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「内閣府beyond2020」の認定および「外務省JAPAN SDGs Action Platform」の紹介団体です。

従業員育成で工務店の生産性を高める

公開日: : 工務店 経営

工務店経営を取り巻く環境は日々変化しています。資材価格の高騰、人手不足、技術継承の課題、そして顧客ニーズの多様化など、多くの経営者が頭を悩ませていることでしょう。これらの PUSH 要因は、単なるコスト削減や営業強化だけでは乗り越えられない構造的な問題を含んでいます。ここで鍵となるのが、組織全体の底力を高めるための経営改善であり、その推進力となるのが他ならぬ「従業員育成」です。

従業員育成は、単に技術を教えるだけに留まりません。それは、社員一人ひとりの能力を引き出し、プロフェッショナルとしての自覚を育み、変化に対応できる柔軟な組織を作り上げるための戦略的投資です。適切な従業員育成は、作業の効率化による生産性向上、手戻りやクレームの削減による品質向上、そして何よりも社員のモチベーションアップと定着率向上に直結し、結果として持続的な経営改善へと繋がります。

「従業員育成に時間をかける余裕がない」「どうやって教えればいいか分からない」「せっかく育てても辞めてしまったらどうしよう」――もしかすると、あなたはこのような疑問や不安を抱えているかもしれません。この記事では、そのような経営者の皆様が抱える具体的な悩みに寄り添いながら、従業員育成を通じて工務店の生産性を根本から高め、確実な経営改善を実現するための実践的かつ具体的な HOW-TO を、ステップ形式で詳しく解説します。この記事を読み終える頃には、あなたの工務店が従業員の成長と共に一回りも二回りも大きくなる未来が見えているはずです。

従業員育成の「実践的」導入戦略:基礎から応用まで

工務店における従業員育成は、まさに未来への投資です。目の前の業務に追われ、育成まで手が回らないという声も聞かれますが、長期的な視点で見れば、育成こそが生産性を高め、経営改善を実現するための最も確実な道と言えます。ここでは、単なる技術指導に終わらない、成果に繋がる従業員育成の基礎と具体的な導入戦略を解説します。

なぜ今、従業員育成が重要なのか?

従来の工務店では、ベテランから若手へのOJTが中心でした。しかし、現代の環境ではそれだけでは不十分です。その理由は以下の通りです。

  • 技術継承の危機:熟練職人の高齢化が進む一方、若手への技術継承がスムーズに進んでいない現状があります。計画的な育成なしには、会社の技術力が衰退します。
  • 顧客ニーズの多様化と技術の進化:地球環境への配慮、省エネ住宅、IoT技術の導入など、建築に対する要求は高度化・多様化しています。従業員が常に新しい知識や技術を習得し続けなければ、競争力を維持できません。
  • 人材の流動化:魅力的な働きがいのある環境がなければ、優秀な人材は他社へ流出してしまいます。育成機会の提供は、従業員のエンゲージメントを高め、離職を防止する効果があります。
  • 生産性向上の限界:個人のスキルに依存したままでは、組織全体の生産性向上には限界があります。標準化されたレベルの高い技術を習得した従業員が増えることで、チーム全体の生産性が向上します。これは直接的な経営改善に繋がります。

育成計画を立てる前の準備:現状分析と目標設定

闇雲に研修や指導を始めても効果は薄いでしょう。まずは現状を正確に把握し、育成によって何を達成したいのかを明確にすることが重要です。

ステップ1:現状のスキルレベルと課題の洗い出し

まずは、各従業員が現在どのようなスキルを持ち、どのような課題を抱えているかを可視化します。

  • スキルマップの作成:担当してきた工事の種類、使用できるツール・機械、保有資格、得意な工法、マネジメントスキルなど、職種別に必要なスキル項目を設定し、各従業員のレベルを「初心者」「基礎」「応用」「指導可能」といった段階で評価します。ポイント:自己申告だけでなく、上司や同僚からの客観的な評価も加えるとより正確になります。
  • 業務上の課題分析:手戻りが多い工程、作業時間がかかりすぎている作業、品質にばらつきがある部分など、個々の従業員またはチーム全体が抱える業務上の課題を具体的に特定します。
  • 従業員本人との対話:従業員自身がどのようなスキルを習得したいと考えているか、どのようなキャリアパスを描いているかをヒアリングします。本人の意欲を引き出すことが育成成功の鍵です。

