共働き世代に快適を！モデルハウスの家事ラク提案

工務店の経営現場を取り巻く環境は、近年めまぐるしく変化しています。その中で課題となるのが「本当に暮らしやすい家」の提案力です。とくに注文住宅の購買層で大きなウエイトを占めるのが仕事と家庭を両立する共働き世代。彼らの家づくりで最も注目されているのが「毎日の家事をいかにラクに、シンプルにできるか」というポイントです。だからこそ、モデルハウスの提案や体験の場づくりにも時代に合わせた工夫と変化が求められています。

「共働き世代に選ばれるモデルハウスの条件とは？」「自社で採り入れられる『家事ラク』の仕掛けって何？」「どのような展示・演出を実践すれば成果につながる？」そんな多くの経営者や現場責任者、営業スタッフの皆さまの疑問に、この記事は最新の具体事例と実践ノウハウで直接お応えします。

この記事では、共働き世代向けにフォーカスしたモデルハウス戦略の立案から、家事ラク提案の仕組み化、運用・効果測定まで、すぐに実行できるアクションステップを詳しく解説します。今日から取り組みを始めるための実践ポイントを得て、差別化と受注率アップを目指していただけます。

共働き世代向けの「実践的」導入戦略：基礎から応用まで

まずは、現代の共働き世代が家づくりに求めているもの、そして、それを実現するモデルハウスの役割について把握することが重要です。以下に、共働き世代向けに実効性の高い導入ステップをまとめます。

1. 共働き世代の暮らしに徹底的に寄り添う

共働き世代がかかえる「朝のバタバタ」「帰宅後のゆとり不足」「家事分担問題」など暮らしの真の課題を、まず知ることから始めます。顧客ヒアリングやアンケート、スタッフ自身の子育て・共働き経験などをもとに、具体的な生活シーンを想像・書き出してください。その上で、

• 1日の生活フローに沿った家事動線の見直し
• 設備や収納の在り方がその家庭に合っているかの検証
• 使用頻度や使う人それぞれへの配慮ができているか

を客観的にチェックしましょう。

2. モデルハウスの主要テーマを「家事ラク」と設定

導入モデルハウスではテーマの明確化が重要です。人気住宅設備やトレンド間取りの単なる展示に留まらず、「共働き家族が本当に助かる工夫」をメインコンセプトに打ち出します。例えば

• 玄関～洗面～キッチンの直線的家事動線
• 日常着や子どもの支度が完結する多目的収納スペース
• 共働きだからこそ使うスマート家電＆IoT活用ゾーン
• 干す＆畳むが１カ所で済むランドリールーム体験

など、ご家族の毎日の現実的な動きをベースにしたゾーニングや展示を意識しましょう。「このモデルハウスは共働き世代向けなんだ」と来場者が即、体感できるコンセプト作りが鍵です。

3. 実際の家事ラク体感を「ストーリー仕立て」で展示

モデルハウスでは、単に物件を見せるだけでなく、「朝の出勤・保育園支度」「夕方の買い物帰宅～夕食準備」「仕事からの帰宅・家族時間」など、タイムラインに沿った生活シーンを再現してみましょう。
具体的には

• 混雑しやすい朝の支度時の動線に「時短スルー洗面」や「朝食サッと準備パントリー」
• 買い物荷物の一時置き＆パントリー直結動線
• 洗濯終わりに洗面室横で「干す」「畳む」「アイロン」まで完結

など、リアリティのある展示・案内が大きな共感を生みます。ここで共働き世代向けの本気度が伝わり、商談率・成約率も大幅にアップします。

4. 実践ポイントを盛り込んだモデルハウス設計の手順

1. まずターゲットとなる共働き世代の年齢層・世帯人数・生活パターンをペルソナ設定。
2. そのペルソナの「朝~夜」タイムスケジュールを徹底分析し、要望や悩みをピックアップ。
3. ピックアップ課題に対する「家事時短スペース」「家事シェア設備」「自動化（IoT）」など具体的なモデルハウス設計要素をリスト化する
4. 設計案ごとに、スタッフや実際の共働き世代のヒアリング・レビューを繰り返し、導線の無駄や使い勝手を磨き上げる
5. こうして完成した“実体験ベース”のモデルハウスを、「誰のためのものか」説明できるストーリーと共に公開・運用開始する

5. スタッフ教育と現場一体の運営体制づくり

「展示・説明→体験→改善」まで一貫して現場スタッフが「共働き世代向け家事ラク提案」を理解し、実践できる体制を整えましょう。ロールプレイやモデルハウス内ウォークスルー研修、顧客フィードバックQ&A会議の開催なども効果的です。

