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粗利率を最大化!工務店の原価管理と価格設定

公開日: : 工務店 経営

工務店経営者の皆様、日々の業務、お疲れ様です。家づくりへの情熱だけでは乗り越えられない厳しい現実。それは、適切な利益が確保できないことではないでしょうか。どれだけ良い家を建てても、正当な対価を得られなければ、会社は疲弊し、未来への投資も社員への還元もままなりません。特に、資材価格の高騰や人件費の上昇が続く中、感覚やどんぶり勘定に頼った原価管理や価格設定では、気づかぬうちに利益を食いつぶしてしまうリスクが高まっています。貴社の利益改善は待ったなしの課題です。

「とにかく忙しいのに、なぜか利益が残らない」「見積もりを出しても他社にすぐに値引きで負けてしまう」「そもそも、自分たちの適正な利益ってどのくらいなの?」

このような疑問に正面から向き合い、具体的な解決策を示したい。この記事は、粗利率向上を経営の最重要課題と捉え、その実現に向けた実践的な一歩を踏み出すための徹底ガイドです。原価管理の盲点をなくし、自信を持って適正価格を提示できる仕組みづくり。感覚ではなく、データに基づいた戦略的な意思決定をするための視点と具体的な方法。これらを身につけることで、貴社は価格競争に巻き込まれることなく、顧客から選ばれ、安定した高収益体質へと生まれ変わることができます。この記事を最後までお読みいただければ、売上は上がっているのに利益が出ない、という悩みから解放され、持続可能な経営基盤を確立するための道筋が見えるはずです。さあ、貴社の利益改善粗利率向上を、今すぐここから始めましょう。

粗利率向上の「実践的」導入戦略:基礎から応用まで

利益改善の第一歩は、自社の「儲けの構造」を正確に理解することから始まります。そして、その鍵を握るのが「粗利率」です。ここでは、粗利率の基本から、それをどう捉え、どのように「見える化」し、戦略的な粗利率向上につなげていくかについて、具体的なステップを含めて解説します。

1. 粗利率の定義と重要性を再確認する

粗利率とは何か?それは「売上高から売上原価を差し引いた粗利益が、売上高に占める割合」です。計算式は非常にシンプルです。

粗利率 (%) = (売上高 - 売上原価) ÷ 売上高 × 100

売上原価には、主に直接工事費(材料費、労務費、外注費など)が含まれます。粗利益は、会社の固定費(本社経費、人件費、家賃など)を賄い、さらに利益(純利益)を生み出す原資となります。どれだけ売上高が高くても、粗利率が低ければ、多くの仕事をこなしても利益が出にくい「薄利多売」の体質から抜け出せません。逆に、売上高がそれほど高くなくても、粗利率が高ければ、効率的に利益を生み出し、会社を安定させることができます。利益改善のためには、この「粗利」を最大化することが不可欠なのです。

Q: 売上高だけを追っていてはダメなの?
A: ダメです。売上高は会社の規模を示す指標としては重要ですが、それが直接的に儲けを示すわけではありません。利益体質かどうかは、粗利率や経常利益率で判断すべきです。粗利率を意識しないと、忙しい割に資金繰りが苦しい、という状況に陥りやすくなります。

2. 自社の粗利率を正確に「見える化」する

まず、自社の粗利率の実態を知ることから始めましょう。過去の工事データに基づき、平均粗利率や、工事種別(新築、リフォーム、構造など)、規模別、あるいは担当者別の粗利率を計算してみてください。この「見える化」によって、どこに改善の余地があるのか、具体的な課題が見えてきます。

