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顧客単価を向上させる!工務店の営業戦略

公開日: : 工務店 経営

工務店経営者の皆様、日々の業務本当にお疲れ様です。資材価格の高騰、職人不足、そして住宅市場の競争激化。このような厳しい環境下でも、会社を成長させ、社員とその家族を守り、地域に貢献し続けるためには、持続的な売上向上が不可欠です。

売上向上と聞くと、まず「新規顧客をどう増やすか」に目が行きがちですが、実はもう一つ、いやそれ以上に効率的で確実な道があります。それが「顧客単価」の向上です。既存またはこれから獲得する顧客一人あたりから得られる売上を増やすことで、コストを抑えながら売上全体を押し上げることができます。顧客単価の向上は、単に数字を増やすだけでなく、提供する価値を高め、顧客満足度を深める過程でもあります。

この記事では、顧客単価を向上させ、それが最終的に売上向上にどう繋がるのか、そのための実践的かつ具体的な方法をステップ形式でご紹介します。値引き競争から脱却し、適正な利益を確保しながら、顧客からも喜ばれる「高付加価値」サービスの提供方法、効果的な提案の技術、そしてそれらを組織として仕組み化するヒントまで、あなたの工務店が今日から取り組めることばかりです。

「価格じゃない価値で勝負したい」「もっと利益を確保したい」「社員のモチベーションを上げたい」そうお考えのあなたへ。この記事を読めば、これらの疑問や悩みが解消され、売上向上に向けた明確な一歩を踏み出すことができるでしょう。

顧客単価の「実践的」導入戦略:基礎から応用まで

顧客単価とは何か、なぜ工務店経営にとって重要なのか

顧客単価とは、文字通りお客様一人(または一契約)あたりから得られる平均的な売上・利益額のことです。工務店の場合は、新築一棟あたりの請負金額、リフォーム一式、メンテナンス契約などがこれにあたります。会社の売上は、「顧客数 × 顧客単価」という非常に分かりやすい式で表すことができます。

例えば、年間30件の契約があり、平均顧客単価が2,000万円なら売上は6億円です。もし顧客単価を10%(200万円)上げることができれば、顧客数を増やさなくても売上は6,6億円になります。新規顧客獲得には多大な広告宣伝費や営業労力がかかりますが、既存顧客や見込み顧客に対する提案力を高め、顧客単価を向上させることは、より少ないコストで売上向上を実現する、非常に効率的な手段なのです。

さらに、顧客単価の向上は利益率の改善にも直結します。基本工事に対して付加価値の高いオプションやサービスを追加することは、利益率の高い仕事を増やすことに繋がります。これは、単に規模を追い求めるのではなく、質の高いサービスを提供し、適正な利益を確保しながら sustainable な経営を目指す工務店にとって、最も重要な経営戦略の一つと言えます。

顧客単価向上を阻む「見えない壁」とその壊し方

「価格ありき」の競争に慣れてしまい、価格を下げることで受注しようとしてしまう。これは多くの工務店が直面する課題です。良質な仕事をしているのに、その価値をうまく伝えられず、価格でしか勝負できないと感じている経営者は少なくありません。

また、「良いものを安く提供するのが職人の心意気だ」という考え方や、お客様への過度な遠慮から、「こんなオプションを提案したら嫌がられるのではないか」「予算を気にしているお客様に高価なものを提案するのは気が引ける」といった「見えない壁」が存在することもあります。社内でも、営業担当者がオプションや追加工事の提案方法を知らなかったり、契約を取ることだけを目標にしてしまい、顧客単価を意識しないというケースも見られます。

これらの壁を壊すには、まず「提供する価値と価格は連動する」という明確な意識を持つことが重要です。そして、顧客がその価値を正しく理解できるよう、「見える化」と「伝達」の努力を惜しまないこと。さらに、社員一人ひとりが「顧客単価向上は、単に売上を増やすのではなく、お客様の暮らしをより豊かにするための提案であり、会社の未来を創る大切な仕事だ」と理解し、自信を持って提案できるよう、社内教育と仕組みづくりに取り組むことが不可欠です。