6. 競合との差別化チェックシートの作成

近隣競合のモデルハウスを見学したうえで、「家事ラク設備」「動線設計」「説明・提案内容」などで自社と比較できる独自のチェックシートをつくりましょう。差別化ポイントが可視化でき、新たな工夫や打ち出しの材料になります。

7. 導入時のお悩みQ&A

• Q. 家事ラクをテーマにすると女性寄りになり過ぎませんか？
  A. 共働き世代向けで重視すべきは「男女どちらもストレスなく家事ができること」です。間取りや動線を誰でも使いやすい形にすることで「家族で家事を分担しやすい住まい」が打ち出せます。
• Q. 既存モデルハウスを今から変えても間に合いますか？
  A. 今ある展示物の動線や案内プレートを工夫する、簡単な動線展示を追加するだけでも新しい訴求が可能です。案内方法やチラシに意識を向けてもすぐに効果が出やすいでしょう。

モデルハウス×共働き世代向け：成果を最大化する具体的な取り組み

1. 企画・設計段階で実践すべき5つのポイント

1. 1) 家事動線の一元化
   洗濯→干す→収納→着替えまでが直線的又は1フロアで完結する動線を必ずモデルハウス内に表現してください。特に洗濯動線を意識したランドリールーム、ファミリークロークは共働き世代向けの導入必須設備です。
2. 2) 食事・収納スペースのミックスゾーニング
   パントリー直結のキッチンや、朝の慌ただしい動線を意識したダイニング配置、食品ストックの見える化収納など、使う現場目線でゾーニングを組み直しましょう。
3. 3) スマート家電・IoTの体験
   自動調理家電、ロボット掃除機、宅配ボックス、室内外カメラ連動など、共働き家族の時間と安心を守るテクノロジーを「来場者が実際に触れて体感できる」点が重要です。
4. 4) パターン別・家族構成別のプチモデル体験
   お子様がいる／いない世帯、二世帯同居、テレワーク併用家族など、来場者の属性に応じた複数パターンの「モデルケース」を展示案内できる柔軟な設営が高評価につながります。表示説明や生活シナリオPOPも有効です。
5. 5) 共働き世代向けの「家事分担しやすい仕組み」
   たとえば生活用品の共用収納や家事一覧ボード、入浴・洗濯・ゴミ出しルートの共通理解パネルなどを置き、日々の「家事見える化」アイデアも展示してください。具体的な「ここまでやる」意識を伝えましょう。

2. 来場者体験を最大化する演出とオペレーション

1. 来場前情報の充実
   WEB・SNSやチラシで「共働き世代向け家事ラク提案モデルハウス」と明記し、家事動線の一部や設備の特徴を写真やショート動画付きで訴求しましょう。期待感が高まり、見学予約にもつながります。
2. 来場直後のヒアリングカード導入
   受付で「家事・仕事・子育ての困りごと」を簡単に記入してもらい、それをもとに案内スタッフが「この方には何を強調・提案すべきか」即時共有する仕組みをつくりましょう。漠然案内のムダがなく個別最適のご提案が可能です。
3. ストーリー体験型案内
   間取りや設備説明を淡々とするのではなく、「朝7時、出勤前のお母さんは…」「夜7時、お父さんが保育園迎えから帰宅して…」と、生活ストーリーに添った会話・案内で感情移入を誘います。
4. 来場後フォロー体制の強化
   来場アンケートのフィードバックを必ず共有し、次回商談でも「前回課題に出た○○、この設備ならこう解決できます」と提案をつなげましょう。提案資料や個別プラン例の郵送・メール配信も効果的です。

3. モデルハウス施策の効果的な社内展開

• スタッフ間で定期的に「成功・失敗事例」「来場者の声」を共有する工務店独自のナレッジミーティング実施
• 家事ラク提案で成約につながった実例、逆に響かなかった事例の分析・改善を惜しみなく蓄積
• 広報・WEB担当とも連携し、SNSなどで「実際にモデルハウスで体験できること」を連続発信

4. 共働き世代向けモデルハウスによくある疑問Q&A

• Q. どの程度リアルな設備や家事動線まで再現すべきですか？
  A. できるだけ「作り込み」より「使い勝手・動線の現実性」を重視しましょう。必要なら、簡易な家具や収納例、小型家電もダミーでなく実働展示としてください。
• Q. 共働き世代向け訴求は、単身者やシニア層にはどう響きますか？
  A. 「使いやすい住まい」「シンプルな家事動線」は全世代にも訴求力があります。案内段階で個別の使い方を示せば、広く共感を得ることができます。
• Q. 高コストになるのでは？
  A. すべてを最新設備で固める必要はありません。細やかな収納配置、仕切りや引き戸、棚の高さ・位置変更など、コストを抑えつつアイデアで差別化できます。「時短提案」「ストレス軽減策」の演出が重要です。

