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「内閣府beyond2020」の認定および「外務省JAPAN SDGs Action Platform」の紹介団体です。

固定負債の管理!工務店の財務健全化

公開日: : 工務店 経営

工務店の経営者様にとって、日々の資金繰りは常に頭を悩ませる重要な課題の一つです。受注や工事の進捗によって売上や費用が発生するタイミングが変動する建設業界では、入金と支払いのサイクルをいかに正確に把握し、資金を安定的に確保するかが経営の生命線となります。「黒字なのに手元の資金がない」という最悪の事態、いわゆる黒字倒産を避けるためには、緻密な資金繰り計画と、それを支える財務構造の理解が不可欠です。特に、設備投資や長期的な運転資金の確保に用いられる固定負債をどのように活用し、管理していくかは、資金繰りの安定化と事業拡大の両面において極めて重要なポイントとなります。

多くの方が「借金は怖い」「負債は少ない方が良い」と考えがちですが、計画的に利用された固定負債は、工務店の持続的な成長のための強力なレバレッジとなり得ます。この記事では、工務店の経営者様が直面する資金繰りの課題に対し、固定負債を戦略的に活用・管理することで、いかに財務体質を強化し、安定した資金繰りを実現できるのかを、明日からすぐに実践できる具体的なステップ形式で解説します。

この記事を通じて、読者様は以下のことを習得できます。

  • 固定負債の種類と、工務店における適切な活用タイミング
  • 資金繰り計画に固定負債の返済を組み込む具体的な方法
  • キャッシュフローを改善するための即効性のある実践対策
  • 固定負債を含む自社の財務状況を継続的に管理・改善する手法
  • 金融機関とのより良い関係を築くためのポイント

資金繰りに関する漠然とした不安を解消し、固定負債を味方につけて、盤石な経営基盤を築きましょう。

固定負債の「実践的」導入戦略:基礎から応用まで – 資金繰り安定化への第一歩

工務店の資金繰りを考える上で、固定負債はしばしば避けられがちなテーマかもしれません。「借金」と聞くと、ネガティブなイメージを持つ方も少なくないでしょう。しかし、定義と役割を正しく理解し、適切に活用すれば、固定負債はむしろ資金繰りの安定化と事業拡大の強力な推進力となります。ここでは、固定負債とは何か、なぜ工務店にとって重要なのか、そして導入を検討すべき具体的な状況と、その際のリスク管理について実践的に解説します。

固定負債とは何か?工務店におけるその役割

固定負債とは、通常1年以上の長期にわたって返済義務のある負債を指します。代表的なものに、金融機関からの長期借入金、社債(工務店の場合は一般的ではありませんが)、そして建物や設備のリース契約などが含まれます。これに対し、買掛金や未払費用、短期借入金などは流動負債と呼ばれ、比較的短期間で支払義務が発生するものです。

工務店経営における固定負債の主な役割は、以下の二点です。

  1. 大型の設備投資や不動産取得:建設機械、車両、作業場、事務所などの高額な資産を購入・導入する際に、自己資金や短期借入では賄いきれない部分を長期的に調達します。これにより、必要な設備を導入し、事業の効率化や規模拡大を実現できます。
  2. 長期的な運転資金の確保:工事の長期化、入金サイトと支払サイトの大きなずれ(特に公共工事や大型案件)、繁忙期と閑散期の資金需要の波など、構造的に必要となる運転資金の一部を長期的に安定して確保するために利用することもあります。短期的なつなぎ資金とは異なり、資金繰りのボラティリティを軽減する効果が期待できます。

短期的な資金繰りのひっ迫を短期借入で凌ぐことも重要ですが、慢性的な資金不足の根本原因に対処するためには、時には計画的な固定負債の導入が必要となります。これにより、手元の流動資金に余裕を持たせ、予期せぬ事態への対応力や、新たな受注機会への機動力を高めることができます。