顧客単価向上戦略の基本:「価格」「提案」「関係性」の3つの柱

顧客単価を向上させるためには、主に以下の3つの要素に戦略的に取り組む必要があります。

  • 価格戦略の見直し: 提供するサービスの質や付加価値に見合った適正価格を設定します。市場価格や競合を参考にしつつも、自社の強みや差別化ポイントを価格に反映させます。必要であれば、段階的な値上げや、新しい高価格帯サービスの導入も検討します。
  • 提案力の強化: 顧客の潜在的なニーズを引き出し、基本の契約内容に加えて、より付加価値の高いオプション、グレードアップ、関連サービス(外構、インテリア、メンテナンスパックなど)を効果的に提案するスキルを磨きます。提案する際は、「何があるか」ではなく「それによってお客様の暮らしがどう良くなるか」を具体的に伝えます。
  • 顧客との関係性構築: 契約時だけでなく、着工中、そして引き渡し後も良好な関係を維持することが重要です。信頼関係があれば、リピートでのリフォームやメンテナンス、さらにはご家族や友人への紹介に繋がりやすくなります。紹介による受注は、獲得コストがほぼゼロでありながら、信頼がベースにあるため高単価になりやすい傾向があります。

これら3つの柱をバランス良く強化することが、持続的な顧客単価向上、ひいては売上向上への道を開きます。

顧客単価向上への第一歩:自社のサービスと強みを徹底的に棚卸しする

具体的な戦略を立てる前に、まずは自社の現状分析から始めましょう。「何を売るか」が明確でなければ、顧客単価を上げるための提案もできません。

具体的には以下の点を洗い出してみましょう。

  • 現在提供しているサービスの一覧(新築、リフォームの種類、耐震改修、断熱改修、水回り、外壁、屋根、外構、設計、施工管理、アフターメンテナンス etc.)
  • それぞれのサービスに含まれる標準仕様とオプションの現状
  • 過去の契約で、顧客がよく追加したオプションや変更点
  • 自社の強み(設計力、施工品質、使用建材、技術力、対応スピード、デザイン性、高性能住宅の実績、地域での信頼度など具体的なもの)
  • ターゲットとしたい顧客層(高価格帯住宅を求める層、リフォームに付加価値を求める層、高性能住宅を選ぶ層など)とそのニーズ
  • ターゲット顧客層が重視すること(価格、性能、デザイン、安心感、ブランド、アフターサービスなど)

これらの棚卸しを通じて、「自社が提供できる価値」と「それが顧客にどう役立つか」を再認識することが、顧客単価を上げるための最初の、そして最も大切なステップとなります。特に、自社の強みや一般的な工務店との差別化ポイントは、高付加価値サービス開発のヒントになるでしょう。

売上向上×顧客単価:成果を最大化する具体的な取り組み

ここからは、セクション1で確認した基本戦略をもとに、実際に顧客単価を向上させ、売上向上に繋げるための具体的なアクションプランをステップ形式でご紹介します。読者である工務店経営者の方々が、すぐに実行できる内容に重点を置いています。

STEP 1:顧客ニーズの深層を探り、高単価につながる「隠れた要望」を引き出す

契約直前になってオプション提案をしてもうまくいかないことが多いのは、顧客がすでに予算感を固めてしまっているからです。顧客単価を考慮した提案は、できるだけ早い段階、理想としては初回面談やヒアリングの段階から始めるべきです。

重要なのは、顧客が「欲しいと言っているもの」だけでなく、「本当はこうしたい」「こんなことで悩んでいる」という潜在的なニーズや価値観を引き出すことです。単に部屋数や広さだけでなく、「どんな暮らしがしたいですか?」「家づくりやリフォームで、一番大切にしたいことは何ですか?」「今の住まいで不便に感じていることは?」といった、踏み込んだ質問をすることで、高性能な断熱や防音、将来を見据えた間取り変更、趣味を楽しむための特別な空間など、顧客単価を上げるためのアイデアが出てきます。

ヒアリング時には、顧客の話をじっくり聞き、共感を示す姿勢を見せることも大切です。信頼関係が築ければ、顧客は本音を話しやすくなります。その本音の中にこそ、顧客単価向上に繋がるヒントが隠されています。

【FAQ】Q: 顧客の予算が限られていると言われたら、それ以上の提案は難しいのでは?