モデルハウスを継続的に成功させるための「次の一手」

ステップ1　効果測定とフィードバックループの構築

モデルハウスを一度設計・施工したら終わりではありません。共働き世代向け提案が本当に響いているか、数値・定性の両面から効果測定を必ず行いましょう。実施するべき具体的アクションは以下です。

• 来場者の属性と「来場目的」集計（家事動線重視者の割合を把握）
• 「共働き世代向け」「家事ラク」設備案内時の成約率・再来場率をスタッフ毎に記録
• 来場アンケート・事後名簿調査で「何が印象に残ったか」「もっと○○してほしい」など改善要望を収集
• 得られた声・データをもとにモデルハウスの配置変更や説明資料追加を即座に反映

ステップ2　効果が出るまで「小さな改善」を積み重ねる

実際にモデルハウスを運用する中で、共働き世代の生の声や営業現場の課題は日々変化します。そのために「展示レイアウトの改良」「体験ストーリーの刷新」「スタッフの案内パターン増強」を、月次・四半期単位で繰り返しましょう。

• 毎月1回、「来場者の困りごと改善ミーティング」開催。現場スタッフ・設計担当全員参加で自由な意見出し。
• 新たな家事ラクアイデア・設備小物・提案方法を月ごとにテスト追加。結果がよければ常設、悪ければ撤去。
• 来場者ニーズを定点観測し、季節やイベントごとに訴求テーマも随時見直し。

ステップ3　WEBやSNS連動で「体験共有力」を強化する

今のモデルハウスでは、現地見学のみならず「WEB展示」「動画案内」「SNS体験投稿」との連携が成否を握ります。具体策としては、

• 実際の家事ラク動線を歩きながらの動画ガイドを作り、HPやYouTubeで発信
• Instagram・TikTok へ「リアル来場者体験」「我が家はこう活用した」等のショート投稿を定期アップ
• SNS連動キャンペーンや「共働き家族座談会」Webイベントなどで多角的な来場促進

ステップ4　全国・業界事例やIoT新技術の継続調査

最新トレンドや技術アイデアはあっという間に変化します。住宅雑誌・業界情報サイト・メーカー展示会などから、年2回の事例調査・視察日を社内イベントに組み込むのもおすすめです。「見て・体験して・自社に取り入れる」PDCAサイクルを常に意識しましょう。

ステップ5　顧客との長期リレーション（実例共有コミュニティ化）

モデルハウスから受注へ、そしてその後の「住みやすさ実感」まで継続コミュニケーションを意識します。必要に応じて「OG家族の家事ラク座談会」「実際に住んでみて困った点相談窓口」なども設置し、新たなモデルハウス改善のヒントをいただく取り組みも効果的です。

よくある疑問Q&A

• Q. 新しいモデルハウスをオープンするタイミングと告知方法は？
  A. 共働き世代向けイベント（GW・夏休み・年度替わり等）や地域マラソン・地元フェスなどと合わせてのオープン・タイアップが効果的です。WEB/SNS・地元新聞・口コミ発信の「三段構え」で確実に認知度を高めてください。
• Q. 継続的成功のための人材育成法は？
  A. 年1回、モデルハウス経験豊富な外部講師による「ロールプレイ研修」、新入社員・ベテラン両方が参加する「フィードバック会」を実施し、伝える力・受けとめる力を養成しましょう。

まとめ

共働き世代向けに家事ラク提案を徹底したモデルハウス運営は、これからの工務店経営における差別化の中核です。この記事では、ターゲット設定・生活シナリオ発案から、リアルな空間づくり、来場体験の高度化、効果測定と継続的な改善まで、実践可能な五感に響くアクションプランをご提案しました。いま手元でできる小さな工夫・社内ミーティングからでも構いません。一歩踏み出し、他社に先駆けたモデルハウス運営に取り組むことで、確実に共働き世代からの「ここに決めてよかった！」という声と実績が増えていきます。加速するライフスタイルの多様化にも柔軟に対応できる体制作りで、お客さま・自社双方の未来を切り開く第一歩を、ぜひ今日から踏み出しましょう。

この記事を書いた人

浄法寺 亘

福島県 喜多方市出身。県立会津高校、市立高崎経済大学卒。工務店の社会貢献やSDGｓ、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。現在動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」。住宅情報サイト「ハウジングバザール」の運営にも携わっている。

著書：
頼みたくなる住宅営業になれる本
https://x.gd/oatiM
SDGsに取り組もう　建築業界編
https://x.gd/MXYJr

主な講演：
鹿児島県庁主催「かごしま緑の工務店研修会」
リードジャパン主催「工務店支援エキスポ」（東京ビックサイト）
育英西中学校、その他住宅FCなど

活動実績
2019～　千葉県にて里山竹林整備ボランティア
2020～　木ッズ絵画コンクール