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M&Aで未来を拓く!工務店の成長戦略としての選択肢

公開日: : 工務店 経営

工務店経営者の皆様、事業の未来について、漠然とした不安を抱えてはいませんか? 後継者不在、職人の高齢化、資材の高騰、そして同業他社との激しい競争――。これらの課題は、一朝一夕に解決できるものではありません。特に、築き上げてきた大切な事業を、次の世代へいかにスムーズに、そして力強く引き継ぐか、すなわち事業承継は、多くの経営者にとって喫緊の課題となっています。しかし、事業承継の選択肢は、親族内承継や従業員承継だけではありません。現代の厳しい経営環境においては、第三者へのM&Aによる事業承継が、企業の存続・発展、そして個人の未来を拓くための有力な「成長戦略」となり得ます。

「M&Aなんて、自分たちのような地域密着型の工務店には関係ない」「大企業がやることで、費用も手続きも大変そうだ」。そう思われているかもしれません。しかし、適切な知識と手順を踏まえれば、M&Aは工務店にとって、後継者問題の解決だけでなく、新たな技術や人材の獲得、仕入れコストの削減、販路拡大、経営基盤の強化など、様々なメリットをもたらす可能性を秘めています。これは、単に会社を売却するという話ではなく、培ってきた技術や信用を守りつつ、事業をさらに発展させるための積極的な一手なのです。

この記事では、M&Aを事業承継の選択肢として検討する工務店経営者の皆様が抱えるであろう、具体的な疑問に徹底的にお答えします。M&Aとは何かという基礎から、工務店におけるM&Aの具体的な進め方、成功のためのステップ、そしてM&A後の注意点まで、実践的かつ具体的な手順を追って解説します。この記事を読み終える頃には、「M&Aは怖いものではなく、未来を拓く戦略ツールだ」と理解し、ご自身の事業の次のステップを具体的に描き始められるはずです。

M&Aはなぜ工務店の事業承継に有効なのか?基礎知識とメリット・デメリット

多くの工務店経営者が直面する事業承継の課題に対し、M&Aが有効な手段となり得るのはなぜでしょうか。まずはM&Aの基本的な概念と、工務店におけるM&Aがもたらす可能性について掘り下げていきましょう。

M&Aとは?工務店経営者が知っておくべき基本

M&Aとは「Mergers and Acquisitions」の略で、企業の合併や買収を意味します。事業承継の文脈においては、経営者が自社株式や事業用資産を第三者(他の企業や個人の投資家など)に譲渡し、経営権を引き継いでもらう「株式譲渡」や「事業譲渡」といった手法が一般的です。

中小企業におけるM&Aは、かつてはネガティブなイメージを持たれることも少なくありませんでしたが、近年では後継者不在の中小企業が事業承継問題を解決し、企業を存続・発展させるための有効な経営戦略として広く認識されるようになっています。特に工務店業界は、高齢化が進み、優秀な職人の確保や育成が課題となる中で、外部の力を借りるM&Aが注目されています。

工務店の事業承継におけるM&Aの意義

工務店が事業承継の方法としてM&Aを選ぶことは、次のような意義を持ちます。

  • **後継者問題の解決:** 親族や従業員の中に適任の後継者がいない場合でも、外部から経営意欲のある買い手を見つけることで、事業を継続させることができます。
  • **企業の存続と発展:** 買い手企業が持つ経営資源(資金、人材、技術、販路など)を活用することで、単独では難しかった事業拡大や多角化、効率化を実現し、企業価値を高めることが可能です。廃業を選択した場合に失われる、長年培ってきた技術、信用、雇用などを守ることができます。
  • **創業者利益の確保:** 株式譲渡益として、経営者はこれまでの努力の対価を得ることができます。これは、ハッピーリタイアを実現するための重要な要素となります。

