コミュニティービルダー協会は
「内閣府beyond2020」の認定および「外務省JAPAN SDGs Action Platform」の紹介団体です。

事業譲渡で事業承継!工務店の選択肢

公開日: : 工務店 経営

工務店経営を続けていく中で避けて通れない大きな課題が、事業承継です。「いつかは自分も次の世代へ託さないと」と考えながらも、「何から手を付ければ良いかわからない」「スムーズにバトンを渡せるだろうか」といった不安をお持ちの方は多いのではないでしょうか。特に工務店はオーナーの個人技や地元との信頼関係が事業の屋台骨になっているケースが多く、承継のあり方には繊細さが求められます。昨今では事業承継の「第三の選択肢」として事業譲渡が注目され始め、多様な手法を知りたいという声も増えています。

本記事では、事業承継において事業譲渡という方法をどのように実践し、自社に合った最適な形で未来へ事業を繋げていくか、そのステップバイステップの具体的な手順を解説します。あなたの事業に合った選択をするための実務的なチェックポイントや、戦略立案のコツ、専門家活用法も詳しくご案内。さらに、実際に生じやすい疑問にもQ&Aで応答し、検討から実行までを着実にサポートします。「良い形で工務店を承継したい」「事業譲渡のリスクと成功のポイントが知りたい」と思う全ての経営者の方に、実際に踏み出せる具体的アクションと安心のヒントをお届けします。

事業譲渡の「実践的」導入戦略:基礎から応用まで

多くの工務店が、後継者不足や経営者の高齢化といった問題に直面しています。こうした状況で選ばれることの多い事業承継ですが、近年は事業譲渡による承継が注目されています。「事業譲渡って何?具体的にどのような準備が必要?」という疑問にお答えしながら、実際の進め方を順を追ってご案内します。

1. 事業承継・事業譲渡の基礎知識を整理する

  • まず、「事業承継」とは、事業を次世代へ引き継ぐ幅広い概念であり、自社の従業員・親族・第三者(外部)など様々な方法があります。その一つが「事業譲渡」で、経営権や資産を第三者へ有償で移すことを指します。そう聞くと「M&Aでは?」「吸収合併?」と混同しがちですが、事業譲渡は会社の一部または全体の事業単位譲渡に特化した手法です。
  • 大切なのは、自社の強み・弱み、今後も地元に根差して存続すべき価値を整理し、「どこまで、誰に、どのように」引き継ぐべきかを明確にすること。これが事業承継の最初のステップです。

2. 事業譲渡の適用場面を見極める

  • 「適切な後継者がいない」「親族や社員への承継が現実的でない」「新しい事業領域に舵を切りたい」など、事業譲渡は明確な動機が必要です。単なる世代交代ではなく、新たな発展の道筋となるケースも多いです。
  • また、工務店においては、長年培った技術や地域密着の営業基盤なども引き継ぎの資産となります。「譲渡対象としてどこまでを含めるか」を具体的に洗い出す作業が欠かせません。

3. 事業譲渡を成功させるための準備・事前点検ステップ

  • 自社評価・診断
    • まず、財務情報・経営状況・各種契約・顧客リストなどを整理し、事業の全体像を「見える化」します。どの部門を譲渡するか、従業員の処遇、機材や在庫、外部契約の名義変更の要否など、一つひとつ具体的に把握しましょう。この段階で専門家(中小企業診断士、税理士等)のチェックを受けるのもおすすめです。
  • 事業価値の算定
    • 工務店の事業価値は単なる「帳簿価格」に留まらず、「どんな地域ネットワークを持っているか」「年間の受注予想」「過去の施工実績」まで細かく換算します。近年は簡易な自動算定ツールもありますが、可能であれば公認会計士などによる専門的な評価を組み入れましょう。
  • 譲渡後のビジョン設定
    • 「譲って終わり」にならないために、事業承継後に「顧客や従業員とどう関わるか」「地域への貢献をどう託すか」などの方針まで計画に盛り込みましょう。

4. 事業譲渡の実際の進め方:ステップバイステップ

    1. 専門家・アドバイザー選び:事業譲渡は法務・税務・労務・契約など複数分野の知識が必要となり、適切なアドバイザー(税理士、公認会計士、中小企業診断士、M&A仲介業者など)を巻き込むことで、リスクの洗い出しや成功率を大幅に高められます。
    2. 意向表明・候補選定:どのような相手に譲渡するか、業界関係、取引先、異業種など複数候補を想定し、断続的な情報交換や事前相談を行いましょう。秘密保持契約(NDA)を活用することで情報流出を防げます。
    3. 基本合意とデューデリジェンス:譲渡条件について基本合意書を交わし、相手側による詳細な事業調査(デューデリジェンス)に対応します。この過程で新たなリスクや譲渡対象の再調整が必要となる場合もあります。
    4. 最終契約・クロージング:正式契約書を作成し、必要な登録・引継ぎ作業を実施します。顧客や取引先への説明・アナウンスも欠かせません。
    5. アフター承継の関与調整:必要に応じて、“一定期間はサポートを続ける”“相談役として関わる”など、譲渡後のフォロー体制も整えておくと良いでしょう。