STEP 1: 過去の工事データを収集する

完成した工事について、以下のデータを集めます。

  • 契約時の売上高
  • 実際にかかった直接工事費(材料費、労務費、各専門工事業者への支払いなど)
  • その他、その工事に直接紐づく特別な経費

これらのデータが正確に記録・集計できる体制になっているか確認してください。バラバラになっている場合は、まずここを整理することから始めます。

STEP 2: 工事ごとの粗利率を計算する

集めたデータを使って、工事ごとに粗利率を計算します。

例:売上高 3,000万円、売上原価 2,400万円 の場合
粗利率 = (3,000万円 – 2,400万円) ÷ 3,000万円 × 100 = 20%

STEP 3: 平均値や傾向を分析する

計算した個別の粗利率を集計し、全体平均、工事種別ごとの平均、担当者ごとの平均などを算出します。これにより、「新築は粗利率が高いがリフォームが低い」「特定の担当者だけ粗利率が低い傾向がある」など、具体的な課題が浮き彫りになります。

Q: どこまでを売上原価に含めるべき?
A: 基本的には、その工事を完成させるために直接かかった費用を含めます。材料費、職人さんの日当や給与(直接労務費)、協力業者への発注にかかる費用、現場管理費の中でその工事に直接関連するものなどです。本社家賃や事務員の給与など、複数の工事に共通する費用は一般的に販管費(販売費及び一般管理費)として粗利益から差し引かれる費用となります。

3. 見積もり段階での精度向上と実行予算の徹底

粗利率向上は、工事が始まる前の「見積もり」と「実行予算」でほぼ決まります。ここで精度が低いと、後からどれだけ頑張っても目標とする粗利率を達成するのは困難になります。まさに「はじめが肝心」です。

STEP 1: 見積もり積算の基準を明確化・統一する

担当者によって積算方法や単価が異なるのは、粗利率が安定しない大きな原因です。過去の実績データに基づき、材料の歩留まり、㎡単価やm単価の標準設定、労務費の見積もり基準などを言語化・マニュアル化し、社内で共有・統一します。常に最新の資材単価や労務費を反映させる仕組みも重要です。

STEP 2: 実行予算を必ず作成する

受注が決まったら、すぐに詳細な実行予算を作成します。実行予算は、契約金額に基づき、工事を計画通りに進めるために必要な「目標原価」を設定するものです。見積もり積算よりもさらに細かく、材料単価、数量、労務費(人工)、外注費などを具体的に計上します。この実行予算作成の目的は、計画段階での目標粗利益(実行粗利益)を明確にし、後の原価管理の比較対象とするためです。

実行予算で設定すべき主な項目:

  • 直接材料費(仕様に基づいた必要数量と単価)
  • 直接労務費(作業内容ごとの必要人工と人工単価)
  • 専門工事費(協力業者からの見積もりを精査)
  • その他直接経費(運搬費、産業廃棄物処理費など)

STEP 3: 目標粗利率を設定し、実行可能か検証する

見積もり金額と実行予算から算出される「実行粗利率」が、会社として目標とする粗利率や、最低限確保したいラインを下回っていないか検証します。もし下回っている場合は、契約金額の再交渉を検討するか、実行予算段階でコストを見直す努力を行います。この段階での目標設定が、利益改善の方向性を決定づけます。

Q: 実行予算って面倒くさくてついつい省略してしまうのですが…
A: その習慣が、利益を逃している大きな原因かもしれません。実行予算は、工事中の原価管理の「物差し」です。これがないと、計画通りに進んでいるのか、赤字になりそうなのかが分からず、手遅れになりがちです。面倒でも必ず作成し、経営者だけでなく現場担当者も意識することが、利益改善には不可欠です。「面倒くさい」から「当たり前」の業務プロセスに変えましょう。

4. コスト削減の具体的なアプローチ

粗利率を上げる方法は、「売上高(価格)を上げる」か「売上原価を下げる」かのどちらかです。ここでは、売上原価を下げるための具体的なアプローチをいくつか紹介します。

STEP 1: 材料費の削減

  • 仕入れ先の見直し:複数の仕入れ先から見積もりを取り、より有利な条件を引き出す交渉を行います。
  • 共同購入・集中購買:特定の材料について、複数の現場分をまとめて発注することで、単価交渉を有利に進めます。
  • 代替材料の検討:品質を維持しつつ、より安価な材料がないか検討します。(ただし、顧客の合意は必須)
  • 在庫管理の徹底:過剰な在庫や、無計画な発注によるロスを削減します。
  • 端材・残材の効率的な利用:現場で出る端材や残材を、別の現場で活用できる仕組みを構築します。