工務店が固定負債の導入を検討すべき3つの具体的な状況

闇雲に固定負債を増やすのは危険ですが、以下のような状況にある工務店は、計画的な固定負債の導入を積極的に検討する価値があります。

  1. 事業拡大のための設備投資が必要な時:より大型の工事に対応するための重機導入、作業効率を飛躍的に高めるCAD/CAMシステム導入、あるいは省エネルギー設備への入れ替えなど、競争力強化や将来的な収益増に繋がる設備投資が必要だが、既存資金では購入が難しい場合です。固定負債を活用することで、これらの投資を早期に実現し、投資効果を刈り取ることができます。
  2. 長期的な視点での経営基盤強化を図る時:自社で土地を購入して建売事業に参入する、あるいは事務所や作業場を自己所有に切り替えるなど、不動産取得を伴う経営戦略を遂行する場合です。不動産は通常高額であり、長期的な資金計画と返済が求められるため、固定負債が適しています。
  3. 慢性的な運転資金不足に悩んでいる時:特定の支払い(協力業者への支払い、資材購入費など)に対して、その工事代金の入金が毎回遅れる構造的な問題がある場合などです。短期的なつなぎ融資を繰り返すのではなく、事業規模に見合った必要最低限の運転資金を固定負債として借り入れ、流動資金を安定させることで、資金繰りのプレッシャーを軽減できる可能性があります。

重要なのは、「何となく資金が足りないから借りる」のではなく、「何のために、具体的にいくら必要で、それによってどのような効果が得られ、どのように返済していくか」という明確な目的と計画を持つことです。この計画こそが、金融機関からの信頼を得る上でも不可欠となります。

固定負債導入に伴うリスクと回避・軽減策

固定負債はメリットだけでなく、リスクも伴います。主なリスクは、以下の二点です。

  1. 返済負担の増加:毎月の元本と利息の返済が発生し、資金繰りを圧迫する可能性があります。特に、業績が低迷した場合でも返済義務は免除されません。
  2. 金利変動リスク(変動金利の場合):将来的に金利が上昇した場合、返済額が増加し、計画が狂う可能性があります。

これらのリスクを回避・軽減するためには、以下の対策が有効です。

  • 綿密な返済計画の策定:借入期間、返済方法(元利均等、元金均等など)、ボーナス返済の有無などを慎重に検討し、無理のない返済スケジュールを組みます。最低でも5年先までの返済計画を立てましょう。
  • 適切な借入額の見極め:必要以上の金額を借り入れると、返済負担が重くなります。本当に必要な金額を精査し、余裕を持ちすぎず、かつ資金ショートしない適切な額を判断します。
  • 金利タイプの選択:将来的な金利上昇リスクを避けるためには、固定金利を選択するのが有効です。ただし、変動金利の方が当初の金利は低い傾向にありますので、自社のリスク許容度と金利予測に基づいて判断します。
  • 複数金融機関の比較検討:金利だけでなく、保証料、手数料、繰り上げ返済の条件なども含め、複数の金融機関を比較検討し、自社に最も有利な条件を引き出します。
  • 担保・保証の検討:必要な担保や保証人の有無は、借入の条件や返済負担に影響します。どのような担保を提供できるか、あるいは代表者保証の必要性などを金融機関とよく話し合います。

固定負債は長期にわたる関係です。目先の金利だけでなく、金融機関との信頼関係や、将来的な追加融資の可能性なども考慮に入れて検討することが、工務店の資金繰り安定において重要です。

実践ステップ:固定負債を正しく検討・導入するために

  1. ステップ1:資金需要の目的と金額を明確にする:何のために(設備投資?運転資金?不動産?)、具体的にいくら必要なのかを精査します。見積もりや事業計画に基づき、根拠のある金額を算出します。
  2. ステップ2:自社の返済能力を客観的に評価する:過去数年間のキャッシュフロー実績や、将来の売上・利益予測に基づき、その資金需要を満たすために必要な固定負債を導入した場合、毎月の返済が可能なのかをシミュレーションします。売上や利益が計画通りにいかなかった場合のシナリオも考慮に入れましょう。
  3. ステップ3:複数の金融機関・商品を比較検討する:メインバンクだけでなく、地方銀行、信用金庫、信用組合、政策金融公庫など、複数の金融機関に相談を持ちかけます。固定負債の種類(プロパー融資、制度融資など)や条件(金利、期間、保証、担保など)を比較検討します。
  4. ステップ4:詳細な事業計画書・資金繰り計画書を作成する:金融機関との交渉には、説得力のある事業計画書と、返済計画を組み込んだ精緻な資金繰り計画書が不可欠です。資金の使い道、返済計画、将来的な収益見通しなどを具体的に記述します。
  5. ステップ5:契約内容を徹底的に確認し、専門家の意見を聞く:金利、返済に関する条項、期限の利益喪失条項など、契約書の細部まで理解します。必要に応じて、税理士や財務コンサルタントなどの専門家に相談し、アドバイスを受けましょう。