工務店がM&Aを選ぶ主要なメリット

具体的に、工務店がM&Aによる事業承継を行うことには、以下のようなメリットが考えられます。

  1. 後継者問題の根本的解決: 最も直接的なメリットです。後継者不在という最大の懸念を解消し、安心して引退の準備を進められます。
  2. 経営基盤の強化: 買い手企業が上場企業や規模の大きい同業他社であれば、資金力、信用力、組織力などが強化されます。これにより、より大規模な工事受注や、資材の有利な仕入れが可能になるなど、経営の安定化に繋がります。
  3. 新たな技術・ノウハウの導入: 買い手企業が持つ先進的な建築技術、IT活用、マーケティング手法などを取り入れることで、自社の競争力を高めることができます。
  4. 人材の安定確保・育成: 買い手企業の福利厚生制度や人事評価制度が適用されることで、従業員の待遇が改善され、優秀な人材を確保・定着させやすくなります。また、より体系的な教育・研修制度を利用できる可能性もあります。
  5. 創業者利益(リタイア資金)の確保: 株式を譲渡することでまとまった資金を得られます。これにより、引退後の生活資金や新たな挑戦のための資金を確保できます。
  6. 従業員の雇用の安定と活躍の場の拡大: 企業の存続により従業員の雇用が守られます。また、買い手企業のネットワークの中で、より大きなプロジェクトに関わるなど、活躍の場が広がる可能性もあります。
  7. 地域貢献の継続: 事業が継続されることで、地域経済への貢献や、地域住民との関係性を維持できます。

M&Aを検討する上でのデメリットと潜在的なリスク

一方で、M&Aには注意すべきデメリットやリスクも存在します。

  1. 情報漏洩のリスク: M&Aの検討段階で情報が外部に漏れると、従業員や取引先に動揺を与えたり、競争上の不利益を被る可能性があります。
  2. 条件交渉の難しさ: 譲渡価格やその他の条件について、自社の希望通りにならない場合があります。交渉には専門知識と経験が必要です。
  3. 従業員の不安と離職のリスク: 経営者が代わることへの不安から、特にキーパーソンとなる職人や従業員が離職してしまうリスクがあります。丁寧な説明とケアが不可欠です。
  4. 組織文化の衝突: 売り手企業の工務店文化と、買い手企業の文化が合わずに、従業員間に摩擦が生じる可能性があります。
  5. PMI(ポスト・M&A統合)の難しさ: M&Aは契約がゴールではなく、その後の統合プロセスが非常に重要です。システム、業務プロセス、人事制度、そして最も難しい組織文化の統合に失敗すると、期待したシナジー効果が得られないどころか、事業が停滞する可能性があります。
  6. 契約不適合リスク: 契約書に記載されていた情報と、実際の状況に乖離があった場合、契約不適合責任を問われる可能性があります。

これらのデメリットやリスクを理解し、適切に対策を講じることが、M&A成功の鍵となります。

Q&A:工務店経営者が抱きがちなM&Aへの疑問

Q: 自分の工務店に本当に買い手は現れるのか?
A: 多くの工務店は、長年培ってきた技術力、地域からの信用、優秀な職人、安定した顧客基盤など、買い手にとって魅力的な「非財務情報」を持っています。特に、慢性的な人手不足に悩む建設業界においては、人材そのものが大きな価値となります。M&A専門家と連携し、自社の強みを効果的にアピールすることで、適切な買い手を見つけられる可能性は十分にあります。

Q: 会社の価値はどのように評価されるのか?
A: 企業価値の評価方法にはいくつか種類がありますが、中小企業の M&A では、純資産に営業利益の数年分を上乗せする「年倍法」や、将来キャッシュフローを割り引く「DCF法」などが用いられます。ただし、工務店の場合は財務諸表上の数字だけでなく、抱えている職人の技術レベル、主要顧客との太いパイプ、地域での評判、未完了の工事案件といった非財務情報も重要な評価要素となります。専門家と相談しながら適正な価値評価を行うことが重要です。

工務店の事業承継をM&Aで実現する具体的な10ステップ

M&Aによる事業承継は、いくつかの段階を経て進められます。ここでは、工務店がM&Aを実行するための具体的な手順を10ステップに分けて解説します。各ステップで工務店特有の留意点にも触れます。