ステップ2:育成目標の設定

洗い出した現状と経営目標を踏まえ、「育成を通じて何を達成するか」を具体的に設定します。

  • 経営目標との連動:「来期における〇〇工事の受注数を〇〇%アップ」「〇〇工法を用いた住宅棟数を〇〇棟にする」「作業効率を〇〇%改善する」といった経営目標にどう貢献する育成なのかを明確にします。
  • 具体的で測定可能な目標:「〇〇の資格を〇年以内に取得する」「〇〇作業の所要時間を〇時間以内に短縮する」「〇〇に関するクレームを〇%削減する」など、誰が見ても達成度が分かる数値目標や具体的な行動目標を設定します。これは育成効果を測る上でも不可欠です。経営改善の成果を評価するためにも、指標設定は重要です。
  • 対象者別の目標設定:新入社員、中堅社員、ベテラン社員、事務職など、対象者グループごとに適切な目標を設定します。

育成計画の具体的な立て方

目標が定まったら、実践的な育成計画を策定します。

ステップ3:育成内容・方法の選定

設定した目標を達成するために、どのような内容を、どのような方法で教えるかを決めます。

  • OJT(On the Job Training):実際の業務を通じて先輩社員が指導する方法。工務店では最も一般的ですが、指導者の負担が大きい、教える内容にばらつきが出るという課題もあります。計画的に行うことが重要です。
  • OFF-JT(Off the Job Training):研修やセミナーなど、業務を離れて行う学習。専門的な知識や最新技術の習得に適しています。
  • 外部研修・セミナー:専門機関が提供する研修。体系的な知識や高度な技術を学ぶのに有効です。コストがかかるため、目的を明確に選定します。
  • 資格取得支援:業務に必要な資格(建築士、施工管理技士、各技能士など)の取得に向けた学習支援や費用補助。個人のスキルアップだけでなく、会社の信頼性向上に繋がります。
  • 社内マニュアル・eラーニング:標準的な作業手順や安全管理に関するマニュアル作成、動画コンテンツなどを活用した自己学習環境の整備。繰り返しの学習が可能で、教える側の負担も軽減できます。

ポイント:これらの方法を単独ではなく、組み合わせて活用することが効果的です。例えば、OJTを補完するためにマニュアルを作成したり、外部研修で学んだ内容を社内勉強会で共有したりといった連携を図ります。

ステップ4:スケジュールと予算の策定

計画を実行するための具体的なスケジュールと必要な予算を確保します。

  • 無理のないスケジュール設定:育成対象者の業務負荷を考慮し、現実的なスケジュールを立てます。短期的な目標と長期的な目標を設定し、段階的に進めます。
  • 予算の確保と費用対効果の検討:外部研修費、教材費、研修期間中の人件費などを算出し、育成にかかる費用全体を把握します。その上で、設定した育成目標が達成された場合の費用対効果を検討し、計画の妥当性を判断します。経営改善の観点から、投資対効果の高い育成策から優先順位をつけます。
  • 助成金の活用検討:従業員のスキルアップや雇用に関する助成金制度(例:人材開発支援助成金など)は多数存在します。積極的に情報収集し、活用を検討することで、育成コストを軽減できます。

ステップ5:評価方法の設計

育成が計画通りに進んでいるか、そして目標は達成されそうか、どのような成果が出ているかを測るための評価方法を事前に設計します。

  • 習熟度テスト:知識や技術の定着度を確認するためのテスト。
  • 実技評価:実際の作業や施工を通じて、スキルの定着度や品質を確認。
  • 目標達成度評価:ステップ2で設定した具体的な目標(資格取得、作業時間短縮など)の達成度を評価。
  • 行動観察・面談:業務への取り組み姿勢や他の従業員への影響、意識の変化などを観察し、定期的な面談で本人の自己評価も聞く。