5. 注意すべき落とし穴と成功のポイント

  • 未整理の債務や係争中案件がある場合、譲渡が頓挫するリスクも。トラブルの芽は徹底して排除しておくことが重要です。
  • 従業員や職人さんの不安をケアし、「事業が今後も継続する」という安心感を伝える説明の場作りが肝心です。単なる「売却」ではなく「バトンタッチ」として語る工夫をしましょう。
  • 譲渡先と自分自身との価値観共有も大切。単に“高く売れば良い”のではなく、事業の「魂」を共鳴できる相手を選ぶことが、地域密着の工務店承継成功の秘訣です。

事業承継×事業譲渡:成果を最大化する具体的な取り組み

「単に事業を譲るだけでなく、譲った後の事業の発展・安定も見据えたい」という声は多いもの。ここでは、事業承継と事業譲渡を組み合わせて成果を最大化するためのアプローチ、現場で役立つ具体策を示します。また、よくある疑問・悩みにもQ&A形式で答えます。

1. 承継前後で絶対にすべきコミュニケーションと運営工夫

  • 従業員・顧客への情報共有
    • 事業譲渡の話が進みだした段階で、主要従業員に早い段階で「今後の展望」として共有しましょう。ゴシップや不安感が社内に広がる前に、「仕事と雇用の安定」を軸として丁寧に説明を行いましょう。
    • 顧客(特に長期取引先・OB顧客)へも、正式発表前の“伏線説明”や“譲渡後の支援計画”をまとめた案内状を作成しましょう。信頼維持が事業承継の成否を決めます。
  • 譲渡後の新体制構築
    • 譲渡先との合同会議・価値観すり合わせ、ブランド・社名・ロゴの扱い、標準業務フローの再整備、社内ルールの一時的な重複運用など、具体的なルール作りも重要です。「すぐには“統合”しない」移行期間を設けることで、混乱を防ぐことができます。

2. 事業承継・事業譲渡のステップ:工務店向け10のアクションプラン

  1. 自社の現状整理(財務・強み・課題・譲渡対象等の棚卸し)
  2. 承継方針の明文化(親族内?社内?第三者?)
  3. 一時的な経営安定策(急な人材流出・顧客離れ対策)
  4. 継続性を訴えるPR(地元やSNS、ホームページで事業承継の意義を発信)
  5. 法務・財務の専門家と事前相談
  6. 譲渡相手の条件・理念案のまとめ
  7. 第三者候補へのアプローチ・秘密保持契約
  8. 希望条件のすり合わせと契約書案作成
  9. 従業員・顧客向け説明会の開催
  10. アフター承継フォローの計画化

3. よくある疑問まとめ(Q&A)

  • Q1. 親族や従業員への事業承継ではなく、事業譲渡を選ぶメリットは?
    A1. 後継者不在時でも時間をかけて譲受先を探せ、資金化(リタイア資金)が得やすい点、依然として工務店ブランドや雇用が存続しやすいメリットがあります。
  • Q2. 事業譲渡時にトラブルになるポイントは?
    A2. 契約内容(引継ぎ対象の明確化)、簿外債務や保証の残存、従業員の雇用条件、取引先契約などが典型です。弁護士・税理士の事前チェックが重要です。
  • Q3. 小規模工務店でも事業譲渡はできる?
    A3. 後継候補者や地元業者とのネットワーキング、人材・ノウハウ・地場ブランドが意外と高く評価されるケースも。地域金融機関や自治体の支援も活用しましょう。
  • Q4. 事業譲渡と会社売却(株式譲渡)はどう違う?
    A4. 事業譲渡は“事業単位”で資産・負債・契約等の選別ができ、不要な資産やリスクを切り離しやすいのが特徴です。一方会社売却(株式譲渡)は法人格まるごと譲る手法です。
  • Q5. 事業譲渡後の社風や雇用は守れる?
    A5. 十分なコミュニケーションと“承継計画書”作成で現場意見を反映させやすくなります。アフター承継の役割定義が大事です。

事業承継を継続的に成功させるための「次の一手」

一度事業承継・事業譲渡を実行したらゴール、ではありません。新体制の現場が安定し、取引・地域の信頼が損なわれていないか、継続的にモニタリングすることが大切です。また、多くの工務店が抱える「予想外の事態」や「急なスタッフ減少」「方針転換」を乗り越え、事業を持続可能にしていく仕組みづくりについても解説します。

