模な工務店でもSDGsに取り組めますか?

A: はい、十分に可能です。SDGsは、大企業だけでなくあらゆる主体が取り組むべき目標です。小規模な工務店だからこそできる、地域に根差したきめ細やかな取り組みが多くあります。例えば、現場でのごみの分別徹底、地域の清掃活動への参加、地元職人の育成、顧客への省エネ提案など、日々の業務の中で実践できることはたくさんあります。重要なのは、SDGsを「特別な活動」と捉えるのではなく、「持続可能な経営」を実現するための当然の取り組みとして位置づけることです。

Q: SDGsへの取り組みには、やはりコストがかかりますか?

A: 取り組み内容によっては初期投資が必要な場合もあります(例:省エネ設備の導入)。しかし、多くの取り組みは、既存業務の見直しや改善で実施可能です。むしろ、資材廃棄の削減はコスト削減に、省エネ対策の提案は新たな売上に、働きがいのある環境づくりは離職率低下によるコスト削減に繋がるなど、長期的に見ればコストメリットや収益向上に繋がるケースが多くあります。まずはコストのかからない、あるいは費用対効果が高い取り組みから始めるのがおすすめです。

SDGs×持続可能な経営:成果を最大化する具体的な取り組み

前のセクションで、自社の現状分析と取り組むべきSDGs目標の特定を行いました。このセクションでは、特定した目標に対して、工務店として具体的にどのようなアクションを起こし、持続可能な経営へと繋げていくのか、その実践方法を掘り下げていきます。

具体的なSDGs取り組み事例:環境面

工務店の事業は、資材の使用、エネルギー消費、廃棄物の発生など、環境と深く関わっています。環境面での取り組みは、SDGs目標7, 12, 13, 15などに関連し、持続可能な経営の重要な柱となります。

Step 4: 環境負荷低減に向けた具体的な施策を実行する

  • 省エネルギー・再生可能エネルギーの導入: ZEH(ゼロエネルギーハウス)やHEAT20基準などの高断熱・高気密住宅の普及促進。太陽光発電システムや家庭用燃料電池(エネファーム)などの再生可能エネルギー設備の提案・施工。自社オフィスやモデルハウスでの省エネ対策、再生可能エネルギー利用。
  • 自然素材・地域産材の活用: 地元の木材や竹、漆喰、珪藻土といった自然素材の積極的な利用。森林認証を受けた木材の採用。これにより、輸送による環境負荷低減や地域林業の活性化(目標15、目標8)にも貢献します。
  • 廃棄物削減・リサイクル: 現場でのごみ分別徹底、分別マニュアル作成。端材の有効活用(家具や小物製作、地域イベントでの利用)。建設副産物のリサイクル業者との連携強化。資材発注の最適化による無駄の削減。
  • 水資源の保全: 節水型の住宅設備の提案・施工。雨水利用システムの検討。現場事務所での節水意識向上。
  • グリーンサプライチェーンの構築: 環境に配慮した製品を製造しているサプライヤーからの資材調達。エコマークやFSC認証などの環境ラベルが付いた製品の優先採用。

具体的なSDGs取り組み事例:社会面

工務店は、社員、職人、顧客、そして地域社会といった「人」との関わりが非常に重要です。社会面での取り組みは、SDGs目標3, 5, 8, 11に関連し、企業のレジリエンス(回復力)を高め、持続可能な経営の基盤を強化します。

Step 5: 人と地域を大切にする施策を実行する

  • 安全で働きがいのある職場環境づくり: 労働時間の適切な管理。建設現場での徹底した安全教育と管理体制強化。熱中症対策、健康診断の推奨。ハラスメント防止研修。休憩スペースの改善。
  • 多様な人材の活躍促進: 女性や高齢者、外国人労働者が働きやすい環境整備(トイレ・更衣室の設置など)。育児や介護と両立できる柔軟な勤務体系の検討。年齢や国籍に関わらず、能力を正当に評価する人事制度。
  • 人材育成とスキルアップ支援: 資格取得支援制度。外部研修への参加奨励。ベテラン職人から若手への技術継承。現場でのOJTの質向上。設計やマーケティングなど、多様なスキル習得の機会提供。
  • 地域社会への貢献: 地元住民向けの見学会やワークショップ開催。子どもの健全育成に繋がる木工教室など。地域イベントへの積極的な参加。地域産材を使った公共施設の整備への協力。防災・減災に強い家づくりの啓発。
  • 顧客満足度の向上: 顧客の要望に寄り添った丁寧なコミュニケーション。建築プロセスや契約内容の分かりやすい説明。品質管理の徹底。長期保証や定期的なメンテナンス実施による安心提供。
  • 公正な取引: 下請法等の関連法規遵守。サプライヤーや職人に対し、適正な工期と報酬での発注。