ポイント:評価は単に優劣をつけるためではなく、育成計画の進捗確認と、今後の改善点を見つけるために行います。建設的なフィードバックが重要です。

効果的な育成のための「現場で使える」具体的な方法

計画通りに進めるためには、現場で根付く具体的な仕掛けが必要です。

  • メンター制度/ブラザー・シスター制度の導入:経験の浅い従業員に、年齢や社歴の近い先輩従業員が精神的なサポートを含めた指導役となる制度。質問しやすい環境を作り、孤独感を軽減し、早期の戦力化を促します。OJTの質を高める効果も期待できます。
  • 「なぜ?」を伝えるマニュアル作成:単なる作業手順だけでなく、「なぜこの工程が必要なのか」「この方法だとどういうメリットがあるのか」といった理由や目的を明確に記載したマニュアルを作成します。これにより、従業員は思考停止で作業するのではなく、意味を理解して取り組めるようになります。
  • 小さな成功体験を積ませる:難易度の低い task から任せ、成功体験を積ませることで、自信をつけさせます。成功した際には具体的に褒め、承認することが重要です。
  • 定期的な1on1面談:上司と部下が1対1で定期的に面談する機会を設けます。業務上の課題だけでなく、キャリアの悩みや目標設定について話し合うことで、従業員のモチベーション維持と成長をサポートします。ここでは、育成目標に対する進捗確認とフィードバックも行います。
  • 外部研修・セミナーの選び方と活用:従業員個々のスキルアップニーズだけでなく、会社の経営改善目標達成に繋がる内容であるかを基準に選びます。受講後は必ず社内での共有会を行い、学んだことを組織全体の財産にする工夫が必要です。
  • 最新技術・工法の学習機会提供:講習会の開催、展示会への派遣、オンライン学習プラットフォームの導入など、常に新しい情報に触れられる機会を提供します。

これらの実践的な方法を取り入れることで、従業員育成は単なる教育活動から、会社の成長と生産性向上を牽引する強力なエンジンへと変わります。これは、確実な経営改善への第一歩です。

経営改善×従業員育成:成果を最大化する具体的な取り組み

従業員育成は、単なる個人のスキルアップにとどまらず、組織全体の生産性向上、コスト削減、品質向上、顧客満足度向上、ひいては従業員満足度向上といった多岐にわたる経営改善に繋がる施策です。ここでは、従業員育成の取り組みを経営改善の視点と連携させ、その成果を最大化するための具体的な方法を解説します。

従業員育成を経営改善に結びつける視点

育成の取り組みがどのように会社の業績に貢献するのかを常に意識することが重要です。

  • 生産性向上への直結:
    • アクション:特定の作業に関する研修やマニュアル整備を行い、個々の作業速度や精度を向上させます。新技術の習得は、より効率的な工法導入を可能にします。
    • 成果:工事全体の工期短縮、一人当たりの対応可能件数増加、無駄な作業時間の削減。これが直接的に生産性アップに繋がります。
  • 利益率向上への貢献:
    • アクション:従業員が幅広い業務に対応できるよう多能工化を進めたり、付加価値の高い専門技術(例:特定の認定工法の施工)を習得させたりします。営業 담당 者への商品知識・提案力強化研修なども含まれます。
    • 成果:一人で複数の工程をこなせるようになることで人件費の効率化が図れます。対応できる仕事の幅が広がり、より高単価な案件を受注可能になったり、追加工事の提案力が高まったりすることで、売上増と利益率向上に貢献します。
  • コスト削減:
    • アクション:品質管理に関する教育を徹底し、手戻りやミスを減らします。安全教育により労災リスクを低減し、安全管理コストを削減します。工具や資材の適切な取り扱いに関する教育もコスト削減に繋がります。
    • 成果:手戻りによる追加費用や工期遅延に伴うペナルティの減少、労災発生による損失の回避、資材ロスや工具破損の削減。
  • 組織力の強化:
    • アクション:コミュニケーション研修、チームビルディング研修などを実施し、社員間の連携を強化します。定期的なフィードバックや評価制度を通じて、社員のモチベーションと会社へのエンゲージメントを高めます。
    • 成果:チームワーク向上による現場の雰囲気改善、情報共有の活性化、問題発生時の迅速な対応。優秀な人材の定着率向上は、採用コストの削減にも繋がります。経営改善は人材育成の成功と深く連動しています。

具体的な連携施策:育成成果を経営改善に繋げる

育成の取り組みと経営改善の目標を効果的に連携させるための具体的なステップです。

ステップ1:経営目標と育成目標の連動

これは計画段階でも触れましたが、継続的な連携が重要です。期初に設定した経営目標(売上、利益率、新規事業の立ち上げなど)に対して、従業員育成がどのように貢献できるかを具体的に落とし込みます。例えば、「ゼロエネルギー住宅の受注を増やす」という経営目標があれば、「ZEHコーディネーター資格取得支援」「ZEHに関する外部講習受講義務付け」「ZEH施工経験者による社内勉強会実施」といった育成目標を設定します。