A: 予算が限られている場合でも、すぐに諦める必要はありません。大切なのは、顧客がその予算で何を実現したがっているのかを正確に理解することです。そして、提案する高付加価値サービスが、その予算を超えてでも実現したい「価値」なのかどうかを顧客自身に考えてもらうように促します。例えば、断熱改修は初期費用がかかっても、長期的な光熱費削減や健康メリット、快適性向上といった「価値」をもたらします。段階的に工事を進める、優先順位を整理して今回は最低限、次回は〇〇、といった提案も有効です。全てを盛り込むのではなく、顧客にとって最も重要な価値を強調し、そちらに予算を振り分ける判断を促すことも可能です。

STEP 2:顧客単価を押し上げる「高付加価値サービス」の開発と提示

自社の棚卸しで見えてきた強みや、ターゲット顧客のニーズに合わせて、標準仕様にプラスして提案できる高付加価値サービスを具体的に開発・整理します。

  • パッケージ化: 例えば、「基本プラン+高断熱・高性能住宅パッケージ」「水回りリフォーム+バリアフリー+収納拡充安心パック」のように、関連性の高いオプションをセットにして提案しやすくします。松・竹・梅のように複数のグレードを用意するのも有効です。
  • テーマ特化: 省エネ、健康住宅、デザイン住宅、多世帯住宅、趣味の部屋など、特定のテーマに特化した高付加価値プランを用意し、「〇〇ならこのプランが最適です」と具体的に提示します。
  • 関連サービス: 建物本体だけでなく、外構、庭、家具、カーテン、照明、ホームセキュリティ、長期メンテナンス契約なども、必要であれば自社で請け負うか、信頼できる協力業者と連携してワンストップで提供できるようにします。これにより、お客様の利便性を高めつつ顧客単価向上を図れます。

これらの高付加価値サービスは、単なるオプションリストとして提示するのではなく、それぞれが顧客の暮らしにどのようなメリットをもたらすのかを明確に説明できる資料やツールを用意しておくことが重要です。

STEP 3:自然に、しかし確実に「オプション・アップセル」を推奨する技術

高付加価値サービスやオプションを開発しても、それが顧客に伝わらなければ意味がありません。効果的な提案には、タイミングと伝え方が重要です。

  • 早い段階での提示: 初回打ち合わせから「こんなこともできますよ」「最近ではこういうニーズが多いですよ」と事例を交えながら、幅広い選択肢があることを匂わせます。プランや見積りを提示する際には、標準仕様とそれにプラスできるオプション(とその価格)、高付加価値プランの比較を分かりやすく示します。
  • メリットの強調: オプション一つ一つについて、「この断熱材に変えることで、夏涼しく冬暖かいだけでなく、光熱費が年間〇〇円削減できます」「この収納を追加すれば、趣味のアウトドアグッズもすっきり片付き、リビングが広く使えます」のように、顧客にとっての具体的なメリットを数値やエピソードを交えて伝えます。
  • 第三者からの評価: 実際にそのオプションを採用したOB施主様の声や写真、専門家(建築家、ファイナンシャルプランナーなど)の意見、性能に関する公的な認定などを提示し、信頼性を高めます。
  • ストーリーテリング: 「以前担当させていただいたお客様の中には…」「もし〇〇様が△△をご採用になると、将来的に…」のように、顧客の未来の暮らしがどう豊かになるのかを想像させるようなストーリーを語ることで、オプションへの魅力を高めます。

提案する際は、必ずしも即決を迫る必要はありません。じっくり検討してもらう時間を与え、疑問点には誠実に答える姿勢が信頼に繋がります。

【FAQ】Q: オプション提案が「押し付け」に聞こえて、顧客との関係が悪化するのが心配です。

A: 押し付けになるかどうかの分かれ目は、「顧客のニーズに基づいているか」と「顧客が自由に選択できる雰囲気を作れているか」にかかっています。まず、STEP 1で述べたように、事前のヒアリングで顧客の要望や困りごとを十分に把握することが大前提です。その上で、「お客様の〇〇というご要望でしたら、この△△というオプションが大変有効です。理由は…」のように、提案と顧客ニーズを結びつけます。そして、「もちろん必須ではありません。ご予算や優先順位に合わせてご検討ください」と、あくまで選択肢の一つであることを明確に伝えます。断られた場合もしつこくせず、他の選択肢や代替案を提示するなど、誠実に対応することで、たとえオプション契約に至らなくても信頼関係は維持できます。