資金繰り×固定負債:成果を最大化する具体的な取り組み – キャッシュフロー改善策7選と疑問解消

固定負債の導入や管理は、単体で行うものではありません。日々の資金繰りを改善し、安定したキャッシュフローを確保するための様々な取り組みと連携させることで、初めてその効果を最大化できます。ここでは、固定負債を含む資金繰り計画の立て方から、工務店が実践できる具体的なキャッシュフロー改善策、そしてよくある疑問への回答までを解説します。

資金繰り計画に固定負債の返済を組み込む方法

資金繰り計画は、将来的な現金の収入と支出を予測し、資金の過不足を事前に把握するためのものです。この計画に、導入した固定負債の返済計画を正確に組み込むことが非常に大切です。

資金繰り計画を作成する際は、一般的に以下のステップで進めます。

  1. 基準となる期間を設定:最低でも3ヶ月先、理想的には6ヶ月~1年先の計画を作成します。長期的な固定負債の返済を考慮する場合は、さらに数年先までの概要的な計画も併せて作成すると良いでしょう。
  2. 収入項目の洗い出しと予測:契約済み工事の入金予定(手付金、中間金、完成金)、追加工事の入金、その他の収入などをリストアップし、入金予定額と期日を予測します。
  3. 支出項目の洗い出しと予測:材料費(支払サイト考慮)、労務費(外注費、人件費)、経費(家賃、水道光熱費、通信費、車両費など)、税金、社会保険料、固定負債の元利返済額、その他の支払いなどをリストアップし、支払予定額と期日を予測します。
  4. 資金収支の計算:各期間(週ごと、月ごとなど)の収入合計から支出合計を差し引き、資金の増減額を算出します。
  5. 期末残高の計算:期首残高に資金増減額を加えて、期末の現金・預金残高を予測します。
  6. 資金過不足の把握と対策検討:予測した期末残高が、事業運営に必要な最低限の資金(安全資金)を下回る場合は、資金不足となります。この資金不足をどのように補うか(短期借入、支払いサイト交渉、入金促進など)を具体的に検討します。

この予測支出項目の中に、正確な固定負債の毎月(または指定された期間ごと)の元利返済額を含めることが、資金繰り計画の精度を高める上で不可欠です。複数の固定負債がある場合は、それぞれの返済期日と金額を一覧で管理し、計画に反映させます。

工務店がすぐに実践できるキャッシュフロー改善策7選

資金繰りを安定させ、固定負債の返済負担にも耐えうる強靭なキャッシュフローを構築するために、工務店が実践できる具体的な対策は多岐にわたります。ここでは、特に効果が期待できる7つの対策をご紹介します。

  1. 見積もり段階での「資金繰り」考慮:単に原価に利益を乗せるだけでなく、支払いサイトと入金サイトのズレによる運転資金の必要額を見積もり原価に含める、あるいは支払サイトや入金サイト自体を交渉可能か検討するなど、初期段階から資金繰りを意識した契約条件を提案します。
  2. 請求・入金プロセスの高速化:工事完成後、あるいは中間金の発生後、速やかに請求書を発行し、入金が遅れている取引先には迅速に督促を行います。請求から入金までのリードタイムを可能な限り短縮することが、資金繰り改善には大きく寄与します。可能であれば、手付金や中間金の割合を増やす交渉も有効です。
  3. 支払いサイト・在庫管理の見直し:協力業者や資材業者との間で、支払サイトを交渉します。ただし、信頼関係を損なわないように慎重に行います。また、必要以上に資材を抱え込まないよう、棚卸資産の適正在庫を維持する努力も、不要な支出を抑え資金を寝かせないために重要です。
  4. 経費削減の徹底:間接部門のコスト、通信費、車両費など、間接的経費を見直せないか検討します。小さな経費削減の積み重ねが、キャッシュフローに貢献します。
  5. 未回収リスクの管理:取引先の信用状況を事前に確認する(与信管理)とともに、回収不能になった売上債権が発生しないよう、早期の督促や必要に応じた法的措置の検討を行います。不良債権は資金繰りを一気に悪化させる最大の要因の一つです。
  6. 遊休資産の現金化:使用していない重機、車両、資材置き場などがあれば、売却やリースバックを検討し、手元資金を増やすことができます。固定負債で取得した資産であっても、その後の経営状況によっては現金化が必要になる場合もあります。
  7. 補助金・助成金の活用:国や地方自治体の補助金・助成金は、返済不要の貴重な資金源です。設備投資、人材育成、省エネルギー化など、様々な助成制度がありますので、自社の取り組みに合致するものがないか常に情報収集し、積極的に活用を検討します。これは直接的な資金繰り改善だけでなく、固定負債による投資負担軽減にも繋がります。