具体的なSDGs取り組み事例:経済面

環境や社会への貢献は、長期的に見れば経済的な安定と成長に繋がります。経済面での取り組みは、SDGs目標8, 9, 11, 12などに関連し、持続可能な経営の成果を最大化します。

Step 6: 経済的な循環と安定に繋がる施策を実行する

  • 高品質な施工の追求: 技術力向上と品質管理の徹底による、長く安心して住める家づくり。これが企業の信頼に繋がり、リピーターや紹介を増やす。
  • 長期視点でのビジネスモデル: 新築だけでなく、リフォーム、リノベーション、メンテナンスといった既存住宅の価値向上に関わる事業の強化。ストックビジネスの推進。
  • 地域経済の活性化: 地元の協力業者や資材店からの優先的な購入。地域産材の活用。地域内での雇用創出。
  • 適正な利益の確保と再投資: 適正な利潤を確保し、人材育成や新しい技術・設備への投資、社員への還元を行うことで、事業の継続性と発展性を高める。
  • 情報開示と透明性の向上: 企業活動やSDGsへの取り組み状況について、HPやSNS、報告書などで開示。ステークホルダーからの信頼を得る。

SDGs目標と具体的な取り組みの紐付け【実践ワーク】

Step 3で特定したSDGs目標と、Step 4~6で挙げた具体的な施策を結びつけてみましょう。どの取り組みがどのSDGs目標に貢献するのかを明確にすることで、目的意識を持って活動を進めることができます。

例:

  • 「地域産木材の利用」→ 目標15(陸の豊かさ)、目標11(住み続けられるまちづくり)、目標8(働きがい・経済成長)、目標12(つくる責任)
  • 「ZEHの普及」→ 目標7(エネルギー)、目標13(気候変動)
  • 「社員の安全管理徹底」→ 目標3(健康・福祉)、目標8(働きがい)
  • 「地域清掃活動への参加」→ 目標11(住み続けられるまちづくり)、目標17(パートナーシップ)

このように紐付けることで、日々の業務がどのように持続可能な経営、ひいては世界のSDGs達成に貢献しているのかが可視化され、社員のモチベーション向上にも繋がります。

取り組みを外部に発信する重要性

どんなに素晴らしいSDGsへの取り組みをしていても、それを外に伝えなければ知られません。積極的に情報発信を行いましょう。

Step 7: 取り組み状況を積極的に発信する

  • 自社ウェブサイト・ブログ: 会社のSDGs方針、具体的な取り組み内容、関連する施工事例などを詳細に紹介。写真や動画を交えるとより効果的です。
  • SNS(Facebook, Instagramなど): 現場での環境配慮の様子、地域イベント参加報告、社員の活躍などをタイムリーに発信。親しみやすい形で伝えることが重要です。
  • 会社案内・パンフレット: 会社の理念や特徴として、SDGsへの取り組みを明記。
  • 顧客への説明: 契約時や打ち合わせ時に、省エネ性能や使用資材の環境配慮について説明。顧客の関心を引き出し、共感を促す。
  • メディアへの情報提供: 地域メディアなどに、ユニークな取り組みやイベント情報を提供。取材機会を得る。
  • 報告書作成: ステークホルダー向けに、SDGsへの取り組みや成果をまとめた報告書を作成し、ウェブサイトで公開。(規模に応じて可能な範囲で)

発信する際は、単に「SDGsに取り組んでいます」と言うだけでなく、「具体的な取り組み」と「それが社会や環境にどう良い影響を与えているか」を明確に伝えることが重要です。例えば、「〇〇産木材を使うことで、地域の森を守り、伐採地から製材所、そして現場まで、輸送距離が少ないのでCO2排出量も抑えられます。職人さんたちも地元の木材に愛着を持っています」といった具体的な物語とともに伝えることで、より響くメッセージになります。

Q&A:取り組みの効果測定はどうすればいい?他社との差別化は?

Q: 取り組みの効果はどのように測定すれば良いですか?

A: Step 3で設定したKPI(重要業績評価指標)を定期的に測定・評価します。例えば、「年間廃棄物排出量を〇%削減」「地域産材の利用割合を〇%向上」「社員一人当たりの研修時間を〇時間増加」「地域イベントへの参加者数を〇人」など、具体的な数値で追跡します。数値化が難しい目標(例:社員満足度)については、アンケートやヒアリングで定性的な評価を行います。大切なのは、測定結果をもとに取り組み内容を見直し、改善していくPDCAサイクルを回すことです。

Q: 他の工務店もSDGsに取り組んでいますが、どう差別化できますか?