STEP 4:既存顧客からの「リピート」「クロスセル」「紹介」を仕組み化する

一度契約してくださったお客様は、あなたの工務店の信頼性をすでに知っています。この既存顧客こそ、最も顧客単価や売上向上に貢献してくれる可能性を秘めた宝です。

  • アフターメンテナンスの充実化: 定期点検の実施はもちろん、有料のメンテナンスパックや、ちょっとした家の困りごとを気軽に相談できる窓口を設けることで、新たなリフォームや修繕ニーズを早期に発掘できます。
  • OB顧客向けの情報発信: ニュースレターやメールマガジン、SNSなどを活用し、リフォーム事例、メンテナンスの重要性の啓蒙、お得なOB限定キャンペーン情報などを定期的に発信します。これにより、お客様にあなたの工務店を忘れさせず、常に繋がりを持つことができます。
  • 紹介プログラムの整備: OB施主様からのご紹介で新規顧客を獲得した場合、紹介してくださったOB施主様、紹介された新規顧客の双方にメリットがあるような制度(例:割引、ギフト券、メンテナンスサービス追加など)を設けます。口コミは最も強力な集客・信頼構築手段であり、紹介顧客は初期から信頼度が高いため、高単価になりやすい傾向があります。
  • クロスセル提案: 新築のお客様に外構工事やインテリア関連、リフォームのお客様に耐震補強や断熱改修など、関連性の高い工事を合わせて提案します。

これらの活動は、顧客単価向上に繋がるだけでなく、企業の評判を高め、安定的な売上向上に貢献します。

STEP 5:付加価値を正しく理解してもらうための「見える化」と「プレゼンテーション」

どんなに素晴らしい高付加価値サービスを開発しても、それが顧客に「選ぶ価値がある」と理解されなければ契約には繋がりません。特に工務店のサービスは見えにくい部分が多いからこそ、視覚資料を駆使した「見える化」と、顧客の心に響くプレゼンテーションが重要です。

  • 具体的なデータ提示: 使用する建材の性能(断熱性、耐久性、遮音性など)を数値やデータで示し、それが長期的にどんなメリット(光熱費削減、メンテナンスコスト低減、快適性向上など)に繋がるのかを分かりやすく説明します。
  • ビジュアル資料の活用: 完成イメージが湧きやすいように、写真(特に自社の施工事例)、パース図、VR、模型などを積極的に活用します。特にオプションを追加した場合のビジュアル変化を示すことは効果的です。
  • ストーリー性のあるプレゼン: 標準仕様だけでできること、そこにオプションを加えることで何がどのようにグレードアップし、顧客の理想の暮らしがどう実現に近づくのかを、ストーリー形式で語ります。単に仕様を説明するのではなく、顧客の感情に訴えかけることも重要です。
  • 他社との違いを明確に: 自社独自の技術、工法、サービス体制など、他社との差別化ポイントを具体的に説明し、「だからこそ当社のこのサービスは付加価値が高いのです」と自信を持って伝えます。

プレゼンテーションは、単なる情報伝達の場ではなく、顧客の「欲しい」という気持ちを醸成し、提供する価値を正しく理解してもらうための重要な営業活動です。時間をかけて丁寧に準備し、顧客一人ひとりに合わせたカスタマイズを心がけましょう。

【FAQ】Q: 「他社より価格が高い」と言われたら、どう対応すれば良いですか?

A: 価格だけで比較されている状況です。この場合、価格が高い理由、つまり「付加価値」を顧客が十分に理解していない可能性が高いです。「確かにシンプルに価格だけを比較されますと、弊社の方が高く感じられるかもしれません。しかし、弊社の〇〇(サービス名や仕様)には、他社様にはない△△という特徴があり、これはお客様が将来的に得る□□というメリット(例:年間〇万円の光熱費削減、20年後のメンテナンス費用大幅削減など)に直結します。初期費用だけでなく、長期的な視点でトータルコストや暮らしの快適性をぜひ比較検討いただきたいです」のように、価格差に見合う、またはそれ以上の長期的なメリットや安心感、品質の高さを具体的な根拠とともに説明します。品質やサービスにおける自社の強みは、決して価格競争に巻き込まれないための重要な要素であり、その価値を正しく伝える努力が売上向上には不可欠です。

売上向上を継続的に成功させるための「次の一手」

顧客単価向上は、一度取り組めば終わりではありません。市場は常に変化し、顧客のニーズも多様化します。継続的な売上向上を実現するためには、単価向上策を持続可能な取り組みとし、さらに次のステップへと発展させていく必要があります。