これらの対策を継続的に実施することで、事業活動そのものから生み出されるキャッシュフローを強化し、固定負債の返済も含めた資金繰り全体を安定させることが可能です。

よくある質問(Q&A)

工務店の経営者様からよく寄せられる資金繰りと固定負債に関する疑問にお答えします。

  • Q: 固定負債を増やすと、かえって資金繰りが厳しくなるのではないですか?
    A: 確かに、毎月の返済負担は増えます。しかし、計画的に利用された固定負債は、大型投資や長期的な運転資金の基盤となり、事業拡大やキャッシュフローの安定化に貢献することで、結果として資金繰りを強くします。例えば、新しい効率的な重機を導入するために借り入れた固定負債の返済はありますが、それによって工期が短縮され、より多くの工事を受注できるようになれば、生み出されるキャッシュフローが増加し、資金繰り全体で見ればプラスになります。重要なのは、返済負担に見合う、あるいはそれを上回るリターンが得られるかどうかの見極めと、返済計画を組み込んだ綿密な資金繰り計画です。
  • Q: 金融機関との交渉が苦手です。どうすれば良いですか?
    A: 金融機関は、あなたの事業に対する理解と、返済能力を最も重視します。苦手意識を持つ必要はありません。重要なのは、あなたの事業の将来性を具体的に語れる「事業計画書」と、借入金の使途や返済能力を示す「資金繰り計画書」をしっかりと準備し、誠実かつ論理的に説明することです。日頃から売上や利益の状況を報告し、良好なコミュニケーションを保つことも信頼関係構築に繋がります。必要であれば、税理士や商工会議所などの専門家のサポートを受けることも有効です。
  • Q: 複数の固定負債がある場合、どう管理すれば良いですか?
    A: 複数の固定負債がある場合は、それぞれの借入先、借入額、金利、返済方法、毎月の返済額、最終返済期日などを一覧にした管理表を作成し、厳密に管理します。会計ソフトを活用している場合は、自動的に返済予定額が計上されるように設定します。金利が高いものや、返済負担が重いものがあれば、条件変更や一本化(借り換え)を検討できないか、金融機関に相談してみましょう。正確な管理は、資金ショートを防ぎ、資金繰りの主導権を握る上で不可欠です。

実践ステップ:資金繰り計画を作成・活用するために

  1. ステップ1:資金繰り表の様式を準備する:Excelテンプレート、または会計ソフトの機能などを活用し、自社のビジネスに合った資金繰り表の様式を準備します。最低でも週ごと、月ごとの予測ができる形式が良いでしょう。
  2. ステップ2:過去の入出金データを集計・分析する:過去数ヶ月~1年程度の預金通帳や会計データを基に、平均的な入金サイト、支払サイト、経費の発生タイミングなどを把握します。これは将来予測の精度を高めるために重要です。
  3. ステップ3:具体的な数値を計画表に入力する:現在受注している工事、見込み案件、確定している支払い(人件費、家賃、固定負債返済など)を基に、具体的な入金予定日・金額、支払予定日・金額を計画表に入力していきます。不明確な部分は保守的に(入金は遅めに、支払いは早めに)予測します。
  4. ステップ4:資金過不足を確認し、対策を検討・実行する:作成した計画表で資金が不足する期間があれば、 Section2で紹介したキャッシュフロー改善策を参考に、どの対策を実行するか決定し、期日を決めて実行に移します(例:〇月〇日までにXX社への請求を完了、〇〇経費を〇%削減など)。
  5. ステップ5:最低でも月に一度、計画と実績を比較し更新する:資金繰り計画は一度作って終わりではありません。毎月(あるいは工事単位で)実績と比較し、計画とのズレの原因を分析します。新たな受注や予期せぬ支出が入れば、その都度計画を更新し、常に最新の状態を保ちます。この継続的な見直しが、資金繰り管理の最も重要な部分です。