A: 形式的な取り組みではなく、「自社らしさ」を明確にすることが重要です。貴社の強みや地域の特性、経営者の想いに基づいた独自の取り組みを深掘りしましょう。例えば、「自社の得意な技術とSDGsを組み合わせる(例:伝統工法を活かした省エネ改修)」、「特定の地域課題(空き家問題、高齢化など)に特化した取り組みを行う」、「社員参加型のユニークな環境・社会貢献活動を行う」などです。そして、その「自社らしさ」をストーリーとして顧客や地域に丁寧に伝えることが、差別化に繋がります。

SDGsを継続的に成功させるための「次の一手」

SDGsへの取り組みは、一度やれば終わりというものではありません。変化する社会情勢や技術に対応し、自社の状況に合わせて常に進化させていく必要があります。このセクションでは、SDGsへの取り組みを持続可能な経営の核として定着させ、さらなる発展に繋げるための「次の一手」についてご紹介します。

取り組みの継続と進化のポイント

SDGsへの取り組みを形骸化させず、継続的に成果を出すためには、以下の点に留意しましょう。

Step 8: 定期的な目標の見直しと改善を行う

Step 7で効果測定を行った結果をもとに、設定した目標の達成度を確認します。もし目標達成が難しい場合は、原因を分析し、取り組み方法を改善します。また、社会のニーズや技術の進歩に合わせて、新たな目標設定や既存目標のレベルアップを検討します(例:ZEHからZEBへ、廃棄物ゼロを目指すなど)。年に一度など、定期的に経営層や関係部署で進捗状況を確認・共有する会議を設けることをお勧めします。

Step 9: 新たな課題への対応と技術導入

建築業界は、法改正(省エネ基準義務化など)や新しい技術(AI、IoTなど)の導入が日々進んでいます。これらの変化がSDGsとどう関連するかを常に情報収集し、自社の取り組みに反映させる必要があります。例えば、BIM/CIMの導入は生産性向上(目標8, 9)や情報共有の円滑化に貢献します。環境規制の強化に対応することは、リスク回避と同時に新たなビジネス機会(環境配慮型建築)に繋がります。

先進事例の紹介と学び

他の工務店や建設関連企業のSDGsへの先進的な取り組み事例を参考にすることは、自社の取り組みを進化させる上で非常に有用です。業界団体やセミナー、専門誌、Webサイトなどで情報を収集し、自社に取り入れられるアイデアがないか検討しましょう。異業種の事例も、発想の転換に繋がることがあります。

外部評価や認証の活用

自社のSDGsや持続可能な経営への取り組みが客観的に評価されることは、対外的な信頼性向上に繋がります。BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)やCASBEEといった環境性能表示制度の活用、地域によってはSDGs関連の認証制度がある場合もあります。これらの認証取得を目指すプロセス自体が、社内の意識向上や取り組みの深化に繋がることもあります。

Step 10: SDGs経営を人材育成・組織力強化に繋げる

SDGsへの取り組みは、社員一人ひとりの「働きがい」や「貢献意識」を高め、組織全体のエンゲージメントを向上させる絶好の機会です。社員を巻き込み、共に目標設定やアイデア出しを行うワークショップを開催したり、現場レベルでの具体的な取り組み(例:現場の清掃活動、近隣挨拶の徹底)を奨励したりします。社員が主体的にSDGsを意識して行動できるようになれば、それはそのまま企業の組織力強化と持続可能な経営力の向上に繋がります。

SDGsを新たなビジネス機会に繋げる

SDGsへの取り組みは、単なるコストではなく、新たなビジネスチャンスの源泉となり得ます。例えば、高齢化社会におけるバリアフリーリフォーム、環境意識の高まりに対応した高性能リノベーション、地域資源を活かしたユニークな宿泊施設や商業施設の建設など、SDGsが示す社会課題を解決する視点が、 unmet needs (満たされていないニーズ) の発見に繋がり、新しい事業展開のヒントを与えてくれます。SDGsの17のゴールをビジネスシーズとして捉える発想が重要です。

Step 11: サプライチェーン全体での連携を強化する

工務店のSDGsへの取り組みは、自社の中だけで完結するものではありません。資材メーカー、販売店、協力業者、設計事務所など、サプライチェーンに関わる全てのパートナーとの連携が不可欠です。環境負荷の少ない資材の共同開発、労働環境改善に向けた協力業者との情報交換、地域と連携した資材調達システムの構築など、共にSDGsの達成を目指すことで、より大きなインパクトを生み出し、サプライチェーン全体の持続可能性を高めることができます。互いに学び合い、支え合うパートナーシップ(目標17)は、持続可能な経営を力強く推進します。

Q&A:難しく考えすぎず取り組むには?取り組みが停滞したら?

Q: SDGsを難しく考えすぎてしまい、なかなか行動に移せません。どうすれば良いですか?