STEP 2: 労務費の削減

  • 作業効率の向上:職人さんの動線を見直したり、最新の工具を導入したり、標準的な作業手順を共有するなどして、無駄な時間を削減します。
  • 適切な人員配置:工事内容に対して、過不足のない人数を配置し、手待ち時間をなくします。
  • 多能工の育成:一人の職人さんが複数の作業を行えるようにすることで、現場の状況に合わせた柔軟な人員配置が可能になり、特定の職人さんへの依存を減らせます。

STEP 3: 外注費の見直し

  • 協力業者との価格交渉:定期的に相見積もりを取り、適正価格での発注を心がけます。
  • 長期的なパートナーシップ構築:特定の協力業者と長期的に安定した関係を築くことで、価格面だけでなく、品質や納期の安定化にもつながります。
  • 自社施工との比較検討:外注している工事内容でも、自社で施工した方がコストや品質面で有利になるものがないか検討します。

これらのコスト削減策は、単に安ければ良いというものではありません。品質を維持・向上させつつ、無駄を徹底的に排除するという視点が重要です。サプライヤーや協力業者との適切な関係構築も、長期的な利益改善のためには欠かせません。

利益改善×粗利率向上:成果を最大化する具体的な取り組み

前章では、粗利率の基礎と、原価管理、コスト削減の方法を見てきました。本章では、さらに一歩進んで、利益改善粗利率向上を同時に実現し、その成果を最大化するための「価格設定」と「実行段階での管理」に焦点を当てます。単に原価を抑えるだけでなく、提供する価値に対して適切な対価を得るための戦略を練りましょう。

5. 戦略的な価格設定:顧客価値と利益目標から逆算する

工務店の価格設定は、往々にして「原価に利益を〇〇%乗せる」というコスト積み上げ方式になりがちです。これだけでは、競合他社との価格競争に巻き込まれやすく、自社の強みや提供する価値が価格に反映されません。戦略的な価格設定とは、単にコストから積み上げるのではなく、市場環境、顧客が感じる価値、そして自社の利益改善目標を総合的に考慮して行うものです。

STEP 1: コスト積み上げ+αの視点を持つ

もちろん、原価計算は価格設定の出発点として重要です。しかしそこに「市場価値」「競合価格」「顧客がその家(リフォーム)に感じる価値」といった視点を加えます。たとえ原価が同じでも、デザイン性、断熱性能、アフターサービス、ブランド力などが優れていれば、それに見合った価格設定が可能です。

STEP 2: 顧客が感じる「価値」を価格に反映させる

顧客は、単に建材や職人さんの技術にお金を払うわけではありません。「安心」「快適」「デザイン」「健康」「省エネ」「将来の資産価値」など、様々な「価値」に対して対価を支払います。自社がどのような「価値」を提供しているのかを明確にし、それを価格に反映させる努力が必要です。標準仕様に含まれる性能や設備、保証内容、提案力といった、他社との差別化ポイントを洗い出し、自信を持って提示できる価格設定を目指します。

STEP 3: 利益目標から逆算して価格設定を検討する

会社として達成したい利益改善目標(年間の粗利益目標や純利益目標)を設定します。そこから必要な売上高、そして工事一件あたりに確保すべき平均粗利率が見えてきます。この目標粗利率を達成するためには、工事ごとの価格設定をどうすべきか、個別の見積もり段階で逆算して検討します。

STEP 4: 価格の「正当性」を顧客に伝える

価格設定が高めになったとしても、その価格が提供する価値に見合っていることを丁寧に顧客に説明することが重要です。見積もりの項目を単に並べるだけでなく、なぜその価格になるのか、その価格でどのような品質やサービス、安心が得られるのかを具体的に伝えます。ここでの丁寧なコミュニケーションが、安易な値引き競争から距離を置くための鍵となります。