資金繰りを継続的に成功させるための「次の一手」 – 見える化と外部連携の強化

一時的な資金繰り改善や、目の前の固定負債管理にとどまらず、工務店の財務を継続的に健全化し、将来にわたって安定した企業経営を実現するためには、資金繰りの「見える化」と、税理士、金融機関といった外部パートナーとの連携強化が不可欠です。ここでは、これらの「次の一手」について具体的に解説します。

資金繰りの「見える化」と予実管理の徹底

資金繰り計画を作成する目的は、単なる予測ではなく、「見える化」を通じて経営判断に活かすことです。経営者だけでなく、経理担当者や現場責任者とも情報を共有し、会社全体で資金繰りに対する意識を高めることが重要です。

  • 資金繰り表の活用:Section2で解説した資金繰り表は、最も基本的な見える化ツールです。これを常に最新の状態に保ち、今後数ヶ月の着地点を明確に把握します。
  • 予実管理の実施:作成した資金繰り計画(予算)と実績を定期的に比較し、なぜ計画と実績がずれたのか、その原因を深掘りします。例えば、「〇〇工事の入金が予定より遅れた」「△△資材の価格が高騰した」などの具体的原因を特定し、今後の計画や対策に活かします。
  • KPIの設定:資金繰りに関連する重要な指標(KPI:Key Performance Indicator)を設定し、定点観測します。例えば、「売上債権回転期間(売上高がどのくらいの期間で現金化されているか)」「買入債務回転期間(仕入高に対してどのくらいの期間で支払っているか)」「フリーキャッシュフロー(事業活動で自由に使える現金)」などです。これらの数値のトレンドを把握することで、資金繰りの構造的な課題を発見できます。
  • 会計ソフト・資金繰り管理ツールの導入:Excelでの管理も可能ですが、会計ソフトや資金繰り特化型の管理ツールを導入することで、データの自動連携やシミュレーション機能などが利用でき、効率的かつ高精度な見える化が実現できます。

これらの「見える化」と予実管理を徹底することにより、資金ショートの予兆を早期に察知し、手遅れになる前に対策を講じることが可能になります。また、無駄な支出や非効率な業務プロセスも発見しやすくなります。特に、複数の固定負債がある場合は、返済計画の管理が煩雑になりがちですが、こうしたツールを活用することで漏れなく管理できます。

金融機関との良好な関係構築

金融機関は、工務店にとって資金繰りを支える最も重要なパートナーの一つです。単に資金を借りる時だけ付き合うのではなく、日頃から良好な関係を築くことが、いざという時の資金調達力を高める上で非常に重要です。

  • 定期的な面談:融資の必要がない時でも、定期的に担当者と面談し、会社の経営状況や今後の事業計画について説明します。会社の状況をオープンに伝えることで、信頼関係が深まります。
  • 試算表や資金繰り表の提供:月次決算に基づいた試算表や、最新の資金繰り表を定期的に提出します。会社の状況を積極的に開示する姿勢は、金融機関からの評価を高めます。
  • 事業計画の説明:新しい設備投資を検討している、新しい事業分野に進出したい、といった中期的な事業計画について、具体的な数値(投資額、 anticipated 効果、資金繰りへの影響など)を添えて説明します。将来への前向きな姿勢を示すことは、金融機関の融資判断においてプラスに働きます。
  • 返済の遅延は即連絡:もし不測の事態等により、固定負債を含む借入金の返済が遅れそうになった場合は、無断で遅延するのではなく、事前に金融機関に連絡し、状況説明と今後の対応策を誠実に伝えます。隠蔽しようとせず、正直に対応することが最も重要です。

税理士やコンサルタントなど外部専門家の活用

資金繰りや固定負債の管理は、専門的な知識が必要な場面も多くあります。税理士や財務コンサルタントといった外部の専門家を積極的に活用することで、より高度な対策を講じることができます。