M&Aを進めるための具体的なアクションプラン

  1. M&Aの目的と条件の明確化
    • **アクション:** なぜM&Aを選ぶのか(後継者不在、自身の引退、事業拡大など)、M&Aを通じて何を達成したいのか、譲渡価格の希望、M&A後の関わり方(引退、顧問として残るなど)、従業員の雇用維持に関する希望条件などを具体的にリストアップします。
    • **工務店の留意点:** 長年お付き合いのある取引先や顧客への配慮はどうするか、抱えている職人の処遇をどうしてほしいかなど、感情的な部分も含めて希望を整理します。
  2. 自社の現状分析と「磨き上げ」(企業価値向上)
    • **アクション:** 財務状況(直近数年の損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー)、非財務情報(組織体制、従業員のスキル、技術力、顧客リスト、保有資格、許認可、取引先との関係、契約中の工事案件、訴訟リスクなど)を詳細に棚卸しします。同時に、買い手にとって魅力的に映るよう、不要資産の売却、収益性の低い事業の見直し、組織体制の整備など、「磨き上げ」を行います。
    • **工務店の留意点:** 過去の工事に関する書類や図面がきれいに整理されているか、一人親方との契約形態はどうなっているか、未払い残業代などの労務リスクはないか、保有する重機や車両の状態はどうかなど、建設業特有の情報を正確に把握・整理することが重要です。
  3. 専門家(M&A仲介会社など)の選定と契約
    • **アクション:** M&Aは専門知識の塊です。信頼できるM&A仲介会社、税理士、弁護士などの専門家を選びます。特にM&A仲介会社は、買い手探しから交渉、契約までをサポートしてくれる重要なパートナーです。実績、手数料体系、担当者の信頼性などを比較検討して決め、秘密保持契約(NDA)と媒介契約を締結します。
    • **工務店の留意点:** 建設業界のM&Aに詳しい、あるいは中小企業のM&A実績が豊富な専門家を選ぶのが望ましいです。担当者との相性も重要です。
  4. 企業概要書の作成(ノンネームシート、IM)
    • **アクション:** M&A仲介会社が中心となり、自社の情報を匿名化してまとめた「ノンネームシート」(企業名が特定されない簡単な資料)と、会社名を開示後に提示する詳細な「インフォメーション・メモランダム(IM)」(事業内容、財務状況、組織体制、強みなどを網羅した資料)を作成します。
    • **工務店の留意点:** ノンネームシートでは地域や得意な工事内容などで自社が特定されないよう配慮しつつ、IMでは工務店としての技術力、職人の質、地域での評判、保有資格などを具体的に、かつ魅力的に記述することが重要です。
  5. 買い手候補の探索と打診
    • **アクション:** M&A仲介会社が持つネットワークやデータベースを活用し、自社の条件や事業内容に合った買い手候補企業を探します。ノンネームシートで候補企業への打診を行い、興味を示した企業に対して秘密保持契約を締結後、IMを開示します。
    • **工務店の留意点:** 同業だけでなく、異業種からのアプローチがある場合もあります。自社の強みを活かせる買い手を見つけることが重要です。複数の候補と並行して交渉を進めることもあります。
  6. トップ面談
    • **アクション:** 興味を持った買い手企業の経営者と直接面談します。お互いの事業内容、経営方針、M&Aへの考え方などを話し合い、信頼関係を構築する重要な機会です。
    • **工務店の留意点:** 買い手側の経営理念や従業員への考え方が、自社のそれと大きく乖離していないかを見極めることが非常に重要です。今後の組織文化の融合に大きく関わってきます。
  7. 基本合意書の締結
    • **アクション:** トップ面談などでお互いの意思が固まったら、現時点での合意内容(譲渡価格の目安、スケジュール、独占交渉権の付与など)を記載した基本合意書を締結します。この時点での価格はあくまで目安であり、拘束力を持たない項目が多いです。
    • **工務店の留意点:** 基本合意書に法的拘束力のある項目とない項目を確認し、特に独占交渉権の期間は適切か注意が必要です。
  8. デューデリジェンス(買収監査)
    • **アクション:** 買い手側が、売り手企業の財務、税務、法務、労務、事業内容などを詳細に調査します。これにより、契約書には現れない潜在的なリスクや課題、あるいは見落とされていた強みなどを洗い出します。
    • **工務店の留意点:** 建設業に特化したデューデリジェンスが行われます。過去の請負契約、下請法遵守状況、建設業許可の状況、労災事故歴、大震災時の対応状況、環境規制遵守状況、重要な契約書(顧客、協力会社)の内容、未引渡しの工事案件の進捗と収益性などが厳しくチェックされます。協力できる範囲で正確かつ迅速に情報を提供することが求められます。
  9. 最終条件交渉と最終契約書の締結
    • **アクション:** デューデリジェンスの結果を踏まえ、最終的な譲渡価格やその他の条件(従業員の処遇、経営者の役割、契約不適合責任の範囲など)について交渉し、合意に至れば、法的拘束力のある最終契約書(株式譲渡契約書など)を締結します。
    • **工務店の留意点:** 契約内容について、専門家(弁護士)とともに隅々まで確認します。特に表明保証(M&A契約締結日またはクロージング日における対象会社の状況がある特定の事実と相違ないことを表明し保証すること)や補償条項(表明保証違反などがあった場合に、売り手側が買い手側に対して負う損害賠償責任に関する条項)は、M&A後のリスクに直結するため、慎重に検討が必要です。
  10. クロージングとPMI(ポスト・M&A統合)の開始
    • **アクション:** 最終契約書に基づき、株式や事業用資産の引き渡し、対価の支払いを行い、経営権が買い手側に移転します。これがM&Aの完了、「クロージング」です。そしてここからが、真の事業承継であるPMIのスタートです。
    • **工務店の留意点:** PMIの成否がM&A全体の成否を決めると言っても過言ではありません。単に経営者が代わるだけでなく、システム、業務プロセス、人事制度、最も重要な組織文化をいかにスムーズに統合するかが問われます。特に職人への丁寧な説明と、新しい環境への適応をサポートする体制構築が重要です。