Q: 結局、競合より安くないと受注できないのでは?
A: 価格競争は消耗戦です。安さでしか勝負できない会社は、構造的に利益改善が困難になります。重要なのは、「安さ」ではなく「価値」で選ばれる工務店になることです。自社の強みや提供価値を明確に打ち出し、それに共感する顧客をターゲットにすることで、適正価格での受注が可能になります。安易な値引き要求には、提供価値を再認識してもらう、仕様変更を提案するなど、戦略的に対応しましょう。

6. 実行段階での徹底した原価管理と利益確保

見積もり・契約段階で目標粗利率を設定しても、工事の実行段階で原価管理がルーズになれば、計画通りの利益改善は実現できません。現場での「見える化」と迅速な対応が鍵となります。

STEP 1: 実行予算と実績の比較をリアルタイムで行う

工事期間中は、設定した実行予算に対して、実際の材料費、労務費、外注費などがいくらかかっているのかを常に把握します。可能であれば、週次や月次で予算と実績の比較を行います。これにより、予算からの乖離(原価差異)が発生している箇所を早期に発見できます。

STEP 2: 原価差異の原因分析と改善策の実行

予算オーバーが発生している箇所を見つけたら、なぜそうなったのか原因を分析します。(例:材料の無駄が多かった、予定より作業に時間がかかった、追加の作業が発生した、見積もり時のミスなど)。原因が分かれば、すぐに改善策を講じます。材料の発注方法見直し、職人さんへの指示徹底、作業手順の改善など、現場レベルでできることを迅速に行います。

STEP 3: 変更契約時の価格交渉と管理を徹底する

工事中に仕様変更や追加工事が発生することは珍しくありません。この際、新たな工事分を単にサービスしたり、見積もりが曖昧なまま進めたりするのは禁物です。必ず変更契約書を交わし、変更内容に見合った適正な金額を提示・合意します。追加・変更工事の見積もり積算も、当初の見積もりと同様に、原価と利益目標を明確にして行います。これが粗利益の積み増し、ひいては利益改善に直結します。

  • 重要:口頭での追加・変更指示は絶対に避け、必ず書面で残しましょう。
  • 重要:軽微と思える変更でも、原価に与える影響を見積もり、提示すること。

STEP 4: 手戻りや無駄を徹底的に削減する

手戻りは、段取りの悪さ、指示の不明確さ、確認不足などによって発生し、労務費や材料費の無駄を生じさせます。現場でのコミュニケーションを密にし、図面や仕様の確認を徹底することで、手戻りを未然に防ぎます。品質管理も重要です。やり直しが発生すれば、当然ながら原価が上昇し、粗利率向上の妨げになります。

Q: 現場の職人さんに「原価」を意識させるのは難しい?
A: 難しいかもしれませんが、不可能ではありません。現場担当者や職人さんにも、工事ごとの目標粗利率や実行予算を共有し、「この予算内で高品質な仕事をする」という共通認識を持つことが重要です。無駄をなくすことが、結果的に自社の利益になり、それが自分たちの雇用や収入、会社の未来につながることを理解してもらいます。

7. 協力業者との連携強化によるコスト適正化

工務店の原価において、協力業者への外注費が占める割合は非常に高いです。協力業者との良好な関係を築きながら、いかにコストを適正化するかが利益改善の重要な要素となります。

STEP 1: 適正な単価交渉と契約

闇雲な値引き要求は、品質低下や協力業者の疲弊を招き、長期的に悪影響を及ぼします。まずは市場の適正価格を把握し、協力業者との価格交渉を行います。単価だけでなく、支払条件や工期の遵守などの契約内容も明確に定めます。

STEP 2: 仕様の明確化と事前共有

曖昧な指示や、現場での急な仕様変更は、協力業者側に追加費用発生の原因となります。工事前に仕様を明確に伝え、図面や現場の状況を十分に共有することで、見積もり通りの原価で工事を進めてもらいやすくなります。