ステップ2:育成成果の「見える化」と評価制度への反映

育成を通じて従業員がどのように成長し、それが会社の業績にどう貢献したかを明確に「見える化」します。

  • 具体的な成果測定:資格取得率、研修受講後の業務改善事例、担当現場の手戻り率・クレーム件数、作業効率のビフォー/アフター比較など、可能な限り定量的なデータで成果を示します。
  • 評価制度との連携:育成によって習得したスキルや達成した目標を、人事評価項目に組み込みます。評価結果を昇給、賞与、昇進などに反映させることで、従業員の育成へのモチベーションを高めると同時に、「会社は個人の成長を評価してくれる」という信頼感を醸成します。これにより、従業員は自らの成長が会社の経営改善に貢献していることを実感できます。

ステップ3:社内勉強会・事例共有会の実施

特定の従業員が研修や資格取得で学んだ知識・技術を、社内で共有する機会を設けます。

  • 形式:ランチタイムのミニ勉強会、週に一度の定例会、オンラインでの情報共有など、無理なく継続できる形式を選びます。
  • 内容:新しい工法の紹介、失敗事例とその対策、業務改善のアイデア、外部研修で得た知見など、現場で役立つ実践的な内容を中心にします。

これにより、個人の学びが組織全体の知識レベルアップに繋がり、情報共有の文化が醸成されます。

ステップ4:クロスファンクショナルな育成

特定の部門や職種だけでなく、他の部門や職種に関する基本的な知識・スキルを学ぶ機会を提供します。例えば、現場の職人が営業プロセスを学んだり、事務職が建築の基礎知識を学んだりといった具合です。

これにより、異なる部門間の連携がスムーズになり、業務効率が向上します。また、従業員は多角的な視点を持つことができるようになり、自身の業務を全体の中でどう位置づけるかを理解しやすくなります。これは、複雑な顧客ニーズに対応する上で重要な能力となります。

ステップ5:改善提案制度の構築

現場で働く従業員こそが、業務上の課題や改善のアイデアを最も理解しています。従業員が自由に業務改善や新しい取り組みに関する提案をできる仕組みを構築します。

  • 仕組み:提案BOXの設置、専用の社内システム、定期的なブレインストーミング会議など。
  • 評価とフィードバック:提案に対しては必ずフィードバックを行い、優れた提案は積極的に採用し、実施した際には提案者に適切な評価や報酬を与えます。

これにより、従業員は「自分たちの会社を良くしていく」という当事者意識を持つようになり、自律的な経営改善活動が生まれます。

潜在的な疑問への回答(Q&A形式に準ずる)

従業員育成による経営改善を進める上で、よくある疑問や懸念について解説します。

Q: 育成に時間やコストがかかりすぎるのでは?目の前の利益を優先したいのですが。
A: 短期的にはコストや時間がかかりますが、長期的な視点で見れば、育成は最も確実かつ効果的な投資です。手戻りやクレームの減少、作業効率の向上による工期短縮、優秀な人材の定着は、巡り巡ってコスト削減と利益増加に繋がります。計画段階で費用対効果をしっかり検討し、国の助成金制度なども積極的に活用しましょう。また、全ての従業員に高度な育成を行うのではなく、会社の経営改善目標達成に不可欠なスキルを持つ人材から重点的に育成するなど、優先順位をつけることも現実的な対応策です。

Q: せっかく育成してもすぐに辞めてしまうのが心配です。
A: 育成は大切ですが、それだけでは不十分です。育成機会があることは従業員の定着率向上に繋がる重要な要素の一つですが、それ以上に働きがいのある環境整備が不可欠です。具体的には、適切な評価とそれに見合う報酬、オープンなコミュニケーション、キャリアパスの提示、そして何よりも経営層や上司との信頼関係が重要です。育成と並行して、これらの離職防止策にも包括的に取り組むことが重要です。育成された人材が活躍できる場所、貢献を実感できる場を提供することが、彼らが会社に留まる最大の理由となります。