これらのステップを経て、工務店の事業承継はM&Aによって実現します。各ステップで専門家のサポートを最大限に活用することが、成功への近道となります。

Q&A:M&Aの手続きに関する具体的な疑問

Q: M&Aにはどれくらいの費用がかかるのか?
A: M&Aにかかる費用は、M&A仲介会社への報酬(成功報酬が一般的ですが、着手金や中間金がかかる場合もあります)、デューデリジェンス費用、税理士や弁護士への相談費用などがあります。報酬体系は仲介会社によって大きく異なりますが、成功報酬は取引金額に対して一定の料率(レーマン方式など)で計算されるのが一般的です。小規模M&A向けの定額料金制度や、着手金無料の仲介会社もありますので、複数の専門家から見積もりを取り、比較検討することが重要です。

Q: 従業員や取引先にはいつ、どのように説明すれば良いか?
A: 情報漏洩を防ぐため、通常はM&Aの詳細を伝えるのは基本合意締結後、あるいは最終契約締結直前となります。従業員には、M&Aの目的(事業の継続・発展、雇用の安定など)、新しい経営体制、M&A後の待遇など、正直かつ丁寧に説明し、不安を払拭することが重要です。取引先へは、M&A後も変わらぬ関係を維持・発展させていく意向を伝え、安心してもらう必要があります。専門家と相談しながら、適切なタイミングと方法で説明会や個別の対話の場を設けるのが良いでしょう。

Q: M&Aが失敗するのはどんな時か?
A: M&Aの失敗要因として最も多いのは、価格交渉の決裂、デューデリジェンスで重大な問題が発覚すること、そして最も重要なPMIの失敗です。特にPMIにおいては、組織文化の衝突、キーパーソンの離職、期待したシナジー効果が得られないことが挙げられます。事前の徹底した準備、信頼できる専門家のサポート、そしてM&A後の丁寧な統合プロセスが、失敗を防ぐ鍵となります。

M&A成約後が本当のスタート!成功に導くPMIと継続的な成長戦略

M&Aは最終契約を締結し、クロージングが完了した時点が終わりではありません。むしろ、そこからが新たなスタートです。譲渡した事業と譲り受けた企業の組織や文化、システムなどを統合し、期待した効果を実現するためのプロセス、すなわちPMI(ポスト・M&Aインテグレーション)の成否が、M&A全体の成功・失敗を決定づけると言っても過言ではありません。特に工務店の場合、人と人の繋がりや、長年培われた現場の技術・ノウハウが重要であるため、PMIの丁寧な推進が非常に重要になります。