STEP 3: 情報共有とコミュニケーションの促進

協力業者も利益を出すために努力しています。お互いの状況を理解し、円滑なコミュニケーションを図ることで、無駄のない効率的な現場運営が可能になります。例えば、他の工程の進捗状況を共有することで、協力業者がスムーズに次の作業に入れたり、手待ち時間を減らしたりできます。これは結果的に自社の労務費や間接経費の削減にもつながり、全体的な利益改善効果が期待できます。

Q: 協力業者との関係を悪化させずにコスト交渉するには?
A: 単に単価を叩くのではなく、 Win-Win の関係を目指す姿勢が重要です。「長期的に安定した発注を約束する代わりに、競争力のある価格を提示してもらう」「共同で資材の仕入れを工夫する」など、お互いにとってメリットのある提案を検討します。常に敬意を持ち、支払いを確実に timely に行うなど、信頼関係構築に努めることが大前提です。

利益改善を継続的に成功させるための「次の一手」

一度これらの取り組みを行っても、継続しなければ効果は薄れてしまいます。ここからは、利益改善粗利率向上の努力を持続させ、さらに成果を高めるためのステップについて解説します。

8. 利益改善活動の効果測定と評価

取り組んだ改善策が、実際に利益改善に繋がっているのかを定量的に把握することが重要です。感覚ではなく、データに基づいて評価し、次のアクションに繋げます。

STEP 1: 測定すべき指標(KPI)を設定する

以下のような指標(KPI:重要業績評価指標)を設定し、定期的に測定します。

  • 全体平均粗利率:会社全体の粗利率の推移
  • 工事別粗利率:個別の工事案件ごとの粗利率。特に目標粗利率を達成できたか、できなかった場合はなぜかを分析。
  • 工事種別、担当者別平均粗利率:傾向把握と、改善が必要な領域の特定。
  • 原価差異率:実行予算に対して、実際にかかった原価がどれだけ乖離しているかの割合。
  • (オプション)顧客満足度:価格設定や品質が顧客の期待に応えられているかの間接的な指標。

STEP 2: 定期的なレビューと分析を行う

設定したKPIに基づき、週次、月次、四半期、年次などのスパンで、会社の経営層や現場責任者、場合によっては全社員で利益状況をレビューします。目標に対してどうだったか、良かった点、悪かった点、その原因は何かを深く分析します。特に、目標粗利率を達成できなかった案件については、詳細な原因究明を行います。

STEP 3: 評価に基づいて改善計画を立てる

分析結果に基づいて、次の期間にどのような改善策に取り組むべきかを具体的に計画します。「来期は〇〇工事の粗利率を〇%向上させるために、積算基準を見直す」「△△担当者の実行予算管理を強化する」のように、具体的な目標と行動計画を立てます。

9. ITツールの活用による効率化と精度向上

手作業での原価管理や積算には限界があります。ITツールを効果的に活用することで、業務効率を大幅に向上させ、精度を高め、リアルタイムでの利益管理を可能にします。

検討すべきITツール:

  • 原価管理システム:
    • 見積もり、実行予算作成、発注管理、工事中の原価入力・集計を一元管理。
    • 実行予算と実績の比較、原価差異分析が容易になる。
    • リアルタイムでの工事別利益状況の把握。
  • 積算ソフト:
    • 過去データや標準単価に基づいた迅速かつ正確な見積もり積算。
    • 部材の自動拾い出し機能などによる積算ミスの削減。
  • CRM(顧客管理システム):
    • 顧客情報、案件履歴、見積もり、契約情報などを一元管理。
    • 営業プロセスや顧客ニーズの分析を通じた高粗利率案件獲得への示唆。

ITツール導入には初期コストや運用コストがかかりますが、長期的には業務効率化による人件費削減、精度の向上による原価管理ミス・見積もりミスの削減、そしてリアルタイムな情報に基づく迅速な意思決定による利益改善効果の方が大きくなる場合が多いです。自社の規模や課題に合ったツールを選定し、導入を検討しましょう。