A: 最初から完璧を目指す必要はありません。まずは、日々の業務の中で「これはSDGsの〇〇に繋がるかもしれない」と意識することから始めましょう。例えば、現場の清掃は目標12(つくる責任)、目標11(住み続けられるまちづくり)に関連します。地域との交流は目標11、目標17に関連します。既に行っている良い取り組みをSDGsの視点で見直すだけで、取り組みの第一歩となります。その上で、無理のない範囲で、一つずつ改善できるところから着手していくのが現実的です。外部のセミナーに参加したり、中小企業向けのSDGsガイドラインなどを参考にしたりするのも良いでしょう。

Q: 一度SDGsへの取り組みを始めても、途中で停滞してしまうことがあります。どうすれば継続できますか?

A: まず、なぜ停滞してしまったのか原因を分析しましょう。目標設定が高過ぎた、担当者が一人で抱え込んでしまった、成果が見えにくい、社員の関心が低いなど、様々な要因が考えられます。対策としては、目標をより細分化して達成感を味わえるようにする、担当者を決め協力体制を築く、取り組み状況を定期的に社内で共有し「見える化」する、成功事例を発表する機会を設ける、社員にとって身近なSDGsの話題(節電など)を取り上げるなどがあります。そして何より、経営者自身がSDGsや持続可能な経営の重要性を繰り返し伝え、率先して取り組む姿勢を見せることが、最も大きな推進力となります。

まとめ

この記事を通して、SDGsが工務店経営にとって、単なる社会貢献ではなく、持続可能な経営を実現し、企業の成長と発展に不可欠な戦略であることがご理解いただけたかと思います。SDGsへの取り組みは、ブランドイメージの向上、新たな顧客獲得、優秀な人材確保、サプライヤーとの関係強化、リスク低減、そして経営効率の改善といった多岐にわたるメリットをもたらします。

SDGsの実践は、まず自社の現状を分析し、関連性の深い目標を特定することから始まります。そして、環境、社会、経済それぞれの側面から、具体的な施策を実行に移します。省エネ住宅の推進や自然素材の活用は環境への貢献に、安全な職場づくりや地域貢献は社会への貢献に、そして高品質な施工や地域経済への寄与は経済的な持続性に繋がります。これらの取り組みを積極的に外部に発信することで、顧客や地域からの信頼を得て、企業の価値を高めます。

SDGsへの取り組みを持続可能な経営の核とするためには、一度きりの活動で終わらせず、定期的な見直しと継続的な改善が不可欠です。新しい技術や社会の変化に対応し、常に学び続ける姿勢が求められます。また、社員一人ひとりを巻き込み、組織全体で取り組むことが、成功の鍵となります。SDGsは、貴社の事業を新たな視点で見つめ直し、隠れた課題を発見し、そして何よりも新しいビジネス機会を創出するための強力なツールです。

さあ、今日からSDGsへの取り組み、そして持続可能な経営への第一歩を踏み出しましょう。それは決して難しいことではありません。日々の業務の中でできる小さな一歩の積み重ねが、貴社の未来を、地域社会の未来を、そして地球の未来を持続可能なものへと変えていきます。この記事で得た知識と具体的なアクションプランを胸に、ぜひ実践を開始してください。貴社のSDGsへの取り組みが、地域に根差した工務店の新たな可能性を切り拓くことを心から応援しています!

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浄法寺 亘

工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。 今動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」 ※8月実施予定。 住宅サイトの運営もしています。 福島県 喜多方市出身 県立会津高校卒 市立高崎経済大学卒 著書: 頼みたくなる住宅営業になれる本 https://x.gd/oatiM SDGsに取り組もう 建築業界編 https://x.gd/MXYJr とっておきの見込み客発掘法 https://x.gd/001or 主な講演: 鹿児島県庁主催「かごしま緑の工務店研修会」 リードジャパン主催「工務店支援エキスポ」(東京ビックサイト) 育英西中学校 その他住宅FCなど 活動実績 2019~ 千葉県にて里山竹林整備ボランティア 2020~ 木ッズ絵画コンクール
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この記事を書いた人

浄法寺 亘

工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。
今動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」
※8月実施予定。
住宅サイトの運営もしています。

福島県 喜多方市出身
県立会津高校卒
市立高崎経済大学卒

著書:
頼みたくなる住宅営業になれる本
https://x.gd/oatiM
SDGsに取り組もう 建築業界編
https://x.gd/MXYJr
とっておきの見込み客発掘法
https://x.gd/001or

主な講演:
鹿児島県庁主催「かごしま緑の工務店研修会」
リードジャパン主催「工務店支援エキスポ」(東京ビックサイト)
育英西中学校
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活動実績
2019~ 千葉県にて里山竹林整備ボランティア
2020~ 木ッズ絵画コンクール

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