PMIを成功させるための「次の一手」

成功するPMIには、計画性、実行力、そして関係者への配慮が必要です。以下の点に留意して進めましょう。

  1. 統合計画の策定と共有:
    • **アクション:** クロージング前からPMIの計画を具体的に練っておきます。組織体制、人事・評価制度、給与体系、ITシステム、経理処理、業務プロセス、事業戦略などをどのように統合していくかを明確にし、関係者(従業員、必要に応じて主要取引先)に共有します。
    • **工務店の留意点:** 現場の職人の働き方、資材の購買方法、協力会社との関係性など、既存の慣習や重要なプロセスを把握し、新しいやり方への移行スケジュールを現実的に設定します。現場の混乱を最小限に抑える計画が重要です。
  2. 組織文化の融合とコミュニケーションの強化:
    • **アクション:** これまで異なる文化で働いてきた人々が一緒に働くことになるため、組織文化の融合は最も難しい課題の一つです。両社の理念や価値観を理解し、共通の目標を設定します。経営陣やマネージャー層からの積極的なコミュニケーションを心がけ、従業員の意見や不安に耳を傾ける機会を設けます。
    • **工務店の留意点:** 職人の「仕事へのこだわり」や「現場での暗黙知」といった、数値化できない文化を理解し、尊重する姿勢が新しい経営陣に求められます。定期的な全体会議や現場ごとの意見交換会など、率直に話し合える場を設けることが効果的です。
  3. 従業員の処遇とモチベーション維持:
    • **アクション:** 雇用契約、給与、福利厚生などの労働条件がM&A後にどうなるかを明確かつ早期に伝えます。不明確さは従業員の不安を招きます。新しい人事評価制度やキャリアパスについても説明し、従業員のモチベーション維持・向上に努めます。
    • **工務店の留意点:** 特に技術力の高いベテラン職人や、現場を取りまとめるキーパーソンが離職しないよう、個別の面談などを通じて丁寧にケアすることが重要です。彼らの技術や経験に対し、新しい組織でも正当な評価と役割が与えられることを明確に伝えます。
  4. シナジー効果の早期実現:
    • **アクション:** M&Aの目的として掲げたシナジー効果(売上向上、コスト削減、効率化など)を早期に実現するための具体的な施策を実行します。合同での営業活動、仕入れの一元化、技術・ノウハウの共有、重複部門の統合などです。
    • **工務店の留意点:** 共同での資材一括購入によるコスト削減、お互いの得意な工法や技術の共有による受注可能範囲の拡大、保有する許認可や資格の活用などが考えられます。現場レベルでの連携を密にし、成功事例を共有することで、シナジー効果を実感させることが重要です。
  5. 旧経営者からのスムーズな引継ぎとサポート:
    • **アクション:** 譲渡した経営者は、事前に取り決めた期間、新しい経営陣への事業引継ぎや顧問としてのサポートを行います。顧客や取引先への紹介、従業員への橋渡し、業務に関するアドバイスなど、その役割は多岐に渡ります。
    • **工務店の留意点:** 旧経営者が持つ人的ネットワークは工務店にとって非常に重要です。顧客や協力業者との関係性を新しい経営陣に滞りなく引き継ぐことが求められます。また、現場特有の慣習や注意点を共有することも、円滑な事業運営に不可欠です。
  6. 継続的な変化への対応と改善:
    • **アクション:** PMIは一度やれば終わりではなく、継続的なプロセスです。統合の進捗を定期的に評価し、計画通りに進んでいない場合は原因を分析して軌道修正します。従業員からのフィードバックを収集し、改善に繋げます。
    • **工務店の留意点:** 現場の状況は常に変化します。統合による影響を現場レベルで把握し、必要に応じて柔軟に計画を調整することが重要です。

これらのステップを丁寧に進めることで、M&Aによる事業承継は単なる所有権の移転ではなく、企業の力を最大化し、持続的な成長を実現するための戦略的な一手となります。

Q&A:M&A後の経営に関する疑問

Q: M&A後、前の経営者はどう関わるべきか?
A: 事前に新しい経営陣と話し合い、明確な役割と期間を定めておくことが重要です。多くの場合、一定期間は顧問や非常勤役員として残り、顧客や取引先への紹介、従業員への橋渡し、業務アドバイスなどを行います。いつどのように「卒業」するかを決めておくことで、新しい経営陣がスムーズにリーダーシップを発揮できるようになります。完全に引退する場合でも、何か困った時のために連絡できる関係性を維持しておくと良いでしょう。