Q: 小規模工務店でもシステム導入は必要?
A: 必須ではありませんが、今後の成長を考えるなら検討する価値は十分にあります。最初はExcelやGoogleスプレッドシートでできることから始め、業務量や複雑さが増してきた段階でシステムの導入を検討するのが現実的です。重要なのはツールそのものではなく、正確なデータを収集し、それを分析・活用する「仕組み」を構築することです。

10. 組織全体の意識改革と社員教育

経営者だけが利益改善を意識しても不十分です。現場担当者、営業担当者、事務担当者など、全社員が「自分たちの仕事が会社の利益にどう繋がっているのか」を理解し、コスト意識や利益意識を持つことが、持続的な粗利率向上には不可欠です。

STEP 1: 利益の重要性を共有する

なぜ利益が必要なのか(社員の給与、福利厚生、会社の存続、未来への投資など)を、分かりやすく全社員に説明します。会社が安定して利益を出すことが、社員自身の安定や成長に繋がることを伝えます。

STEP 2: 部署ごとの役割と貢献を明確にする

それぞれの部署や個人の業務が、どのように利益に貢献しているのか(例:営業は適正価格での受注、現場は予算内での工事完了、事務は正確な経費処理)を明確にします。

STEP 3: 利益に関する教育を行う

原価計算の基本、実行予算の見方、原価差異が発生した場合の対応など、実務に直結する利益に関する知識を、部署や役割に応じて教育します。勉強会や研修などを企画します。システムを導入した場合は、その使い方だけでなく、システムから得られる情報をどう利益改善に活かすかも指導します。

STEP 4: 成果を適切に評価し、インセンティブを検討する

個人の利益改善への貢献や、担当現場での目標粗利率達成などを適切に評価し、インセンティブ(報奨金や昇給・昇進)に繋げることも、モチベーション向上に有効です。ただし、個人の利益追求がサービス残業や品質低下に繋がらないよう、評価基準は慎重に設定する必要があります。

Q: 利益の話をすると、社員が引いてしまうのでは?
A: 「利益を出せ」と一方的に号令をかけるだけでは反発を招くかもしれません。そうではなく、「会社が安定して成長するためには、皆の頑張りが利益に繋がることが大切なんだ」「利益が出れば、皆にもっと還元できるし、働きやすい環境も作れる」というように、利益確保が社員自身のためでもあることを丁寧に伝えることが重要です。オープンなコミュニケーションを心がけましょう。

11. 高粗利率案件を獲得するための営業戦略の見直し

利益改善の最も直接的な方法は、最初から高粗利率が見込める案件を受注することです。そのためには、自社の強みを活かし、価格ではなく価値で選ばれるための営業戦略を構築します。

STEP 1: 自社の「強み」と「弱み」を再分析する

顧客から選ばれる理由は何ですか?高単価でも選ばれる理由は?デザイン力、技術力、提案力、アフターサービス、特定の工法、地域密着性など、自社の際立った強みを明確に言語化します。逆に、弱みも candid に把握します。

STEP 2: ターゲット顧客を絞り込む

自社の強みが最も活かせるのは、どのような顧客層ですか?どのようなニーズを持つ顧客ですか?自社の提供価値を最も高く評価してくれる顧客層にターゲットを絞り込むことで、価格競争を避け、適正価格での受注 peluang を高めます。

STEP 3: 提案の質を高める

顧客の潜在的なニーズを引き出し、自社の強みを活かした最適な提案を行います。単なる間取りや仕様の提案だけでなく、その家(リフォーム)が顧客の暮らしや未来にどのような価値をもたらすのかを具体的に伝えます。高性能な家であれば、光熱費削減効果や健康へのメリットなども具体的に提示します。

STEP 4: ブランドイメージの強化

ウェブサイト、SNS、イベントなどを通じて、自社の理念、こだわり、施工実績、顧客の声などを積極的に発信し、ブランドイメージを構築します。地域での評判や口コミも非常に重要です。ブランド力がつけば、「〇〇工務店に頼めば間違いない」という信頼が生まれ、価格以上の価値を感じてもらいやすくなります。