Q: ベテラン社員への育成はどうすれば良いですか?今さら学ぶことはないと言われそうで…
A: ベテラン社員は貴社の技術力や経験の核となる存在です。新たな技術習得だけでなく、彼らの指導力・マネジメントスキルの向上や、安全管理、品質管理に関する最新知識の習得を促すことも重要です。また、彼らを育成の「教える側」として活用する(メンター、社内講師など)ことで、 motiva tio n を高め、培ってきた知識・経験を組織全体に還元してもらう役割を与えることも有効です。長年の経験を活かせる新たな役割やポストを用意することも検討しましょう。

Q: 若手社員がなかなか育たない、指示待ちが多いと感じます。どのように育成すれば良いでしょうか?
A: 若手社員には、細かく具体的な指示と、定期的なきめ細やかなフィードバックが必要です。彼らが主体的に動けるようになるためには、まず小さな成功体験を積ませ、自信を持たせることが重要です。目標設定を一緒に行い、達成に向けたプロセスを具体的に示し、その過程で適切なアドバイスと励ましを与え続けることが大切です。メンター制度を活用したり、若手が意見を言いやすい雰囲気を作ったりすることも効果的です。彼らのキャリアに対する希望を聞き、会社での成長イメージを持たせることも育成意欲を高める上で重要です。

従業員育成は、これらの疑問や懸念を一つ一つ解消しながら、経営改善と一体となって進めることで、その効果を最大化することができます。従業員の成長が直接的に会社の競争力強化に繋がることを実感できるはずです。

経営改善を継続的に成功させるための「次の一手」

従業員育成の取り組みを始め、その成果を経営改善に繋げることができたら、次に考えるべきは、この良い流れをいかに継続させ、さらに発展させていくかです。一時的な施策に終わらせないための「次の一手」について掘り下げます。

育成効果の測定と評価方法

ステップ5で評価方法の設計について触れましたが、ここではより具体的に、継続的な改善のための評価に focus します。

  • 定量的な指標:
    • 生産性関連:特定の作業時間短縮率、一人当たりの担当可能現場数、資格取得率、新技術導入による効率改善率など。
    • 品質関連:手戻り率、クレーム件数とその削減率、検査合格率など。
    • コスト関連:資材ロス削減率、工具・機械の修繕費減少率、労災発生率など。
    • 財務関連:部署ごとの売上・利益率の変化、育成投資に対するリターン(ROI)など。
  • 定性的な指標:
    • 従業員満足度:定期的なアンケートや面談を通じて、育成に対する満足度、働きがい、キャリアに対する意識変化などを把握します。
    • 組織風土:部署間の連携、情報共有の度合い、新しいことへの挑戦意欲、助け合いの精神などが醸成されているか。
    • 顧客満足度:従業員のスキル向上や対応力向上による顧客からの評価の変化。

これらの指標を定期的に測定し、設定した目標に対してどの程度達成できたのかを評価します。評価結果を関係者(経営層、育成担当者、本人、上司など)で共有し、次の育成計画や全体の経営改善策に反映させることが最も重要です。

育成体制の定期的な見直しと改善サイクル

育成計画は一度立てたら終わりではありません。常に外部環境や社内の状況変化に応じて見直し、改善していく必要があります。P-D-C-A(Plan-Do-Check-Action)サイクルを適用します。

  • Plan (計画): 前回までの評価結果や新たな経営目標に基づき、次期の育成計画を立てます。
  • Do (実行): 計画に沿って育成施策を実行します。
  • Check (評価): 設定した指標を用いて、育成の進捗状況と効果を評価します。
  • Action (改善): 評価結果をもとに、計画や実施方法の問題点を特定し、改善案を立て、次のサイクルに繋げます。

このサイクルを回すことで、育成施策は陳腐化せず、常に最も効果的で経営改善に貢献する形へと進化していきます。例えば、新しい工法が主流になったら関連研修を取り入れる、特定の部門の手戻り率が高いままならその原因を分析して育成内容を見直す、といった対応が迅速に可能になります。