Q: PMIで最も注意すべき点は何か?
A: 何を差し置いても「人」への対応です。特に工務店の場合、長年一緒に汗を流してきた職人や従業員が、新しい環境に馴染めるか、モチベーションを維持できるかが生命線です。丁寧なコミュニケーション、労働条件の明確化、文化的な違いへの配慮を怠ると、優秀な人材の流出を招き、事業そのものが立ち行かなくなるリスクがあります。PMIの計画段階から、従業員ケアを最優先で考えるべきです。

Q: 期待したシナジー効果が出ない場合は?
A: シナジー効果はすぐに現れるとは限りません。PMIの計画や実行プロセスを見直し、何がボトルネックになっているのかを分析する必要があります。例えば、コミュニケーション不足であれば対話の機会を増やしたり、業務プロセスが合わないのであれば、どちらかのやり方に統一するか、あるいは新しい仕組みを構築するといった対策が必要です。焦らず、しかし粘り強く改善を続けることが重要です。場合によっては、外部のPMIコンサルタントの協力を得ることも有効です。

まとめ

工務店経営者の皆様にとって、事業承継は避けて通れない重要な経営課題です。そして、後継者不在という多くの中小企業が直面する問題に対する有力な解決策の一つが、M&Aによる第三者への事業承継です。M&Aは決して大企業だけのものではなく、貴社が長年培ってきた技術、信用、そして従業員というかけがえのない財産を次世代に引き継ぎ、さらに発展させるための戦略的な選択肢となり得ます。

この記事では、M&Aがなぜ工務店の事業承継に有効なのか、そのメリットとデメリット、そして実際にM&Aを進めるための具体的な10ステップと、M&A成約後のPMIの重要性について解説しました。事前の入念な準備、信頼できる専門家のサポート、そして人の心に寄り添った丁寧なプロセスこそが、M&Aを成功させる鍵となります。

M&Aによる事業承継は、創業者である皆様にとっては安心して次のステージに進むための選択肢であり、従業員にとっては雇用の安定と活躍の場の拡大に繋がり、そして地域にとっては大切な工務店が存続し続けることを意味します。未知のことへの挑戦は多くのエネルギーを必要としますが、その向こうには、貴社の事業が新しい力を得て、さらに大きく飛躍する未来が待っています。

最初の一歩は、地域の商工会議所や、M&Aに詳しい専門家へ相談してみることから始まります。この記事が、皆様の事業承継、そしてM&Aという選択肢について深く考え、前向きな一歩を踏み出すための一助となれば幸いです。貴社の輝かしい未来のために、ぜひ今日の記事で得た知識を活かしてください。

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浄法寺 亘

工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。 今動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」 ※8月実施予定。 住宅サイトの運営もしています。 福島県 喜多方市出身 県立会津高校卒 市立高崎経済大学卒 著書: 頼みたくなる住宅営業になれる本 https://x.gd/oatiM SDGsに取り組もう 建築業界編 https://x.gd/MXYJr とっておきの見込み客発掘法 https://x.gd/001or 主な講演: 鹿児島県庁主催「かごしま緑の工務店研修会」 リードジャパン主催「工務店支援エキスポ」(東京ビックサイト) 育英西中学校 その他住宅FCなど 活動実績 2019~ 千葉県にて里山竹林整備ボランティア 2020~ 木ッズ絵画コンクール
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浄法寺 亘

工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。
今動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」
※8月実施予定。
住宅サイトの運営もしています。

福島県 喜多方市出身
県立会津高校卒
市立高崎経済大学卒

著書:
頼みたくなる住宅営業になれる本
https://x.gd/oatiM
SDGsに取り組もう 建築業界編
https://x.gd/MXYJr
とっておきの見込み客発掘法
https://x.gd/001or

主な講演:
鹿児島県庁主催「かごしま緑の工務店研修会」
リードジャパン主催「工務店支援エキスポ」(東京ビックサイト)
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活動実績
2019~ 千葉県にて里山竹林整備ボランティア
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