  • 単なる税務申告を超えた連携:税理士の先生とは、単に税務申告を代行してもらうだけでなく、月次決算の早期化、経営状況の分析、資金繰りに関するアドバイスなど、経営改善のパートナーとして連携します。
  • 資金調達に関する相談:新しい資金調達方法(補助金、クラウドファンディングなど)について情報提供を受けたり、金融機関とのより有利な交渉方法についてアドバイスをもらったりできます。固定負債の借り換えや一本化についても相談に乗ってもらえます。
  • 財務体質改善の提案:資金繰り表や財務諸表を分析してもらい、流動性、収益性、安全性の観点から会社の財務体質を診断してもらい、具体的な改善策の提案を受けることができます。

実践ステップ:継続的な財務健全化のために

  1. ステップ1:毎月の資金繰り会議を定例化する:経営者、経理担当者、可能であれば現場責任者も参加し、定例で資金繰り会議を実施します。計画と実績の比較、今後の予測、対策の検討を行います。
  2. ステップ2:資金繰り管理ツールまたは会計ソフトの活用レベルを高める:現在使用しているツールを最大限に活用できるよう、操作方法を習得したり、必要な設定を行ったりします。必要であれば、新しいツールの導入を検討します。
  3. ステップ3:主要取引金融機関の担当者と、四半期に一度は面談する機会を設ける:会社の現状報告、今後の展望、業界動向などについて話し合います。
  4. ステップ4:税理士やコンサルタントとの連携内容を見直し、より戦略的な相談を依頼する:単なる数字の報告だけでなく、経営課題としての資金繰りや固定負債について、具体的なアドバイスや提案を求めます。
  5. ステップ5:自社の財務指標(流動比率、固定比率など)を定期的に計算・分析し、改善計画を立てる:現在の数値が適正か、目標とする水準はどこかを定め、具体的な行動計画を立てます。

これらのステップは、一時的な対策ではなく、工務店の文化として根付かせるべき経営習慣です。継続は力なり。日々の小さな実践が、強固な資金繰りと盤石な財務体質を築き上げます。

まとめ

工務店の安定経営において、資金繰りの管理は最も重要な経営課題の一つです。そして、資金繰りの安定化と事業拡大の双方を実現するために、固定負債を適切に理解し、戦略的に活用・管理することは避けて通れない道です。闇雲な借入はリスクを高めますが、明確な目的意識と返済計画に基づいた固定負債は、必要な設備投資を可能にし、長期的な運転資金を安定させ、事業の成長を下支えする力強い味方となります。

この記事では、固定負債の基礎知識から、工務店が導入を検討すべき具体的な状況、リスク管理、そして資金繰り計画への組み込み方法までを解説しました。また、請求・入金プロセスの高速化、経費削減、在庫管理、未回収リスク管理といった、キャッシュフローを改善するための実践的なステップもご紹介しました。これらの具体的なアクションプランを一つずつ実行していくことで、資金繰りの不安は解消され、経営における主導権を取り戻すことができるはずです。

さらに、資金繰りの継続的な成功には、「見える化」と予実管理、金融機関との良好な関係構築、そして税理士やコンサルタントといった外部専門家との stratégic な連携が不可欠であることを強調しました。これらはすべて、今日のあなたの小さな一歩から始まります。

資金繰りの健全化は、単に運転資金に困らないというだけでなく、新たな事業機会への挑戦、従業員への投資、そして何よりも経営者自身の心労軽減に繋がります。今日学んだ知識を活かし、ぜひ最初の実践ステップを踏み出してください。財務体質の強化は、工務店の未来を盤石なものにするための、最も価値ある投資です。あなたの工務店が、この資金繰り改善の取り組みを通じて、さらなる発展を遂げることを心から応援しています。

この記事を書いた人

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浄法寺 亘

福島県 喜多方市出身。県立会津高校、市立高崎経済大学卒。工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。現在動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」。住宅情報サイト「ハウジングバザール」の運営にも携わっている。

著書:
頼みたくなる住宅営業になれる本
https://x.gd/oatiM
SDGsに取り組もう 建築業界編
https://x.gd/MXYJr

主な講演:
鹿児島県庁主催「かごしま緑の工務店研修会」
リードジャパン主催「工務店支援エキスポ」(東京ビックサイト)
育英西中学校、その他住宅FCなど

活動実績
2019~ 千葉県にて里山竹林整備ボランティア
2020~ 木ッズ絵画コンクール

工務店の集客・営業ならジーレックスジャパン →ホームページはこちら

商品の差別化へ!制振装置はこちらから →耐震・制振装置

友達申請お待ちしてます! →代表浄法寺のfacebook

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