経営者自身の役割と心構え

従業員育成と経営改善は、経営者自身の強いコミットメントなしには成功しません。経営者には以下の点が求められます。

  • 育成への強い意志と投資の姿勢:育成はコストではなく、未来への投資であるという mindset を持ち、必要な時間、予算、人的リソースを惜しまない姿勢を示します。
  • 従業員の成長を評価・承認する文化の醸成:従業員が新しいスキルを習得したり、改善提案を行ったりした際に、正当に評価し、具体的な言葉で承認します。社員総会や社内報などで積極的に成功事例を紹介し、組織全体で互いの成長を称賛する文化を作ります。
  • 自らも学び続ける姿勢:経営者自身が常に新しい知識(経営、技術、市場動向など)を学び、変化に対応しようとする姿勢を示すことは、従業員にとって何よりの手本となります。「社長も学んでいるのだから、自分たちも学ばなければ」という意識が芽生えます。
  • 育成責任者の明確化:誰が育成計画の推進役となり、誰が各施策の責任を持つのかを明確にします。経営者が全体を統括しつつ、具体的な実務は担当者に任せる体制を構築します。

従業員育成を起点とした、さらなる経営改善の可能性

従業員育成が組織に定着し、効果が見え始めてくると、それはさらなる経営改善の可能性を広げます。

  • 新規事業・サービスへの挑戦:従業員が新しい技術や知識を習得することで、これまでは対応できなかった分野(例:リノベーション、耐震改修、デザイン住宅など)への進出が可能になります。
  • 組織全体のパフォーマンス向上:個々のスキルアップだけでなく、チームワークやコミュニケーション能力が向上することで、組織全体の課題解決能力や変化への適応力が向上します。
  • 採用力の向上:「この工務店では成長できる」「新しい技術を学べる機会がある」という評判が広まることで、優秀な人材が集まりやすくなります。採用力の向上は、人手不足が深刻な工務店業界において非常に重要な経営改善要素となります。

従業員育成は、一度取り組めば終わりというものではありません。それは、環境変化に適応し、持続的な成長を遂げるための終わりのない旅路です。この旅路において、従業員一人ひとりの成長が、あなたの工務店の経営改善を力強く推し進める原動力となるのです。

まとめ

この記事では、工務店の持続的な成長に不可欠な経営改善を実現するための鍵として、従業員育成がいかに重要であるかを詳しく解説しました。資材高騰、人手不足、技術継承といった課題に対し、単に耐え忍ぶのではなく、従業員の能力を最大限に引き出す育成投資こそが、生産性向上と競争力強化に繋がる最も効果的なアプローチであることをお伝えしました。

まずは、現状を正確に分析し、経営目標と連動した具体的な育成目標を設定することから始めてください。そして、OJT、OFF-JT、外部研修、マニュアル作成、メンター制度など、様々な育成手法の中から自社に合ったものを組み合わせ、無理のない計画を立て、実行に移しましょう。育成成果を定量・定性両面から測定し、評価制度に適切に反映させることで、従業員のモチベーションを高め、育成への取り組みを加速させることができます。

また、育成を通じて得られた知識やスキルを組織全体で共有する仕組み(社内勉強会や改善提案制度)を構築し、全ての従業員が経営改善の一員であるという意識を醸成することが重要です。経営者自身が育成への強い意志を持ち、従業員の成長を応援し続ける姿勢を示すことは、取り組み成功の絶対条件です。

従業員育成は短期的な MAGIC を生むものではありませんが、着実に、そして確実にあなたの工務店を強くします。従業員一人ひとりの成長が、そのまま会社の技術力、対応力、そして収益力となり、不確実な時代においても揺るぎない経営基盤を築くことに繋がります。今日から、小さな一歩でも構いません。まず現状把握と目標設定から、従業員と共に歩む経営改善の道を力強く踏み出してください。あなたの工務店が、従業員の笑顔と共に未来へとさらに発展していくことを心から応援しています。

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プロフィール画像

この記事を書いた人

浄法寺 亘

工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。
今動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」
※8月実施予定。
住宅サイトの運営もしています。

福島県 喜多方市出身
県立会津高校卒
市立高崎経済大学卒

著書:
頼みたくなる住宅営業になれる本
https://x.gd/oatiM
SDGsに取り組もう 建築業界編
https://x.gd/MXYJr
とっておきの見込み客発掘法
https://x.gd/001or

主な講演:
鹿児島県庁主催「かごしま緑の工務店研修会」
リードジャパン主催「工務店支援エキスポ」(東京ビックサイト)
育英西中学校
その他住宅FCなど

活動実績
2019~ 千葉県にて里山竹林整備ボランティア
2020~ 木ッズ絵画コンクール

工務店の集客・営業ならジーレックスジャパン →ホームページはこちら

商品の差別化へ!制振装置はこちらから →耐震・制振装置

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