1. 承継後モニタリング・効果測定

  • 譲渡後半年~1年程度は、「現場の働き方」「社員・職人のモチベーション」「顧客からのクレーム有無」などを定期的にチェックします。数字(売上・利益)はもちろんですが、「現場の声」「OB顧客の反応」など定性的な意見収集も非常に重要です。
  • 月次会議やOB会、現場見学イベントなどを継続開催し、「変化をキャッチできるアンテナ」として機能させましょう。

2. 継続的な改善・事業モデル進化策

  • 業界構造や法規制が急速に変化する今日、承継後も「新しい工法」「IT活用」「保証体制の強化」など小さなイノベーションを重ねていくことが、事業継続のカギとなります。
  • 譲受先との合同プロジェクト(新商品開発、エリア拡大、デジタルツール共同導入など)を企画することで、承継効果が「新たな成長」に直結します。

3. セカンド承継・複数社連携への備え

  • 一度の事業承継・事業譲渡で終わらず、「次もまた新しい担い手を探せる体制」「組合・協議会との連携」「他社との共同出資・業務提携」など複数ルートを常に模索する姿勢が求められます。
  • 工務店業界では業界情報や後継者探しをサポートするアライアンス組織、ファンド支援制度、自治体のWEB情報窓口などを積極活用しましょう。

4. 事業承継マニュアル・ナレッジの蓄積

  • 承継プロセスの記録・振り返りをマニュアル化し、ノウハウ・失敗事例・成功パターンを社内に蓄積しましょう。これが将来の“第二の承継”や社外ネットワークへの情報提供にも役立ちます。

まとめ

工務店の未来を真剣に考えた時、事業承継は避けて通れません。事業譲渡を視野に入れることで、想像以上に多様な可能性と出口があることに気づかれたことでしょう。まずは現状整理と価値観のすり合わせ、そして専門家との連携が出発点です。続いて、ご紹介した具体的なステップや10のアクションプランに沿って、実務を一つ一つ進めてください。受け渡した後も、現場の声や数値で承継効果を計測し、時には体制を柔軟に見直す“次の一手”が、より強い工務店づくりへの第一歩となります。悩みや迷いもあるかもしれませんが、自ら動き一歩踏み出すことで、必ずや事業と地域が次世代に照り映える未来へつながります。あなたの“志”が未来に継がれることを、心から応援しています。

この記事を書いた人

プロフィール画像

浄法寺 亘

福島県 喜多方市出身。県立会津高校、市立高崎経済大学卒。工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。現在動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」。住宅情報サイト「ハウジングバザール」の運営にも携わっている。

著書:
頼みたくなる住宅営業になれる本
https://x.gd/oatiM
SDGsに取り組もう 建築業界編
https://x.gd/MXYJr

主な講演:
鹿児島県庁主催「かごしま緑の工務店研修会」
リードジャパン主催「工務店支援エキスポ」(東京ビックサイト)
育英西中学校、その他住宅FCなど

活動実績
2019~ 千葉県にて里山竹林整備ボランティア
2020~ 木ッズ絵画コンクール

工務店の集客・営業ならジーレックスジャパン →ホームページはこちら

商品の差別化へ!制振装置はこちらから →耐震・制振装置

友達申請お待ちしてます! →代表浄法寺のfacebook

工務店のネット集客ならこちら →工務店情報サイト ハウジングバザール

関連記事

住宅展示場来場者への効果的なアフターフォロー

2025/07/18 |

近年、工務店を取り巻く環境は大きく変化し、単に「家を建てる」だけでは顧客に選ばれにくい時代となりまし...

記事を読む

工務店 集客 住宅省エネ2024キャンペーン受付開始

2024/07/05 |

国土交通省・経済産業省・環境省の3省連携で行われている「住宅省エネ2024キャンペーン」に関連し...

記事を読む

イベントの費用対効果を最大化する予算配分と評価方法

2025/08/23 |

工務店を経営されている皆さまは、集客や見込み客との信頼関係構築のために、さまざまなイベント開催に取り...

記事を読む

住宅展示場の費用対効果を最大化する出展計画

2025/07/14 |

工務店経営者の皆様が抱える悩みの一つが「住宅展示場への出展は本当に効果があるのか」「広告費や人件費を...

記事を読む

  • 木の家住宅サイト『ハウジングバザール』

    もし、木の家をつくっていて、もっと多くのお客様と出会いたいという会社さんはぜひ見てください。
    掲載のお問合せは、画像をクリックして下さい。

  • 協会の著作

    代表理事の浄法寺が書いた住宅営業向けの本です。特にこれからの住宅営業向けに基本的な考え方と流れについて書いています。

  • 協会の著作

    代表理事の浄法寺が「SDGsをどうすれば建築業に活かせるか」を具体的な事例を取り入れながら書いた本になります。

  • 当協会監修の本です。工務店さんの集客に役立つアイデアがたくさん詰まってます!!

  • 僕たちが応援している【建築会社ができる社会貢献】のひとつのかたちです。

PAGE TOP ↑