顧客単価向上を「組織文化」として根付かせるための社内戦略

顧客単価向上は、営業担当者だけが意識すれば良いものではありません。設計、現場監督、事務スタッフ、全社員が会社の売上構造と利益意識、そして「顧客に最高の価値を提供する」という共通認識を持つことが重要です。

  • 目標の共有: 全社員に、顧客単価向上と売上向上がなぜ重要なのか、そしてそれが自分たちの働きがいや কোম্পানির futuro にどう繋がるのかを理解してもらいます。単価目標だけでなく、提案件数やオプション成約率なども共有目標とすることができます。
  • 社員教育: 提案力向上のための研修(ヒアリングのコツ、価値の伝え方、最新の建築知識など)、顧客対応スキル研修などを定期的に実施します。外部講師を招いたり、ロールプレイングを取り入れたりするのも効果的です。
  • 成功事例の共有: 「こんな提案でお客様に喜ばれ、単価アップに繋がった」という成功事例を社内で積極的に共有し、互いに学び合う文化を作ります。成果を出した社員を正当に評価・表彰することもモチベーション向上に繋がります。
  • 情報共有の仕組み: 顧客ニーズ、市場動向、競合情報、新しい建材・技術に関する情報を全社員がアクセスできる仕組み(社内データベース、定期的な会議など)を作ります。

全社員が「お客様に喜ばれる提案=単価向上=売上向上」という良いサイクルを理解し、主体的に関わることで、単価向上は組織の強みとして定着します。

定期的な効果測定と改善:成功事例を分析し、次の戦略に活かす

取り組んだ施策が実際に顧客単価向上や売上向上にどの程度貢献しているのかを継続的に測定・分析し、改善を重ねるPDCAサイクルを回すことが不可欠です。

測定すべき主なKPI(重要業績評価指標)としては、以下のものがあります。

  • 平均顧客単価(全体、新築・リフォーム別、担当者別など)
  • オプション・アップセル成約率
  • リピート率
  • 紹介率
  • サービス別の利益率
  • 提案件数と成約に繋がった提案内容

これらのデータを定期的に集計・分析し、「どんな顧客層に、どんな提案が、どれくらいの確率で受け入れられているのか」「どの担当者の単価が高いのか、その理由は?」「ある施策(例:新しいメンテナンスパック)を導入した後、リピート率はどう変化したか?」などを検証します。成功要因を分析し、他の事例に応用したり、失敗要因を改善したりすることで、より効果的な戦略を構築できます。データに基づいた意思決定が、売上向上への確実性を高めます。

デジタルツールを活用した売上向上・顧客単価向上

現代の経営において、デジタルツールの活用は避けて通れません。工務店でも、様々なツールが顧客単価向上と売上向上に役立ちます。

  • CRM(顧客管理システム): 顧客の基本情報、過去の契約内容、家族構成、趣味嗜好、ヒアリング内容、提案履歴、アフターフォロー状況などを一元管理できます。これにより、顧客一人ひとりに合わせたきめ細やかな提案が可能になり、リピートや紹介にも繋がりやすくなります。顧客単価の高い顧客層の分析にも役立ちます。
  • ウェブサイト・SNS: 自社の強みや高付加価値サービスを分かりやすく紹介する場として活用します。デザイン性、性能、特定の工法などに特化したコンテンツを充実させることで、それに価値を見出す顧客層からの問い合わせを増やせます。施工事例を詳細に紹介し、どのようなオプションがあるのかを写真付きで示すのも効果的です。
  • プレゼンテーションツール: CGI、VR(バーチャルリアリティ)ツール、動画などを活用することで、完成イメージをよりリアルに、魅力的に伝えることができます。これにより、高価なオプションやグレードアップ仕様を選んでもらいやすくなります。

これらのツールを単に導入するだけでなく、社員が使いこなせるようサポートし、そこで得られた情報を顧客単価向上や売上向上に繋がる具体的なアクションに結びつけることが重要です。

新たな売上向上源としての高付加価値ビジネスモデル:ZEH、リノベーション、サブスクリプション?