価格競争から抜け出し、高粗利率を獲得するための営業は、御用聞きではなく「コンサルタント」のようなアプローチが求められます。顧客に伴走し、最適な解決策を一緒に見つけていく姿勢が重要です。

12. 収益構造の多角化による安定化

新築一本足打法では、景気変動の影響を受けやすく、収益が不安定になりがちです。安定した利益改善を目指すためには、収益構造の多角化も有効な戦略です。

検討の方向性:

  • リフォーム・リノベーション事業の強化:ストック市場の拡大に伴い、安定した需要が見込めます。既存顧客との継続的な関係構築が鍵となります。
  • メンテナンス・定期点検事業:OB顧客向けのメンテナンスサービスは、継続的な収益源となり、小さな工事でも高い粗利率を確保しやすい場合があります。
  • 不動産関連事業:土地探し、仲介、買取再販などを手がけることで、建設工事以外の収益ルートを確立できます。
  • 住宅以外の建設事業:店舗、事業所、アパートなどの非住宅分野にも進出する。
  • 関連商品の販売:インテリア用品、家具、省エネ設備、建材などの販売。

収益構造を多角化することは、単に売上を増やすだけでなく、リスク分散にも繋がり、経営の安定化に貢献します。新たな事業に参入する際は、既存事業とのシナジーや、自社の資源(人材、技術、顧客基盤など)を活かせるかを慎重に検討することが重要です。

まとめ

工務店の利益改善粗利率向上は、単に儲けるための技術ではなく、会社が持続的に存続・発展し、社員とその家族の生活を守り、地域社会に貢献し続けるための必須経営課題です。この記事で触れた実践的なステップ:正確な粗利率の「見える化」から始め、見積もり精度と実行予算の徹底による原価管理、戦略的な価格設定、実行段階でのタイムリーな原価管理、そしてコスト削減と協力業者連携。これらは、貴社の基礎体力を向上させるための土台作りです。

さらに、KPIによる効果測定、ITツールの活用、組織全体の利益意識向上、高粗利率案件獲得のための営業戦略、そして収益構造の多角化といった「次の一手」は、貴社を価格競争から解放し、より高みへと導くための成長戦略です。これらの施策は、どれか一つだけを行えば劇的に改善するものではありません。組み合わせて継続的に実践することが、粗利率向上を持続させ、盤石な経営体質を確立するための鍵です。

今日から、まずは自社の粗利率を正確に把握することから始めてみてください。そして、小さな一歩でも良いので、原価管理の見直しや見積もり基準の統一など、具体的な改善活動に着手してください。継続は力なり。これらの実践を通して、貴社は必ず、お客様から選ばれ、社員が誇りを持ち、安定的に利益を生み出せる、そんな強く優しい工務店へと進化できるはずです。さあ、未来への投資として、今すぐ貴社の利益改善に取り組みましょう。貴社の成功を心より応援しています。

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この記事を書いた人

浄法寺 亘

工務店の社会貢献やSDGs、国産材利活用を応援する「コミュニティビルダー協会」代表理事。
今動いているプロジェクトは「木ッズ絵画コンクール」
※8月実施予定。
住宅サイトの運営もしています。

福島県 喜多方市出身
県立会津高校卒
市立高崎経済大学卒

著書:
頼みたくなる住宅営業になれる本
https://x.gd/oatiM
SDGsに取り組もう 建築業界編
https://x.gd/MXYJr
とっておきの見込み客発掘法
https://x.gd/001or

主な講演:
鹿児島県庁主催「かごしま緑の工務店研修会」
リードジャパン主催「工務店支援エキスポ」(東京ビックサイト)
育英西中学校
その他住宅FCなど

活動実績
2019~ 千葉県にて里山竹林整備ボランティア
2020~ 木ッズ絵画コンクール

工務店の集客・営業ならジーレックスジャパン →ホームページはこちら

商品の差別化へ!制振装置はこちらから →耐震・制振装置

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