市場のトレンドや社会的ニーズの変化を捉え、新たな高付加価値ビジネスモデルを検討することも、継続的な売上向上には不可欠です。例えば、以下のような分野への注力や参画が考えられます。

  • 高性能住宅(ZEH, LCCMなど): エネルギー効率が高く、快適性や健康にも配慮した住宅は、初期費用が高くても長期的なコストメリットや居住価値を重視する顧客層から選ばれています。専門知識や技術は必要ですが、高単価案件に繋がりやすい分野です。
  • デザインリノベーション・中古住宅再生: 建物を単に直すだけでなく、デザイン性や暮らし方に特化した付加価値の高いリノベーション需要が増えています。古民家再生やコンバージョンなども専門性が高く、単価が高くなる傾向があります。
  • インスペクション(建物状況調査)・ホームステージング等: 建築のプロとしての専門知識を活かせる周辺サービスも検討できます。
  • サブスクリプション型サービス: 暮らしのメンテナンス定額制サービスなど、定期的な収益が見込めるビジネスモデルも、新たな売上向上源となり得ます。

これらの新しい分野に挑戦することで、新たな顧客層を獲得し、既存事業との相乗効果で全体の売上向上を図ることが可能です。

競合との差別化を明確にし、「選ばれる」工務店になる

最後に、顧客単価を高めるためには、価格競争から脱却し、顧客から「この工務店に頼みたい」と選ばれる存在になることが最も重要です。そのためには、自社の強みや専門性を磨き、それを顧客に明確に伝える努力をし続ける必要があります。

あなたの工務店だからこそ提供できる価値は何でしょうか?高い技術力、特定のデザイン、高性能住宅の実績、丁寧なコミュニケーション、迅速な対応、地域密着ならではの信頼関係など、それは様々です。その「あなたらしさ」を明確にし、ウェブサイト、SNS、パンフレット、そして実際の顧客対応の全てを通じて一貫して発信することで、価格だけではない価値で選ばれるようになり、結果として顧客単価の高い受注を増やし、継続的な売上向上を実現することができます。

まとめ

この記事では、工務店の売上向上を成功させるための鍵として、顧客単価向上の重要性とその具体的な実践方法をご紹介しました。売上=顧客数×顧客単価というシンプルな構造の中で、顧客単価を高めることは、新規顧客開拓の負担を減らしながら利益率を改善し、効率的に売上向上を実現する強力な戦略です。顧客単価向上への取り組みは、単なる値上げではなく、顧客ニーズを深く理解し、自社の強みを活かした高付加価値なサービスを提供し、信頼関係を築くことで「価格以上の価値」にお客様が納得し、喜んでいただくプロセスです。

具体的なアクションとして、顧客ニーズの深掘り、高付加価値サービスの開発、効果的な提案技術、既存顧客との関係強化策、そしてこれらを支える社内体制づくり、データに基づいた改善、ツールの活用、新たなビジネスモデルへの挑戦など、多岐にわたる施策があります。どれも一朝一夕に完了するものではありませんが、小さな一歩から始め、継続的に取り組むことが大切です。例えば、次の顧客との打ち合わせで、いつもより一つ多く「なぜそれが必要なのですか?」と問いかけてみることから始めてみましょう。提供できるオプションやサービスのリストを見直し、それぞれの「顧客にとってのメリット」を書き出してみることも、すぐにできる一歩です。

価格競争から抜け出し、品質と価値で選ばれる工務店になること。それが、顧客単価を自然に引き上げ、結果として売上向上の道を切り拓く王道です。この記事で得た知識を、ぜひあなたの工務店の血肉とし、実践に移してください。一歩ずつ着実に、提供する価値を高め、お客様との信頼関係を深めていく先に、必ず安定した経営とさらなる売上向上の未来が待っています。あなたの情熱と技術が、地域社会とお客様の豊かな暮らしを創造し、会社をさらに発展させていくことを心から応援しています。

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この記事を書いた人

浄法寺 亘

工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。
今動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」
※8月実施予定。
住宅サイトの運営もしています。

福島県 喜多方市出身
県立会津高校卒
市立高崎経済大学卒

著書:
頼みたくなる住宅営業になれる本
https://x.gd/oatiM
SDGsに取り組もう 建築業界編
https://x.gd/MXYJr
とっておきの見込み客発掘法
https://x.gd/001or

主な講演:
鹿児島県庁主催「かごしま緑の工務店研修会」
リードジャパン主催「工務店支援エキスポ」(東京ビックサイト)
育英西中学校
その他住宅FCなど

活動実績
2019~ 千葉県にて里山竹林整備ボランティア
2020~ 木ッズ絵画コンクール

工務店の集客・営業ならジーレックスジャパン →ホームページはこちら

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工務店のネット集客ならこちら →工務店情報サイト ハウジングバザール

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